魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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後日談13 優理のデバイス
前書き
こんにちはblueoceanです。
遅れて申し訳無いです………
「レイ、私もデバイス欲しい!」
夏休み、定期的に行なっている模擬戦を終え、一休みしている所に優理がふと言い出した。
「いや、でも優理には必要無いだろ………」
そう、一応優理には以前のミッドの事件でその膨大な魔力を封じるリミッターが付いたブレスレットをスカさんに作ってもらい、今はそれを付けている。
俺や桐谷、加奈みたいにデバイスでリミッターを付ける必要は無いのだ。
それに………
「優理、デバイス必要無いじゃん」
ライの言う通り、優理は魔法もデバイスの力を借りずともスターライトブレイカー放ったり、ジェットザンバー使ったり、フレスベルグ放ったりとなのはから星達まで、様々な魔法を使える。
スカさん曰く、宵の書による副作用であるらしいが、特に問題は無いらしい。
そんでもってクロスレンジで戦闘を挑んでも自身のエターナルセイバーで戦えるし、デバイスを持つ必要は無いと思うのだが………
「だってレイの使ってるラグナルとかかっこいいじゃん」
『流石優理!分かってます!!』
「久しぶりに喋りましたねラグナル………」
『覚えてる方いますかね………?だから私もレミエルみたいに普段から人に………』
星の言葉に心配そうに喋るラグナル。
確かに久しぶりだな………しかし、
「それは絶対に駄目だ………」
『グスン………』
こいつも加藤家のレミエルになってもらっては困る。それに俺は桐谷みたいにセレンを持っていない以上、いざというときに戦えないのも困る。
「しかしフェリアだってデバイスを使っていないのだ。別にこだわる必要は無いだろう優理?」
「嫌です。フェリアの戦い方も嫌いじゃ無いですけど、何か全然目立たないです」
「め、目立た………」
確かにナイフを投げ、操作し、爆破する。
相手として戦った場合は結構脅威な能力だが、確かに見ていると地味な感じがあるなぁ………
「フェリアお姉ちゃん、落ち込まないで下さい………」
「私もノーヴェみたいなガンナックルを作ってもらうか………」
キャロに慰められ、そんな事を呟くフェリア。しかし、あんまり使えなさそうな気がするが、取り敢えずそれは置いておいて………
「優理の大型砲撃魔法連発はかなりの迫力と言うより、相手を恐怖に陥れられるし派手さなら充分じゃないか?」
「確かにあれは命がいくつあっても足りないですね………」
さっきの砲撃魔法の嵐を思い出し、青くなる星。唯一の救いは同時に違う大型の砲撃魔法を使う事が出来ない事か。
「でもさ、今思ったけど優理ってデバイス使ってないって事は非殺傷設定も無いんじゃない?」
『流石だね、有栖家の面々は。優理君相手に非殺傷設定無しで戦っていたなんて………』
流石のスカさんも呆れ気味である。
あの後、即スカさんに連絡し、事の説明をした。
やはりデバイスは必要だ。このままじゃ優理と戦闘訓練出来そうにない。いつか絶対に死ぬ。
因みにスカさんとの連絡は大きなディスプレイを出してみんなも見ている。
「本当に今まで良く生きてたな………」
星達もであるが、俺の場合はブラックサレナの装甲が持っていかれたりしたのに、全く気がついていなかった。
星達も所々ボロボロになりながらもやはり経験が違うのか、一度も負けずに勝っていた。
攻撃はもの凄いのだが、いかんせん守りが弱かったりするのだ。
『まあそれでも優理君が無意識に手加減してくれた事もあるね。映像を見る限り、殺す程の威力は無かったみたいだしね』
「それであの威力………スカさん、優理のデバイス作ってくれないか?」
『あるよ』
「ああ、あるって………えっ、あるの!?」
『ああ、あるよ。明日にでも来てみると良い。こっちで準備しておくよ、では』
そう言って唐突に通信が切れたのだった。恐らく準備をしに行ったのだろう。
でもせめてちゃんと別れの挨拶をして来てくれよスカさん………
「いらっしゃい、待ってたわよみんな」
「こんにちはウーノさん」
移転したアジトはとある管理外世界にあり、相変わらず広いが、それでも前よりは狭くなった。
「おお~前みたいにボスの研究所じゃ無くなってる!!」
「ええ、流石にあの雰囲気は嫌だったのでドクターは嫌がってましたけど私が撤去しました」
前みたいな暗い通路では無く、普通の家と同じような通路で、水槽があったり、花が置いてあったりと華やかになっている。
