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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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鉄の森編
  鎧の魔導士


「うーん・・・」

エバルーの依頼から数日、ルーシィは依頼板(リクエストボード)の前で悩んでいた。

「魔法の腕輪探しに・・・呪われた杖の魔法解除(ディスペル)、占星術で恋占い希望!?火山の悪魔退治!?」
「依頼っていっぱいあって最初は迷っちゃうよね」
「あ、ルー。アンタ腹痛は大丈夫なの?」
「えへへ。もう平気だよ」
「気に入った仕事あったら私に言ってね。今はマスターいないから」

依頼板(リクエストボード)の前で話す2人にミラが声を掛ける。

「あれ?本当だ」
「そういえば・・・定例会があるんだっけ?」
「定例会?」

聞き慣れない言葉にルーシィが首を傾げる。

「地方のギルドマスター達が集って定例報告をする会よ」
「評議会たぁ違ぇんだけど・・・ちょっと解りづれぇか」
「リーダス、光筆(ヒカリペン)貸してくれる?」
「ウィ」
「そもそもギルドに加入したばかりじゃ魔法界の組織図って解らねぇよな」

バーカウンターに座っていた大柄の男『リーダス』から光筆(ヒカリペン)を借り、ミラが空中に文字を書く。
光筆(ヒカリペン)とは、空中に文字が書ける魔法アイテムだ。
現在72色発売されている。

「魔法界で1番偉いのは政府との繋がりもある評議院の10人。魔法界の全ての秩序を守る為に存在するの。犯罪を犯した魔導士をこの機関で裁く事も出来るのよ」
「その下にいるのがギルドマスター。評議会での決定事項などを通達したり、各ギルド同士の意思伝達(コミュニケーション)を円滑にしたり俺達をまとめたり・・・まぁ、大変な仕事だな」

ミラとアルカが交互に説明していく。

「知らなかったなぁ~、ギルド同士の繋がりがあったなんて・・・」
「ギルド同士の連携は大切なんだ」
「これをおそまつにしてると・・・ね」

ルーシィがミラの方に目線を向けた、その時。

「黒い奴等が来るぞォォォ」
「ひいいいっ!」

ナツがルーシィの背後から声色を変え、指に火を灯して囁いた。

「うひゃひゃひゃっ!『ひいい』だってよ。なーにビビってんだよ!」
「もォ!脅かさないでよォ!」
「ビビリルーシィ、略してビリィーだね」
「変な略称つけんなっ!」
「だが、黒い奴等は本当にいるんだ」

空気を変えるようにアルカが口を開く。
ミラが頷き、続けた。

「連盟に属さないギルドを『闇ギルド』って呼んでるの」
「よくティアが評議院直々に討伐依頼を受けてるんだ」
「あいつ等、法律無視だからおっかねぇんだ」
「あい」
「じゃあいつかアンタにもスカウト来そうね」
「ティアもね」

ルーが苦笑いを浮かべて肩を竦める。

「つーか、早く仕事選べよ」
「前はオイラ達が勝手に決めちゃったからね。今度はルーシィの番」
「冗談!チームなんて解消に決まってるでしょ!」
「なんで?」
「あい」

ルーシィの言葉にナツとハッピーは首を傾げる。

「だいたい金髪の女だったら、誰でもよかったんでしょ!」
「何言ってんだ・・・その通りだ」
「ホラー!」
「でもルーシィを選んだんだ、いい奴だから」

屈託のない笑顔でそう言われ、ルーシィは何も言えなくなる。

「なーに、無理にチームなんか決める事ぁねぇ。聞いたぜ、大活躍だってな。きっとイヤってほど誘いが来る」
「ルーシィ・・・僕と愛のチームを結成しないかい?今夜2人で」
「イヤ・・・」
「な?」

