陽気な助っ人
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第五章
「アメリカに帰ってから」
「独立リーグで現役やってましたよ」
まずは帰国した直後のことが話される。
「それで引退して1Aでコーチやってますよ」
「野球に関わってますよ」
「ほお、まだ野球やってんねんな」
野村はホージーのその話を聞いて嬉しそうに声をあげた。
「それはええこっちゃ」
「ですね、最初は何だこいつって思いましたけれど」
「いい奴ですからね」
「明るくて楽しくて」
「とにかくひょうきんで」
「それで神様を信じてて野球が好きでや」
野村も温かい目で言う。
「そういう奴やさかいな」
「まだ野球していて何よりですね」
「今も」
「麻薬の売人になろうかって考えてた奴がな」
野村もこのことを知っていた、それで言うのだ。
「野球を今もやってるなんてな」
「いいことですね」
「あいつも幸せですね」
「機会があったらまた会いたいわ」
野村はこうも言った。
「一回手紙でも送るか」
「ですね、今も野球をしてるあいつに」
「そうしましょうか」
彼等は日本でそうした話をしていた、そして。
そのアメリカでだ、ホージーはバットを持ちながら選手達にこう言っていた。
「そうそう、野球が出来るのは」
「神様がいるからですね」
「神様が野球をさせてくれるんですね」
「そうだよ、僕だってそうなんだよ」
身振り手振りを交えて明るい口調で話す、現役時代と同じく。
「野球が出来るのはね」
「神様がさせてくれる」
「そういうことですね」
「そうだよ、じゃあまずは神様にお願いをして」
それからだというのだ。
「練習をしようか」
「コーチは日本にもいましたけれど」
「そこでもそういう感じだったんですね」
選手達はここでこのことを問うた。
「そうですよね」
「二年位いましたよね」
「そうだよ、そこじゃホームラン王にもなったよ」
ホージーもその通りだと答える。
「神様が僕を日本に連れて来てくれて活躍させてくれたんだよ」
「そして今も野球をさせてくれる」
「ですよね」
「そうだよ、野球は自分がするものじゃないんだよ」
それならというのだ。
「神様がさせてくれるものだから」
「ですね、お祈りをして」
「それからですね」
選手達もホージーに応える、そして。
彼と共に野球をする、彼は今も野球をしていた、神に感謝しながら。
陽気な助っ人 完
2013・3・23
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