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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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-吸血鬼の貴婦人-後編-

 
前書き
俺の八つ当たりを受けろ!
カミューラ! 

 
遊矢side

クロノス教諭が人形にされた次の日の夕方。

今日は日曜日であったため、授業などに影響はなかったが、平日だったら大問題になっていただろうな。

クロノス教諭の代わりになる先生は、このデュエルアカデミアにはいない。

強いて言えば、佐藤先生がいるが…あの先生はあの先生で、また別の授業の担当がある。

つまり、このデュエルアカデミアにとって、クロノス教諭はいなくてはならない存在だったらしい。

流石は実技最高責任者。

クロノス教諭の為にも、このデュエルアカデミアの為にも、今回のデュエルに負けるわけにはいかない。

念のため、と言われて、後1日保健室に入院した…入院って言うのか?保健室でも…俺は、カミューラの待つ湖に向かうところだ。

デッキの準備はOK。

カミューラには、シンクロ召喚のテストをしてもらうとしよう。

「遊矢、準備出来た?」

保健室のドアが開き、明日香が顔を出す。

「ああ。万全だ。」

デッキの準備も、デュエルディスクの準備も。

「じゃ、行こうか。」

明日香と二人で保健室から出て行こうとした時。

「あ…すか…」

聞き逃す程のか細い声。

ここには、俺と明日香の他にいるのは、もう一人…

「兄さん!?」

明日香が、素早く吹雪さんの元へ駆け寄る。

「あ…すか…」

「私はここよ、兄さん…!」

明日香が必死に吹雪さんの手を握り締めて呼びかける。

「…カミューラと、戦うなら…僕の、ペンダントを、持っていくんだ…」

ダークネスの時から首にぶら下げていた、円形のペンダント。

「…きっと…役に立ってくれ、る…」

吹雪さんの近くの机にあるペンダントを取る。

「これですよね?」

「…それ、だ…」

俺の手の中にあるペンダントを見て、フッと笑うと、吹雪さんは気を失った。

「兄さん…」

「ありがとう、吹雪さん。」

言いながら、首にペンダントをかける。

…闇のデュエルに役立つ、か。

どんなものだろうな。

「明日香、お前は吹雪さんを見てるか?」

「…いいえ、兄さんは鮎川先生に任せて、クロノス教諭を助けに行きましょう。」

少し悩んだようだったが、明日香は一緒に行くことを選んだ。

「じゃ、行くぞ。」

「ええ。」

みんなは先に来ていると思う。

少し急いで、湖に向かった。


「遅いぞ黒崎遊矢!」

「何で俺だけなんだよ万丈目…」

「さんだ!」

万丈目といつものやりとりをして、全員揃っていることを確認する。

三沢、亮、万丈目、十代、翔、隼人。

それに、俺と明日香だ。

「遊矢。」

亮が一歩みんなから離れ、話しかけてくる。

「昨日は、お前がカミューラと戦うことを了承したが、幻魔の扉に対して、対策はあるのか?」

「当然だ。」

一応はある。

一枚は速攻のかかし。

二枚目はレスキュー・ウォリアーだ。

…この二枚が、幻魔の扉を放たれた時、手札にあればの話だが。



目の前にあるのは、湖にそびえ立った城。

俺たちは、吸血鬼、カミューラが待つ城のドアを開けた。

湖上の城は、持ち主のセンスというのか、おどろおどろしい雰囲気で満たされていた。

「へぇ…幽霊とか出そうだな、翔。」

「お、驚かせないで欲しいッス!」

「で、でも怖いんだな…」

十代、翔、隼人のオシリス・レッド三人組が相変わらずの会話をする。

…ん?

