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ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、

作者:あちゃ
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第2話:ただいまです

(ビスタの港周辺)

た、助けて~!!
いきなりピンチです。
父さんが港の人と話している最中、『そこら辺で遊んでおいで』の言葉に素直に従い、イベントを進める為にフィールドに出た途端……

3匹の子ブタ……ではなく、3匹のスライムに襲われ逃げ出し中です。
最初はね、直ぐに父さんが助けてくれると信じ、戦う姿勢で挑んだんだよ……
でもね、俺の攻撃は当たらないし、奴等の攻撃は確実に当たって痛いし、戦うの怖いし……

俺はきっと凄い顔して逃げ回っているだろう……折角のイケメンなのに!
端から見たら100%情けない姿だろう……主人公なはずなのに!!
解ってるさ、そんな事は解ってるのさ!
でも怖いんだからしょうがないじゃんか!

森の中は逃げづらく、時折くる(モンスター)の攻撃を情けない跳躍で躱し避ける。
だって当たったら痛いし……痛いの嫌だし……兎も角怖いし……

何処をどう逃げたのか解らない……どっちを向いても木々が生い茂っている。
力の限り逃げ回った為、疲労が蓄積され足が縺れスッ転ぶ。
危うく顔面を地面に衝突させそうになったが、必至の動作で顔だけは守り抜いた俺……だから酷い転び方をして体中痛いです。

しかしながら敵を撒いた訳ではなく、絶体絶命の大ピンチ!
イヤ~!! 死にたくないよぉ~!!
顔だけは守ろうと身構える俺。すると突然、突風の如く現れる頼りになるパパスさん……俺のパパちゃんです。
一瞬でスライム3匹を倒しきると、振り向きざまのホイミで俺の傷を癒してくれる。心身共に生き返る感じがするね。

「アルス……もう少し剣術を頑張らないと、大きくなって大変な事になるぞ」
おいおい……もしかして最初から見てたのか?
それなのに今まで助けなかったのか? 俺まだ6歳だぞ……酷くネ?

スパルタって奴ですか?
もう諦めろよ……お前の息子は戦いが下手なんだよ。怖いんだよ……前世ではモンスターなんて居なかったからね。殺気を振りまいて襲ってくるモンスターなんて存在しなかったんだよ!
良いじゃんか王子様なんだから……頼りになる家臣をいっぱい付けて、身の安全を確保すれば良いじゃんか!

「ご、ごめんなさい……でも僕、モンスターを前にすると怖くて……」
剣術能力云々じゃないんだよ……
怖くて戦えないんだよ! だって前世じゃ喧嘩すらした事ないからね。

涙目で見上げる俺に溜息を吐き、「少しずつ頑張るしかないか……」と言って、サンタローズへの帰路につく父。諦めはしないのですか?
サンタローズまで真っ直ぐ行けば2.3時間なのに、俺に戦闘訓練をさせるから6時間もかかった帰路……
どうして諦めてくれないんだろうか?



(サンタローズ)

村に到着した時には疲労困憊いっぱいいっぱい……
これからビアンカとの甘々シーンが待っているのに、殆ど魂の抜け殻状態でイベントが進みます。
翌朝には何を言ったのか憶えて無い程です。『私は隣町のアルカパに住んでるビアンカ。貴方より2歳も年上なのよ。憶えてるかしら?』の遣り取りに、俺は何て答えたんだろう?

寝る子は育つと言いますが、寝過ぎるのは時間が勿体ない!
父さんもサンチョも気を遣ってくれたらしく、昼までグッスリ快眠魔神。
そりゃ幼い身体に、パパス鬼軍曹(国王だって!)のスパルタ強行軍は堪えたけど、朝になったら起こしてくれても良いじゃんか!
お陰でビアンカに昨晩のフォローを入れるのが遅くなった。

村の人々が俺に向けて挨拶をしてくるが、愛想笑いで適当に遣り過ごしラブリー・ビアンカが待つ宿屋へ猛ダッシュ!
カウンターに居る店主ににこやかに挨拶(コイツは無視出来ない)をし、ビアンカが泊まっている部屋を聞き出す。

