銀色の魔法少女
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第四十一話 命
side 遼
「…………ん」
少し眩しい人工の光で、私は目を覚ます。
周りは見たことのない、基本青と白で統一された清潔そうな部屋だった。
(ああ、私やられちゃったんだ……)
唐突に、記憶が蘇る。
胸から生える刃。
そこから滴り落ちる、紅い血液。
「まあ、それはいいとして」
これを聞いたらクリムあたりが怒りそうだなぁと思いつつ、私はここはどこかと考える。
「まぁ、多分管理局に捕まっちゃったと見ていいよね」
というか十中八九そうだろう。
「さて、後はどうやって脱出するかについて――」
「あまり物騒なことを言わないでくれるかい?」
横の扉が開き、男の子が入ってくる。
「あなたは、クロノ?」
「そうだ、素顔では初めてになるのかな、戦場 遼」
クロノが遼の部屋に訪れてから数分後。
「遼ちゃん!?」
通常、一定の速度でしか開かないはずの自動ドアがものすごい速さで端に叩きつけられる。
クロノは話を止め、ただそれを見つめていた。
「すずか、ちゃん?」
本来次元航行船アースラにいるはずのない人物、月村すずかだった。
「遼ちゃん!!!!」
「え、みにゃぁ!?」
彼女は私の姿を確認するやいなや全力で彼女に抱きついた。
その衝撃はとても小学生のものとは思えず、今の私でなければ骨を何本か持っていかれるほどだった。
「な、なんで一般人がここに!?」
そして、ようやくクロノが現状を把握する。
「にゃはは……」「えっと、その……」
遅れて入ってきたなのはとフェイトが目をそらす。
「それは、私が説明しましょう」
フェイトの後に入ってきたフィリーネの話を略すとこうなる。
私が倒れた後、ショウを撃退したまではいいものの、私をどうするかが問題になった。
しばらくは胸の怪我もあることだから拘束ついでに治療することになったらしい。
フィリーネはこの時にユニゾンを解き、管理局と私についていろいろと話をしたらしい。
闇の書については私の許可なしでは発言できないとして黙秘。
そして一日が経って今さっきのこと、放課後に私が目覚めたとの連絡を受けて喜んだなのたちであったが、予想外の人間がそれを聞いていた。
もちろん、すずかである。
念話で話していたはずのなのはたちの会話を聞き取ったすずかは、全力でなのはたちに詰め寄った。(アリサは理解できずにおいてけぼり)
そして現在に至る。
「にゃはは……、あれは鬼としか言い様がなかったの……」
まあ仕方がない。
本気のすずかに勝てる人物なんてすずかのお姉さんしか私も知らないし。
「で、私はなんでここにいるかさっぱりなんだけど!」
そして、未だに状況を飲み込めず混乱するアリサ。
一応、それが普通の反応だと思う。
「ていうかさ遼、あんたなんか目の色とか髪の色とか変わってない?」
それを聞いた皆が、一斉に硬直する。
「髪の、色?」
私は辺りを探し、手鏡を見つけると、自分をうつす。
「ああ……」
髪の色が、全て黒に染まっていた。
side ALL
嫌がるすずかをアリサが無理やり納得させ、一度皆で話し合うことになった。
先程はこの場にいなかったリンディやアリシア、ユーノ、おまけに刃もいる。
「現在、遼の侵食率は80%以上と推測されるわ」
フィリーネはそう言うと空中に遼の体内写真を映し出す。
「骨、内蔵、血液、これらは全てもう別物と考えていいわ、不幸中の幸いだけ彼の一撃から心臓を守ったのもこれが原因ね」
それに「残っているのは筋肉と皮膚だけね」と付け加える。
確実に心臓を突き刺すつもりだったショウの刃は侵食されていた心臓に弾かれた、ということだった。
「アリシアさんの予想より侵食のスピードが早いわね……、原因は何かわかるかしら?」
リンディがアリシアにそう尋ねるが、彼女は首を横に振るだけだった。
「そうなると、しばらく遼さんには魔法を使わない方がいいかもしれないわね……」
そう言って考え込む皆。
その沈黙を破ったのはほかならぬ遼だった。
「たぶん、それ無駄」
「無駄、とはどういうことかしら?」
代表してリンディが尋ねる。
「侵食は絶対に、止まらない、多分、あと一、二週間もすれば、終わる」
その言葉に、全員が息を呑む。
その中で唯一、クロノが彼女を怒鳴りつける。
「君は! 今自分が何を言ったのかわかっているのか!?」
彼女の終わりとは、そのまま死ぬことを意味していたからだ。
「暴走、そして死ぬこと、でしょ?」
遼はまるでなんともないかのように死を受け入れる。
その異様さをフィリーネを除く全員が恐る。
「そんなことより、まだ聞い――」
「そんなこと!? そんなことって何!?」
遼の言葉をなのはが遮る。
「遼ちゃんはなんでそんなに平気なの! なんでもっと生きようとしないの! なんで! なんで…………」
ここから先は、泣き崩れて言葉にならなかった。
「なのは……」
そんな彼女をフェイトが慰める。
「遼さん、なのはさんの言うことは正しいわ、あなたは普通の女の子なのよ、これから先、まだまだ長い人生があるのに、なぜそれを諦めてしまうの?」
その、哀れみや悲しみを込めた言葉に、遼は一言、こう返した。
「私が生きていても、意味はないでしょ?」
それを聞いた全員が、自分の耳を疑った。
彼女は、なんと言った。
生きることに意味がない。
どう考えても、小学三年生の遼が導き出せる考えではなかった。
「おいてめえ!!」
これに反応したのは、刃だった。
彼は勢いよく立ち上がり、遼のもとへ行こうとするが、クロノとユーノに両腕を掴まれ仕方なくその場から怒鳴りつける。
「俺に生きろって言ったのはなんだったんだ! 嘘だったのか! そんな嘘に俺は半年以上悩まされたってのかよ!!」
そんな彼を見て、遼はため息をつく。
(しょうがない、かな)
そう言って彼女は、ある言葉を、彼に念話で送った。
「は、そんなの、……いや、まさか……」
彼はそう言うと大人しく椅子に座る。
「じゃあ、改めて聞くけど、他に隠していることある、よね?」
遼は刃が静かになったのを見て、皆にそう尋ねる。
しかし、それに誰も答えない。
仕方く、遼が続ける。
「一つはクリムが今どこにいるのか、まあ、これは大体想像がつくけど、問題はもう一つ」
遼は、皆に聞こえるように、最後だけ強く言った。
「ねえ、誰がショウって人を倒したの?」
後書き
……スランプ気味ですいませんorz
いろいろなアイデアがごっちゃまぜになって現在試行錯誤中です。
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