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神器持ちの魔法使い

作者:リリック
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始まり
  第06話 幼馴染は神器持ちな変態で

グレモリー家訪問から数日後。
夏休みもあとわずかとなったために冥界から人間界の自宅へと戻ってきた。

「今年の夏休み訪問はいつも以上によかった。小猫とも再会できたし」

小猫、と呼ぶことに未だ慣れない。
グレモリーさんが白音に新しく名前を与えたらしく、なるべくそう呼ぶようにと言われた。
とはいえ、昔は白音ちゃんやら白ちゃんと呼んでたから何というか小猫という名に違和感がどうしてもついてくる。

で、その小猫のことであるが相変わらずレイヴェルと顔を合わせるたびに口ゲンカをしている。
気が合わないというわけではなさそうだが、二人の間に何かがあるんだろう。
不満はありながらもレイヴェルは小猫の面倒を見ていたし、小猫もムッとしながらも受け入れていた。

ケンカするほど仲がいい、とも言うし、二人の仲は心配するほどでもないと思う。

「っと、多分そろそろだな」

呟くと同時にインターホンが鳴った。

「この時期、この時間帯に来るのはあいつだろうな」

苦笑しながら玄関へと向かう。
扉のガラス越しに見えるのは見覚えのある人影。
ドアノブに手をかける。

「また君か。いい加減懲りないな。夏休み一週間前の午後一時。毎年来てるけどまた宿題を手伝えって言うのかい? 君はなに? バカなの? 何なの? 死ぬの? というか死んじゃえ」

「まったくもってその通りだけど毎度毎度玄関開けてすぐに貶すかな!?」

と、荷物を抱え、ツッコミを入れるのは幼馴染みの一誠。
黙っていればそこそこイケメンな残念変態さん。

まあ、言えることは、

「変態は死すべし」

「秋人!?」

「冗談。ほら、入れよ」

なかなか弄って楽しいのだが、これ以上漫才をやると近所の方々に迷惑がかかるので一誠を家の中へと招き入れる。
心労が溜まったように深くため息を吐いているようだがスルーする。

「いつも通りの流れでいいか。わからん箇所はその都度聞けよ」

「おう!」

そうしていつものように取り掛かる。

改めて彼のことを紹介する。
名は兵藤一誠、先にも言ったように俺の幼馴染である。
同じ地区に住み、幼少期からの付き合いで幼・小・中と腐れ縁が今も尚続いている。
基本的に仲間思いで真っ直ぐなヤツなのだが、残念なことに変態なのである。
ある日を境におっぱいおっぱいと連呼するようになってしまった変態なのである。
本人曰く、「紙芝居のおじさん、俺、絶対揉んでみせるよ」だそうだ。
……訳がわからん。

閑話休題。

一誠本人は気付いていないがその身に神器を宿している。
ただ、それがどんなものなのかはわからないが……嫌な予感がする。
偶然かもしれないが一誠の身の回りにはいろんなモノがいた。
例えばこの町、ここはグレモリー家の管轄であるのだが、他の地域に比べ、少なからず強いはくれ悪魔が現れる割合が高い。
また、教会が存在し、一時期聖剣の一本が存在していた。
俺のような特殊な力を持つ人間がいる。
更には変態・変人が多数……これは関係ないな。

とまあ、何かに引き寄せられるかのように『力』が身近にある。

龍は『力』を引き寄せるというが……まさかな。

「……きと。秋人!」

「あ、ああ。なに?」

「いや、これわかんないだけどさ。……というか大丈夫か? ボーッとして」

「少し考え事」

気付けばそれなりの時間が経っていたようだ。
一誠の言う個所を答えながら解説をする。
その後、ひと段落入れていると不意に一誠が聞いてきた。

「そういや、秋人はどこの高校に行くんだ?」

「ん? ああ。駒王学園だな。場所もここから離れてないし。それにこの前の進路面談で担任やその他教師陣から行くように推されてたし」

私立駒王学園は、共学校だが数年前までは元女子校だった。
男女比を見ても3:7と女子に大きく偏っている。
その所為か、女子の発言力は強く、共学になったここ数年の生徒会長も未だに女子が務めているとかどうとか。

とまあ、表向きはそんな感じだ。

実際、ふたを開けてみればいろいろある。
学園には悪魔や関係者が一般人と同じように通っている。
学園の上のお偉いさん方が悪魔。
学園、というかこの町一帯がとある悪魔の領地。
等々。

「で、そういう一誠はどうなんだよ? 確か俺と同じ駒王学園だっけか?」

「よくぞ聞いてくれました! 俺は―――」

時間にして約三十分近く。
変態視点による駒王学園の魅力だの、自分の夢の第一歩だの、そりゃもういろいろ。
聞いてもないことまでも熱く語りだす一誠が面倒なので軽く聞き流す。

どちらにせよそういった原動力となる目標や夢があるからこそ、こんなにも頑張れるのだろう。
……動機が変態だけど。

「―――で、だ!」

「はいはいわかったわかった。つか、勉強しないんなら帰れ。こちとて暇じゃないんだ。夜には知り合いが来るからいろいろ準備する時間がほしいんだが」

夏ということもあり、日は未だに落ちてはないがどこからか流れる音楽につられて夕焼け小焼けと口ずさんでしまうような時間帯だ。

「もうそんなに経ってのか。そういうことなら帰るわ。今日はありがとな」

「いつものことだ、気にすんな」

荷物をまとめるなりお礼を言って帰った一誠。

「今回はあの兄妹の分まで夕飯用意しないとな。っと、そんじゃまあ買い物に行きますかね」 
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