「何だ明日香。いつもより場所が奧だな、怖いのか?」

「なっ!そ、そんなわけないじゃない!」

「大丈夫だ天上院くん!君のことは、命を賭けてもこの俺、万丈目サンダーが守り抜こう!」

「緊張感が無いな…」

「全くだ…」

俺が明日香をからかい、万丈目が良く分からんことを口走り、比較的常識人である三沢と亮が呆れていた。

…あくまで、比較的だからな。

一階はダンスホールのようになっていた。

天井が吹き抜けになっており、二階が見える。

二階にいる人物は、当然。

「呑気なものね。今夜また、誰か人形になるというのに…」

吸血鬼、カミューラだ。

「さて、私と闇のデュエルをする者は誰かしら?」

「俺だ。」

カミューラの問いかけに、俺は一歩前に出る。

「生け贄の坊やじゃない…丁度良いわ。ダークネスの敵がとれる。二階に上がってらっしゃい。」

カミューラの言葉と共に、二階に繋がる階段が姿を現した。

俺たちはその階段を上がると、ダンスホールの物見台へと到着した。

反対側では、カミューラがデュエルディスクを構えている。

「お友達をそんなに連れてきて大丈夫?また生け贄にされちゃうわよ?」

「発動したら全力で逃げるってよ。」

来るな、と言ったのに。

「そう。大丈夫よ、お友達を生け贄にした後悔を感じる前に、あなたは人形になっているのだから…」

「俺は人間のままが良いな。」


二人のデュエルディスクが完了する。

「「デュエル!!」」


「俺の先攻!ドロー!」

珍しく俺が先攻になる。

「俺は、《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

シンクロ召喚がデッキに入っても、頼むぜアタッカー!

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ。」

「私のターン、ドロー!
…噂のシンクロ召喚ってのはしてこないのかしら?」

「さぁな。」

残念ながら1ターンでは出せないな。

「なら、出す前に決着をつけてあげるわ!私は通常魔法、《手札抹殺!》お互いのプレイヤーは、手札を全て捨てて、捨てた数だけドロー!」

手札抹殺か、ありがたい。

「墓地に捨てられた、《リミッター・ブレイク》!デッキ・手札・墓地から、《スピード・ウォリアー》を特殊召喚できる!デッキから守備表示で出でよ!スピード・ウォリアー!」

『トアアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

「ふん、そんなザコ…通常魔法、《生者の書-禁断の呪術-》を発動!あなたの墓地の、《シールド・ウォリアー》を除外し、《ヴァンパイア・ロード》を特殊召喚!」

ヴァンパイア・ロード
ATK2000
DEF1500

「なるほど…手札抹殺でヴァンパイア・ロードを墓地に送ると同時に、俺の墓地のカードを除外する…理にかなってるな…」

幻魔の扉頼みのデュエリストではないようだ。

クロノス教諭を追い詰めただけのことはある。

「まだまだよ!ヴァンパイア・ロードを除外することで、《ヴァンパイア・ジェネシス》を特殊召喚!」

ヴァンパイア・ジェネシス
ATK3000
DEF2100


いきなり来たか!

恐らくカミューラの切り札であろうカード、ヴァンパイア・ジェネシス。


「更に、《ヴァンパイア・バッツ》を守備表示で召喚!」

ヴァンパイア・バッツ
ATK800
DEF600

吸血鬼の眷属といえば蝙蝠。

その効果も、ヴァンパイアをサポートする効果だ。

「ヴァンパイア・バッツがいる限り、自分フィールド場のアンデット族モンスターの攻撃力は、200ポイントアップする!」

ヴァンパイア・ジェネシス
ATK3000→3200

ヴァンパイア・バッツ
ATK800→1000

マックス・ウォリアーの攻撃力は1800…ヴァンパイア・ジェネシスには全く及ばない。

「ヴァンパイア・ジェネシスで、マックス・ウォリアーに攻撃!《ヘルビシャス・ブラッド!》」

「リバースカード、オープン!《攻撃の無力化!》相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!」

ヴァンパイア・ジェネシスの攻撃が、渦に巻き込まれて消滅する。

「そんなもの、たかが時間稼ぎにしかならないわよ。ターンエンド。」

「俺のターン、ドロー!」

確かに時間稼ぎだが、充分稼いだ!

「俺はチューナーモンスター、《エフェクト・ヴェーラー》を召喚!」

エフェクト・ヴェーラー
ATK0
DEF0

頼むぜ、ラッキーカード!