会話を近くで聞いていたグレイとロキが話しかけてきた。
ロキのチーム結成話を即座に断るルーシィ。

「傭兵ギルド南の狼とゴリラみてーな女やっつけたんだろ?すげーや、実際」
「そ・・・それ全部ナツ」
「テメェか、このヤロォ!」
「文句あっか、おぉ!?」

ルーシィの一言でケンカを始める2人。
またかよ、と言いたげにアルカが首を振った。

「グレイ・・・服」
「ああああっ!また忘れたぁっ!」
「うぜぇ」
「今うぜぇっつったか!?クソ炎!」
「超うぜぇよ変態野郎!」
「ねー」
「何が!?」

殴り合いの喧嘩を始める2人。
そしてロキはルーシィを口説き始めた。

「君って本当綺麗だよね・・・サングラスを通してもその美しさだ・・・肉眼で見たらきっと目が潰れちゃうな・・・ははっ」
「潰せば」

口説いて来るロキに冷たく言い放つルーシィ。
すると、ロキの目にルーシィの腰にある鍵が映る。
それを見た瞬間、ロキはルーシィから距離を取った。

「うおおっ!き・・・君、星霊魔導士!?」
「?」
「俺の姉貴と同じだぞ」
「ウシとかカニとかいるよ」
「えー!僕まだカニ見た事ない!キャバ嬢、カニ見せてー!」
「あたしはキャバ嬢じゃないからっ!」
「な、なんたる運命のいたずらだ・・・!」

先ほどまでとは明らかに様子が違う。

「ゴメン!僕達はここまでにしよう!」
「何か始まってたのかしら・・・」

ロキが慌てた様に出口に向かって走っていき、ルーシィは1人ぼやく。

「何あれぇ」
「ロキは星霊魔導士が苦手なの」
「はぁ?」
「どーせ昔女の子絡みでなんかあったんだろ。アイツ、不特定多数の女と付き合ってるから・・・俺ぁミラ一筋だけどな」
「ティアの嫌いなタイプだよね・・・あ、戻ってきた」

さっきも慌てていたが、更に慌てた様子でロキが戻ってきた。
そして取っ組み合いの喧嘩をするナツとグレイに叫ぶ。

「ナツ!グレイ!マズイぞっ!」
「「あ?」」
「エルザが帰ってきた!」
「「あ゛!?」」

それを聞いた瞬間、2人から尋常じゃないほどの汗が吹き出す。
その時。

ズシィン・・・。
ズシィン・・・。

地響きのような音が聴こえてきた。

「俺・・・帰るわ・・・」

ロキが震えた声で呟く。
だんだんと地響きが大きくなり、固唾を呑むギルドメンバーたち。
そして、鎧を纏い巨大な角を持った緋色の髪の女性・・・『エルザ』が帰ってきた。

「今戻った。マスターは居られるか?」
「おかえり!マスターは定例会よ」
「そうか・・・」

持っていた巨大な角を置きながらエルザが尋ね、ミラが答える。

「エ、エルザさん・・・そ、そのバカでかいのは何ですかい?」
「ん?これか。討伐した魔物の角に地元の者が飾りを施してくれてな・・・綺麗だったのでここへの土産にしようと思ってな・・・迷惑か?」
「い、いえ、滅相もない!」
「討伐した魔物の角・・・か」
「すげ・・・」

感心のような驚きの様な言葉が呟かれる。

「それよりお前達。また問題ばかり起こしているようだな。マスターが許しても、私は許さんぞ」

そう言ってエルザがメンバーを睨む。
その視線に多くのメンバーの体が震えた。
・・・まぁ、ルーはそんな空気を感じているのかいないのかニコニコ笑ってるし、アルカは若干呆れた様な表情でエルザを見つめている。

「な、何・・・この人・・・」
「エルザ!とっても強いんだ」
「ティアと同じくらい強いよ」

ルーシィの呟きにハッピーとルーが答える。

「カナ・・・なんという格好で飲んでいる」
「う・・・」
「ビジター、踊りなら外でやれ。ワカバ、吸い殻が落ちているぞ。ナブ、相変わらず依頼板(リクエストボード)の前をウロウロしているのか?仕事をしろ」

