IS 〈インフィニット・ストラトス〉×トリコ 食を探求する夏の毒!
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女神と炎覇龍 父の役目
一夏と優奈は一緒のベットで睡眠を取っていると、一夏が身体を起こした。時計を見ると既に時刻は午前2時となっていた。一夏はベットから降りて身支度をする、着ている服を脱いで何時も狩などで使用している服に着替え始めた。赤いと蒼い色の混合された美しい服だ。腕や足には赤と蒼が渦を巻くようなラインを描いており、胸には赤と蒼がぶつかり合っている部分がある。グルメ界に存在する特殊な素材で編まれた服は高い耐火性と保温機能、耐久力などを持っており炎を自在に使い戦いをする一夏にとっては最高の服なのだ。
「むぅうん・・・ふにゃぁ・・・」
一夏が着替え終えて眠そうに身体を起こす。が、またベットに倒れこんでしまう。一夏は呆れて優奈の肩に手を置いて揺らす。
「起きて優奈姉」
「眠いよ~」
「起きろ」
「ねむよ~・・・眠い~・・・」
ねむよ~ってなんだよって思いつつも一夏は腕を組んでどうしたものかと考える。このまま放置して行くのも良いがそれでは後々面倒な事になるから却下。数秒ほど考えた結果
「おはようのキス」
一夏はいい考えだと思って、眠っている優奈を起こして自分と向きあう様にしてから、優奈の唇にキスをした。優奈が起きていた時とは違い、優奈の唇を覆いかぶさる様なキスだった。優奈はキスされた瞬間に目を開けたのか、キスされている状況を直ぐに認識した。そして大きく目を見開いた。一夏は起きたのを確認するとキスをやめて優奈から離れてクスリっと笑う。
「おはよう優奈姉。良く寝てたね、可愛い寝顔だったよ♪」
「え、え?今、私どうなってたの・・・?」
優奈はあまりのショックで何が起きたのか全く理解出来ていないようだ。一夏はからかうように優奈の額にデコピンを決める。優奈はふにゃ!っという可愛らしい声を上げながらベットから起き上がる。
「えっと・・・私、キス・・・されたんだよね・・・?」
「そっ、俺がキスをしたの。一応言っておくけど俺のファーストキスだったんだから料金は頂くぜ?」
「ええええ!?お金取るの!!?」
「勿論、しかも初めて口づけ、優奈姉に奉げたんだからかなりお高いぜ?」
「ううう・・・嬉しいのにすんごい負けた気がするぅぅ・・・」
なんだか歓喜していたのに今はもう落胆している優奈、嬉しいような悲しいような微妙な心境のようだ。
「さぁ行こうぜフランスのデュノア社の夫人とやらをぶっ潰しにな」
「そうね、行きましょう」
優奈は何時も通りのスーツのまま一夏と共に執務室から出て日本支部のVIP専用滑走路へと出た。滑走には今の所飛行機は一つも無かった、が、その時、空の雲が一瞬で細切れにされた。が空には何も見えない、まるで見えない何か雲を切り刻んだようだ。一夏はにやりと微笑んで、口を開いた。
「ワインを片手に騒ごうぜ」
「キィルルルルルルルルルッ!!!」
一夏の言葉に呼応するように耳をずんざく空を割るような鋭く高い声が上がる。それと同時に一夏と優奈の前に砂埃が上がり始める。姿が見る事は出来ない、透明で周囲の景色に同化しているように見える。が、少しずつ同化が消えて行き、声の主の姿が見え始めてきた。
大きく広げられている巨大な翼、赤に薄いオレンジが掛かっているような色合いをしており翼の先端は赤黒い色をしている、美しくも禍々しい。鋭く見ているだけで切り刻まれたような不思議な感覚が身体を貫く爪、大地に突き刺せば深々と全てを穿つ様な嘴、右目が地底で唸りを上げる紅蓮のマグマの如く赤く、左目は深き深海の激しく蠢く海流のように蒼い。胸には翼を広げた鳥のような紋章のような宝石が付いている。そして何よりも巨大、翼を広げれば旅客機を軽々と越す大きさだ。
一夏の相棒の一柱、エンペリアファルラのファルスザー、愛称はファルザー。以前改造を終えた専用機を一夏に届けたハーキュル、グートと親である。
ファヴォルはゆっくりと地面を割らないように慎重に地面に降り立って一夏に甘えるように顔を一夏に押し付けて声を出して一夏に甘える
「キルルルルルルッ♪」
「よしよし、良い子にしてたかファルザー?」
「キルルルル、キィルルルル!」
「そっかそっか、んじゃ今度めいいっぱい遊んでやるからな。それじゃ背中に乗せてくれ」
「キル!」
