IS-最強の不良少女-
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特訓
前書き
今回はオリジナル用語が出てきます
ではどうぞー
真耶との補習授業から一夜明けた次の日の放課後から響の特訓が始まった。二人がいる場所は第一アリーナのハンガーの中だ。真耶はいつもの服装をしているが、響の方はというとISスーツに身を包んでいた。
だが先ほどから響は体を捻ってはため息をつくを繰り返している。
「どうしました?鳴雨さん」
その行動に疑問をもった真耶がきいた。響は真耶を一瞥しながら答える。
「いえなんといいますか……。このISスーツパッツパツで気持悪いんですよねー」
「ああなるほど……。でも我慢してください。それだけ密着していないと変なところに引っかかったりしたら危険ですからね」
真耶は納得したようなことを言うものの、最後には注意を促した。響も渋々といった様子で納得したようだ。
不意に真耶が近くの端末を操作するとハンガーの奥にあるシャッターが開きその中から灰色を基調としたISが現れる。はたから見てみるとまるで昔の戦国武将の鎧のような風貌をしている。響が手を腰に当てながらその機体を見ていると、真耶が説明をはじめる。
「第二世代ISの『打鉄』です。日本の量産機ISで、防御能力は世界最高ですね。装備は近接ブレード『葵』とアサルトライフル『焔備』の二つです」
説明が終わると真耶は響を覗き込む。おそらくどんな表情をしているのか気になったのだろう。だが響の顔は険しかった。真耶がそれに若干ビクつくが響は口を開いた。
「装備って絶対ないといけないもんですか?」
「え?……それはそうですよ!だって武器がないと戦えないじゃないですか」
真耶の声に響は首をかしげながら聞くが響は聞き返す。
「手とか足とかの装甲でダメージは与えられないんですか?」
「まぁ少しはできますけど……。それでも装備を使った方が相手に与えるダメージは大きいですよ?」
心配そうな視線を向ける真耶とは裏腹に響はにやりと笑いながら告げる。
「いや。私は武装なしで構いません。生まれてこの方刀なんて使ったことなんてないですし、それに今更刀の使い方や銃の使い方なんて覚えたって実戦じゃ役に立ちませんし」
「でも……」
不安そうな顔になる真耶だが響はそれに笑いながら返す。
「大丈夫ですよ。こちとら小学生の時から喧嘩に明け暮れてんですから大雑把な戦い方なんてわかりますから」
「……わかりました。ですが気が変わったらまた言ってくださいね。そのときは武装を付け直しますから」
柔和な笑顔を浮かべながら言ったあと、真耶は端末を操作する。おそらく武装をはずしているのだろう。
操作が終わったのか真耶が「じゃあ乗って下さい」と言うと、響もそれに頷き打鉄に体を預ける。
その瞬間。響の体が硬直した。
――――またこの感覚かよ……!この頭の中にスッゲー大量の情報が入り込んでくるような気持ワリー感覚……。
それは響が最初にISに乗ったときと同じ感覚だった。あの時のようにISが光ったり警告音が鳴り響くことはないものの、響には確かにあの時の感覚が襲っていた。
「大丈夫ですか!?鳴雨さん!!」
響の様子に真耶が駆け寄ってくるが響にその声は届いていない。
それもそのはずだ、今響の頭の中ではやかましいほどの情報と言う名の声がガンガンと鳴り響いていた。
――――これは……。ISとの……深度リンク?何のことだ、んなこと知るかっての。ああもうめんどくせぇ!