一通りダメ出しをした後、ふぅ、と溜息をつく。

「全く・・・世話が焼けるな。今日の所は何も言わずにおいてやろう」

随分色々言っていたが・・・。

「風紀員か何かで・・・?」
「エルザです」
「ところでナツとグレイ、ルーとアルカはいるか?」
「ハイハーイ。僕ならここにいるよ~」
「俺もいるぞ」

エルザに呼ばれてルーは呑気にニコニコと、アルカは片手をあげる。
そして同時に名前を呼ばれたナツとグレイは・・・。

「や、やぁ・・・エルザ・・・お、俺達・・・今日も仲良し・・・良く・・・や、やってるぜぃ」
「あい」
「ナツがハッピーみたいになった!」

体中から汗を吹き出し、先ほどとは打って変わって肩を組んでいた。

「そうか・・・親友なら時には喧嘩もするだろう。しかし私はそうやって仲良くしてるところを見るのが好きだぞ」
「あ、いや・・・いつも言ってっけど・・・親友って訳じゃ・・・」
「あい」
「こんなナツ見た事ないわっ!」
「驚くよね~」
「アンタ、驚いてるように見えないんだけど・・・?」

ニコニコと笑ってそう言うルーにルーシィがツッコむ。

「ナツもグレイもエルザが怖いのよ。図で説明するわね」
「えぇっ!?てか図にする必要あるのかしら・・・しかも超ヘタだし・・・」
「ナツは昔喧嘩を挑んでボコボコにされちゃったの」
「まさかぁ、あのナツが!?」
「グレイは裸で歩いてるトコ見つかってボコボコにされてたよ~」
「ロキはエルザを口説こうとして半殺し。ティアだったら確実に殺されてたな」
「うん!だってティアだもんね!」

よく解らない納得の仕方だ。

「2人とも仲がよさそうで良かった・・・実は4人に頼みたい事がある」

エルザが口を開いた。

「仕事先で厄介な話を耳にしてしまった。本来ならマスターの判断を仰ぐトコなんだが、早期解決が望ましいと私は判断した。4人の力を貸してほしい。ついて来てくれるな」
「え!?」
「はい!?」
「いいよ~」
「ミラとデートの予定なんだがな・・・」
「いいのよ。エルザの予定の方を優先して?デートはまた今度にしましょ?」
「おぉっ!さすがミラ、心が広いぜっ!」

デートはともかく、エルザの言葉にギルド中がざわつく。

「ど、どういう事!?」
「あのエルザが誰かを誘うトコなんて初めて見たぞ!」
「こんなでけぇ怪物倒す女だぞ・・・」
「何事なんだ・・・」

ハッピーも呟く。
ギルドの尋常じゃない空気にルーシィの心臓が強く鳴った。

「出発は明日だ。準備をしておけ」
「あ、いや・・・ちょっ・・・」
「行くなんて言ったかよ!」
「詳しくは移動中に話す」

ナツとグレイの言い分は無視だ。
そしてそのまま去っていこうとしたが、途中で何かを思い出したように足を止め、振り返る。

「そうだ。ルー、アルカ、お前達に言っておく事があったんだ」
「僕達に?」
「なんだ?」

2人は顔を見合わせ、首を傾げる。

「先ほど連絡して協力してもらう事になった。明日は『ティア』もいる」
「っティアがいるの!?」
「マジかよっ!」
「明日、マグノリア駅で落ち合う予定だ」

そう言ってエルザは帰っていった。

「エルザとナツとグレイ、それにティアとルーとアルカ・・・今まで想像した事も無かったけど・・・」

ミラの小さい呟きに、ルーシィは首を傾げる。

「これって妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チームかも・・・!」

その言葉に驚きのあまり、ルーシィは大きく口を開けた。



















「ねぇ、ずっと気になってたんだけど・・・ティアさんって何者なの?」
「あ、ルーシィは会った事なかったね」

エルザが帰り、巨大な角とざわめきが残ったギルド。
ルーシィの疑問にルーが微笑む。

「ティアはギルド最強の女問題児・・・それは知ってる?」
「うん・・・確か半殺しにする人よね」
「あいつは俺やルーと同じ元素魔法(エレメントマジック)を使う女魔導士だ」
元素魔法(エレメントマジック)?」
「その名の通り、元素を操る魔法。似た魔法もあるけど他の魔法より明らかに強くて、使えるのは各元素に1人なんだ」
「へぇ~・・・って事は、ティアさんもエルザさん並みに怖いって事?」