「前より雰囲気が良くなりましたね」
「そうだな。やはり家とはこういう感じでリラックス出来る場でなければな」
夜美の言うとおりだな。
我が家も心休まるし、やはり家は重要だ。
「だが、帰った気がしない………」
「まあ確かに………」
「戻ったって気はしないだろうな………前とは大違いすぎる」
それほど前とは違っていたのである。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「どうしたキャロ?」
「アギト、どこ行ったの?」
「ああ、アギトなら………」
そう言って俺のシャツの胸ポケットからひょっこり出てくるアギト。
「あれ?何でそんな所にいるの?」
「………だってスカリエッティに会ったらまた調べられるかもって………」
「そう言えばあれ以来見てもらってないし、やってもらえば………」
「絶対に嫌だ!!!」
まだ駄目なんだな………
またスカさんが泣く羽目になりそうだ。
「分かりました、なら私が見ますのでそれでどうですか?」
「ウーノなら良い!!」
「すいません、それじゃあお願いします」
「はい、分かりました。なら先に済ませちゃいましょう。………アギトちゃん」
「じゃあ行ってくる!」
「ああ」
そう言ってアギトはウーノさんに連れられて行った。
「………って俺達はどうやって行けば!?」
「それは私が引き継ぐよ!」
そう言って現れたのは私服姿のセインだった………
「ああ、いらっしゃいっス~」
そう言って出迎えてくれたのはシーサーの着ぐるみを着て寝そべって漫画を読んでいるウェンディ。
桐谷から貰った沖縄のお土産で貰ったシーサーの着ぐるみをとても気に入ったらしく、家にいる時や、近くに出かけるときに着て出ている。
俺もばったり会ったが、意外に似合っており、そんなに違和感を感じなかった。
「ウェンディそれ好きだね」
「私の趣味にバッチリフィットっス!!」
「変わっているな本当に………」
そんな夜美のツッコミも虚しく、ウェンディとライの会話は更にヒートアップする。
「セイン達は何でこっちにいるんだ?」
「夏休みだし、桐谷も加奈もどっちもミッドに行っちゃって家に誰も居ないんって言うから帰ってきたの」
「ああ、だからノーヴェはあんなに暗いんですね………」
そう言って視線はソファーに座ってるノーヴェに。
桐谷から貰ったお揃いのカップを持ちながらコーヒーを飲んでいる。
「フェリアお姉ちゃん、どうしたの?」
「いいんだ、キャロ気にしないでくれ………」
何故かノーヴェと同じように暗くなるフェリア。
一体どうしたんだろう?
「………」
「あら、さっきからどうしたのですか優理?きょろきょろと誰かを探してるみたいに………」
星の言う通り、さっきからきょろきょろと忙しない優理。
「ねえセイン、クアットロは?」
「クア姉?さっきミッドから帰ってきて汗を流しに行くってディエチと大浴場に………」
「トーレさんも見てないな」
「トーレ姉はランスター家に。ティアナって娘の戦闘訓練をしているらしいよ」
ティアナ、原作より強くなるのは確実になったな………
「ふう………いいお湯だった」
そう言って入ってきたのは湯上りのクアットロとディエチ。
「あら?みんな来てたの?」
「クアットロ!!」
そんなクアットロに優理が飛びついた。
俺も含め、その場に居た全員がビックリしてその場から動けなくなっていた。
「優理、久しぶり。元気にしてた?」
「うん!クアットロは?」
「私はいつも通りよ」
そんな素直な優理の言葉。
とても同一人物には思えない………
「しかし本当に良い子ね、私もこういう妹が欲しかったわ」
「私も嬉しいです!!」
猫被ってるのか、これが優理の本性なのか………
「えへへ………」
「零治!!今日は泊まって行きなさい!!ってかむしろ夏休みずっと居たらどう?」
「無理言うな」
「じゃあ優理ちゃん頂戴!!」
「落ち着け!」
「クアットロ、ごめんね。でもレイと一緒にいたいから………」
「じゃあ私も零治の家に行く!!」
「「「「邪魔だから絶対に来るな!!」」」」
そう言ったのは実の妹の4人。
そこまで嫌われてるともう………
「クアットロ頑張、俺はそんなに嫌いじゃないから………」
「私はクアットロの事好きだから………」
「零治、優理………その優しさが逆に痛いわ………」
「さて、それじゃあ始めようか。優理君良いかい?」
「はい!」
気合が入った優理の言葉。
しかしその前に居るのはブラックサレナ状態の俺な訳で………
「なして俺………」
『だって一番固いのはレイじゃないですか』
『僕はスピードは自信あるけど防御はね………』
『我の得意分野は広範囲魔法だからな』
