SAO――とある奇術師は閉ざされた世界にて――
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
一章 五話 とあるボロ店での勧誘
前書き
先に言っておきます。
あとがきのあれは、アスナを貶めるものでは決してありません。
ギャグなんです。
何のことかわからない人はスルーしてください。
アスナの表現にイラついたという人にはすいません。
とにかく本文には全く問題はないと思うので、どうぞごゆっくり。
「ラーク君、次のボス戦に出てくれない?」
「無理だな」
はい、話は終了。
俺の目の前に座る紅白美人さんは、ガックリと肩を落とした。
色々あったあの日から、3日が過ぎた。
何かをする気力がなくて、それまでの睡眠不足を取り戻すように俺はこんこんと眠り続けた。
そんな俺の元にやってきたのは白馬の皇女・・・ではなく、攻略組最強ギルド”血盟騎士団”ーー通称KoBの副団長、SAO最強レベルの美人にして”閃光”の名を冠する俺の”知り合い”アスナだった。
「ちょっと話したいことがあるの」と言ってほほえんだ彼女に叩き起こされ、半ば引きずられる様にして連れてこられたのは、アルゲードに新装開店した、これまた俺の”知り合い”のスキンヘッドのイカツイ黒人巨漢、エギルの店だった。
開店したばかりの癖に微妙にアルゲード特有の薄汚れた感のある店内の片隅に腰掛け、妙な味のする茶をすすって、世界は冒頭に戻る。
「即答かぁ」
肩を落とすアスナに、少し言い訳。
「まあここ数日で、少しは検討してみたんだけどな」
「ボス戦への参加?」
「っていうか攻略組への復帰」
3日寝ている間に、何も考えなかった訳ではない。
3日前の事に少し思うところのあった俺は、結構真面目に今後の方針について考えてみることにしたのだ。
呻いて呻いて、時には叫んで隣のオッサンに怒鳴られて。
攻略組への復帰についても、その時選択肢の一つとしてでてきた。
多分、自分の道を見直すという点では、この上なく正しい道。
だが、俺の本来の目的からは遠ざかってしまう。
あの男を殺すという目的からは。
いくら道を見直すといっても、根本的な支えまで変えられるほど、俺は強くない。
だから、復讐から遠ざかってしまう道は、正直あまり・・・
いや、言い訳だな。
俺はただ、怖いだけだ。あの少女に再び会うのが。
あれだけの感情をぶつけられて、そもそもあれだけのことをして、どんな顔をして出ていけというのだ。
ボス戦に出れば必然的にあの少女と出会う事になる。それは、今の俺には無理な話だ。
そんな感じの長い説明を全部はしょって俺はアスナに言う。
「ま、色々あるんだよ」
この辺りが俺の前に進めない理由なのだろうか。今の言葉でアスナが納得する筈がないし、俺も納得させる気がない。
よって、何らかの疑問が投げかけられると思ったのだが、アスナは意外にもすぐに得心のいった、といった表情をした。
「あ、フェイトにボコボコにやられたんだってね」
なっ・・・
一瞬息がつまって激しくむせる。
「ビンゴだね。ラーク君の驚いた所、初めて見たよ」
してやったり、といった表情のアスナ。
「な、何で知ってんだ・・・?」
「フェイトから直接聞いたんだよー」
くっ、まさか二人が裏でつながっていたとは。・・・いや、むしろこれは勧誘を断るチャンス!
