願いを叶える者(旧リリカルなのは 願いを叶えし者)
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救いの手 涙の癒やし
ー 病院 ー
sideユウジ
鳴海総合病院の一室。
少女の父、高町士郎が眠る病室にやって来た。
件の少女は暗い、果てしなく暗い…。
隣にいるだけで胃がキリキリ痛い。
さっさと依頼を終わらせて帰ろうかな…思い返せば食料調達してないし。
くそぅ、どうしてこうなった…。
ま、自分のせいなんだけどねっ。
「さて、取りあえず治そうとは思うんだが、
よく生きてられたなぁ…生命力高ぇ…。
死んでもおかしくないんじゃないか?」
そう言いながらも高町士郎の胸に手を当てて目を閉じる。
意識を集中させて高町士郎の精神へと向ける。
まずはこの男に問わなくてはならない事がある。
生きたいか、死にたいかを…。
「精神突入」
周りは平原。そこにある小さな丘の上に一人佇む男性がいた。
この精神世界の主、高町士郎だ。
俺は士郎に向かって歩き出し目の前で止まる。
「……きみは?」
「始めまして、高町士郎。
時間無いからさっさと聞きたいこと聞いて帰る。
……質問、生きたいか、死にたいか」
「君は、一t「答えろ」っ………生きたいね。
きっと家では家族が待っているし、心配だってしているだろう。
だから帰るためにも、僕は生きなきゃいけない」
「オーケー、合格だ………では、現実で」
俺はその場から一歩後ろへ下がり、指を鳴らした。
途端に空間が変わり変哲のない元の病室に戻っていた。
後ろでは少女が心配そうに見ている。
「はてさて、では早速……。
輝きの灯火よ 聖なる加護と共に 我が前に傷つきし者に 癒やしの雨を降らせたまえ…
『活力再生』」
病室全体に水が舞うように光りが溢れ、士郎の体に吸い込まれていった。
そして士郎の身体に出来た傷は光が染み込むと同時にみるみるうちに消え去り、
やがて光が収まった時にはもう完全に回復を果たしていた。
少女は光の眩しさに目を閉じ、収まりを感じて再び目を開けると、
そこには起き上がった父親である士郎がいて此方を見ていた。
「な…のは?」
「おと………さん…………お父さん!!」
涙が溢れ出し、少女は士郎に抱きついて泣き出した。
騒ぎを聞き付けてやってきた看護婦は、
士郎を見るやいなや、すぐに担当医を呼び、
検査等をして異常が無いことに驚愕を示し、
連絡を受けてきた家族が号泣して喜んだ。
そんな家族を見て、士郎は二度と心配させないと家族全員に誓うのだった。
そんな士郎は、懐に違和感を感じ確認すると紙切れが入っていた。
ふとなのはを見ると周辺ををキョロキョロ見回しているのに気がついた。
「なのは、どうしたんだい?」
「あのね、一緒に来た子がいないの」
「子?もしかして赤と黒の服の子?」
「うん、お父さんを助けてくれたの」
周りは首を傾げているが、士郎は冷静に考える。
「その子の名前は?何か言っていたかい?」
「ふぇ?えーとぉ……名前は聞いてないの…。
でも、確か願いを叶える者って言ってたよ」
「願いを………そうか、いつかまた会えるかな?
その時はお礼を言わないとな」
「うん!」
そしてなのはは思い出す。
ユウジに言われたことを、自分の考えが間違っていた事を。
「あっ……あのね、お母さん」
「なあに?なのは?」
なのはの母、高町桃子は涙を拭いながらなのはを見つめる。
「実はね……………………」
なのはは話す。
士郎が入院してからの自分のこれまでについて…。
その様子を窓の外、1km程離れた場所からユウジは見ていた。
「ふむ、これで大丈夫かね?
一応言伝は高町士郎の懐に入れといたし問題ないだろうし。
さて、食料調達に行きますかね…」
そうつぶやいて屋根から跳躍。
スーパーへと向かって歩き出すのだった。
スーパーが閉店していたのは別のお話 。
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