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IS-最強の不良少女-

作者:炎狼
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生徒会

 
前書き
初生徒会です
ではどうぞー 

 
 二組に一夏の幼馴染であり、中国の代表候補生でもある凰鈴音が転入した日の放課後、響は生徒会室の前にやってきていた。その顔はあまり笑っているとはいえない、響は深いため息をつくと、生徒会室の扉をノックした。

「どうぞー」

 中から聞こえた声に、響はまたため息をついたものの、渋々といった様子で扉を開けた。

「いらっしゃーい、待ってたわよー響ちゃん」

 きっちりと並べられた机の一番奥に椅子に座っている楯無が見える、彼女は心底嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 その手前にいるのは、眼鏡をかけた三年生の生徒と、頭を机に預け寝息をたてている本音だった。そんな本音に響は思わず苦笑してしまいそうになるが、それをこらえ楯無に聞いた。

「何の用か聞かせてもらえるか?会長さんよ」

「まぁまぁ、そう急がないでその辺に座りなさいな、それにこの子の紹介もしないとだしね。虚ちゃん、自己紹介してあげて」

 楯無の声に虚と呼ばれた三年生は椅子から立ち上がると、微笑を浮かべ自己紹介を始める。

「はじめまして、鳴雨響さん。私の名前は布仏虚、妹がいつもお世話になってるわね」

「どーも、布仏ってことはそこで寝てる本音のお姉さんってことでいいわけか」

「ええ、貴女の話は本音からいろいろ聞いているわ。とても面白い子だってね」

 厳しそうな外見とは裏腹に、虚の声はとても優しげのあるものだった。話し終えると虚は真正面で寝ている本音を軽めの拳骨で起こすと、生徒会室の奥に消えていった。二人の姿が消えると、響は楯無に問うた。

「会長さん合わせても三人か……、結構少ないんだな」

「まぁね、でも三人だけでも仕事はできるし十分よ」

 なおも笑顔を絶やすずに返す楯無に、響が肩をすくめていると、奥のほうから人数分のティーカップを高級そうなトレーにのせて運んできた虚と、同じようにトレーにケーキをのせた本音がやってきた。ただ本音の方は、虚とは違いふらふらと危なっかしい様子だったが。

「本題は紅茶でも飲みながら話しましょう、響ちゃん」

「へいへい」

 楯無の提案に響は素直に頷くと、紅茶とケーキが配られるのを待つことにした。

 全員に配り終えられ、楯無は紅茶を一口飲むと先ほどの微笑から一転神妙な面持ちになり、語り始めた。ただ残念なことに、その前で本音がケーキにがっついているので、そこまでの緊張感が感じられない。

「響ちゃん、亡国機業(ファントムタスク)って聞いたことある?」

「亡国機業?……知らないな、どっかの有名な企業か?」

「それだけならどれだけ可愛いことか……、亡国機業はね、ISがでてきたはるか昔から常に世界の闇の舞台に確実に登場してきた組織よ」

「ようはテロ組織ってわけか?」

 響の問いに楯無は黙って頷く。

「それはいいけどさ、何で私にそんなことを教える? 機密事項なんだろ?」

「響ちゃんが生徒会の役員だからよ、一般生徒にこんなことは言わないわ」

「ふーん、まぁどうでもいいけど。それでその亡国機業がどうかしたのか?」

 だるそうに頭を掻きながら響は聞く、すると部屋のカーテンが引かれ部屋が暗くなる。暗くなった部屋の中楯無の背後に巨大な空間モニタが表示される。

 そこに表示されていたのは多くの画像だった、だがただの画像ではない、そこに表示されている画像の中には建造物であっただろう物が見る影もないほどに破壊されている。ところどころには火災による残り火や、煙も上がっている。

 さらに中には体の各部位が欠損している人間の死体や、人間だったのだろうがもはや原型をとどめていない肉塊のようなものまであり、常人であれば目を背けたくなる光景が広がっていた。

 だが響はそれから目を背ける事はしなかった、その目はその光景を見に焼き付けるように睨んでいた。

「これが、亡国機業がやっていることよ。以前までは裏で密かに活動することが多かったけど、ここ最近になってこういった大々的な行動にも出るようになったの。各国のIS関連の研究施設を襲撃しては、研究データ、及び優れた研究員の数名を攫って行く」