「ほ、ほら。だったら知ってんだろ?俺、アイツ相手に指一本動かせなかったんだぞ?そんな奴がボス戦で戦えると思うかよ」
おお、我ながらその場しのぎ。
そこをクリアしてるから俺んトコまで来たんだろうに。
案の定アスナは直ぐに切り返してくる。
「大丈夫だよ。だってラーク君、守る戦いのほうが得意だし。」
何その断定。
「それはねぇよ。攻略組止めて、むしろ強くなったくらいだ。敵の動きも良く見えるようになったし、反応速度も目に見えて上がってる・・・と思う」
尻すぼみになったが、断定しよう。体感的には!主観的には!そう感じるのだ。
「まあ、そうかもね。」
アスナの肯定に多少驚く。
「確かに、最前線のモンスターと戦うだけでは手に入らない何かを、君は今の生活の中で手に入れたのかもしれない。」
アスナは一息ついて、続ける。
「けど、私が言っているのはそこじゃない。もっと根本的な所の事だよ」
いや、分かっちゃいるんだけどな。何かを守るほうが、気持ち的には強くなれることくらい。
アイツと出会った時から。
けど、俺にはもう・・・・
「悪い、アスナ。今は答えがでそうにねえんだ。」
そう言う俺に、目の前の美人さんは軽くほほえんだ。
「分かった。ボス戦は、一応明日の14時集合ってなってるから、気が向いたら、来て」
「サンキュ」
「気にしない気にしない」
ふと、終始真面目な雰囲気に、イタズラ心が疼いた。
「よう、”黒の剣士”」
「え!?キリト君!?」
年中真っ黒な”知り合い”の名に、案の定アスナが敏感に反応する。
光速で入り口の扉の方を振り向くアスナに、最高級の悪党の笑みを。
「残念。ウソです」
「······ラーク君?」
ニッコリ笑って小首をかしげたアスナさん。
思考より前に、体が強制的に土下座モード。
うん、ぶっちゃけレッドより怖い。
秒速五回の速度で頭を上下させる俺をたっぷり三十秒は見学してから、彼女はため息をついて席に戻る。
俺もアスナの顔を伺いつつ、そーっと席へ。
とりあえず、これで暗い雰囲気は払拭されたか。
アスナが一応普通に戻ったので、聞いた。
「んで?キリトとはどんな感じ何だよ」
するとアスナは困ったように、
「うーん、たいした進展は無いかなー。一応フレンドにはなれたけど」
「おおっ、それたいした進歩だろ!」
思わず身を乗り出した俺に、アスナが少し照れたように顔を赤らめている。
冒頭からそれとなーく書いているように、アスナは美人だ。
SAOで五指に入るくらい。
少し誇張すると、”蒼の妖精”なんてなんぼのもんじゃーって位に。
実力も相まってSAO中の男の憧れの的な彼女なのだが、先程の反応から見ても分かるように、なぜかキリトというゲーム狂もどきの男に惚れてしまったらしいのだ。
んで、鈍感キリト君はそれに気づかない。
何と未だに一緒にお茶をしたこともないという。
まあ、見ている方にとっては、これ程面白い見世物はないわけで、一応俺は、アスナの恋愛相談係・・・とは名ばかりの、ただの野次馬をやっていた。
「やっぱり避けられてるのかなぁ」
アスナが物憂げに呟く。
その、そこにあるだけで美人粒子を撒き散らす顔を見ていると、何で俺なんかがアスナの前にいるのか不思議に思えてくる。
っていうかキリト、この顔がお前に向けられてると世間に知れたら、お前確実に殺されますよ。
「いっそ、ガンガンいっちまえよ。お前なら大丈夫だと思うぞ」
「えー、そうかなあ」
「むしろ色仕掛けとか」
ニヤニヤとともに俺。
野次馬はいつでも無責任なのです!
投剣用のアイスピックが飛んできたけど。
再び土下座モードに入りそうになる俺だが、アスナがすっとんきょうな声を上げたことで、止まる。
「あ!もうこんな時間!」
店の時計を見たアスナはいそいそと立ち上がって言う。
「ゴメン、用事があるから、これで。」
たったっと出口の扉に駆け寄って、最後にこちらを振り向く。
「ボス戦、待ってるから!」
何かと几帳面な性格である。
「あいあいさぁー」
俺は気の抜けた返事とともに、手をふって見送った。
後書き
作「話が遅々として進まないな」
ラーク「テメェが無駄な漫才パート入れるから悪いんじゃねえのか」
「いやー、明るくするって言った手前、あんまし真面目パートじゃどうかなーと」
「んで、思いついたのがアスナいじり、と。」
「うん、そう。・・・っていうかアスナが原作のイメージ通りに書けてたか甚だ心配。もっと明るい感じが出ればいいんだけど」
「んー、あんなもんじゃないか?原作でもキリトと、あははーうふふー、なキャラだろ?」
「ラーク、それは最高に失礼・・・・・」
アスナ「ラーク君・・・・・・?」
ラーク「ぎゃああああああああ!!!!」
作「さよなら、ラーク」
ラーク「ごめんなさいッッ!!あの時俺はバカだったんですッッ!!」
アスナ「こんにちは、そしてさようなら」
作「そんなわけで」
アスナ「御愛読、御感想よろしくですっ」
作「ラーク、良ければ地獄の下のこと、教えてくれよ」
ラーク「天国だよ・・・地獄の下は、天国だったんだ・・・」
作「完璧に逝ったな」
ページ上へ戻る