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銀色の魔法少女

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第三十話 変化

side アリサ

 ハロー。

 私、アリサ・バニングス。

 聖祥大附属小学校の三年生。

 両親は日米に関連企業を持つ大会社の経営者。

 学業は優秀な優等生!

 友達はなのはとすずか、それに遼。

 この四人でいつも仲良くやっているわ。

 けど日曜日が終わり、またいつもの日々が始まると思っていた私の目に飛び込んできたのは急激に変化した親友の姿だった。


「なにやってんのよ、すずか……」

 時間は昼、いつも通り屋上でお昼。

 けど、すずかの遼に対する甘えっぷりが半端じゃない!

 授業以外の休み時間はずっと遼の側から離れないし、現に今だって!

「え、何が?」

 そう言うすずかだけど、隣にいるなのはも驚いている。

「なんでそんな新婚さんみたいに遼に食べさせようとしてるのってことよ!」

 すずかはおハシで自分のおかずを掴んで、遼に持っていこうとしている体勢で止まっている。

「遼も遼よ! ちょっとはおかしいと思わないの!」

「…………もう慣れた」

 目をそらして遼は言う。

 一体日曜日に何があったの!?




side 刃

「なん、だと…………」

 俺は信じられないものを見ていた。

(すずかが、俺のすずかが!)

 あの顔、あの瞳、間違いない!

 あいつは恋をしている。

 俺は地面を叩く。

(なぜだ!? どこで間違えた!)

 分からない。先週までは普通だったのに、今日いきなりああなっていた。

 いや、それ以前に!

(どういうことだ、あいつからは気配がなかった、だから放置してたのに転生者だったのか!)

 こんな展開は原作にはない。

 となればあそこにいる女、戦場 遼は転生者ということになる。

 だけど、どうしても納得できないことがある。

(女が女に恋してどうするんだ! 男と女の恋こそが王道だろうに!)

『論点がずれてます、主』

 相棒がささやく。

『おま! なんで俺の考えてることがわかった!?』

『いつも主と一緒にいれば、表情でだいたいわかります』

 我ながら、恐ろしい相棒だ。

『話を戻しますが、彼女は間違いなく転生者です、ただ、記憶を失っていますが』

『はぁ!? 記憶無しって転生の意味無い、ってかなんで知ってる!?』

『少し前に、主が気絶している間に解体されそうにナリマシテ』

 そう言ってガタガタ震えるベイオット。

 一体何があったのやら。

『とりあえず、放課後あいつを問いただす!』

『やめておいたほうがいいと思いますが』

『いや! 俺の計画を邪魔する奴は! 一人たりとも容赦しない!』

 懐からため息が聞こえた気がしたが、俺は気にしない。

 偽騎士とのシュミレーションで強くなった俺には、敵なんていない。





 そう思っていた時期もありました。




side 遼

 放課後、私は屋上に来ていた。

「…………帰っていい?」

 目の前に倒れているのはいつもの人。

 名前は剣だったかな? よく覚えてない。

 ここまでのあらすじを簡単に言うと。


 呼び出される→何か言われる(よく聞いてない)→急にデバイスを展開して襲いかかってくる

 →かなり遅かったので、神速を使うまでもなく、飛花落葉で沈めてみる

 →現在。


 うん、まったくわからない。

(いや、私が聞いてないのも悪いけど、あの人の話ってだいたい意味不明だし)

「……………………」

 へんじがない、ただのしかばねのようだ。

 只の屍には用はないので、すぐに帰ろうと踵を返す。けど、

「…………えぇ」

 足を掴まれて動けなくなり、別の声が聞こえる。

『どうやら主がまともに呼吸できないようなので、私が代りに話します』

「……て早くお願い」

『初めに、なぜあなたは主の邪魔をするのですか? あなたがいなければすずか嬢は主のものだったの――』

 私は最後まで聞かなかった。

 掴まれている足を上げ、そのままコイツの頭の上に落とす。

「くげぇぶ!」

 奇妙な音が、辺に響く。

「本気で言ってるなら二、三回生まれ変わってから出直してきなさい」

 若干、頭蓋骨が凹んだかもしれないが、気にしない。これでも手加減してる。

『では次ですが、どうして正体を隠すのです? そのまま伝えたらよろしいのに、
 これは私の意見ですが、そうすればなのは嬢とフェイト嬢の好感度は鰻登り』

「いやよ、そんなことのためにやってるわけじゃないもの」

 それにクリムのことは話せない。あと恥ずかしい。

『そうですか、では最後に』

「お前は一体何なんだ!」

 顔を急に上げ、私を見上げる。

 のせていた足が急にあがり、私はバランスを崩しそうになった。

目的(ハーレム願望)もないのにすずかをおとし、やっと追いつけるようになったらまた更に速くなってるし、それに好感度上げをそんなこと! お前は何がしたいんだ!」

 そう言われ、私は確信する。

 最初から感じていた微妙な違和感。

 レイも、この前のあいつも、同じような感じだった。

「ああ、そういうこと」

 そして、なんで私に記憶がないのかもわかった。

 なるほど、確かにそれなら納得がいく。

(しかし、我ながら思い切ったことをしたなぁ)

 クスクスと笑う私を刃が見つめる。

「な、なんだよ」

「いや、私とあなたの違いに気がついただけ」

「違い? そんなのいくらでも――」

「違う、もっと根本的なこと」

 頭をひねるが、彼にはわからない。

 おそらく、彼が自分を見つめ直さない限り、理解できないだろう。

「じゃあ、ヒントを一つ」

 そう言って、私はしゃがんで彼と同じ目線に降りて、告げる。



  「『あなたは生きていない』、この意味が分かれば少しはマシになると思うよ」




「はぁ? それはどういう――」

 私は最後まで聞かないで、この場を去る。

(流石にすずかを待たせすぎた、怒ってないといいけど)

 そう思い、私は急いで階段を下りていった。 
 

 
後書き
次回、A'sに突入。 
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