「チューナーモンスターってことは…」

「シンクロ召喚ってのを見せてくれよ遊矢!」

では、ギャラリーの声援に応えて…

「レベル4のマックス・ウォリアーと、レベル2のスピード・ウォリアーに、レベル1のエフェクト・ヴェーラーをチューニング!」

合計レベルは7。

「集いし刃が、光をも切り裂く剣となる。光差す道となれ!シンクロ召喚!現れろ!《セブン・ソード・ウォリアー!》」

セブン・ソード・ウォリアー
ATK2300
DEF1800

7つの剣を持つ機械戦士がフィールドに降り立つ。


「…なるほど、これがシンクロ召喚か…」

「スッゲェ!」

上から三沢に十代。

「シンクロ召喚をしたところで、攻撃力は2300!ヴァンパイア・ジェネシスには適わないわ!」

「そいつはどうかな。俺は装備魔法、《神剣-フェニックス・ブレード》を、セブン・ソード・ウォリアーに装備する!」

セブン・ソード・ウォリアー
ATK2300→2600

「それがどうしたって言うのよ…」

カミューラが呆れたような表情になる。

あんまり甘く見るなよ!

「セブン・ソード・ウォリアーの第一の効果!装備魔法を装備した時、相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える!《イクイップ・シュート!》」

「ぐっ!」

カミューラLP4000→3200


「まだまだだぜ!セブン・ソード・ウォリアーの第二の効果!セブン・ソード・ウォリアーに装備されている装備魔法を墓地に送ることで、相手のカードを一枚破壊する!」

「なんですって!?」

「俺が破壊するのは、当然ヴァンパイア・ジェネシス!」

セブン・ソード・ウォリアーが放った神剣-フェニックス・ブレードが、ヴァンパイア・ジェネシスを破壊する。


これであいつの切り札モンスターを倒した!

「バトル!セブン・ソード・ウォリアーで、ヴァンパイア・バッツに攻撃!《セブン・ソード・スラッシュ!》」

セブン・ソード・ウォリアーの攻撃が、ヴァンパイア・バッツを切り裂くが…

「ヴァンパイア・バッツの効果を発動!破壊される時、デッキから同名カードを墓地に送ることで、破壊を無効にする!」

厄介な効果だ。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ!」


「私のターン、ドロー!」

カミューラのターン。

「《強欲な壺》を発動!二枚ドロー!」

カミューラが二枚ドローし、強欲な壺が砕ける。

「ヴァンパイア・ジェネシスを倒したからって、調子にのるんじゃないわよ!フィールド魔法、《不死の王国-ヘルヴァニア-》を発動!」

辺りが吸血鬼たちの国に包まれる。

「不死の王国-ヘルヴァニア-の効果を発動!このターンの通常召喚を封じて、手札からアンデット族モンスターを墓地に送ることで、フィールド場のモンスターカードを全て破壊する!」

「ブラックホール内蔵のフィールド魔法だと!?」

インチキ効果もいい加減にしやがれ!

「アンデット族モンスター、《不死のワーフルフ》を墓地に送り、フィールド場のモンスターを破壊する!」

「セブン・ソード・ウォリアー!」

セブン・ソード・ウォリアーがヘルヴァニアに引きずり込まれて行く。

「ヴァンパイア・バッツの効果で、破壊を無効にするわ。」

よって、がら空きになるのは俺のフィールドのみ。

「そして、《死者蘇生》を発動!手札抹殺で墓地に送った、2枚目のヴァンパイア・ロードを特殊召喚!」

ヴァンパイア・ロード
ATK2000→2200
DEF1500

まずいな。あれを放っておけば、またヴァンパイア・ジェネシスが出てくる。

破壊しようにも、効果破壊したら再び復活する効果を持つ。

…三沢とデュエルしている時も思うが、アンデット族モンスターは基本的に厄介なんだよな。

「行くわよ!ヴァンパイア・ロードで、あなたにダイレクトアタック!《暗黒の使徒!》」

「ぐぁぁぁッ!」

忘れてた…そういや、闇のデュエルだった…

遊矢LP4000→1800

「あら、もしかしたら闇のデュエルってことを忘れてたのかしら?」

その通りだよ畜生。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドよ。」

「俺のターン、ドロー!」

さあて…このターンで決めたいな!