「いや、それは分かってるけど………しかも受けるの前提かよ」
『まあデータを取りたいしね。それにこういうのは家主の仕事じゃないのかい?』
そう言われると断れないよな………
「………それじゃあやるか優理」
「うん、本気で行くねレイ!!」
それは勘弁………
「行くよ、サリエル、セットアップ!!」
そう言って光に包まれる優理。
しかし、いつもの戦闘姿と同じのままだが、いつもと違うのは右手にあるランスと左手にある大きな盾。
そして大きく羽ばたいている翼。
まるで戦乙女と言った感じだ。
「行くよレイ!!」
優理は大きな翼を動かし、勢いを付けてそのまま真っ直ぐランスを俺に向け突き刺して来る。
「フィールド展開!!」
『はいマスター!!』
俺の張ったフィールドとランスが真っ向からぶつかる。
「ぐっ!?」
『重っ!?』
小さい優理からとは思えない程の重い一撃。
「やっぱり真正面からじゃ駄目か………なら!!」
そう言って優理はランスに自分の魔力を纏わせ始める。
「エターナルセイバー!!」
その纏わせたランスを斬り付ける様に上から振り下ろした。
「ぐうっ!?」
『威力が凄い………マスター、もう………』
「飛ぶぞ!!」
『ハイ!!』
フィールドが破られる寸前にジャンプし、何とかその攻撃を避けることが出来たが………
「前より面倒だな………」
『魔力もいつもみたいに無駄が無いし、あの盾の所為で防御も硬そうですね………』
「それはやって見ないと分から………って!!」
「アクセルシューター!」
盾に10個の誘導弾を作り出し俺に向かって飛ばす優理。
「ハンドガン展開」
『イエスマスター!』
両腕にハンドガンを飛ばし、誘導弾を撃ち落とす。
「ディザスターヒート!!」
「うそっ!?」
そんな俺に向けて盾から星のディザスターヒートが向かってくる。
「こなくそ!!」
その砲撃を何とか直撃する寸前でフィールドを張り、耐えきった。
『どうやら盾から様々なスファアの様な物を作りだし、そこから誘導弾や砲撃魔法を放つ様ですね』
「攻防一体って訳か………優理の弱点である防御面の問題が一気に解決されたって訳だな」
『そうですね………マスター、次!!』
「くっ!?」
今度は夜美のインフェルノが降り注いで来る。
「こんなに連続で来ると………!!」
『ブラックサレナじゃ不利です』
「ラグナル、転移後にアーベント!!」
『イエスマスター!!』
インフェルノが当たる直前に転移し、現れた瞬間アーベントになった。
「レイがアーベントに………」
「行くぞ、優理!」
バルチザンランチャーを優理に向けてBモードを連射する。
優理は大きな翼を動かし、回避するが………
「スピードでは俺の方が上だ!!」
高速移動での攻撃はやはり俺の方が有利であり、高速移動からの射撃により、優理の動きを完全に封じ込めた。
「くうっ………!!」
左手の盾により俺の砲撃を防ぐ優理。
しかもその盾、優理の魔力を使い、俺の砲撃を的確にプロテクションで防いでいる。
『賢いAIですね………』
「スカさん印は伊達じゃないって事だな」
『どうしますマスター?こうなると魔力量が少ないマスターの方が不利ですよ?』
「隙を突いてステークで攻撃する」
『………読まれそうですけど』
「まあこれは模擬戦でもあるんだ。勝つことが目的じゃない。色々試してみよう」
『怪我をしないようにしてくださいね………?』
「気をつけるよ」
「おや、零治君仕掛けるみたいだね」
「あれはステークだな。アーベントでの固い守りを破壊する手立てはあれしか無いからな」
「でもレイってあれに頼りっきりだよね………」
「そうですね、初見な相手ならともかく、知られた場合はあの捨て身の攻撃は危険なので止めて欲しいのですが………」
「確かに………まあ優理はまだその事に気がつく余裕が無いからレイも助かっているのだが………」
そんな3人の心配をよそに零治は優理に向かって弾幕を展開しながら突撃していった………
「レイ!?突っ込んで来る!?来ないで!!」
盾から星のパイロシューター、夜美のエリシアルダガー。そしてランスを振るい、ライの光翼斬が俺に向かってくる。
「いっ!?」
そんな俺の弾幕よりも多い攻撃を何とかローリングしながら躱し………きれず多少直撃したが、何とかアーマーが消え去る程のダメージを受ける前に抜けきった。
しかしあの盾から様々なロングレンジの魔法が使える様になったおかげでかなり手強くなった。しかもランスで、ライの光翼斬みたいな斬撃系の魔法も可能らしい。
流石にディバインバスターみたいな砲撃魔法を違う魔法と同時展開するのは無理みたいなのだが、誘導弾だけでも色々同時に放てるとなると対応がしづらくなる。