内心で毒づきながらも響は大きく息を吸い、怒気を孕んだ声で告げた。
「うるせぇ!!!!さっきからガンガンガンガン変な情報ばっかり送り込みやがって!!てめぇがISなら黙って私の言うこと聞いてろゴミクズ機械が!!」
響が言うとIS『打鉄』から送り込まれていた情報の奔流が止まった。
「あー……。うるさかった、まったくなんだってんだよISとの深度リンクなんて知るかってーの。……すんません山田先生お騒がせしました……って、え?」
見ると真耶は端末の近くで縮こまっていてブツブツと何かつぶやいていた。
「……うるさいですか……そうですよねー私うるさいですよねー……迷惑でしたよねー……」
どうやら先ほど響が言った「うるさい」と言う言葉が自分に向けて発せられたものだと思っているらしい。確かにずっと響に呼びかけていていきなりうるさいと言われればショックを受けるのは当然だろう。
響もそれに気付くと打鉄に乗ったままだったがフォローを入れようとオロオロし始めた。
「えーといや!山田先生に言ったんじゃないですよ!?ただちょっとISの情報がうるさかったと言うかそんなんで……」
その後響のフォローはおよそ10分続いた。
「ISとの深度リンク……ですか?」
「はい。打鉄に乗ったとき確かに聞こえたんですよ。なんていうか頭の中に直接叩きこめれるような感じで」
響のフォローのかいもあってか真耶は立ち直ると響がいった言葉について端末を使い調べているものの、やはりいい情報は見つからないようだ。
「ダメですね。そもそもISとの深度リンクなんて言葉は私も聴いたことがありません」
真耶が言ったところでハンガーの入り口あたりから1人の女性が現れた。
「ISとの深度リンクか……。久しぶりだなその言葉を聴くのも」
女性にしては低めの声だが真耶と響はその声に聞き覚えがあった。
「織斑先生!?どうしてここに!?」
「……あっちゃー。見つかった」
真耶の驚きとは裏腹に響は溜息混じりに頭を抱えた。二人の反応に千冬が不適に笑いながら答えた。
「馬鹿者が私が貴様ごときの隠し事など見破れんわけないだろうが」
「別に隠してないっすよ。ただ私は山田先生に頼んだだけです」
「それが私に隠していると言うのだ馬鹿者」
呆れ顔で告げる千冬だがその口元はわずかだがあがって見える。
「それで織斑先生は知ってんだろ?何なんだよISとの深度リンクってのは」
響の言葉に千冬がモニタの数値を一瞥しながら答える。
「いいだろう話してやる。山田先生もよろしいですね」
千冬の言葉に真耶があわてて頷くと千冬が淡々と語りだす。
「ISとの深度リンクとはな、わかりやすく言うなら通常のシンクロ以上のシンクロと言うことだ。ただしこの深度リンクができるのは適正ランクがS以上の者だ」
「てことはAの奴らはできないってことか……。でも何でアンタがそんなこと」
「私のIS適正はSだからな……だが精神が弱いものは例えできたとしてもIS側に振り回されてまともに戦うことすらできない。……というのが私の友人、篠ノ之束が言っていたことだ」
腕を組みため息をつきながら言う千冬だが響はそれに続けた。
「ふーん。じゃあさっきの感覚はそういうことなのか」
「おそらく頭の中に情報がかなりの速度で叩きつけられる感覚がしたのだろう。それが深度リンクの現われだからな」
「あの織斑先生?その深度リンクで体に影響とかは?」
真耶がおずおずと答えるが千冬はトーンを変えずに答える。
「基本的にはない……とは言いたいものの深度リンクを経験したのは私だけだからな。どうにも言えません。鳴雨。今はどんな感じだ?」
「特に変なことはありませんよ。ただ本当にうるさかったですけど」
響の答えに千冬は小さく笑うと続ける。
「そうだな……。あれは確かにうるさいものだ」
自分が経験したことを思い出し少しおかしくなったのか口元に手を当てて笑っていた。ひとしきり笑い終えると千冬は響に告げた。
「まぁ深度リンクを経験した先輩から言わせてもらえば……精神を強く持て鳴雨。そして明日からお前が更識と対戦する日までは私と山田先生が付きっ切りでISの操縦の仕方を教えてやろう」
悪戯っぽい笑みを見せながら言う千冬に響は若干げんなりとしながらも返答した。