「俺はリバースカード、《リミット・リバース》を発動!墓地から攻撃力1000以下のカードを、攻撃表示で特殊召喚する!出でよ!《チューニング・サポーター!》」

チューニング・サポーター
ATK100
DEF300

「チューニング・サポーター?」

「俺の新しい機械戦士の強化パーツさ!更に通常魔法、《機械複製術》を発動!自分フィールド場の、攻撃力500以下の機械族モンスターと同名カードをデッキから特殊召喚する!増殖せよ!チューニング・サポーター!」

チューニング・サポーターが三体に増える。

「そんなザコカードたちが集まったって、私のヴァンパイア・ロードには適わないわ!」

「勝とうと思えば勝てるさ。更にチューナーモンスター、《ニトロ・シンクロン》を通常召喚!」

ニトロ・シンクロン
ATK300
DEF100

ペガサス会長が送ってきた、チューナーモンスターなどの機械戦士の強化パーツは、なんだかユニークな外見の奴が多い。

ま、ワンショット・ブースターもそうだが。

「チューニング・サポーターは、シンクロ素材となる時、レベルを2にすることが出来る!レベル2となったチューニング・サポーター二体と、レベル1のままのチューニング・サポーターに、ニトロ・シンクロンをチューニング!」

合計レベルは、再び7!

「集いし思いが、ここに新たな力となる!光差す道となれ!シンクロ召喚!」

現れるのは、悪魔のような機械戦士!

「燃え上がれ!《ニトロ・ウォリアー!》」

ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1800

「攻撃力2800ですって!?」

「続いて、ニトロ・シンクロンの効果を発動!ニトロと名の付くモンスターのシンクロ素材となった時、カードを一枚ドロー!」

ニトロ・ウォリアーの高い攻撃力と、一枚のドロー効果によってなかなか使いやすい。

まあ、素材を指定しているのは難点だが…

「そしてもう一つ。…いや、三つか。チューニング・サポーターがシンクロ素材に使われた時、カードを一枚ドロー出来る!素材にしたチューニング・サポーターは三体。よって三枚ドローする!」

0だった手札が、一気に四枚となる。

「一気に四枚ドローするなんて、幻魔の扉を馬鹿にできないじゃないの!?」

四枚ドローに驚いたのか、そんな反論をしてくるカミューラ。

「言っとくが、意外と難しいんだぜ?【機械戦士】を扱うのはさ。」

確かにシンクロ召喚は使っているが、元々は『最弱のテーマデッキ』と呼ばれる不本意なデッキ。


ペガサス会長が約束を守ってくれたおかげで、新しいカードも機械戦士だ。

もちろん、低レベル・低攻撃力・扱いにくさは継承している。

「…こいつ等をまともに使ったことも無いくせに、こいつ等を馬鹿にする奴は、俺は許さない。」

使ってから言え。

「くっ…」

反論出来なくなったのか、黙るカミューラ。

「デュエルを続行するぞ。装備魔法、《ジャンク・アタック》をニトロ・ウォリアーに装備する!」


攻撃力の変動は無い。

…今のところは。

「バトル!ニトロ・ウォリアーで、ヴァンパイア・ロードに攻撃!《ダイナマイト・ナックル!》」

ニトロ・ウォリアーがヴァンパイア・ロードに向かって行く。

「ニトロ・ウォリアーは、自分のターンに自分が魔法カードを使った時のみ、攻撃力が1000ポイントアップする!」

ニトロ・ウォリアー
ATK2800→3800

「攻撃力2800から、更に上がるって言うの!?」

カミューラが驚いている間にも、ニトロ・ウォリアーはヴァンパイア・ロードを殴り倒していた。

「キャァ!」

カミューラLP3200→1600

「まだだ!ジャンク・アタックの効果により、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

ヴァンパイア・ロードの元々の攻撃力は2000。

よって、1000ポイントのダメージ!

「キィァァア…!」

徐々に、吸血鬼らしい金切り声になっていく。

だが、まだ終わりじゃない!

