ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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守るべきものは・・・
シオンは手に力を込め、地面を蹴った。
クラディールとの距離がどんどん短くなる。
10メートル、5メートル、1メートル、そして・・・。
「ハアアアッ!」
「ウアアアッ!」
互いの武器が火花を散らしてぶつかり合う。しかし、結果は見えていた。
「前よりは重くなったな。だが」
「グアッ!」
シオンはクラディールの体ごと吹き飛ばすとそのまま接近、攻撃を繰り返す。
「まだまだ、足りないな」
「クッ!小僧ォ!」
シオンは両手剣に切り替えた。再び刃がぶつかり合う。
そんな時にアスナとエリーシャが合流した。
「キリト君!」
「アスナ!それにエリーシャまで!」
アスナはキリトを回復結晶でヒールし、クラディールと戦闘中のシオンを見る。
「アスナ!キリト君のことは任せる!私はシオン君を!」
「分かった!」
エリーシャはシオンの横に並んび、アスナはキリトを少し離れたところに移動させてその姿を見守った。
「随分と早かったな・・・」
「私の速さをなめないでよね」
「なめちゃいねーよ。ただ、援軍を呼びに行ったにしては予定よりはやかったって思っただけだよ」
「援軍が来るまでもう少しだけかかるから、それまで・・・」
「いや、その必要はねぇよ」
「えっ?」
その言葉にエリーシャは首をかしげた、シオンは剣を再び強く握る。
「もう、終わらせてやる」
「ハッ!それは倒してから言えよな!」
クラディールは再び突進してくる。シオンは一つ息を吐く。
「いくぞ、エリー!」
「うん!」
シオンが先に突っ込み、そのすぐあとにエリーシャが走り出した。シオンがクラディールの剣を弾きスイッチすると今度はエリーシャの攻撃がクラディールを襲う。クラディールが防御をしても、エリーシャはそのスピードを遥かに上回っていた。
「わ、解った!わかったよ!俺が悪かった!」
クラディールは膝をつき、両手を上げて喚いた。
「も、もうギルドは辞める!あんたらの前には二度と現れねぇよ!」
「無駄な命乞いだな。それで許されると思っているのか・・・」
シオンは剣を掲げると、クラディールは再び悲鳴をあげた。
「ひぃぃぃっ!死にたくねぇーー!!!」
次の瞬間、エリーシャが二人の間に立ちふさがった。
「やめてあげてシオン君!」
シオンはその姿を見てエリーシャを冷たい目で見た。
「どういうつもりだ、エリー・・・」
「何も殺すことないじゃない!牢獄に送ればそれで・・・」
「アアアア甘ぇーーーんだよプリンセス様よオオオ!!!」
シオンがエリーシャに意識が向いているのを見計らってクラディールはエリーシャの首元に隠し持っていた短剣の刃を当てる。
「エリーシャちゃん!」
「ヒヒヒッ!さあ、姫様を返して欲しければ剣を捨てろ!」
シオンはその姿を見て、ため息混じりで剣を遠くに投げた。
「悪かった・・・」
「ハッ!今頃謝っても返すわけねぇだろーが!」
「お前じゃねーよクラディール。俺はエリーに謝ってんだよ」
「えっ・・・?」
「今まで、俺はお前にしたことが正しかったのかずっと分からなかった。でも、やっと分かったよ。ツバキが言っていたこと、そして俺のしたことがツバキの約束を破っていたことを」
そのとき、シオンの目には一滴の涙が流れていた。そしてシオンは右腕を掲げた。
「本当は一緒にいるべきだったな・・・」
「シオン君・・・」
「スキルオーダー《フィクション・ワールド》!」
そう告げると周りはシオン、クラディール、エリーだけになった。
「な、何だこれは!」
「《フィクション・ワールド》、これは名前の通り仮想世界を作り出すオーダーだ。そして、このスキルは俺とお前、どちらかが倒されるまで解けない」
「何だと!」
「さあ、これで終わりにしよう」
シオンは剣を構える。クラディールは表情をまた、不敵な笑みを浮かべた顔に戻った。
「てめぇ、忘れてねーよなぁ。こっちには人質がいるのがよぉ」
「もちろん忘れてねーよ。だから、俺が殺す」
「ほほう、言ってくれるじゃねーか」
そう言うと、クラディールはシオンに迫ってきた。
「じゃあ、殺ってみな」
「ああ、そうさせてもらう!」
そう言ってシオンはエリーシャの胸に剣を突き刺した。それからまもなくしてエリーシャはエフェクトとなって散っていった。
クラディールはその光景に驚愕した。
「これで満足か?」
「そんな、バカな・・・」
「あばよ、クラディール。元気でな・・・」
そう言って、シオンはクラディールを切りつけた。
「グフッ!このッ・・・」
「最後に教えてやる、どうして俺がエリーを殺すことを迷わなかったか。それは・・・」
シオンは人差し指で下をチョイチョイと指差すと、
「ここが《フィクション・ワールド》だからだよ」
「《仮想》か・・・。へっ、この、大嘘つき野郎が・・・」