ファルザーは一夏と優奈に背中を向けてから身体を沈めて背中に乗りやすいようにしてくれる。一夏と優奈はジャンプをして伏せていても10メートルは下らないファルザーの背中に飛び乗った。ファルザーは二人が飛び乗ったのを確認すると、軽く吼えてから翼を大きく羽ばたかせて地面から離れて大空へと飛び立った。そして、次第にファルザーの姿は周囲の景色に同化して行き、遂には姿が見えなった。その間にもファルザーは加速して行き、一瞬でマッハ7まで加速して日本からフランスへ向かっていく。ファルザーは最短ルートでフランスへ向かっているため、フランスまでの距離は9583.47km。そしてファルザーはマッハ7で飛行している為、1時間半さえあれば余裕で到着する。
そして1時間半後、ファルザーはゆっくりと飛行しながらデュノア社上空を飛行していた。因みにファルザーの身体は可視光線や赤外線を含む電磁波を遮断する特殊な構造をしており、ほぼ100%のステルス能力を持っている。その為、レーダーでもファルザーを捉える事は不可能。肉眼でしか確認は出来ないが、周囲の風景と同化もしているので視認は困難を極める。
「さてこれからデュノア社に殴りこみでいいのかな?」
「ええ、でも警備員とか居るから全員ノッキングして黙らせないとね。さてと・・・」
ファルザーの真下にはデュノア社の巨大なビルが建っている。無駄に明るく着飾ったビル、フランスは今18時37分、夜だ。夜だから電気を使うのは当たり前だが無駄な電気を使っている。無駄遣いも良い所だ。優奈が懐からあるボタンを取り出してそのボタンを押すと、ビルの電気が一斉に電気が消えた。それと同時に二人はファルザーから飛び降りた、上空数百メートルからの自由落下だが、二人はまるで重力を無視しているかのように地面に日々を入れる事無く着地を決めた。そしてそのままビルの玄関口から堂々と入っていった。中ではいきなり停電が起きてパニックとなっていた。が、人が随分と少ない、受付の女性も含めてロビーには7人ほどしか居ない。
「人少ないな」
「第3世代のIS開発が上手く行ってなくて業績も良くないって報告書にも書いてあったしね~。でも好都合、今のうちに社長室に行こう」
「了解」
一夏と優奈は事前に手に入れていた情報を元に階段を使って社長室がある最上階まで一気に駆け上げる。最上階に到達すると、二人はこっそりと会談から通路に繋がる扉を開けて周囲の状況を探っていた。社長の部屋があるという事もあって警備員が数十人が居る。
「警備員が27人か、それじゃ行きますかノッキング!」
「そうね、ライフルはいいかな。音も大きいし素手でいいか」
二人は音を立てずに通路に出て、気配を消して警備員の後ろから接近していく。そして一夏と優奈は警備員の間を縫うように移動しながら警備員の身体の一部に指を食い込ませていく。そして警備員全てにそれを行うと、警備員はいきなりバタバタと倒れ始めていき、地面に倒れこんだ。
二人が警備員に行ったのはノッキングと呼ばれる技術。細い針の棒など様々な道具を使う事で、生物の小脳にある運動を司る神経組織に刺激を与えて一時的に麻痺状態にする。ノッキングの箇所は猛獣の種類や個体で異なり、ノッキングガンを使う、素手で行う、髪で行うなど方法も人によって様々。
二人は警備員を全員黙らせると社長室の扉に身体を密着させて、軽く扉に刺激を与えると、扉は音も無く塵のように消え去っていった。扉が消えると二人は気配を消したまま音も立てないように足を進めて中へ入る。
「全くなんでいきなり停電するのよ!!」
「・・・」
社長室の中では立ったままギャアギャアと騒ぐ女と少し顔がやつれている男が椅子に座っていた。どうやら座っているのは社長のレオンハルト・デュノア、騒いでいる女は問題の夫人、ノイエル・デュノアだろう。
「全く一体どうなってるのよ!!?」
「少しは落ち着いたらどうだ・・・。常に優雅でいる事が君の心情だろう・・・」
「・・・そうだったわね、やはり貴方は私の優秀なパートナーですわね」
「(パートナーという名の奴隷だろう私は。彼女は私を金蔓と地位を保つ為の道具としか思っていない・・・。やはりエレーナだけなのか・・・私を心から愛してくれた女性は・・・。シャルロット・・・私を恨んでいるか・・・?)」
一夏は独自に身に付けた相手の思考や気配を読む、見聞色の覇気を使ってレオンハルトの思考を読み取った。レオンハルトは既に今の妻に見切りを付けており、シャルル、シャルロットの母であるエレーナの事を考えている。そして、心からシャルロットに謝りたいと考えていた。
一夏はその考えを読み取って決めた。あの夫人を地獄に落とすと
「優奈姉、社長の方は全く悪くない。あの夫人に脅させてやってたみたいだ。あの社長は出来る事ならシャルルに土下座でもして謝りたいみたい」
「ふぅん・・・それじゃ、捕縛しちゃおうか夫人」