「ニトロ・ウォリアーの第二の効果を発動!相手モンスターを戦闘破壊した後、相手の表側守備表示モンスターを攻撃表示にして、続けて攻撃出来る!《ダイナマイト・インパクト!》」

カミューラのフィールドには、表側守備表示のヴァンパイア・バッツ。

ヴァンパイア・バッツが攻撃表示になり、ニトロ・ウォリアーとバトルする。

「こいつで終わりだ!カミューラ!」

「まだよ!リバースカード、《ガード・ブロック!》戦闘ダメージを0にし、カードを一枚ドローする!」

避けられたか…

「だが、墓地に送ったヴァンパイア・バッツの攻撃力は800。ジャンク・アタックの効果により、400ポイントのダメージを与える!」

「キィィッ!」

カミューラLP600→200

後もう少しだ。

「これで俺はターンエンド!」

「人間ごときが…誇り高きヴァンパイアに傷を付けるなんて…!ドロー!」


ドローしたカードを見たカミューラが、ニヤリと笑う。

「私は、通常魔法、《命削りの宝札》を発動!手札が五枚になるようドローし、五ターン後に全て捨てる!」

「命削りの宝札だと!?」

究極のレアカードであると同時に、究極のドローカード。

カードを四枚引いたカミューラの口が、裂ける。

まさか。

「みんな逃げろ!幻魔の扉だ!」

俺の声を聞き、みんなが一目散に階段を降りようとする。

が。

「逃がさないわ!」

階段を降りるためのドアが、閉まった。

「さあ…今回の生け贄は誰かしら?魔法発動!《幻魔の扉!》」

クロノス教諭を倒した扉が再び現れる。

「行きなさい!」

幻魔の扉から、昨日と同じように触手が放たれる。

…誰かが捕まってしまったら、俺はそいつを見捨ててカミューラを倒せるのか?

有り得ない。

今なら、クロノス教諭の気持ちも分かる気がする。

その時。

吹雪さんに貰ったペンダントが、光る。

「そのペンダントは…まさか、ダークネスの!?」

「ダークネスじゃない。明日香の兄さんの、吹雪さんの物だ!」

カミューラと戦うなら役に立ってくれる、と渡されたペンダントは光り輝き、その光に近づくにつれ、幻魔の扉の触手は力を失って行く。

「…クロノス教諭の言うとおりだったな。闇は光を凌駕できない。」

流石はクロノス教諭。

間違ったことは教えないんだな。

「ええい…私は、自分自身の魂を生け贄に捧げ、相手モンスターを全て破壊する!」

「ニトロ・ウォリアー!」

ニトロ・ウォリアーが幻魔の扉に吸い込まれる。

「あらゆる召喚条件を無視して、デュエル中に一度でも出たモンスターの中でもっとも攻撃力が高いモンスターを、私のフィールドに特殊召喚する!来なさい!ニトロ・ウォリアー!」

ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1800


「どうかしら?自分自身の最強のモンスターが敵になる気分は?」

「そんなもん慣れてるよ。」

どこぞの自称・恋する乙女のおかげでな。

「最後まで減らず口を…!ニトロ・ウォリアーでダイレクトアタック!ダイナマイト・ナックル!」

敵となったニトロ・ウォリアーが迫る。

「手札から、《速攻のかかし》の効果を発動!このカードを墓地に送ることで、ダイレクトアタックを無効にして、バトルフェイズを終了させる!」

機械のかかしがニトロ・ウォリアーの攻撃を止める。

あ、殴られた。

「くっ…メインフェイズ2に、ニトロ・ウォリアーをリリースすることで、ヴァンパイア・ロードをアドバンス召喚!」

ヴァンパイア・ロード
ATK2000
DEF

わざわざ攻撃力を下げてまでのアドバンス召喚。

手札には、奴がある。

「ヴァンパイア・ロードを除外することで、ヴァンパイア・ジェネシスを特殊召喚!」

ヴァンパイア・ジェネシス
ATK3000
DEF2100

やっぱり来たな。

カミューラのエースカード!

「カードを一枚伏せ、ターンエンドよ!」

「俺のターン、ドロー!」

やっぱり、最後はお前だな!

