ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第15話
Side 渚
コカビエルの襲撃事件から数日後。少し気になる出来事が起きた。仮の駒が勝手に排出されたのだ。悪魔の時間間隔は人間とは違うので仮の駒の最大有効期限は10年だ。それを過ぎると、排出されるらしい。しかし、僕はまだ半年もたっていないのに排出された。排出する際には主である悪魔の承認が必要なのだが、そんなものは行っていない。謎の現象だ。
そんなことはさて置き、放課後の部室で、予想外の人物がいた。ちなみに、僕以外の部員は全員そろっている。
「やあ、ご無沙汰しているね」
1人は緑のメッシュを入れた女の子。言わずもがなゼノヴィアさんである。彼女は駒王学園の制服を身に纏っていた。
「ゼノヴィアさんは・・・・・・なぜここに?」
僕が問いかけると彼女は無言で、悪魔の翼を展開した。
「・・・・・・・なるほど」
理由がわかったのでうなずく。どうやらリアス先輩の眷属になったらしい。ゼノヴィアさんは肩をすくめた。
「神がいないと知ったんでね。破れかぶれで悪魔に転生したのさ。リアス・グレモリーから『騎士』の駒をもらってね。デュランダルがすごいだけで私はそこまですごくないらしい。キミとは違い1個の駒の消費で済んだみたいだぞ。そして、この学園に編入させてもらった。今日から高校2年の同級生でオカルト研究部所属だそうだ。よろしくね、渚くん♪」
「・・・・・・・最後はイリナの真似かい?」
キミ本来のキャラとは全然違うぞ。正直、悪いものを食べたとしか思えない。
「そうだが・・・・・・・。赤龍帝にもやってみたが、なかなか上手くかないものだ」
「真顔で言わなければ大丈夫だよ。それと、僕のことは渚、もしくはナギでいい」
「わかった。私のこともゼノヴィアと呼び捨てでいいぞ」
しかし、神が死んだのを知ったからって悪魔に転生するとはね。やけっぱちになったのか。まあ、今まで信じていたものが実はってなったらわからなくもないか。
「まあ、デュランダル使いが眷属にいるのは頼もしいわ。これで祐斗とともに剣士の二翼が誕生したわね」
リアス先輩は楽しそうに言った。まあ、主がいいと言うんだから、いいのだろう。
伝説の聖剣の使い手が味方なのは心強い。グレモリー眷属が強化されるだろうしね。ただ、悪魔が聖剣を振るうのは違和感を感じなくもないけど。
「そう、私はもう悪魔だ。後戻りはできない。・・・・・・だが、これでよかったのか? しかし、神がいない以上、私の人生は破たんしたわけだし・・・・・・・。だが、元敵に下るというのも・・・・・・うーん・・・・・・もう後戻りはできん。この際神に仕えるために諦めていたことをしよう」
なにやら、頭を抱えてぶつぶつとつぶやき始めてしまった。どうやらゼノヴィアさんもやっちまった感を感じているようだ。
「そう言えば、イリナは?」
兄さんが思い出したように言う。
「イリナは私のエクスカリバーを含めた五本とバルパーの遺体を持って本部に帰ったよ。統合したエクスカリバーは破壊されたが核は残っているからね。奪還任務は無事成功と言うわけだ」
統合された陣のエクスカリバーは祐斗とゼノヴィアによって破壊された。エクスカリバーは核が無事なら、再び錬金術で鍛え上げることができるみたいなので大丈夫らしい。
「エクスカリバーを返しちまっていいのか? そもそも、教会を裏切っていいのかよ?」
そうそう、そこは気になる。
「エクスカリバーは返さないとまずい。あれはデュランダルと違い私以外にも使い手は見繕える。私にはデュランダルがあれば大丈夫だ。裏切ったことについては神の死亡について指摘したら何も言わなくなったよ。教会は異端、異分子をひどく嫌う。たとえ、デュランダルの使い手だろうと捨てるのさ。それこそ、アーシア・アルジェントの時のようにな」
兄さんの質問にゼノヴィアは自嘲しながら答えた。
「イリナは運がいい。怪我をしたために神の不在を知らずに済んだのだからな。私以上に信仰心が強かった彼女だ。神が死んでいることを知れば、精神の均衡はどうなっていたかわからないだろう」
敬虔な信徒にその真相はつらいだろう。自分の信じていたものはすでにいないのだから。
「ただ、私が悪魔になったことをとても残念がっていた。悪魔になった理由は言えないし、何とも言えない別れだったよ」
目を細めてゼノヴィアは言った。そうなると、次に会うときはイリナは敵になるわけか・・・・・・。ゼノヴィアは複雑な心境だろう。
「教会は今回のことで悪魔側に打診してきたわ。『堕天使の動きが不透明で不誠実なため、遺憾ではあるが連絡を取りたい』と。バルパーの件は過去に自分たちが逃がしたことに関して謝罪してきたわ」
遺憾ね。まあ、わからなくもないけど。でも、謝罪があるとは思わなかったな。
