問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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無双
「何を目的に手を組んでいるか?そんなモン決まってだろ。」
一輝の問いかけに対し、桶から妖怪が出てきて、答えた。
その妖怪は、最近ニュースにもなっていた妖怪、牛鬼だった。
「決まってる?俺にはあんたみたいな大妖怪がほかの妖怪、自分よりも弱い妖怪と手を組む意味がわかんないんだけど。」
「確かに、普段なら絶対に組まんだろうな。だが、今回は違う。」
「どう違うんだ?」
一輝は問いかける。
自分の中にある感情を必死に抑えながら、問いかける。
「今回は全員が同じ目的を持っていた。そして、このメンバーをまとめられるものがいた。」
「そいつは信用できるのか?」
「無論だ。あの方の目的は俺達とは違うが、過程に相違点はない。」
「なるほど。なら・・・お前達の目的は何だ?こんなメンバーを集めることが出来た、目的は。」
一輝が感情を抑えていた理由はこれだ。
この真実が知りたくて、感情を抑えていた。
「それこそ、考えるまでもない。それは・・・」
「我らの同類の、解放だ。」
「・・・」
一輝は何もいえないでいた。
確かに、一輝の一族は大量の妖怪をその身に封印している。
復活の出来る妖怪にとっては開放したいというものだろう。
「そのために、こうして集まった。普段は気にもしない弱いものも、いつ消しに来るか解らない強者も、この場では関係ない。その意識を持っているか、関係があるのはそれだけだ。」
「そうか。凄いんだな、お前達は。」
一輝はこの妖怪たちに尊敬の念を抱いていた。
同じ人間ですら協力していないことが多いのに、この妖怪たちは関係なくかかわっている。そのことに、尊敬の念を抱いた。
だが・・・
「それでも、俺はお前らを許せない。」
一輝は、水の刃を大量に放ち、その場にいる妖怪の九割を殺した。
「キ、キサマ・・・!」
「へえ、意外と残ったな。実力のあるものもそれなりに集めたのか。」
一輝は妖怪の魂に照らされながら、つぶやく。
いつもなら、一瞬打ち出すだけでも限界だった一輝だが、このとき、初めて細かい形を作り、それを操り続けていた。
別に頭痛がなかったわけではない。ちゃんといつも以上の頭痛はあった。
だが、それ以上に自分の中にあった感情によって気にもならない。
一輝は、静かに・・・静かに怒っていた。
「式神開放。“防”」
一輝は防の式神を四対召喚すると、それを神社の四隅に送り、
「結界陣、包囲。」
誰も逃げないように、結界を張った。
「さあ、かかってこいよ。全員俺が、叩き潰してやる。」
「なめるな、人間!」
「うるさい、ザコ。」
一輝はその頭上を飛び越えながら、細切れにした。
その勢いのまま、相手のど真ん中に着地し、水の日本刀を振り、切っていく。
「そもさ」
「うるさい。」
「信州」
「だまれ。」
「ぐふぐふ」
「キモい。」
「貴様の心は」
「読んでる暇はねえよ。」
どれも『蟹坊主』『猿神』『猩々』『狒狒』と、一流の陰陽師ですら苦戦する相手なのだが、一輝は全て、一刀で切り伏せていく。
無表情でやっていくから、恐ろしいことこの上ない。
「・・・キサマ、本当に陰陽師の卵か?」
「ああ。正真正銘、ただの卵だよ。」
最後に残った牛鬼は、唖然としていた。
卵だからと下に見ていたガキに仲間を全て殺され、封印されたことにただただ驚
いていた。
「将来有望ってことじゃないか?」
「そうかもしれんな。ならばその芽、我が摘んで・・・」
「もらわれてくれ。」
一輝は牛鬼も一刀で切り裂いた。
「・・・キサマ・・・名は・・・?」
牛鬼が最後の力を振り絞って問いかけてくる。
「檻の中にこれば、誰かが教えてくれるだろ。」
「我を倒した・・・キサマに、聞かなくては・・・意味が、ない。」
死んでしまえば楽になるのに、それを拒否してまでの質問に、一輝は生まれてはじめて、陰陽師の名乗りを上げた。
「・・・我、鬼道一輝。一族が歩みし鬼の道を、輝かせるものなり。」
「そうか・・・その名、しかと覚えたぞ。」
牛鬼はようやく息絶え、その体から一つの光の玉が、一輝の体へと移る。
「にしても・・・キャラが変わりすぎだろ。」
このタイミングでそれをいいますか。
《あんたもそう思ったでしょう?》
「さて・・・最後の仕上げに入るとしますか。」
一輝は虚空に対して水の刃を飛ばす。
それは、その場を通り過ぎることもなく、その一点でとまった。
「さっさと出てこいよ、霊獣さん。」
一輝は、この事態を作った張本人と、喧嘩する気なようだ。
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