「邪魔をするものは容赦なく叩き潰すってわけか」

 静かに楯無は頷くとさらに話を続けた。

「彼ら亡国機業がどれだけの組織なのか、またその存在理由もまったく不明なの。大体動く時は常に一人みたいだしね」

 言うと楯無は虚に視線を送り、モニタを操作させる。モニタに映し出されたのは今度は画像ではなく映像だった。その映像にはISに乗った者が次々と施設を破壊していっている光景が映し出されていたものの、途中でカメラが破壊されたのか、映像が強制的に遮断された。

「なるほどね、確かに一人しか出てなかったな」

 見終わった響は腕を組みながら背もたれに背を預ける。

「じゃあ今までの話を統合すると、会長さんが言いたいのは私に亡国機業と戦ってもらいたいわけか?」

「そういうことになるわね、でも無理にとは言わないわよ。怖いのであれば引いてくれてもかまわないし――」

 言いかけたところで響がくつくつと笑い始めた、その様子にその場にいた三人が怪訝そうな顔をするが、響は笑うことをやめはしなかった。

「響ちゃん?」

 楯無が声をかけると響は笑いを止め、その顔を不適に歪め言い放った。

「いいぜ、戦ってやるよその亡国機業とな。IS学園(ここ)に来てから暇でしょうがなかったし、いい暇つぶしになりそうだ」

「暇つぶしって……これは命をかけるかもしれないのにそれでもいいの?」

「ハンッ、それぐらいじゃねぇと面白みもねぇ。それにこれはアンタが誘ったことだろ会長さんよ」

 強気な笑みを浮かべ、楯無に返す響の顔には絶対の自信が満ちていた。そんな彼女に楯無は若干の恐怖を抱きながらも笑みを浮かべた。

「いいわ、そこまでの覚悟があるのなら……貴女には戦ってもらうわ」

「ああ、よろしく頼むな会長さん」

「ええ、よろしく。でも仲間になるんだから名前で呼んでくれたら嬉しいわね」

 すると響は髪をかきあげると楯無に視線を向けた言い放った。

「そうだな、じゃあよろしく頼む楯無」

 すぐに名前を呼ばれるとは思っていなかったのか、楯無は一瞬キョトンとするがすぐに平静に戻ると、

「よろしくね響ちゃん。……じゃあ今後の方針について話しましょうか」

 言うと楯無は指を鳴らす。すると引かれていたカーテンが戻り、室内に眩い光が差込み一瞬目がくらむ。楯無は立ち上がると、おもむろに脇においてあったホワイトボードを引っ張りそこに何かを書き始めた。

 書かれた字を見てみると、そこには、

『対亡国機業・今後の方針』

 と綺麗な文字で書かれていた。ただ、題名がまんまだったが。

「あれ使う意味あったのか?」

「んー、会長って結構気分で入るタイプだからねー」

 本音に耳打ちすると頭を机に預けた状態で答えてきた。そんなことをしていると、楯無が振り返り手を広げて言い放つ。

「今後の方針としては、現在の状況だと後手に回るしかないわ。私達はまだ亡国機業の本拠地もわかってないわけだし、いつ仕掛けてくるかもわからないわ。だからあちら側から来てくれるのを待つしかないわ」

「だけど、そううまく仕掛けてくるかねー」

「来るわ絶対にね、だってこっちには織斑君がいるじゃない」

 響は納得したように頷いた。確かに一夏がいれば仕掛けてくる確立は高いだろう、なんといっても一夏は男でISが使える唯一の存在だ。なおかつあの一夏の白式という機体も、響のISを作った束が調整したものらしい。それを奪いに来ると思うのは妥当ということだ。