そう呟いた瞬間、行きたくないと騒いでいたナツとグレイの動きが止まった。
ルーとアルカも困ったように顔を見合わせる。

「え?え?」

ルーシィが首を傾げると、ミラが困ったように笑った。

「ティアはギルドの中じゃ氷の女王(アイスクイーン)って呼ばれてるのよ」
氷の女王(アイスクイーン)?何でですか?」
「ティアは普段から冷静沈着なんだけど・・・」
「怒ると・・・な」
「な、何!?」

尋常じゃない雰囲気にルーシィは慌てる。

「そ、そそそうだった・・・」
「明日はティアもいるんじゃねーか・・・」
「「ますます行きたくねーっ!」」

頭を抱えるナツとグレイ。

「な、何なのよぉ・・・」
「ナツは昔、ティアに勝負を挑んで殺されかけたのよ」
「えぇっ!?」
「グレイはパンツ1枚で歩いてるトコ見つかって半殺し」
「でもまだマシだぜ?ロキなんて怒りの形相のティアに包丁突きつけられてんだから」
「あー、アレは凄かったよね~!首に包丁突きつけてさ~」
「怒りの形相の時のティアは感情を完全に消してるからな。違う意味で怖ぇんだよ」

どこか楽しそうに話すルーとアルカに対し、ナツとグレイは「この世の終わりだ」とでも言いたげなほど沈んでいる。
すると突然ナツが起き上がってルーシィを見た。
凄い気迫に思わずルーシィはビクッと震える。

「おおおおおっ!」
「きゃあっ!な・・・何すんのよオォオ!」

ナツは目に見えないような速さで・・・。

「お前、今からナツだ」
「無理だって」
「あい」

ルーシィに自分のマフラーとベストを着せ、自分の様に前髪を上げた。

















ここは魔導士ギルド、鉄の森(アイゼンヴァルト)

「あの鎧女、どこのギルドの者よ」
「知らね」
「いい女だったなァ・・・くそっ!声かけときゃよかったぜ」
「オメーじゃ無理だ」
「何だとっ!」

文字通り丸い男と髪の毛が立った男がもめている。

「カゲヤマはまだ戻らねぇのか?」
()()の封印を解くのはそう簡単じゃねぇはずだ。仕方ねぇよ」

鎌を持った男に言われ、1人の男が返す。

「モタモタしてんじゃねぇよ・・・今が好機なんだぜぇ。ジジィ共が定例会をしてる今がな」

鎌を持った男『エリゴール』が笑みを浮かべて呟いた。


















一方その頃、ここはシロツメの街。

「所詮は愚かで哀れな集団ね」

掴んでいた男を乱暴に離し、少女・・・『ティア』が呟く。
その足元には、血を流し、ある者は気を失いある者は辛うじて意識を保っている状態の男が大勢いた。
床に開いたマンホールの穴から血が流れる。
ちなみにここは室内なのだが、なぜかマンホールがあるのだ。

「お、俺達にこんな事して・・・ボスが黙ってると・・・思うなよ・・・」
「ボス?・・・あぁ、あの己の力を過信しすぎてる私が1番嫌いな人種の男ね。アイツなら1番最初に潰したわよ。嫌いな人種だから」
「なっ・・・!」
「・・・誰が言葉を発していいなんて言ったかしら?」

ギロッと睨まれ、男は震えて口を閉じる。
ふぅ、と溜息をつき、髪をかきあげた。

「にしても・・・困ったものよね。仕事を終えたばかりだというのにエルザは・・・まぁ、結果は雑魚の相手だけだったしどうって事無いんだけど」

1人呟き、また溜息をつく。
ロングヘアが風に靡き、大きく開いた背中の白い紋章が見えた。
座っていた樽から降り、その場を後にする。
途中でくるっと振り返り、また溜息をついた。

「・・・流石にやりすぎてしまったわ。マスターに怒られないといいけど」

建物は見るも無残に破壊され、中にいる男たちはほぼ半殺し状態。
そりゃやりすぎだろう。

「次も雑魚の相手だったら許さないんだから」

そう言い残してティアは去っていった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
次回、遂にティアが登場!・・・今もよく登場してるけど・・・。

感想・批評、お待ちしてます。 
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