舞台神聖祝典劇パルジファル
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第二幕その二
第二幕その二
「その様な者達が何だというのだ。
「私の呪い。憧れ」
「あの城の無知な騎士達に憧れるのか」
「私は何時か救われる」
ここでは話が噛み合っていなかった。しかしそれでもお互いに話すのであった。
「だからこそ」
「好きにしろ。それではだ」
「それでは」
「あの者達は御前に何の見返りも出さない」
そもそもそうした発想が彼等にはなかった。
「だが俺は違う」
「違う」
「そうだ、違う」
まさにそうだというのである。
「俺は違う。御前に褒美をちゃんとやる」
「そんなものはいらない」
「御前はかつて俺に槍を授けてくれた」
このことを笑いながら話すのだった。
「それに見返りをやったな。多くの黄金を」
「私にとって黄金は何の意味もないもの」
「黄金はこの世を動かすものだ」
だが彼はこう言うのだった。
「それは覚えておけ」
「そして今度は何を」
「また言う」
今はあえて言わないのだった。
「それではだ」
「その時は」
「動かしてやる」
これが彼の言葉であった。
「わかったな」
「私はもうそれは」
「御前は以前聖者になろうとした」
クリングゾルはその時のことも話しだした。
「だがそれはどうなった」
「それは」
「御前は恐ろしく苦しい立場の中にある」
今度はこんなことも言うのだった。
「抑えきれない憧れの苦しみや凄まじい衝動の地獄の欲望や」
「それは」
「そういったものの中にある」
それが彼女だというのである。
「御前はその中に必死に抑え込んでいるがだ」
「私はそれでも」
「嘲笑や軽蔑は御前はかなり受けてきたな」
「・・・・・・・・・」
「沈黙が何よりの証だ」
クンドリーが黙ったのを見てさらに言ってみせたのである。
「嘲笑や軽蔑はあの男が受けた。あの王がだ」
「あの王が」
「頭の高いあの男から槍を奪った。奴等はやがてそのまま朽ちる」
モンサルヴァートで何が起こっているのかはもうわかっていたのだ。
「そしてやがて聖杯も俺のものとなるのだ」
「私はもう疲れた」
クンドリーの声が相変わらず虚ろなものであった。
「誰もが弱い。そして私も」
「弱ければどうだというのだ?」
「疲れて動けなくなってしまって」
その虚ろな言葉を続けていく。
「眠ってしまいたい。それが永遠の救いになれば」
「御前に抵抗できる者ならばそれもできよう」
クリングゾルは嘲りを込めて彼女に告げた。
「しかしだ」
「しかし」
「今ここに来る若造でそれを試してみるか」
「あの若者とは」
「見ている筈だ、あの忌々しい場所で」
モンサルヴァートの森のことすら話に出そうとしない。
「御前もまた」
「あの若者が。何も知らない若者が」
「来たな」
クリングゾルは玉座にいながら全てを見ていた。
「遂にか。来たな」
「来た、遂に」
「そうだ、来たのだ」
それを見ながらクンドリーに語ってみせる。
「あの若造が」
「私は今度は一体」
「よし、それではだ」
クリングゾルは早速動いた。
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