季節の変わり目
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
まさかの遭遇
10月も終わりに近づき、佐為の高校の文化祭が開催される。佐為のクラスは白雪姫の劇をやるのだが、この日のために相当な準備をしてきたらしい。ヒカルは10月になってから佐為と会う時間をなかなか取れなかったため、今日を心待ちにしていた。待ち合わせ場所に向かう足が浮足立つ。待ち合わせ、ということはもちろん和谷と伊角も一緒だった。塔矢も呼んだらどうかとヒカルが提案したが、和谷は首を縦に振らず、結局いつもの三人で来ることになった。
「和谷っ、伊角さん」
校門付近にいる二人に大きく手を振って知らせると、和谷は開口一番「遅いっ」とヒカルを叱りつけた。
「悪い悪い」
時計を見るとまだ10時だ。和谷は少し気が早いのではないかと思う。ヒカルたちは佐為の高校に来るのは初めてだった。校門側からは白い校舎は見えにくく、代わりに何本もの木々が校門付近を飾っている。校門は車2台が並んで通れるくらいの幅で、そこから曲がりくねったアスファルトの道が校舎に続いていた。
「けっこう人が来てるんだなー」
木々に左右を囲まれた道を歩いていく。周りは保護者や他校生たちで賑わっていた。歩いている途中に模擬店の割引券を貰ったり、出し物の宣伝係が回ったりしていて、お祭りの雰囲気そのものだった。道が開けて綺麗な校舎と体育館が目に入る。体育館前では一般の受付をしていて、そこに並びパンフレットを受け取る。
「ええと、佐為のクラスは・・・」
出し物欄を指で辿っていくと3-Cの文字が目に入った。場所は体育館で、まだ公演には一時間ほどある。
「11時15分スタートか。終わったら昼飯食うか」
「それまでどこに行こうか。進藤、お前幼馴染がこの学校の生徒だろ?」
「ああ、あかりな。あいつのところは昼時に行こうぜ。おでん売ってるから」
そう、あかりのクラスは模擬店でおでんを売っている。あまり早くに売り始めても客が来ないため、11時から販売を開始する予定らしい。囲碁部はまだ三名しか部員がいない上、部員の時間がなかなか合わないから、2時半から4時の間だけ活動する。葉瀬中の創立祭の時のように、屋外で詰碁問題を出すという。
「じゃあ適当に回ってみるか」
「よーお進藤、久しぶりじゃねえか」
前に進もうとした時、ヒカルには聞きなれた声が背後から聞こえた。後ろを勢いよく振り向くと、すぐ傍に
「加賀っ」
がいた。
ページ上へ戻る