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銀河英雄伝説~逆転の人生
前書き
ちょっと、考えついたので、ささっと書いてみました。
ヤンが死んだ後、時代を逆行し帝国貴族の跡継ぎとして生まれていたら。
そんな感じで書いてみました。
宇宙暦767年 帝国暦458年 4月4日
■銀河帝国 帝都オーディン ヤーン公爵邸
銀河帝国公爵テオドール・フォン・ヤーンはオーディンにある館の産室の前で右往左往していた、何故なら今正に彼の初めての子が誕生しようとしていたからである。
「うむー、落ち着かねば成らんな、何と言っても皇帝陛下にとっても甥か姪に当たるのだから、私が落ち着かなくてどうするんだ」
そう言いながらも、テオドールはソワソワと懐から懐中時計を出して時間を確認する。
「んー、既に二時間か、カタリーナは大丈夫で有ろうか?」
独り言を呟くテオドールに老執事が紅茶を勧めて落ち着かせる。
「旦那様、奥様には最高の医師団が着いております。まずは御一服を」
そう言われて、紅茶に手を出すテオドールだったが、それを飲む事はなかった。何故ならカップを口に付けようとした瞬間、産室から大きな産声が聞こえたからである。
「おお、生まれたのか」
テオドールはカップを放り投げて産室へ入ろうとするが、老執事に止められる。
「旦那様、医師の許可があるまでは、お入りになれませんぞ」
「しかし、我が子が生まれたのだ、それぐらいは」
我が儘を言うが先々代から仕えている老執事はテオドールを諭す。
「旦那様、赤子は細菌等に弱いのでございます。その為にも確りとした処置をしてからで有りませんと、御子の健康にも影響が有るやも知れませんぞ」
自分が生まれる前から仕えてくれている老執事で有るが故に、テオドールも老執事の言葉に頷かざるを得ない。
「判った。暫し待てば良いのであろう」
テオドールが答えると老執事は、深々と礼をする。
「旦那様、差し出がましい事を言い、申し訳ございませんでした」
「なんの、ミュンヒには世話になっておるからな」
「ありがとうございます」
主従の話が終わる頃に、産室の扉が開き、医師の一人が姿を現し、公爵に深々と礼をする。
「公爵様、母子共に御無事でございます」
「おお、それは目出度い、して男か女か?」
「はっ、御嫡男でございます。また、欠損等一切ございません」
「男か、男か、カタリーナよ良くやった」
「ただ今、全ての処理が終了致しましたので、ご対面を」
医師の言葉にテオドールは喜び勇んで産室へ入って行った。
産室に入ると、妻カタリーナが血色の良い赤ん坊を抱いて微笑んでいた。
「カタリーナ、よく頑張った」
カタリーナはにこやかで優雅な笑顔で答える。
「貴方、大神オーディンのお陰ですわ」
「そうだな、しかし、此が我が子か」
すやすやと眠る赤ん坊を見て、テオドールの顔を緩みっぱなしである。
「貴方、名前は何と?」
「ああ、考えておるぞ。偉大なるご先祖様のお名前を頂いて。“ヴェンデリン”“ヴェンデリン・フォン・ヤーン”(Wendelin Von Jahnn)だ良い名前だろう」
テオドールの笑顔にカタリーナも笑顔で返す。
「ええ、良い名前です。ヴェンデリン立派に育ってね」
母親の言葉に反応したのか、目を開けたヴェンデリンが笑ったように見えた。
この日から、銀河帝国に新たなる流れが始まったとはこの時点では誰も想像出来なかった。
帝国暦463年10月
■銀河帝国 帝都オーディン ヤーン公爵邸 ヴェンデリン・フォン・ヤーン
困った、非常に困った。何故こんな事に成ったのか?神の悪戯かはたまた悪魔の仕業か?本当にどうなって居るのやら。夢でもない、此が現実だとしたら、それ以前の記憶自体が私の妄想による産物なのか?
