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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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星屑の覚醒
  4 絶望の理由

 
前書き
今回から急展開!!
最初の方は前に他サイトで投稿していたのと、同じような展開ですが、後半は少し変わります。 

 
「...ウゥ...アァァ」

彩斗は意識を取り戻した。
凄まじい激痛が体を走り、身動きが取れない。
ただ開いた目に見えているのは天井だ。
真っ白な天井で全く見覚えのない場所だった。
何度も荒い呼吸を繰り返し、痛みに耐えながら体を起こす。

「...ここは...病院?」

ベッドで眠っていたことに気づく。
そして辺りを見渡した。

「サイトさん!!大丈夫ですか!?」
「アァァ!!ようやく目を覚ましたのね!!」
「!?...ハートレス」

部屋に入ってきたハートレスが嘆くように起き上がった彩斗に泣いているような声を上げながら寄ってきた。
メリーは最初から彩斗の手を握っていた。
全く状況が読めない。
だがハートレスがこのように心配している"ふり"をしている理由は理解できた。
その場に担任の教師がいたからだ。
ハートレスは一応、戸籍上では『沢城桜』という偽名で彩斗の偽名である『沢城アキ』の母親という位置づけにいた。

「おお!良かった!目を覚ましたか!!」

いつもの嫌がらせをする無能教師すらも芝居をしている。
狸の化かし合いだ。
だが徐々に状況を思い出していく。

「...ミヤ...ミヤは!?」

既に日は落ち、夜になっている。
先程まで学校にいたはずだった。
そう、夕方の4時頃だ。
始まったばかりの平和な日常に転機が訪れた。
いつものように授業が終わった後、話をするために公園に向かっていた。
しかし途中で不良たちに襲われた。

「...高垣さんは...あなたよりも酷い怪我でさっき手術をしたわ。手を尽くしたそうだけど、助かるかどうかは分からないって...」

まだ学校の敷地内だった。
いきなり後方から金属バットでミヤは頭を殴られた。
そしてそれに驚いている間に囲まれ、彩斗もろともリンチに遭ったのだ。
彩斗は必死に抵抗した。
必死にバットや鉄パイプを交わし続けた。
だが恐るべきものが待っていた。
反撃しようとした瞬間、拳銃を向けられた。

「...あいつらが...あいつらがやったんだ!!いきなりバットでミヤの頭を殴って...それに銃も持ってた!!殴り返そうとしたら銃を向けてきた...一体何がどうなって...」
「でも彼らは謹慎中にしてあるはずだぞ?証拠でも?」

教師はまるで不良をかばっているようだった。
だが確実に犯人はミヤが告発した不良たちだった。
彩斗は反撃はしたが、殺すことへの恐怖が拭い去れず、不意を打たれて気を失った。
馬乗りになって落ちていた鉄パイプで殴ろうとした。
だがどうしても手を下せずにいたところに仲間の不良から殴られた。
意識を失う寸前で110番通報をしたのを覚えている。
それからの記憶はなかった。

「確か...あそこには監視カメラがあったはず...そこにきっと、僕達が連中に襲われる姿が映ってるはずです!!」
「...分かった、ありがとう。お大事に」

教師はそれだけ言って病室を後にした。
だがその表情は何処かスッキリしていた。
不快感を覚える彩斗だが、引き止める隙など無かった。
そしてハートレスとメリーだけになる。

「災難だったわね?いきなり質問するけど、銃を向けられたのは本当?」
「ああ。確かだ...黒い自動拳銃。撃たれはしなかったけど、間違いない。あいつらは銃で僕を脅した」
「口径は?」
「そんなの分かるわけ無いだろ!!」

次から次へと出される質問に彩斗は大声で反論した。
銃の素人の子供に聞く質問ではない。

「ゴメン...でも大きさは10センチちょっと...多分13センチくらいだったと思う...」
「『ベレッタM92』ね。だとすれば...」
「どうかしたんですか?」

メリーは話に割って入った。
ハートレスは彩斗の被害というよりも、他のことを恐れているように見えた。
それはハートレスにしては珍しいことだ。

「この街にPMC(民間軍事企業)のValkyrie(ワルキューレ)という組織が入っているという情報が入った。それに最近、射殺事件が増えている。恐らくはValkyrieから銃を買った街の住人の仕業ね。それも大半はあなたを襲った中学生や高校生程度の連中でしょう」
「!?民間の軍事企業が子供に武器を売り渡すっていうのかい?」
「そんなことありえません!!そんなことをしていたら、すぐに足がつきます!!」
「やりかねないわ。Valkyrieは自分たちの武器を売るためなら何でもする。たとえ平和な国であっても人々が武器を買い求めるように戦争を起こし、ニーズを作る。それによって財政破綻やテロ国家と成り果てた国まであるくらいよ?」