言い忘れていたが、破壊された体育館などは、あとから来た魔王様の関係者が直してくれた。たった一晩で修復させる悪魔の技術にびっくりです。
「今回のことは堕天使の総督アザゼルから、神側と悪魔側に真相が伝わってきたわ。この事件はコカビエルの単独行為で、他の幹部たちは知らなかったそうよ。コカビエルは戦争を起こそうとした罪で『地獄の最下層』で永久凍結刑が執行されるわ」
二度と日の光は拝めないわけですね。もう会いたくもないので、好都合だ。
「『白い龍』が、回収して今回の事件は終わったわ」
『白い龍』の単語を聞いた時、兄さんの表情が変わった。『赤い龍』と『白い龍』は戦い合う運命だ。現時点で、彼は『禁手』に至っているが、兄さんはまだ至っていない。圧倒的に兄さんの方が弱いのだ。強敵との避けられない戦いに不安もあるだろう。
「近いうちに天使側の代表、悪魔側の代表、アザゼルが会談を開くらしいわ。アザゼルから話があるだとか。そのときにコカビエルのことを謝罪するようね」
顔をしかめるリアス先輩。敵勢力なだけあって、いい感情はないみたいだ。
「私たちもその会場に招待されているわ。事件に関わったから、報告をしないといけないの」
「マジっすか!?」
兄さんが驚く。他のみんなも驚愕の表情を浮かべていた。
「そうだ、ゼノヴィアに聞きたいんだけど、『白い龍』は堕天使側なのか?」
「そうだ。アザゼルは『神滅具』を持つ神器所有者を集めている。何を考えているかはわからないがね。『白い龍』は『神の子を見張る者』の幹部を含めた強者の中で四番目か五番目に強いと聞く。現時点でライバルのキミよりも断然強いだろう」
なるほど、だから彼はコカビエルごときなんて言えたわけだ。しかし、前途多難な兄さんだな。
「・・・・・・そうだな、アーシア・アルジェントに謝ろう。主がいないのならば救いも愛もなかったわけだからね。すまなかった。殴ってくれてもかまわない」
アーシアさんに向けて、ゼノヴィアが頭を下げた。
「私はそんなことするつもりはありません。私は今の生活に満足しています。悪魔ですけど、大切な人に出会えたのですから。私は本当に幸せなんです」
大切な人の部分で兄さんを見ていたのは、彼女なりのアピールなのだろう。兄さんは気づいてないみたいだけど。
「・・・・・・・ありがとう。しかし、クリスチャンで神の不在を知ったのは私とキミだけか。断罪するなんて言えないな。尊敬されるべき聖剣使いから異端に。私を見る目の変わった彼らのことは忘れられないよ」
ゼノヴィアの表情に影が落ちた気がした。
「それでは、私は失礼する。転校するにあたって、まだまだ知らねばならないことが多いのでな」
扉に向かって、ゼノヴィアが歩き出す。
「あ、あの!」
しかし、アーシアさんが彼女を引きとめた。
「今度の休日、みんなで遊びに行くんです。一緒に行きませんか?」
屈託のない笑顔で言うアーシアさん。ゼノヴィアは驚くように目を見開いた。
「今度機会があればね。今回は興が乗らないかな。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「今度、私に学校を案内してほしい」
「はい!」
二人とも笑顔になっている。友達まであと一歩というところだろう。
「聖剣デュランダルの名にかけて。そちらの聖魔剣使いとナギと戦いたいものだ」
「いいよ。今度は負けない」
「うん。受けて立つよ」
僕と祐斗に投げかけられた言葉に、笑顔で返事をした。
「それと・・・・・・」
何か言いたげなゼノヴィアに僕は首をかしげる。
「ナギ、よかったら私と子供を作らないか?」
その発言に部室の温度が下がった気がした。
突然の言葉に顔が引きつっている僕、祐斗、小猫ちゃん。刺激的な言葉に鼻血を出している兄さん。顔を赤くしているアーシアさん。表情が険しいリアス先輩と朱乃先輩。
後者二人から発せられるオーラが部屋の気温をどんどん下げている。
「神に仕えていた時は女の喜びは捨てたのだが、今は悪魔だ。なので、私はさっき考えて、子供を作ろうと思ったのだ」
うん、なんで僕なのかな?
「そして、子供には強くなって欲しい。そこで適任なのがナギ、キミなんだ。コカビエルを倒した一撃はすばらしかった。だから、協力してくれないかい?」
どう答えたらいいんだろうね、これ? いろいろな段階をすっ飛ばしていることを自覚しているんだろうか?
僕を見つめてくるリアス先輩と朱乃先輩が恐い。返答を間違ったら何をされるかわからなかった。
とりあえず、この後に起こったカオスについてはあえて語らないことにしようと思う。誰も幸せにならないから・・・・・・・・。
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