………まあそれでも弱点はあるのだが。
「き、来た!!」
慌てて盾で俺の砲撃を防御しながらランスで俺に向かって突いて来る。
そう、弱点とはクロスレンジの対応が前よりも難しくなったことだ。
長いランスだとどうしてもかなり近い距離だと長すぎて邪魔になる。両手で持つ槍ならば、まだ戦い様はあるだろうが、もう片方は大きな盾とどうしようもない。
………まあ盾で相手を突き飛ばしランスで攻撃なんて方法もあるのだろうが、今の優理にそんな攻撃方法が思いつける訳も無く、
「インパクトステーク!!」
優理の突きを難なく躱し、ステークの突きを盾にぶつけた。
「ぐうっ………!!」
激しくぶつかりあう杭と盾。
互いに火花を飛ばし、どちらも一向に譲らない。
「打ち込む!!」
大きな音と共に杭から魔力の弾が打ち込まれ、その度に盾に大きな衝撃が襲う。
「ぐううっ………」
優理は小さい体ながらその衝撃に懸命に耐える。しかし………
「きゃあああ!!」
4発目で耐え切れず吹っ飛ばされてしまった。
「これでチェックかな?」
「ううっ………」
ランチャーの先を優理の額に構え、そう言う俺。
そんな俺に悔しそうに睨む優理。
『お疲れ2人共。模擬戦終了だ』
「レイ、ブラックサレナだけって話なのに………」
「いや、だってさ………優理の魔力だとフィールド張っても破られるし、装甲も長く持ちそうに無かったし、攻撃はブラックサレナでデータも取れただろうし、だったら後はアーベントでも………」
「そう言って負けたく無かっただけじゃないんスか?」
「バカ言うな!!俺はそんなに心が狭くない!!」
「かわいそうに………おいで優理ちゃん」
「ううっ、クアットロ………」
鼻をすすりながらクアットロに抱きつく優理。
そんなに悔しかったのかな………?
「大人げ無いです………」
「レイ、優理が可哀想だよ」
「全く………」
星達にも言われ、本当に俺が悪い雰囲気になっている。
「スカさん、俺悪かったのか?」
「私としては色んなデータをとれたし万々歳なのだがね。しかしやはりランスは使いづらかったみたいだね。細剣にしたほうが良いかな?」
確かに突きオンリーなランスより優理の大きさに合っている細剣の方がいいと思う。
「う~ん………でもランスもお気に入りなんだよね………」
「だったら2パターン組み込んでおこう。基本盾でのランスと細剣の使い分けによる戦闘でどうだい?」
「うん、それでいい!!」
さっきまでの態度は何だったのか上機嫌でそう答える優理。
みんなの優しさを返せ。
「今度が負けないよレイ!!」
「………まだまだ負けないよ」
それに負けたら家主の威厳が更に失いそうな気がするしな………
「でやあああああ!!」
ミッドチルダのとある家の庭で2人の男女が組手をしていた。
「やるなギンガ、随分腕を上げたじゃないか!」
「私だって管理局員なんです、あんまり舐めないで下さい桐谷さん!!」
そう言って再び桐谷に挑むギンガ。
細かい連打を繰り出し、相手の攻撃を捌く。
「よし、これくらいにしておくか」
「は、はい………」
2人は結局2時間ほど繰り返し行なっていた。
「ぶぅ………ギン姉ばっかずるい………」
そんな2人を見ていたスバルが頬を膨らませ、不満を漏らす。
「スバルもやったじゃない………」
「ギン姉みたいにあんなに長く無かったもん!!」
「悪かった、悪かった。明日、また相手してやるから………」
「本当に!?また明日来てくれるの!?」
「ああ、家族も知り合いの所に行っててな、俺もちょうど夏休みだしって事でお邪魔してるんだよ」
「そうなんだ………行きたいな………」
「悪いな、それはちょっと無理なんだ」
「ぶう………」
「スバル、そんな我侭言ってると桐谷さん、もう来なくなるわよ?」
「えっ!?そ。それは絶対に嫌だ!!分かった言うこと聞く!!」
ギンガにそう言われ、素直に言うことを聞くスバル。
「良い子だ、また明日頑張ろうな」
「うん!!」
「それにしてもスバルもギンガも随分腕を上げたな。これならシューティングアーツも習得出来るんじゃないか?」
「まだまだ母の腕前には及ばないです。………でも必ず物にしてみせます」
「私も!!」
真っ直ぐな瞳で桐谷をしっかり見て答える2人。
そんな2人を微笑ましく見ながら、
「そうか………頑張れ、2人共」
頭を撫でながら声援を送るのだった………
「はい、トーレさん」
ランスター家の食卓には沢山の料理が並べられている。
そんな食卓の椅子に座っているトーレにティアナがグラスを渡し、ワインを注いだ。
「ティアナ、俺にも」
「はい」
ドン!っと目の前にワインのビンを置かれ、ティーダは泣く泣く自分でグラスに注ぐティーダ。
チン!