その瞬間、優奈と一夏は動いた。優奈は後ろからノッキングするための道具のノッキングライフルを首に押しつけ、一夏は左手でブレイズランスの準備をしながら手刀を前から首に押し付けた。
「なっ!?あ、貴方達一体!!?」
「黙らないと永遠に喋れなくなるぞ。いいから黙れ阿婆擦れ」
「だ、だれがぁ!!?」
警告したのにも拘らず黙らないので後ろから優奈がノッキングを行って夫人を強制的に黙らせた。それと同時に停電が直ったのか電気がついた。電気がつくとレオンハルトが一夏と優奈の姿を視認して驚く。
「き、君達は!?一体何処から!?」
「ドアからですけど?」
「ああそうか・・・ってそうじゃない!!」
中々ノリがいい社長だ。
「ああ自己紹介?俺は国際グルメ機構『IGONEO』第一研究開発所所長の龍神 一夏、以後お見知り置きを」
「私は国際グルメ機構『IGONEO』会長補佐役、龍神 優奈、一夏の姉ですわ」
「I、IGO!?」
レオンハルトは驚いたようだが、直ぐに落ち着き始めた。心当たりでもあるのだろうか
「・・・ノイエルがやった違法食材の所持がバレたという事か」
「良くお分かりで」
「私も知ったのは昨日だがね」
そう、夫人がやったのは違法とされている麻薬食材の所持と密売だ。その証拠が出たので確保せよっという指令が上から出たのだ。
「取り合えずこの阿婆擦れの婆は連れて行くけど良いですか社長さん」
「ああ構わない、そいつは勝手に私の大切な部下が男という理由だけでクビにするキチガイだ。とても優秀だとしてもだ、そんな奴がいても利益になるどころか損しかない。だが・・・わが社はもう駄目かもしれんがな・・・」
レオンハルトは自虐的な笑みを浮かべて窓の外を見た。
「なら、IGOで開発した第3世代のデータ差し上げましょうか?」
「え?IGOはそんな物を作っているのか?」
「ええ、コアがあるから一応研究してみたら、俺の専用機の改造の副産物で第3世代のデータが出来たんだ」
そのデータがあればデュノア社は間違いなく生き返る。レオンハルトは喉から手が出るほど欲しかったが、それを断った
「何故です?」
「たった一人の娘を幸せに出来ずに、自分の欲の為にそのデータを貰い受けるなんて事、私には出来ないよ・・・。人間の屑の私には・・・ノイエルがシャルロットに非人道的な事をしているのにも拘らず私はそれを無視し続けてきた、そんな私にそこまでして貰う価値は無いよ。その代わりといっては何だが、頼みは聞いてくれないか?」
「頼み?」
「このビルの地下に私の妻、嫌、シャルロットの母親のエレーナがいる。彼女はノイエルの策略でギリギリ生きている状態なんだ。彼女をIGOの設備で治療して、シャルロットにあわせて欲しいだ。そして、二人を平和に暮らさせて欲しいんだ・・・それが私の願いだ」
レオンハルトは床に座って、頭を床にくっつけるほど頭を上げる土下座をして一夏と優奈に頼み込む。
「・・・シャルロットから逃げるって事か」
「・・・どの道、私を許してなどくれまい・・・。エレーナは素晴らしい女性だ、彼女が居ればシャルロットは立派に育つ。私は要らないんだ」
その言葉に一夏は怒りの感じたのか、レオンハルトを胸倉を掴みあげてそのまま殴った。レオンハルトは壁に叩きつけられ、自分を殴った一夏を凝視する。
「い、一夏君・・・」
「確かにな、子供なんて母親が居れば育つわな。でもな、父親が居なくて立派な子供が育つとは思えないな。母親が子供を育てるのなら、誰が子供が良い事をした時にめいいっぱい褒めてやるんだ?悪い事をした時に誰がしっかり叱ってやるんだ?」
「一夏・・・」
一夏には両親が居なかった、小さい時は千冬が親代わりだった。そして今では自分の修行をつけてくれた一龍が親父代わりだった。だから知っている、子供には父親と母親が必要なんだと
「あんたがシャルロットに悪い事をしたなら心から謝罪してやれよ、そのまま姿を消すよりシャルロットは喜ぶぜ」
「・・・そうだろうか・・・」
「ああ、俺はそう思うぜ」
「そうか・・・」
レオンハルトは立ち上がって一夏と優奈の前に立って頭を下げて頼んだ。
「・・・先程のお願いを訂正させて下さい。私とエレーナ、シャルロットが3人揃って暮らせるように手伝いをして頂けませんでしょうか?」
「「勿論さ」」
この後、ノイエル・デュノアは逮捕され、刑務所送りとなった。デュノア社はIGONEOの傘下に入り、一夏より譲り受けた第3世代を元に息を吹き返した。
シャルロットの母親のエレーナはIGONEOの医療施設へと移送させてそこで十分な治療を受ける事となった。レオンハルトはシャルロットに謝罪する為に近々来日する事を決めた。
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