「でもまだ仕掛けては来ないでしょうね、来るとすれば夏休みが終わってからぐらいじゃないかしら」

「なんでわかる?」

「前準備が必要でしょう、確実に織斑君とあのISを奪取するためなら相当念入りに準備をしてくるはずよ」

 ホワイトボードに図や文字を書き入れながら楯無は説明する。

「当面は襲撃されることはないってことか……、つまらねーの」

「まぁまぁ、響ちゃんもまだISに完全になれたわけじゃないんだから、来た時にちゃんと迎え撃てるようにしておこうじゃない」

 毒づく響を楯無がなだめると、響も渋々ではあるが了承する。ふいに楯無が響に聞いた。

「響ちゃんさ、その中指にはめてる指輪。篠ノ之博士からもらったISだっけ?」

「ああ、そうだな。殆ど押し付けられた様なもんだけど、なかなか気に入ってるぜ、でもなんでそんなこと?」

「別にたいしたことじゃないから気にしないで。……それじゃあ今日はもう解散にしようかしらね、そろそろいい時間だし」

 時計を見やると五時半近くになっていた。

「んじゃ、おつかれさんでしたー」

 響が立ち上がったところで、楯無が声をかけた。

「響ちゃん、生徒会室には基本毎日誰かいるから、いつでも来ていいからねー。ただ一つだけ守ってほしいのは水曜日は絶対集合だから来てね」

 その声に響は振り返ることはせず、手を振って返事をし退室していった。

 響が退室してすぐ後、虚が楯無に問う。

「随分と危なっかしい子だけれど、大丈夫ですかお嬢様?」

「あん、もうお嬢様はやめてってばー。……確かに危なっかしくはあるけれど、あの子は絶対に強い戦力になることは間違いないわよ。それにあの自身に満ちた目、今までに相当な修羅場をくぐって来てのでしょうね」

「まぁお嬢さまが言うのであればそうなのでしょう。では響さんの過去も調べても?」

「後でアイアンクローされそうな気もするけど……いいわ、調べてだけど絶対に知られちゃダメだからね」

 虚はそれを聞くと静かに頷いた。

 楯無の心の中には響に対する期待と、若干の不安が入り混じっていた。だがその顔は楽しむように微笑を浮かべていた。



 生徒会室から退室した響は、さっさと寮に戻った。そして以前束に邪魔された実家への連絡を取った。

 数回のコールの後応答があった、その声は響の妹の渉のものだった。

『もしもし? 姉さん?』

「おー、渉久しぶり」

 久々の妹の声に響は多少声を高くして答えてしまった。

『一ヶ月ぶりくらいだけどそっちにはIS学園にはなれた?』

「一ヶ月もいてなれないことはねーよ」

『姉さんのことだから、どうせボッチなのかなーって思ってね』

 くすくすという笑い声が聞こえ、響はそれに反論する。

「うっせ、それよりそっちでなんか変なこととかおきてないか?」

『変なこと?んー……、特にないかな。あ、でも――』

「なんだ!?」

 響は少しだけ焦った、なぜこんなことを聞いたかといえば先日の束との一件だ。あの時束は夜天月を受け取れば、響のランクのことを公表しないといっていたが、響はどうしても束が信用できずにいた。

 ……あのクソ兎耳女何するかわかったもんじゃねぇからな。

 内心で毒づいていると、

『――姉さんの舎弟の子が来たよ、それでいないって言ったら帰ってきたら伝えてくださいってさ』

 緊張していた分しょーもない返答に響は思わず座っていたベッドから落っこちてしまった。

「んだよまったく……緊張させやがって」

『え? 何か言った?』

「なんでもねーよ、そんでユウリはなんだって?」

 響は自分の舎弟である、華霧悠璃(かぎりゆうり)の伝言について渉に聞いた。すると渉は悠璃の声真似をしながら。

『えっとね、他のチームの奴らが響さんに喧嘩売ってきてます、だって』

「喧嘩ぁ?あー……まぁいいや、それはこっちから連絡しとくから。あ、そーだ母さんいる?」

『いるよー。お母さーん姉さんから電話だよー』

 渉が母を呼ぶ声が聞こえると、その奥のほうから柔和な声が聞こえた。

『もしもし響ちゃん?久しぶりねー元気にしてたー?』

 とても優しげな声が携帯から伝わってくる。この人物こそ響と渉の実母鳴雨紫音(なきさめしおん)だ。現在ではこのようにとても柔和な感じだが、響と同じぐらいの時は伝説的な不良だったらしく、地元でもそれは語り告がれている。

