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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第34話 白銀と漆黒Ⅲ


 その場に現れたのはざっと見て、約10名のプレイヤーだ。

「尾けられてた……みたいだな。」

 リュウキがそう呟く。その出てきたメンバーの中心にいる男を見て正体が判った。

「クライン……」

 ギルド≪風林火山≫のメンバー、そしてクラインだった。

「追跡スキルの達人がいるんでな。」

 クラインはそう答えた。尾けていた事を否定はしないようだ。

「……しつこい男は嫌われるんじゃないのか?」

 リュウキはそう言いながら、抜いた剣を肩にかけた。

「うるせぇっよ! それは兎も角、キリト! お前が全部のツリー座標の情報を買ったっつう情報を買った。そしてら 念のため49層の転移門に貼り付けといた奴が お前が何処の情報にも出ていないフロアに向かったっつうじゃねえか。……オレはこういっちゃ何だけどよ。お前……お前らのコンビは戦闘能力じゃ群を抜いてる。それにゲーム感もそうだし、リュウキのよくわからねえ《目》ってやつもそうだ。すげえと思ってるよ。……2人とも、攻略組の中でも最強、血盟騎士団のヒースクリフ以上だとな。だから……だからこそなぁ。お前らをこんな所で死なすわけにはいかねえんだよ! キリト! リュウキ!」

 伸ばした右手で真っ直ぐに指差し、さらに叫んだ。

「たった2人なんてやめろ! 俺らと合同でパーティを組めば良いじゃねえか! 蘇生アイテムはドロップさせた奴のもので恨みっこ無し、それで文句ねえだろう!」

 確かにこの男の、クラインの言葉は 自分達の身を案じている。……友情から出ているんだろう事は判る。だがけど、それでもキリトは譲れない。

「それじゃあ、意味なんだよ。」

 キリトはそう答えた。目の前で死んでしまった嘗てのギルドの仲間。彼らを、蘇えらす為には。この方法しか無いんだ。
 そして、その気持ちは、リュウキにもよくわかる。あの時、あの場所で、キリトの目の前で仲間が仲間を失ってしまったんだ。キリトの様に 付き合いがある奴らじゃない。だが、目の前で理不尽に奪われる命。あれは、あの苦しみは味わなければ、判らない。そして、悔いるキリトの姿。それは、かつての自分とかぶってみえる。

 リュウキは剣を持ったままだった。決して警戒心を解かない。

 そして。

「心配してくれるのはありがたい……が、2人で十分と言う事は事実だ。……それでもオレを、オレ達を止めると言うなら、それはアイテムの争奪戦。アイテムを奪い合うという事だ。どうしても と言うのなら……オレ達を斬ってでも止めてみろよ、クライン」

 そうクラインに言うと、自分の身長よりも長い剣の柄を握りこんだ。

「ッ………。」

 そこまで、言われたら……クラインは何もいえない。『斬ってでも、止める』そこまでの覚悟は持っていなかったようだ。だが、クラインはどこか、悲しい目をしていた。

 エリアに第三の侵入者が姿を現したのはまさにその瞬間だ。

 しかも 今度のパーティは10人どころじゃなかった。ざっと見ただけでその3倍近くはいるだろうか。

「……お前らも尾けられてたな、クライン」

 キリトも、それを確認し武器を構えた。

「……ああ、そうみてェだな!」

 50mほど離れたエリアの端から、風林火山とオレ達を見つめる集団の中には、何人か顔見知りもいた。風林火山のメンバーがリーダーであるクラインに顔を近づけ 低くささやいた。

「あいつら……≪聖竜連合≫っす。フラグボスの為なら、一時的オレンジ化も辞さない連中っすよ!」

 それは、キリトは勿論リュウキもよく知っている。
 この世界、トップギルドの1つだ。
 
 その規模と実力は、最強ギルドと謳われる血盟騎士団と並ぶ。
 個々のレベルは、様々な層を闊歩し続けているリュウキの83より上はいないだろう。それは、短時間とは言え、長時間、効率の良い狩場に篭もり 借り続けてきたキリトと同等の者もいないだろう。
 だが、それでも如何せん数が多い。

「……相手がデジタルデータなら、楽勝だ……と言ってやりたい所だがな……」

 リュウキは、柄を握る手に更に力が込められた。この数だ、いくらリュウキも戦えば物量の差でタダじゃすまないだろうと考えていた。この後にはBOSSが待ち構えていると言うのに。浪費をしている場合じゃない。
 そして、もう指定時間にまで刻一刻と近づいていっているのだ。

 その時だった。


「くそっ!! くそったれがっ!!」


 クラインが叫び声を上げた。

「行けッ! キリト! リュウキ!! ここは俺らが食い止める!お前らは行ってBOSSを倒せッ! だがなぁ! アレだけ大見得切ったんだ! 死ぬんじゃねえぞ!オレの前で死んだらぜってえゆるさねえからな!!」

 クラインの怒声と共に、風林火山メンバー全員が構えた。

「………悪い、クライン」

 キリトは、それを訊いて背を向けた。

「オレ達がが死ぬか。自分の心配をしろよ、クライン。………お前らも死ぬなよ。」

 リュウキもそう言って背を向けた。
 もう、時間は殆ど残っていない。後数分で指定時間。

 2人は、足早に最後のワープゾーンへと足を踏み入れた。





 モミの巨木は そのワープの先、ねじくれた姿で静かに……それでいて圧倒的な存在感で立っていた。
他に樹の殆ど無い四角エリアは積もった雪で真っ白に輝き、全ての生命が死に絶えていた平原に見えた。
 そして……視界の端の時計が零時になると同時に何処からともなく鈴の音が響いてきて、その音に誘われるように梢の天辺を見上げた。

 この漆黒の夜空、光が伸びていた。

 それはよくよく眺めて見ると奇怪な姿をしたモンスターに引かれた巨大なソリらしい。

「……それで、サンタクロースのつもりか?」

 リュウキは強く柄を握る

「……耳障りだな」

 キリトも同様だった。その奇怪な姿をしたモンスターは、サンタを思わせる巨大なソリから飛び降りてきた。ズズンッ と言う衝撃音と共に、盛大に雪を蹴散らして着地したのは背丈がゆうに3倍はあろうか程の怪物だった。
 その姿は顔の下半分からは捻じれた灰色のひげが長く伸び、下腹部にまで到達している。リュウキが言うようにサンタを思わせる成り立ちだが、あまりに醜悪にカリカチュアライズしていた。

 普段であれば、その醜悪な姿に、酷評の1つでも言ってやるのだが。

「………用事があるのは、お前にじゃない」
「ああ……さっさと出してもらうぞ!」

 その言葉通り、目の前の怪物には用は何もないのだ。

 それは白い世界。闇夜の白い世界に写る、漆黒と白銀。対照的な二者が、剣が交差した瞬間だった。

『おおおおおおおおお!!!!!!!』

 2人はクエスト開始を待たない。それは、まるで特攻するように。対照的な色を持つ2つの剣閃が≪背教者ニコラス≫を穿ったのだった。




 
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