「……へーい。んじゃあよろしくお願いします」
渋々ながらの回答にも二人は頷いた。その後は下校時刻までISでの歩き方などの基本的なことを教えてもらい特訓一日目は終了となった。
響が帰宅した後千冬と真耶はハンガーの中で話し合っていた。話題はもちろん響のことについてだ。
「鳴雨さん飲み込みが早かったですねー。もしかしたら実際にやってみると覚えるタイプなんですかね?」
「だろうな。だが真耶その言い方だと結構鳴雨のことを馬鹿にしてるぞ」
ニヤリと笑いながら言う千冬を見て真耶がそれを否定する。
「馬鹿にしてるなんてそんな!?ただ思っただけなのにー」
「フッ。冗談だがな、しかし確かにアイツは飲み込みがはやい。おそらく先ほどお前が言ったように体で覚えるタイプなのだろうがそれよりも……」
先ほどまでの優しげな顔から千冬の顔が再び真剣な面持ちになると、真耶が千冬の言葉につなげるように述べた。
「ランクSSの力ですか?」
真耶の言葉に千冬は無言で頷くと再び話を続ける。
「私はさっき深度リンクの事を話したな。……私が深度リンクを成し遂げたのはISに一週間乗り続けやっと深度リンクをすることができた。しかしアイツはそれをあんな短時間で成した」
「織斑先生で一週間のところが鳴雨さんはわずか5分ですか……。本当に凄いんですね鳴雨さん」
「まぁおそらく半年前に一回乗ったときに既に大まかなことは終わっていたのだろうさ」
近くにある椅子に千冬は身を預けるとネクタイを少し緩めた。ずっとつめていたため疲れたのだろう。
「しかしこのまま行けば更識との対戦はもしかするともしかするかもしれんな」
千冬は少し口角を上げながら笑みをこぼした。
寮に帰ってから響は1人で食堂で夕飯を食べていた。今日のメニューはカツカレーだ。
「んーここの食堂って何でもうまいなー。次はなに食ってみるかー」
カツカレーを租借しながらつぶやいていると不意に後ろから声をかけられた。
「ちょっとよろしくて?」
「何のようだよオルコット」
「あら?声だけでわかりましたの」
少し声をかけられただけで自分だと当てられたことにセシリアは関心の声を上げた。
「相席しても?」
「好きにしな」
カツカレーの主にカツの部分をむさぼりながら響はセシリアに返答する。
「もう少し優雅に食べられませんの?鳴雨さん」
「なんでお前にそんなことまで言われなくちゃならねーんだっての。つか私の名前覚えたのか」
モグモグと租借しながらも響はセシリアのほうを見た。ちなみにセシリアの夕食はカルボナーラスパゲティだった。響はそれを見てセシリアに聞いた。
「なんだフィッシュ&チップスじゃないのか」
響の発言にセシリアは顔を真っ赤にして反論した。
「わ、わたくしだって自国の料理ばかり食べているわけではありませんわ!!それに貴女の食べているものだって日本で生まれたものじゃないじゃありませんの!!」
「あーはいはい、わかったわかった。それで何のようだよ」
軽く流しながら響が聞くとセシリアは荒かった息を整えると軽く咳払いをして響に告げた。
「鳴雨さん。貴女をわたくしの友人にして差し上げますわ!」
セシリアが高らかに宣言している時も響はカレーを食う手を休めなかった。
「って聞いてますの!?」
「うん聞いてる聞いてる」
そういったところで響はカレーを食べ終わりお冷を一のみするとセシリアに返した。
「けどなんでいきなり友人にしてやるなんて?この前私はお前にそれなりに失礼なことを言った覚えがあるけど?」
「確かに貴女があの時わたくしに失礼なことを言ったのは事実ですわ。ですがいい案を下さったのもまた事実です。それに貴女の考えたあの案でわたくしがあの織斑一夏を倒せばわたくしの力を疑う者はいませんわ」
目に強い光を宿しながらセシリアは告げるものの、響はそれを水を口に含みながら聞き。水を飲み終わるとセシリアに告げた。
「どうしてお前はそこまで一夏を……いんや、男を毛嫌いしてるんだ?」
「え?……そ、それは男なんて生き物はみんなガサツで礼儀がないですし。それに……」
そこでセシリアが言葉に詰まる。
「それに?」
言葉に詰まるセシリアに響がさらに追求する。
「……………」
だがセシリアは言葉をつむごうとせず押し黙ったままだ。その様子を見て響が溜息をついて立ち上がる。
