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僕のお母さんは冥界の女王さまです。

作者:LAW
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拝啓義母様。私はルカ君の味方です。

 
前書き
 のほほんしてます。
 正直時系列無視になりそうです
 ちょっとシリアスあります。 

 
 今日のひかりはいつもと違いました。
 いつもの少女のような天真爛漫な雰囲気でもなく。
 先日のような気持ちが悪いニヤニヤクネクネとした行動もしていません。
 私は現在、自分の部屋で座布団に座りお茶を啜っているのですが
 ひかりは床に正座して真剣な目差しで私を見つめています。

「お姉ちゃん・・・」

 その雰囲気は何かを決心したような雰囲気で私は自然と住まいを正して妹の言葉を待ちます。

「おねえちゃん・・・」

 しかし、それは次の瞬間には霧散し、目頭に涙を浮かべるひかり。
 それは正に姉にすがり付く妹。突然泣き出した彼女は私に向かって。

「お料理の作り方を教えてください!」

 三つ指を付いて深く頭を下げました。








「ピクニックですか?」

 ある日の夕方。僕が入院している病院に遊びにきてくれたひかりさんは唐突にそう言った。
 お見舞いの品として持ってきてくれた桃の缶詰を彼女に食べさせてもらいながら首を傾げる僕の耳に楽しそうな声が入ってくる。

「うん。今度のお休みの日に一緒にピクニックでもいきませんか?」

「それはいいですね。ルカ、ひかりがせっかく誘ってくれてるのですから行ってきてはいかがですか?」

「なに言ってるんですかナタさん達も一緒ですよ?」

 ひかりさんの言葉に僕の頬が弛む。

「ひ、ひかり。神々である私達が一緒ではあまり気が休まらないのでは?」

 戸惑い気味のナタの声。けどひかりさんはそれを気にする素振りも見せない。

「私達だけピクニックしてナタさん達だけのけ者なんてさみしいじゃないですか」
(それにパスポート持ちの神様で緊張する方が無理な話しだし)


 後半の言葉に苦笑しつつも僕は未だに渋っているナタを落とす為、ひかりさんに耳打ちする。
 そして両手を取り合い、顔を近づけ、ナタに向かって。

「「一緒にピクニック行こうお姉ちゃん。ダメ?」」

 涙目で哀願した。

「わ、分かりました! 私達も一緒に行きます! ネメ達には私から言っておきますから」

「ありがとうナタ!」

「ありがとうございます!」

 一緒に手を取り合ってはしゃぐ僕たち。ナタは苦笑しながらも“それではいろいろと準備をしなければいけませんね”とどこか嬉しそうに言っている。

「それでは私は先生に話してきますね」

「あ、私も行きます!」

 そう言って病室を出ていった二人を見送った後に僕はベッドに横になる。そして少しだけ眠気がきたのでそれに身を任せて静かに眠りについた。








「ありがとうございます」

 
 医務局から出てきたナタさんを私は笑顔で出迎える。表情から見るにどうやらお出かけの許可は出たようだ。

「ひかり。ルカは基本的に食べてはいけないモノはないそうです」

「そうですか。だったら美味しいモノたくさん食べられますね!」

「ですが油っこいものは控えるようにとのことなので唐揚げ等は少な目がいいかと」

「女性が多いので油モノは必然的に少なくなりますけどね」

「油の影響を受けるのはルカとひかりだけですけどね」

「・・・え?」

 私はギギギとナタさんの方に首を向ける。効果音は例えるなら錆び付いた工場の稼働音。
 視線の先にはニヤリと笑う女神様。

「私達にはもともと太ったり、痩せたりといった概念はありませんから」

「う、ウソ・・・信じてたに」

 まるで昼ドラに出てくる夫の不倫を突き付けられた妻のように崩れ落ちた私。よよよと泣きいりナタさんの服にすがり付く。

「なんでそんなことをいうんですか! ナタさんは私の気持ちを考えたことあるの!?」

「事実は事実ですから」

 周りの視線が集まってきました。ナタさんの表情がひきつったものになりつつあります。

「私のお腹には貴方の子供がーーー」

「なんの話しですか!?」

「冗談です。でも女の子としては羨ましいですよ」

 昼ドラを終えた私は小さく舌を出しながら頭を掻き、ナタさんは苦笑しながら溜め息を付いた後に再びルカ君のいる病室に向かって歩き始める。

「けど、考えようによっては私はまだまだ可能性があるってことですよね姉が姉ですし」

「・・・ひかり。妾の何処を見て言っているか申してみよ」

 ナタ御姉様が神様になりかけたので私は慌てて話題を変えます。
 タナトス様の名誉の為に何処を見ていたのかは伏せさせていただきます。
 ただエリス様は山脈。ネメシス様は小高い丘。タナトス様は平原とだけお伝えしておきましょう。

「ルカ君の病気って原因が分からないんですよね?」

「正確には普通の医学では分からないと言った方がいいでしょう。ルカの病気の起因は高過ぎる呪力にあります」

 ルカ・セフィーネ。神に見初められ、神殺しとなった奇運の少年。
 彼は生まれつき光を写さない瞳と動かない脚、それに加え身体も弱かった。それだけなら病院に入院し続ける必要もなかったのだが彼は一般人にはない無いものを持っていた。
 それは異常なまでの呪力。
 一般的な魔術師、巫女の数百倍、一流魔術師の数十倍の呪力を持っていた。
 修練すれば歴史に名を残す魔術師になっただろう。
 しかし、その呪力は彼にとって身体を蝕む毒でしかなかった。

「現在のルカは母より譲り受けた権能で神殺しとしての力と呪力を押さえつけています。また、彼は神殺しとして生きる事、母の力を権力として誇示したり、戦いの道具として使う事を嫌っているのです」

 神殺しとしてなら五体満足の健康体となり、高い呪力も己のモノとできる。
 しかし、代わりに戦いの中に身を置き、力を行使する。大好きだった母の力を戦いの力としてしまう。それが嫌で彼は力を封じている。そんな彼の気持ちを汲み三人の女神も彼と共に力を封じ共に生きている。
 死を司る女神はそう語った。

「ひかりもこの国の巫女という立場で狭苦しい思いをさせていますがどうか彼の気持ちを汲んであげてください。ルカと対等な者であってください」

 そう言って目の前の女神は頭を下げた。
 神に頭を下げられたのはこれで二度目。彼女は自分が守る弟分であるルカ君の事がホントに大好きだというのが感じられた。

「大丈夫です。私はルカ君を裏切ったりしません。これまでも、これからもです」

 にっこりと笑う私に、頭を上げたナタさんはやさしく微笑んで頭を撫でてくれた。
 その姿は神様というより優しいお姉さんという雰囲気でした。








 
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