「カードを一枚伏せ、速攻魔法、《ダブル・サイクロン!》俺のセットカードと、お前のセットカードを破壊する!」

久々に現れた二対の竜巻が、俺のセットカードとカミューラのリバースカードを消し飛ばす。

破壊されたカードは、トラップカード、《妖かしの紅月》だった。

危ない危ない。

手札のアンデッド族モンスターを墓地に送ることで、攻撃して来た相手モンスターの攻撃力分ライフを回復し、バトルフェイズを終了させる、これまた厄介なトラップカード。

「トラップカードを破壊したところで、ヴァンパイア・ジェネシスを倒さないとどうにもならないわよ?」

「確かにな。だが、俺の目的は別にある!破壊されたリミッター・ブレイクの効果を発動!デッキから現れろ!スピード・ウォリアー!」

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

「更に速攻魔法、《地獄の暴走召喚!》自分フィールド場に攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された時、デッキ・手札・墓地から同名カードを全て攻撃表示で特殊召喚する!現れろ!マイフェイバリットカード!」

『トアアアッ!!』

俺のフィールドに、三体のスピード・ウォリアーが集結する。

マックス・ウォリアーと同じように、たとえシンクロ召喚を手に入れても、スピード・ウォリアーが俺のマイフェイバリットだ!

「代わりに、お前は自分のフィールドのモンスターと同名のカードを、同じように特殊召喚出来る。」

「…ヴァンパイア・ジェネシスは、自身の効果以外では特殊召喚できない。」

知ってるさ。

ま、特殊召喚出来ても無意味だがな!

「チューナーモンスター、《チェンジ・シンクロン》を召喚!」

チェンジ・シンクロン
ATK0
DEF0

「またチューナーモンスター!?」

「ああ、またシンクロ召喚だ!」

チェンジ・シンクロンが輪になる。

「レベル2のスピード・ウォリアー三体に、レベル1のチェンジ・シンクロンをチューニング!」

合計レベルは、三度7!

「集いし闇が現れし時、光の戦士が光来する!光差す道となれ!シンクロ召喚!現れろ!《ライトニング・ウォリアー!》」

最後にフィールドに現れるのは、光り輝く機械戦士!

ライトニング・ウォリアー
ATK2400
DEF1200

「何が出るかと思えば、たがが攻撃力2400じゃない。攻撃力3000のヴァンパイア・ジェネシスには適わないわ!」

「機械戦士には、全てのモンスターに可能性がある!チェンジ・シンクロンの効果を発動!シンクロ素材となった時、相手モンスターを守備表示にする!」

ヴァンパイア・ジェネシスが守備表示となる。

ヴァンパイア・ジェネシスの攻撃力は2100。

ライトニング・ウォリアーでも突破出来る!

「闇は光を凌駕できない。そう信じて決して心を折らぬ事。クロノス教諭の教えを、ライトニング・ウォリアーがお前にも教えてやるぜ!カミューラ!」

「何が光のデュエルよ!そんな物は、私には…!」

カミューラにはカミューラなりに、戦う理由があるのだろう。

それが何かは知らないが、カミューラにとって大切なことだというのは分かる。

だが、カミューラはクロノス教諭を人形にした。

自分に親しい人間がやられたのだ。

黙っていられるわけがない!

「ライトニング・ウォリアーで、ヴァンパイア・ジェネシスに攻撃!《ライトニング・パニッシャー!》」

手に光を溜め、ヴァンパイア・ジェネシスを蹴散らすライトニング・ウォリアー。

「くっ…だけど、まだよ!」

いや、これで終わりだ。

この瞬間、ライトニング・ウォリアーの効果が発動する!