 ただ不良といってもむやみやたらに人や物を傷つけることはしないことを心情としていたらしい。その心情は娘の響にしっかりと受け継がれている。

 不良界からは高校卒業と共に足を洗い、カタギに戻ったらしい。

「ああ、元気だよ。そっちも元気そうで何よりだ」

『よかったわー、私響ちゃんに会えなくなってさびしかったんだからー。久々に声が聞けて嬉しいわー』

「そろそろ娘離れしてくれよ母さん……」

『いーや、私はずーっと二人から離れないー』

 自分の母親に多少溜息をもらしながらも、響は嬉しそうだ。

『夏休みには帰ってこられるの?』

「ああ、夏休みにはね。ま、そのときまでは辛抱してくれよ母さん」

『はいはーい、その間は渉ちゃんを愛でるから大丈夫よー』

 電話越しに渉の抗議の声が聞こえる、おそらく紫音にもみくちゃにされているのだろう。

 その後も他愛のない話をしばらくすると、響は携帯を閉じた。




 そして夕食、今日はセシリアが響をいつもより早めに夕食に誘った。本音はというと未だに生徒会室なのか、はたまたどこかで油をうっているのか知らないが、まだ帰ってきていなかった。

 二人とも夕食を話しながら食し、すぐに食べ終わってしまった。そして一息ついていると、セシリアが響に切り出した、

「ひ、ひ、響さん!?こ、これからわたくしの部屋に来てもらえませんこと?」

「別にいいけど……スゲー汗だぞ?大丈夫かセシリア」

「だ、大丈夫ですわ。お気になさらないでくださいな」

 多少の疑問を抱きながらも、響はセシリアについていくことにした。

 一方セシリアの方はと言うと、

 ……や、やりましたわ!響さんを招くことに成功しましたわ!これでまた一歩――!

 響から見えないところで小さくガッツポーズを取っていた。



「さぁどうぞお入りになってくださいまし」

 セシリアは自らの部屋の扉を開けると、響を招きいれた。

「お邪魔しますよっと、んで何のようだんったんだ?」

「え、えと。その、お茶をご一緒したいと思いまして……」

 おずおずと言った様子で上目使いをしながら言うセシリアに対し、響は小さく笑うと快く了承した。

「そんなことくらいならいつだって付き合ってやるよ、セシリア」

 響の了承にセシリアはぱぁっと表情を明るくし、いそいそと紅茶を入れる準備を始めた。

 その後二人は、セシリアのルームメイトが帰ってくるまで紅茶を飲みながら談笑した。話を終えたセシリアはホクホク顔で響を送り出した。




 セシリアの部屋から自分の部屋に戻る途中、響が廊下の角を曲がったところで一人の生徒とぶつかった。

「わっ!?」

「おっと、大丈夫か?……ってお前、凰じゃねぇか」

 ぶつかってきたのは鈴音だった、だがその目は少しだけ潤んでいた。

「お前……泣いてんのか?」

「な、泣いてないわよ!ただ目にごみが入っただけ!」

 響の問いに鈴音は強気に答えると、目に溜まっていた涙をぬぐった。

「ならいいけどよ、んじゃあな」

 響はそれだけ告げると、部屋に戻るため進もうとするがそこで鈴音が響の名を呼んだ。

「響!」

「あん?なんだよ」

 響が振り返ると、鈴音は少しの間俯くと、

「……ごめん、やっぱなんでもないわ。じゃあね!」

 それだけ告げると、鈴音は足早にそこから去っていった。響はそれを見てただただ首を傾げるしかなかった。

「なんだったんだ?アイツ」

 疑問を抱きながらも踵を返し、しばらく歩いているとある部屋から騒ぐ声が聞こえた。その声は間違えもしないだろう、この学園でただ一人の男子生徒である一夏のものだった。

 そして中からは、もう一人ポニテちゃんこと箒の声も聞こえた。どうやら喧嘩、というより箒が一方的に怒りをぶつけているようである。

 それを聞きながら響は悟る。

 ……なるほど、また一夏関連か。

「凰もそうだが、アイツも大変そうだ」

 響は肩をすくめながら、その場を後にした。

 ちなみにその後、部屋で騒いだことが千冬に伝わり、箒と一夏は出席簿でぶっ叩かれていたらしい。 
 

 
後書き
以上です。

響は戦う気満々ですw
はたしてこれからどのような戦いが待っているのか……

次は飛んでクラス代表戦、ゴーレムが出てくるお話です。

感想、アドバイス、ダメだしお待ちしております。 
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