「言いたくないんなら別に言わなくていいさ。……でもお前の物差しで全部の男が同じだと思わない方がいいぜ」
「ですが……」
そこまで言いかけたところで響はセシリアの唇に人差し指を当て黙らせる。
「だから無理して今言う必要はないっての。まぁ友達になる件は私は別にいいぜ。よろしくなオルコット」
響がセシリアに告げるとそれが嬉しかったのかセシリアはパッと明るい顔になり大きく頷いた。
「はい!よろしくお願いいたしますわ。ですがわたくしのことは名前で呼んでくれて構いません」
「そっかじゃあよろしくなセシリア。私の事も好きに呼べ」
「はい。わかりましたわ響さん」
セシリアも響のことを名前で呼ぶことにしたようだ。その後響はセシリアが夕食を食べ終わるまで待ちその日は分かれることにした。
部屋に戻るとベッドに寝転んでいた本音がニマニマとした顔で響を見つめていた。
「……なんだよニヤニヤしやがって、気持ワリーな」
「んー?だってさーひーちゃんさー、せっしーとも友達になったじゃーん。友達つくんないみたいなこと言っといてさー」
「見てたのかよまったく。……まぁあっちが友達にしてやる的なこと言ってきたからなー。ホントは断るつもりだったんだけど……あいつなーんか隠してる気がしたから気になってさ」
シャワーを浴びるためクローゼットから寝巻きと下着を取り出しながら言うと本音が寝返りを打ちながら、やはり笑顔を絶やさずに言う。
「やっぱりひーちゃんはやさしーよねー。そんな風に人を寄せ付けないオーラ出してなければもっといっぱい友達できると思うけどなー」
「別に来る奴を拒んだりはしないって、よっぽどの奴じゃなければね。そんじゃシャワー浴びてくるわー」
響が脱衣所に入ったのを見ると本音は小さくつぶやいた。
「……本当にひーちゃんはお人よしだよねー。そこがいいんだけどさー」
同時刻セシリアもまたシャワーを浴びていた。だがその顔はどこか熱を持ったように紅くなっていた。シャワーによるものではないことは明白だった。
「鳴雨……響さん……」
セシリアが呼ぶのは先ほど友達になったばかりの響の名前だった。そしてセシリアの中で繰り返されるのは先ほどの響の言葉。
――――お前の物差しで全部の男が同じだと思わない方がいいぜ――――
「いったい……どういうことなのでしょうか?」
セシリアの悩みは募っていくばかりだった。
某所何処にあるのかもわからない研究所でその人物はモニタに写る一人の人物をじっと見つめていた。モニタに写っているのは響だった。そして再生されているのは響の深度リンクのところだ。
「ふーん。あの子深度リンクができたんだー……おもしろいなー。あのちーちゃんだって一週間かかって会得したのにあの子はものの5分もかからずにやっちゃうなんて。……それに私が作ったISをゴミクズ機械っていう人も初めて見たなー」
そう、この人物こそISを開発した張本人篠ノ之博士こと篠ノ之束だ。束は動画を見ながら口元を不適に歪ませた。
「確かこの子の名前はっと……。あったー鳴雨響ちゃんか。いよっし!!この子はいまからびっきーだ!それもそうだけど、あんなに面白いことしてくれるんだからちょっとしたご褒美をあげないとねー」
束は言うと研究所の奥のほうに行き毛布がかかっているところまで行くとその毛布を勢いよく取っ払った。そこに鎮座していたのは藍色を基調とし、ところどころに金色の彩色がしてあるISだった。
「私を楽しませてくれる子にはお礼をしないとねー。本当は試験機で終わりにして破棄するつもりだったけど……びっきーにあげちゃおー。そうと決まれば調整調整~♪」
鼻歌交じりにそのISをいじり始めた束の顔は本当に楽しそうに笑っているし、その瞳はまるで新しい玩具を手に入れた子供のように爛々と輝いていた。
後書き
以上です
セシリアさんがマジでチョロリアさんに……
まぁそんなことは気にしない
深度リンクというのは普通のシンクロとは違いISにもっと引っ張り込まれると言うかそんな感じと思ってくれればいいです。それによって力も上がります。
感想、ダメだし、アドバイスお待ちしております。
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