私の名前は、ヴェンデリン・フォン・ヤーン、 帝国暦458年 4月4日生まれの5歳だ。私は銀河帝国皇帝フリードリヒ4世の甥として生まれた。私には前世の記憶がある、自由惑星同盟の軍人として銀河帝国と戦い続け、カイザー・ラインハルトとの会談の途上で地球教徒により暗殺されたという記憶が……
しかし、今は帝国暦463年、宇宙暦に直せば772年だ私が死んだのが宇宙暦800年だから、実に28年も前の事になる、時間逆行などあり得ない事なので、やはり此は私の脳が作り出した妄想なのだろうか?
5歳になり新聞室への出入りや図書室で本を自由に読む事を許可された私は、私の記憶にある銀河帝国と自由惑星同盟と、私の居る世界を比べる為に部屋に籠もって調べ始めた。その結果、驚くべき事実を知る事に成った。
私の実家ヤーン公爵はルドルフ大帝が士官学校生の頃からの友人であり、配属後も共に歩み、時には殴り合いの喧嘩もしながら、ルドルフの皇帝への道を共に歩んできたそうだ。その為に、ルドルフ大帝が自らを“神聖不可侵成る銀河帝国皇帝”と言わせようとしたときには、“阿呆、神様じゃないんだから神聖不可侵は止めとけ”と持って居たワインをぶっかけたそうだ。それでルドルフ大帝も頭が冷えて、それは止めておこうと成ったらしい。
それ以来、ルドルフの議会の永久解散未遂事件や、劣悪遺伝子排除法の骨抜化など、ご先祖様は色々と大活躍し公爵に叙せられたそうだが、その時には相当揉めたらしい。
なんでもルドルフ大帝以下群臣の殆ど全てが、ご先祖様の公爵叙爵を支持したのにも係わらず、ご先祖様だけが、“貴族なんか面倒くさい公爵なんかいらねー!”と言い、駄々を捏ねたそうで、散々説得した挙げ句に、自分じゃなく息子なら良いと言ってヤーン公爵家が誕生したそうだ。
それだけで済まずに、ルドルフ大帝の娘とご先祖様の長男が結婚した為に、我が家は皇室の藩屏として代々仕えてきたらしい。
しかもだ、私の母親カタリーナは先代35代皇帝オトフリート5世の末娘である上に、父テオドールも先々々代33代皇帝オトフリート四世の孫にもあたる為もあり、非常に皇室との繋がりが深いのだ。
その為に、私も生まれながらにして、現皇帝フリードリヒ4世の娘、アマーリエ皇女、クリステーネ皇女の婿候補の一人と御せられているらしいのだが、5歳で婚約者ができるかもとは、前世では考えられない事だ。
帝国と叛徒を調べて判った事だが、私の記憶にある帝国と同盟とは違う所が多数有る事が判った。
第一に、銀河帝国が立憲君主制の政治形態を取っている事だ、此も先祖の仕業だが。
第二に、劣悪遺伝子排除法が非常に緩い形で公布されていた。此は精神異常者、性犯罪者などの権利を認めないと言う法で、私として此でも目くじらを立てる状態だが、記憶にある劣悪遺伝子排除法よりは幾分増しと言えよう。
第三に貴族の権利がそれほど認められていない点だ。記憶にある貴族は傲慢で平民を牛馬の如く扱っていたが、此処では、貴族の権利が厳しく管理され“貴族とは平民により食べさせて貰っている存在である。その為に率先して戦場に立つべし”と言うルドルフ大帝以来の訓辞が生きている為、貴族は率先して軍務に付き、最前戦へ向かう、その為に貴族の戦死率が平民に比べ大きいのが特徴だ。
更に、帝国では社会保障も充実し、平民と貴族との通婚すら許可され、毎年数組が挙式している。貴族も平民を見下す事が無く、“貴族と言えば親同然、臣民と言えば子も同然”と言い、慈しんで居る為、平民の叛乱もなく穏やかな社会と成っている。
その為なのか、この世界の銀河帝国総人口は2500億人を越えている。此も私の妄想?の人口の10倍という量であり数が違いすぎである。