「あっ!グラタン出来た!!」
そう言って立ち上がるティアナ。
「全く………トーレさんが来ると、何で冷たいのかな………?」
「恥ずかしいのだろう。他人にブラコンだと思われるのが」
「おっ、流石大家族の姉。分かってますね」
「まあな」
「何2人でこそこそ話しているんですか?」
大きなお盆に人数分のグラタンを乗せ、持ってきたティアナが不思議そうに呟く。
「いや、ティアナも随分と上達したと教えていたのだ」
「そうですか!私が兄さんを追い越すのも時間の問題ですね!!」
「ああ、そうだな」
「そうなったら立場無いな………」
その後、3人は楽しく食事をしたのだった………
「で、実際はどうなんです?」
食事が終わった深夜。
ティアナは既に片付けを済ませ、自分の部屋で寝ている。
大人の2人は未だにワインを飲んでおり、静かな部屋の中でゆったりとワインを楽しんでいた。
「何がだ?」
「ティアナの実力ですよ」
「………ハッキリ言えばまだまだだが、筋は良い。戦闘のパターンを瞬時に考え、実行する辺りを見ると戦闘指示を出すのに長けていそうだな」
「そうですか………」
トーレの答えを聞き、嬉しそうにワインを飲むティーダ。
「だが、どうしても魔力の低さが浮き彫りになるな。………まあまだ成長期と言うこともあってまだ問題に上げるのは早すぎるが、銃のデバイスを使う以上致命的になりかねん」
「そうですか………」
「なので魔力に余り頼らない戦い方も教えてるのだが………いかんせんクロスレンジの対応が増えてしまったので、ティーダの戦闘スタイルと大分変わりつつあるのだが………」
「構わないですよ、ティアナも執務官を目指している以上危険が伴うでしょうから、どんな状況化でも対応できる能力が無くちゃ駄目ですからね。それに………」
「それに………?」
「ウォーレンの戦い方にも似てるなって思って」
「ウォーレン・アレストか………彼も双銃を使うと聞いていたがクロスレンジも得意なのか?」
「ええ。………と言うよりウォーレンはどんな距離でも対応出来る戦い方を自分で作り出していました。瞬時にその場で有効な戦闘方法を思いつき、それを実行する。タイプ的にはティアナもそうだと思うんです。だから本当はウォーレンに直接教えてもらうのが一番だと思っていたんですけど………」
そう言ってグラスに入っていたワインを一気に飲み干すティーダ。
「本当に最後までアイツらしいというか何というか………零治君に話を聞いてそう思いましたよ」
「………」
今までウォーレンの話題に関しては触れない様にしてきたトーレだったが酔いが回って来た影響なのかティーダから話初めたのである。なのでティーダからウォーレンの話を直接聞くのは初めてだった。
「俺は本当はウォーレンの事が羨ましかったんです。自由に伸び伸びと自分の思った様に力を振るえる。それがどんな危険な事でも管理局に居たときよりも輝いてました。アイツが何で管理局を辞めたのか当初は理解出来なかったけど、今ならハッキリ分かります。自分の守りたい者を守れず何が管理局だ!!ふざけんなあのクソ上司………!!」
最後の方は完全に愚痴になっていたが、トーレは苦笑いしながらティーダの話を聞く。
「何が任務だよ、俺は管理局を守る為に管理局員になったじゃねえっつうの………今度また会ったらぶちのめして………」
「ティーダ………?」
「ぐぅ………ぐぅ………」
話の途中で俯いたティーダに心配して話しかけたトーレだったが、寝息を立てるティーダに安心したトーレ。
なれない教師でも仕事の疲れと酔いもあってか簡単に起きそうに無かった。
「お疲れ、ティーダ・ランスター」
完全に机に突っ付したティーダに上着をかけてやり、ワインのグラスを片付けた後、ティアナが準備してくれた客間の布団に入ったのだった………
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