彩斗は絶句した。
連中は自宅で謹慎処分だったはずなのに、外で再び暴れまわるようになったのは、武器を手にしたからだということは分かった。
今でさえ連中には激しい怒りが込み上げ、メリーがいなければ狂い、カーテンを引きちぎり、ガラス窓を割るところだ。
だがそのウラにウラ組織が絡み、一体誰を憎めばいいのかが分からない。
既に体中から力が抜けていた。
その様子を知ってか知らずかハートレスは立ち上がり、病室を出て行こうとする。
だが彩斗は引き止めた。

「あなたの傷は比較的軽い。3日もあれば退院できるそうよ。着替えも置いておく。でも...変な気は起こさないことね?」
「待って。ミヤは何処にいる?」
「集中治療室よ。でも見ない方がいい。きっとあなたは後悔する」

そう告げてハートレスは部屋を出て行った。
だが彩斗は構わなかった。
ミヤの元へ向かうべく、点滴を無理やり外し、ベッドから降りた。

「サイトさん!!ダメです!!まだ動いちゃ!!」
「いいんだ...」

彩斗はメリーの制止も聞かずに病室を飛び出す。
そして集中治療室を目指した。
体がふらつくものの、メリーの肩を借りながら歩き続ける。
だが待合室を通りかかった時、信じられない光景を目にする。
さっき自分の部屋を訪ねてきた担任の教師だ。
Arrowsを使って電話を掛けていた。
だが問題はその内容だった。

「ええ、体育館近くの監視カメラ映像を削除しておいてください。そこに証拠が映っているそうです」

「!?」

教師は唯一の証拠とも呼べる映像データを削除するように指示を出していた。

「その映像が無ければ、ウチの学校で生徒が殺人未遂の傷害事件を起こした証拠は無くなります。高垣と沢城には可哀相ですが、2人の犠牲で40人近い生徒たちが救われるんです。今は不良でもいつかはこれからの未来を担う子供達です。小さな犠牲ですよ」

教師は彩斗が聞いていることなど知らず大声で笑っていた。
最初から彩斗は不良たちに校外で変なトラブルを起こさないようなストレス発散用のサンドバッグ、そして学校のシステムを変えようとするミヤは邪魔者という扱いだったのだ。
そして今回の不祥事、もし外にバレれば学校の信頼はガタ落ちとなる。

「警察も私たちには手を出せません。警察に取り締まる気など無いのですから」

彩斗はその場に崩れた。
耳を疑うこともなかった。
いくら街が腐っていても警察は正しいものの味方だと信じていた。
だが学校からも警察からも裏切られ、ただ一方的に被害を主張しようとも妄言として処理され、ますます自分が蔑まれるという構図ができていた。

「サイトさん...あの先生、一発殴ってきますか?私行きます」
「...いいんだ。あいつを殴ったって何も解決しない...」

彩斗は立ち上がると、メリーの頭を撫で、再び歩き出す。
声が今にも泣きそうなくらい弱々しくなっていた。
そしてとうとう「ICU」と書かれた集中治療室へと辿り着いた。

「ミヤ...」

ガラス越しに頭には包帯、頬には生々しい傷、そして人工呼吸器で生かされているミヤが見えた。
まるで植物人間と言ってもいいくらいの状態だった。
あの明るい笑顔の欠片もない。
悲痛な痛みに耐え続け、歪んでしまっている。
自分のせいだと思った。
ミヤは自分を助けようとしたから傷ついたのだと。
だがそれに追い打ちをかけることが起こる。

「あなたが沢城くんですか?」
「...あなたは?」

彩斗には見当がついていた。
外見がミヤそっくりの女性から声を掛けられた。
母親だとすぐに分かった。
身長は160センチメートル以下で娘よりも小さく、自分と同じくらいの身長だった。
だが口から飛び出した言葉は彩斗を奈落の底に突き落とした。

「先生から伺いました。あなたが美弥をここまで追い込んだそうですね?あなたが厄介な連中に絡まれているのを美弥が哀れに思い助けようとした結果、こうなった。あなたがいたせいで」
「.....」

彩斗は激しい怒りが込み上げていた。
何となくこうなることは分かっていた。
教師が被害を加えた不良よりも自分を悪人に仕立てようとしていることくらい。
だが実際に目の当たりにしてみると、大分、ショックが大きかった。

「今後、娘には近づかないでください。それとこの件に関しては、訴訟を起こすつもりです」
「...実際に手を下した不良たちよりも...僕を責めるんですか?」
「ええ、あなたは彼らにやられたと言い張っているようですが、実際はあなたがやったのかもしれない。手の込んだ自作自演という可能性だってあるわけです」

この言葉で彩斗の中の何かが壊れた。
もう自分でも何をしているのか分からなかった。
勝手に足を一歩踏み出し、拳を固め、思いっきりミヤの母親の頬を殴りつけていた。

「!?キャァァァ!!」
「ふざけるな!!!...ミヤは言ってた...あなたに暴力を受けているって...あなたのことなんて大っ嫌いだって...彼女は自分のように暴力を受けている人間を助けようとしていた。僕を助けたせいで、ミヤがこうなったって言うなら、あなたのせいでもある...!」