「ビアンカちゃんとお母さんは、2階の奥の部屋だよ」
本来は客情報を口外しちゃダメなんだろうけど、相手(おれ)は子供だし知った仲だし、気にする事なく教えてくれた。
まぁ教えてくれなかったら、全部屋隈無く探すだけなんだけど……


「ビアンカぁ~!」
俺はビアンカ達が居る部屋をノックし戸が開くのと同時に甘えた声で彼女に抱き付いた。
幼い今ならばセクハラとは言われず合法的に抱き付けるだろうからね!
う~ん、柔らかくて良い匂い♥

「あらアルス……一人で遊びに来たのかい?」
「うん。昨日は疲れちゃっててビアンカとお話し出来なかったから……」
ビアンカママの質問に頬を赤くして答える俺。きっと愛おしく映ってるに違いない!

「うふふ、アルスは甘えん坊ね。そんなにお姉ちゃんの事が好きなの?」
キタキタキター! ビアンカ姉さんの年上アピールが!
彼女も一人っ子だから、弟がほしくて俺にこの態度をとるのだろう。

「うん! 僕ね……ビアンカの事が大好きなの♥ 大きくなったらね……ビアンカと結婚するのー♥」
可愛いだろ? 年下の男の子は可愛いだろぅ?
俺は君をお姉さんぶらせてあげる……だから生涯の伴侶として、よろしき頼むよビアンカちゃん! 一緒に子作り頑張ろうよビアンカちゃん!

「おやおや、良かったねぇビアンカ……可愛い弟が出来て。ところでアルス、パパスは……お父さんは今何してるんだい?」
ビアンカに抱き付き、柔らかさと香りを堪能していると、ビアンカママが父さんの事について質問してきた。
多分、薬師の事で父さんに頼み事をしたいのだろう。だが弟とか言うな、彼氏って言え!

「うん。お父さんはね、朝早くから何処かにお出かけしちゃったみたいだよ。何か用があるみたい……」
「そうかい……時間があれば洞窟に道具屋の主人を探しに行って貰いたかったんだけどねぇ……」
案の定……ビアンカパパのダンカンさんの風邪を治す、薬を調合する為に洞窟へ入った薬師の捜索依頼をしたいみたいだ。

「……ビアンカは、その道具屋のオジサンが居ないと困っちゃうの?」
俺はビアンカに抱き付きながら、間近で顔を見詰め問いかける。
可愛く優しく問いかける!

「うん……私のお父さんが病気でね、お薬がないと困っちゃうのよ」
よし、ビアンカから“私困っちゃ~う”発言ゲット!
これで俺が洞窟に入り、オッサンを救出してくれば好感度だだ上がり!
だが気を付けなければならない事が1つ……

「じゃぁ僕、お父さんを探してお願いしてくるね!」
6歳児の俺が自ら洞窟に入るなどと言ってはいけない!
100%『危険だからダメだよ!』と止められてしまうのがオチだろう。
ここは間接的に行動をアピールして、結局は全部解決してしまうのがベスト!

“お父さんを探してたら洞窟内でオッサンを見つけて、村まで連れて帰って来ちゃったの♡”とアピールすれば、ビアンカ胸キュン間違いなし!
「本当かい? それは助かるよ!」

ビアンカママの言葉を聞き、颯爽と宿屋を後にする俺……
彼女(ビアンカ)の心を射止める為に、多少の危険も顧みないラブハンターな俺って格好いい!
待ってろよビアンカ……俺は最高の夫になってやるゼ!



……意気揚々と出発したのだが、とても大事な事柄を忘れていたボクちゃんは、とってもお茶目さんだと思うね。
だって洞窟内にモンスターが居るって事を、すっかり忘れてたんだからね(笑)
目先の美少女の事で頭の中がいっぱいだったんだから、仕方ない事だと思うね俺は!



 
 

 
後書き
さぁ、激弱主人公アルス君の冒険がスタートしました。
スライム如きで泣きながら逃げ出す主人公ですが、一人でサンタローズの洞窟を制覇する事は出来るのでしょうか?
普段助けてくれるパパスが居ないのに、生き残る事は出来るのでしょうか?
この物語が続くよう、皆さんもアルス君を応援したやって下さいませ。 
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