又、議会は二院制で爵位のある貴族と実績のある帝国騎士、平民などで構成される貴族院と、立候補し選挙で選ばれた帝国騎士、平民などで構成される衆議院により運営されている。彼等は衆愚政治にならないように、ルドルフ大帝廟に誓いを立ててから登院する。そして汚職などの犯罪行為をした場合は、即日その地位を失うのだ。
この様な感じで、見てみると、私の妄想の記憶にある銀河帝国と、この銀河帝国は全然違う事が判った。序でと言っては何だが、同盟を調べてみると驚くべき事が判った。
叛乱軍は自由惑星同盟と名乗っておらず、“銀河人民惑星連邦”と名乗り、評議会議長ではなく、国家書記長が党の名において人民を統治するとなっていたが、此は共産主義じゃないのかと感じたが、色々調べていく間に疑念は確信に変わった。
政治については一党独裁で、銀河解放軍なる軍隊を所持し、銀河帝国に度々戦闘を仕掛けてきている。各惑星は省という単位で統治され、各地に政治犯を収容する強制収容所があるらしいが、詳しくは判らないそうだ。
何故、此ほどの平和的な政策を行ってきた銀河帝国から、同盟もとい連邦ができたのかだが、調べてみると驚くべき事が判った。事の始めは帝国暦164年、アルタイ星系の第七惑星に流刑されていたアーレ・ハイネセンにより4000万人の同士が集まり、ドライアイスの船で脱出し、“長征1万光年”と呼ばれる苦難の後、居住惑星を見つけ其処で国家建設を始めたそうだ。
その辺は、私の記憶と違わないのだが、アーレ・ハイネセンが流刑された原因が、記憶で共和主義者の子孫であるだったが、調べてみると、アーレ・ハイネセンはマルクス原理主義者でであり、仲間のグエン・キム・ホアと共に、資金調達の為の銀行強盗を始めとして、社会不安を増大させる為に数々のテロ行為を行ってきた人物で、100億人を殺した男として、逮捕後処刑される所を精神錯乱を演技し、それが真の事だと言う悪徳弁護士の主張で流刑になったそうだ。
結局その当時の帝国は劣悪遺伝子排除法が骨抜きになっていた関係で、アーレ・ハイネセン達を処刑できずに、流刑するしかなかったが、後にそれが徒と成ったようだ。
それ以来、遙か銀河の彼方で連邦は力を付け続け、第20代皇帝・フリードリヒ三世の時代には、イゼルローン回廊を通って、帝国辺境から“帝国の苛政に苦しむ人民を救済する”というスローガンを標榜し次々に臣民を拉致して行った。
その為、フリードリヒ3世の3男ヘルベルト大公が司令官となって討伐部隊が結成された。帝国軍の兵力は艦艇52,600隻/将兵4,408,000人だったが、連邦の巧みな罠にはまりダゴン星域で殲滅させられた。ヘルベルト大公は捕虜となり、人民の敵として逆さ磔の末、四肢をねじ切られ処刑された。
この敗戦で帝国は多数の艦艇、兵員を失い、しばらくの間連邦による臣民の拉致を防ぐ事が出来なく成った。この時期に拉致された臣民の総数は200億人とも言われ、現在に至るまでその行方はようとして知れない。
これ以来、帝国と連邦は不倶戴天の敵として戦い続けている。
此を見る限り、私の記憶にある世界は何らかの要因で私の脳裏に焼き付いたのかも知れない、しかし、私も貴族として生まれた以上は軍人の道を歩まねば成らないのだろう。脳裏に映る、ヤン・ウェンリーと言う人物が、実在するのかそれとも妄想の産物なのか、今の私には調べる術が無かった。
後書き
帝国と同盟が全然違う国家に。
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