クラディールは最後にそう言うと、ガラス片となって消え、それと同時にシオンが構築した仮想世界も崩れ、シオンはその場に倒れ込んだ。
『タイムオーバーです』
「ギリギリ、だな・・・」
周りからエリーシャたちが集まってくるのが見えたがシオンは静かに意識を落とした。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
目を覚ますとそこは真っ白な空間だった。
「また来ちまったか・・・」
「やあ、またあったね」
俺が周りを見渡すとアルモニーがすぐ横に座っていた。
「おおっ!いたのか!」
「ここは君の心の中だってこと忘れてるでしょ?」
アルモニーは呆れた目で俺を見た。
「そんなことより何の用だよ?」
「ああ、君は本当に約束を守るんだなーって言いたくて」
「はあ?」
「“仲間を守る”ってあれ」
「ああ・・・。ってかあれ、約束だったのか?」
「ああ、私の個人的な約束だけどね。さて」
アルモニーは立ち上がると、伸びをして俺の方を向いた。
「君には何だか温かい“何か”を今は感じるよ」
「今は?」
「以前はどこかこの空間に違和感があったからね」
「ほう、それが無くなったと・・・」
「まあね・・・」
「そうか、そんじゃあそろそろ行くよ」
「ああ、また会おう」
俺は前と同じようにあの扉から出て行った。残されたアルモニーは満足そうに微笑んでいた。
「君に託そう・・・。私の力を。そして、この世界の未来を・・・」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「・・・くん!・・・オン君!」
「んっ・・・あ、ああっ・・・」
シオンが目を覚ますと目の前にはエリーシャの顔があった。
「シオン君!」
「エリー・・・ここは?」
「さっきの谷から少し離れたところ。シオン君あれからずっと動かなくって、もう一生目を覚まさないんじゃないかと思って・・・」
エリーシャは大粒の涙を流しながら言った。
「そうか・・・タイムオーバーして、そのまま動けなくなったんだっけ・・・」
エリーの涙がシオンの頬に落ちてくるその涙をシオンはただただ優しく受けとめた。
「エリー、本当はお前がああなることを俺は少なからず予感していたんだ」
ああなること、即ちエリーシャがクラディールに人質にとられることであった。
「えっ?」
「お前には“生きる覚悟"、“死ぬ覚悟"は教えたつもりでも、“殺す覚悟"は教えてなったからな。あの時お前は迷うんじゃないかって俺は思ったよ。お前は優しいから」
その言葉にエリーシャは頬を少し赤くした。
「俺がお前を血盟騎士団に入れさせたのはそれもあるんだ。人を殺させないために、お前を死なせないために。でも、それは間違いだったんだよな・・・」
「シオン君・・・そんなことないよ」
「えっ?」
シオンがエリーシャの方を向くとエリーシャはシオンの唇を自らの唇で塞いだ。
「ッ!!!」
シオンは少し驚きながらも心が溶かされてゆくのを感じた。唇を離したエリーシャは赤くした頬を気にせず言った。
「だって私、あなたが好きだから頑張れたんだよ。初めは身勝手だって思ったけど冷静考えて分かったんだ。私を守るために自分が悪役になってまで守ろうとしたんだって」
「エリー・・・」
「改めて言います、シオン」
その時、シオンはかつて自分を愛してくれた一人のプレーヤーとエリーシャが重なったように見えた。
「あなたが、シオンが・・・この世で一番、大大だーい好きです!」
その言葉にシオンは思った。自分は守るべきものを自ら手放していたのだと。そして、彼女の笑顔を見て確信した。
シオンは苦笑しながら。
「まったく、こんな形で告白したのは俺が知ってる中では二人目だよ」
「でも、私はファーストキスだよ。リアルでもしたことないんだから」
「責任とってくれってか?」
「そ、そういう意味じゃ・・・」
エリーシャが赤くなるのを眺めた後、シオンは空を見た。
『ツバキ・・・。もし、聞こえてるなら聞いてくれ。今度こそ、ホントの意味で約束を果たすよ・・・』
シオンはエリーシャに笑顔を見せた。それはかつて存在していた、最高で最強のギルドにいた頃の眩しいくらいの笑顔だった。
「エリー・・・」
その言葉に対してエリーシャは何かを心待ちにしていた。
「はい」
シオンは彼女が望む言葉を言った。
「俺と結婚してください」
「・・・はい!」
その時の彼女の笑顔はこの世界で、他の誰よりも美しかった・・・。
後書き
はい!というわけで告白ENDで締めさせていただきました今回!
本当なら次の話かもっと先にしようかと思いましたが、このあたりが頃合かなと思って出させていただきました。みんな大好き(?)アルモニーも久々にできました。
これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします!
(*´∇`)ノシ ではでは~。
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