銀色の魔法少女
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第三十七話 悪化
side 刃
会議が終わり、俺は椅子に頭を抱えてに座り込む。
俺は悩んでいた。
もう既にA'sも始まり、なのはたちがカートリッジシステムを手に入れる寸前のところまできていた。
だが、あの日、あいつに言われた意味がわからない。
俺が生きていない? どういうことだ。
あの後問いただそうとしても、うまくかわされて、結局今に至る。
「そんなところでどうしたんだ?」
顔を上げる。
そこには同じ転生者のショウがいた。
ちなみにこいつにはハーレム願望はない。
ただ、この世界を楽しみたいだけの変わり者だ。
「……いつものことだよ」
「ああ、あの子の話ね」
こいつにだけは俺が抱えている悩みを話している。
「僕は今ここにこうして生きているのに、生きていないだなんて不思議な話だね」
「ああ、だからさっぱりわからん」
「……じゃあ、逆に考えてみようか」
逆?
「なんでその子はそんなことを言ったのだろうってこと、心当たり無い?」
「心当たりねぇ、たしかあの時はハーレム達成を邪魔されて、俺とあいつが違うって言われて……、わからんって聞いたらヒントにそれを言われた」
「………………なるほど」
「え、わかったのか!」
俺が何ヶ月かけてもわからんかったことをこいつはどうやって!?
「これは、うん、刃が自分で気づかなきゃ意味ない問題だな」
「はぁ? なんだそれ」
さっぱり意味がわからん。
「じゃあ、僕は用事を思い出したから、先にリーゼさんたちの所に行くね」
「ああ、あの猫の相手頑張れよ」
そう言って俺に背を向け、歩き出すショウ。
?
あれ、リーゼたちがいる部屋ってそっちだったっけ?
side ショウ
「そういうことだったんだ」
刃の話を聞いて、僕の中の彼女の像が鮮明に組み立てられていく。
彼女がどうして不可解な行動をとるのか、刃にはまだ分からないだろう。
まあ、それはいい。
それよりいいことが分かった。
早速今日にでも彼女を殺す準備をしなくちゃ。
side 女神
モニターを切り、私は叫ぶ
「ま・た・か・! (゚Д゚)」
なんで最近の転生者は殺し合いが好きなんだ_| ̄|○
なんで仲良くするっていう選択肢がないの(*゚□ ゚*)、馬鹿なの死ぬの!(゚д゚)
「まったく(´~`)、これじゃあまともなのは遼と刃……、(;゚Д゚)!」
私は思い出した。
遼に何の特典を渡したのか。
もし、もしも。
他の転生者全員がこうだったとしたら?
全員が全員憎みあい、殺し合うように仕組まれたとしたら?
そういう風に暗示をかけられたとしたら?
「まさか( ;゚Д゚)、じゃあこの殺し合いをしかけた張本人は――」
「正解」
私はすぐに後ろを振り向く。
「ペルセフォネ……、じゃあやっぱりこれを始めた首謀者は(;・∀・)」
彼女は首を一度だけ縦に振って、答える。
「そう、私」
きっかけは些細なことだった。
遼は私があげた三つ目の特典のおかげで私たちの暗示は効かない。
でも、それがない刃まで正気なのはおかしい。
ということは最初から暗示なんてかかっていなかったことになる。
確実に生き残るために。
「……どうしてこんなことをしたの?(ー_ー?)」
少しの沈黙があった後、彼女はこう言った。
「復讐」
side 遼
これは少し前から見え始めた夢。
目を閉じると浮かび上がってくる、過去の記憶。
周りは人だったものであふれる荒野。
私の右手は血にまみれ、左腕は既にない。
私の意志は既になく、目に入ったもの全てを壊すだけ。
道具はなく、その腕は肉を裂き、その脚は骨を砕く。
そこに、黒いなにが現れる。
敵の姿はおぼろげだけど、それが人だったのは分かる。
まるで影のようなそれを私は殺していく。
小さいのも大きいのも、細いのも太いのも、硬そうなのも柔らかそうなもの、関係なく殺していく。
彼らが何かを落とす。
それは円筒形で、まるで薬莢のよう。
最近知った。
これはカートリッジ、魔力を込めた弾丸。
だけどそれを使っても、私を殺せない。
彼らの陽炎のように揺らめく武器ごと、体をえぐる。
それでも、彼らは襲ってくる。
何を言っているのかはわからない。
それを聞き取る耳も、既にない。
そして、数え切れない人を殺し、誰もいなくなった丘で、私は一人、立ち尽くす。
?
右腕が上がらない。
見ると黒く変色し、本当に私の腕なのかも怪しい。
見れば、私の体のほとんどが黒く変色していた。
認識した瞬間、脚が崩れる。
粉々の砂に変わり、体中にヒビがはいる。
その隙間から、何かが抜け出る感覚がある。
おそらく、私の中にいたブリュンヒルデが次の主を探すため、転生したのだろう。
次は、ちゃんと扱える人だといいな…………。
そう思ったのを最後に、私は崩れて消えた。
「…………………」
相変わらず目覚めは最悪。
あの夢を見るようになってからはいい目覚めなんて全くない。
顔を洗おうと、鏡の前に立つ。
私が目にしたのは、黒く変色した私の瞳だった。
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