彩斗はそう言ってメリーの手を引きながら自分の病室へと戻り、ベッドに倒れ込んだ。
メリーも正直、気が動転していた。
あそこまで怒りに支配された彩斗見たのは初めてだった。
彩斗はベッドに顔を押し付け、泣き始めた。

「...ミヤ...ゴメン...僕のせいだ...僕が...」
「サイトさんのせいじゃないですよ...もうこの街では誰も頼れません...私ももう分からない...何が正しいんですか?何を信じたらいいんですか?」

メリーは彩斗の横に倒れ込み、彩斗を抱きしめた。
思い知らされたのは自分の無力さとこの街での個人の意志の無力さ。
1人で騒いでも何も変わらない。
この街では国家権力も通用せず、司法は堕落し、正義の基準となるものが働かない。
正しい意見が認められずに蔑まれ、間違ったものが認められる。
涙が止まらなかった。
悔しすぎた。
激しい怒りと殺意が込み上げ、全身の骨が軋む。
体へのダメージから来る痛みではなく、心的なものだ。
心へのダメージは体をも傷つける。
自分が悩めば悩むほと、苦しめば苦しむほど体は悲鳴を上げた。
















午後10時。
メリーは用意された布団で床に寝ている中、面会の時間は終わっているというのに、彩斗の病室には来訪者が現れていた。
名前は三崎七海。
ミヤの親友で自分たちのクラスメイトの少女だった。
ウェーブのかかった赤みのある髪で、彩斗自身も見覚えがあった。
彼女が来るまで彩斗はベッドの中で苦しみ続けていた。
呼吸まで辛くなり、必死に自問自答を繰り返していた。
そしてちょうど答えを見つけた。
復讐だ。
ミヤや自分を苦しめてきた人間全てを殺す。
法が働かないなら自ら罰を与えるしかない。
仮に警察に任せようとも、同じことを何度も繰り返す。
実際にミヤが教師に訴えても、一時的な平和が訪れただけで、結局は正しいミヤがあのイカれた連中に殺されかかった。
今回、警察に捕まっても、きっと今度は彩斗が殺されるだけでは済まない。
メリーや他の人間にも危害が及ぶ。
中学1年ではせいぜい13歳、つまり刑事責任は問われない。
本来は悪を裁く武器として機能しなければならない法が、足枷となり連中を甘やかす
その連鎖を断ち切るには殺害以外の選択肢はない。
だが自分にはその勇気がなく、殺害どころか暴力にも恐怖を抱いていた。
それに悩んでいた時の来客だった。

「ごめんなさい!!私のせいで...ミヤとあなたが...」

七海はいきなり謝った。
彩斗にとってはワケが分からなかった。
犯行を実行した不良たちが謝るなら分かる。
だが謝ったのは全く関係のない人間だった。

「私...脅されて、あなた達が放課後にあの公園に一緒に行くことを喋った...」
「...そうかい」

彩斗は生返事だった。
そんなことはどうでもよかった。
最終的に物事は結果で扱われる社会で報われない努力は無駄だった。
だが更なる怒りが込み上げた。

「言い訳するつもりはない...でも暗い工場でナイフと銃を突きつけられて無理やり...怖かった...」

連中は七海にミヤと自分の情報を吐かせるために、恐怖の力を使った。
言わなければ殺されるという恐怖。
それは普通の人間ならば、屈する暗黒の力だった。

「もういいよ。帰ってくれ」

彩斗は無気力にそう返した。
自分は恐怖を克服するための方法を考えねばならない。
もはや強迫観念に取り付かれたように復讐のことしか考えられなくなっていた。
だが七海は去り際に彩斗に手紙を渡した。
彩斗は力が入っていない手でそれを受け取る。

「さっき男の人が沢城くんに渡してくれって」
「......」

彩斗は黙り込み、七海は泣きながら病室を後にした。
黒い封筒に入った宛先も送り主も明記されていない不気味な手紙だった。
開くとそこには彩斗にとっては天の救いにも思えることが陳列されていた。
彩斗は自分が復讐に駆られるあまり空っぽになっていることに気づいていなかった。
ただ機械のように入院着を脱ぎ、ハートレスの持ってきたジーパンとTシャツ、そしてパーカーを着こむ。
そしてトランサーとBlackberryの電源を落とすと、メリーを起こさぬように病室を抜け出した。

 
 

 
後書き
次話から、徐々に前に投稿していた時と違い、新たな要素が増えます!
だらだらした部分を削り、スピーディーに進みつつも深みのあるように考えた要素です!
この話は虫も殺せないような少年がヒーローになるまでの道筋を描くつもりだったので、前に投稿していた時に大幅にカットどころか断片も見せなかった部分をいれます! 
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