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ドン=パスクワーレ

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第二幕その一


第二幕その一

               第二幕  淑女豹変
「もう終わりだ」
 エルネストは一人屋敷の今にいた。そしてそこで嘆いているのだった。
「もうローマを去ろう」
 悲しみに満ちた顔での言葉だった。
「そしてそれから遥かな土地を求めよう。そこで僕は生きるんだ」
 こう言ってその場から消えようとする。しかしここでマラテスタとヴェールを被った小柄な女性が部屋に入って来た。エルネストは二人を見て悲しみに満ちた声で呟いた。
「マラテスタさんと妹さんだな」
「おお、来たか」
 ここで正装になっているパスクワーレも部屋の中に入って来た。そうしてそのうえで満面の笑みで二人を見て言うのだった。
「早いのう」
「何事も迅速に」
 マラテスタは少しおどけたようにしてパスクワーレに胸を張って告げた。
「それが私ですから」
「そうじゃったな。それでその娘じゃな」
「はい」
 ここでも胸を張って告げた。その彼の後ろに女性はいるが兄の長身に必死に隠れようとしている。パスクワーレはその彼女を見て満足そうに述べた。
「ほう、これは」
「修道院から出たばかりですので」
 彼女を庇うふりをしながらマラテスタはパスクワーレに話すのだった。
「ですから」
「初々しいのう」
 パスクワーレはそんな彼女を見てにこにことしている。
「それはまた」
「はい、それでですね」
「うむ」
「式ですが」
「ああ、その前にじゃ」
 ここでパスクワーレは言うのであった。
「見ておきたいものがあるのじゃがのう」
「見ておきたいものとは?」
「顔じゃ」
 まずはこう話してきた。
「顔を見たいのじゃが」
「ああ、妹の顔ですね」
「左様。見ていいかな」
「どうぞ。さあソフロニア」
 マラテスタは彼女に顔を向けて優しい声をかける。その間エルネストは沈んだ顔をして部屋の隅にいる。部屋を出る機会を逃してしまってそこにいるのだ。
「ヴェールを取りなさい」
「わかりました」
「あれっ」
 ここでエルネストは彼女の声を聞いてふと思った。
「この声は」
 似ていると思ったその矢先だった。白いヴェールから出て来た彼女は。
「あっ・・・・・・」
「おっとと」
 ここでマラテスタはすっと驚きの声をあげそうになった彼のところに来た。そうしてその大きく開かれてしまった口を自分の手で閉じてしまったのだった。
 それから。彼の耳元でそっと囁くのだった。
「今は静かにね」
「静かに?」
「そうだよ。君の悪いようにはならないから」 
 こう囁くのであった。
「むしろいいようになるから」
「いいようにって」
「話はこれから変わるから」
 こうも彼に告げた。
「だからね。いいね」
「はあ」
「わかったら静かにね」
 このことを再び告げた。
「わかったね」
「わかりました」
 マラテスタのその言葉に頷く。その間パスクワーレは自分の花嫁となるその女性を見てもう今から有頂天という有様であった。
「これはいいのう。別嬪さんじゃ」
「お気に召されましたか?」
 マラテスタはすぐに彼の傍に来てこう問うてみせる。
 
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