「ライトニング・ウォリアーの効果を発動!戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手プレイヤーに相手の手札×300ポイントのダメージを与える!」

カミューラの手札は一枚。

そして、カミューラのライフは200ポイントだ。

「《ライトニング・レイ!》」

「キャァァァァァァァァァァァァァァッ!」

カミューラLP200→0

ライトニング・ウォリアーが放つ光線が、カミューラを貫き、デュエルは決着した。

「よっしゃああああッ!
楽しいデュエルだったぜ、カミューラ!」

前回は言えなかったが、どんなデュエルでも…たとえ闇のデュエルでも…デュエルはデュエルだ。

楽しまなくちゃな。

「私が…負けた…」

カミューラが茫然自失と言った様子で、膝立ちになる。

この闇のデュエルの罰ゲームは、負けた相手が人形になるというもの。

ん?待てよ。

「おい、カミューラ!人形になっちゃうんだったら、その前にクロノス教諭を元に戻せよ!」

俺の言葉に、首だけで反応を示す。

「私がいなくなったら元に戻るわ…私は、もう…」

カミューラが言葉を最後まで言い切る前に、カミューラの背後に幻魔の扉が出現する。

「闇のデュエルは終わった筈なのに…?」

後ろの方で明日香が疑問の声をあげるが、俺には分かった。

クロノス教諭とカミューラがデュエルした時、カミューラはこう言った。


-このカードを使って敗北したプレイヤーの魂は、三幻魔に喰われる。

あの時、万丈目は実質ノーコストと言ったが、カミューラが敗北した今。

カミューラは、幻魔に食われてしまう。

そう思った瞬間、カミューラが立つ物見台に飛んでいた。

「遊矢!?」

背後の仲間の驚きの声が聞こえるが、それに構ってる暇はない!

「ぐっ!」

なんとか、カミューラの元に着地する。

「…何してるのよ、あなたも幻魔に食べられるわよ。」

「お前、なんか目的があるんだろ?こんなところで死ぬなよ!」

カミューラを肩に担ぎ上げ、どこか出口を探す。


何で助けるかって?

さっきも言ったぞ。

自分に親しい人間がやられそうになっているんだ。

黙っていられるわけがないって!

「…あんた、何考えてるのよ。私は吸血鬼よ?」

「それがどうした!」

まだ出口を探し当てていないのに、幻魔の扉が開き始める。

まずいな、間に合わないかもしれない…!

「さっきのデュエル、楽しかったぜ。生きて帰ったら、またデュエルしよう!」

「…ふふ、あなた、馬鹿でしょ?」

失敬な。

これでも成績は優秀な方だぞ。

「…本当に、人間って馬鹿ね。」
カミューラがその一言を言うなり、俺をぶん投げた。

「カミューラ!?」

俺が投げられたと同時に、幻魔の扉が完全に開く。

「カミューラ!」

-ありがとう、ちょっとだけ、格好良かったわよ-

その言葉を最後に、カミューラは幻魔の扉に吸い込まれていった…

投げられた俺は、三沢と万丈目、亮にキャッチされる。

「…まったく、無茶するな、君は。」

「悪い悪い。ありがとな、三人とも。」

とりあえず、受け止めてくれた三人にお礼を言う。

そして、閉まっていた階段が開く。

帰れ、ということか。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
階段の扉が開くと同時に、城自体が揺れ始める。

「カミューラが消えたことで、城が崩れ始めているのか!?」

三沢の予想に反論する必要も無く、全員で階段を駆け降りる。

駆け降りる途中、万丈目の背中に、突如として一人の人物が現れる。

「な、なんなノーネ!」

「「クロノス教諭!」」

カミューラが消えたため、クロノス教諭の人形も元に戻ったのか。

しかし、喜んだる暇はない!

「シニョール万丈目~!一体何が起きてるノーネェ~!」

「ええい!ちょっと黙っててくださいクロノス教諭!」

クロノス教諭と万丈目の口論を聞きながら、なんとかカミューラの城を脱出する。

十代、三沢、明日香、亮、俺、翔、隼人、万丈目「さんだ!」…と、クロノス教諭。

全員、脱出したことを確認したのと同時に、カミューラの城が崩れ落ちる。

ごめんな、カミューラ。

カミューラに心の中で謝りながら、俺は仲間と共にカミューラの城を離れ、デュエルアカデミアへと帰っていった。
 
 

 
後書き
さて、ただの八つ当たり要因だった筈のカミューラが意外に善戦。

そして後半の妙な展開。

…どうしてこうなった?

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