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SAO――とある奇術師は閉ざされた世界にて――

作者:亜流科那
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一章 三話 とある殺人鬼は妖精と出会う

 
前書き
初感想!
本当にありがとうございます! 

 
「・・・ビンゴ」
隠蔽スキルで姿を消して赤茶の壁に張り付いた俺は、そう呟いた。




この場所は四十五層のフィールドにあるかなり広めの安全地帯だ。

フィールドに入る前に俺が目星をつけてきた”アベンジャーズ”の本拠地の候補の一つである。

プレイヤー五十人は収まりそうな広いスペースがある上、迷宮区へと続く本道から外れて一時間は歩くだけあって人通りも全くない。さらに安全地帯の為モンスターもでないと、奴等にとって最高の立地条件なのだ。

そんなわけで快晴の空の下、太陽の恵みなど全く届かない洞窟を鬱々としながら、時々出てくるアリ共を蹴散らしつつ、時にはオートパイロット状態で歩きつつ寝てみたりしてみて、迷ったりした俺は、結局二時間ほどかけて目的のこの地に到着し、そこに溜まる三十人程の男女――レッドギルド”アベンジャーズ”を発見したのだった。



「戦力は意外とありそうだな」
広場の入り口に立った俺は再び呟く。

洞窟の壁が赤土でできているため、紅のコートにハイディング補正が付いているのか、普通なら視覚なり索敵なりで即見つかるであろう位置にいる俺は、全く気付かれる気配がない。

「前衛と長モノと壁がバランス良く揃ってる・・・・」
呟き続けつつ、出現させた手帳に分かる情報を書き込んでいく。

”罪人殺し”という通り名からは、どうも俺が突発的に殺しをやっているようなニュアンスが感じられるのだが、決してそんなことはない。
どちらかといえば俺は事前の情報収集を大事にする。

流石に俺だって、ある意味そこらのボスより恐ろしい奴等を相手にするのに、何もなしで突っ込んで行くほどバカではない。

「へえ、結構女プレイヤーが多いな」
御丁寧に顔から体格まで全て現実準拠の性別逆転不可のSAOで、女性プレイヤーはそれなりに希少種だ。
ギルドに一人いれば、おおビックリ、といった感じだ。
それがどうだ。このギルドには女性プレイヤーがなんと九人。破格の多さである。

「防具は・・・ニドヘグ製で統一されてんな」
ニドヘグ製とは、プレイヤーメイドでも最高級レベルの防具工の作品の総称だ。
防御力というよりは、小回りのよさと軽さを追及した、集団戦闘用の装備である。
が、機能の高さゆえ、そこらのレッドに手の出るような価格ではない。

「親玉は・・・」
もう一度広場を見渡してみる。
「流石にアホみてえに王座に座ってる訳ねぇか」

そして、広場に散って談笑している彼らをみて、観察結果を一言。

「妙だな」

そう、妙なのである。

まず、普通のレッドギルドで、こんな風に前衛後衛が分かれていることはまずない。
根本的に、殺す、という目的に特化した彼らは、攻撃に向かない長モノや、盾を装備する事はない。大抵はコテコテの前衛装備だ。

さらに、集団戦用の防具でメンバー全員が統一されているというのもおかしな話だ。
そもそも彼らにとって集団戦などあってないようなものなのだ。
下層地帯のパーティーに集団で襲いかかることはあっても、ボス戦のように、役割ごとに別れた部隊で組織的に戦うということは、全くない。
相手がどれだけ格上だったとしても、レッドプレイヤー達が彼らの衝動を押さえることはないからだ。
彼らは勝つために戦っているのではないのだ。

ただ殺す。その為だけに戦う彼らに、敵の攻撃を受け続けるだけの壁などできるはずがない。

壁がいないのなら、役割分担アリが前提の、組織的高機動戦闘用の防具を、わざわざ高いコルを払って揃える必要もない。

そして、一番おかしなのは彼らの雰囲気だ。

全くレッドギルドらしさがない。

狂った声の満ち溢れるカオスな空間でもないし、全員がどこか遠くを見据えていて隣の奴のことすら見えていない、という状態でもない。

あまりに普通すぎるのだ。
ただ集まった仲間が、話して、笑って。

何より、プレイヤーカーソルがレッドになっているプレイヤーが、圧倒的に少ない。四、五人といったところだ。

「こいつら本当にレッドギルドか・・・?」
結構本気で頭を抱える俺。

その目の前を、広場から出てきた四人の男達が歩いていった。
「・・・ま、いっちょ腕試しといきますか」





「なんだてめぇ!」
これが、先ほどの広場から二十分ほど歩いた小部屋で、目の前でハイディングを解いた俺を見た男達が放った第一声。

ワオ、何かテンプレート。現代教育をちょっと疑うね。

「”罪人殺し”って言えば分かるかな?」
半ば挑発するように放った俺の言葉で、男達の間に緊張がはしる。

「・・・どこからつけてやがった」
「知る必要はないさ。」
ここまでくると”在罪人殺し”の通り名も、ただの”人殺し”に改名しなければならない気もするが、とにかく俺は続ける。
「だって、お前等はここで死ぬんだから。」

その言葉と同時に、その場の全員が剣を抜く。

だが、男達が動く気配はない。むしろ、なにか言おうと迷うように口をパクパクさせている。

――けど、そんなの知るかっての。

俺は敏捷力全開で飛び出す。
狙いは右端の奴。奴だけはレッドプレイヤーだから、俺が先にてを出しても、俺がレッドになることはない。

勢いに乗って放った、片手剣単発技”ヴォーパルストライク”が男の胸に突き刺さる。

極限に低い俺の筋力値だが、もともと重い技の威力と攻撃部位の補正、敏捷ステータスによるダメージ加算によって、男のHPを削りきる。

仲間が四散したことで、ようやく我にかえったのか、俺の左に位置する男が斬りかかってくる。

だがその頃には、俺もソードスキル後の硬直から回復している。頭を狙ったその一撃を剣で受け流し、返す刀で胴を切り払う。

「なあ、何であんた等レッドじゃないの?」
後ろへ転がっていく男と入れ替わるように俺の前に出た第二の男が発動した片手剣四連撃”バーチカルスクエア”を横へ転がってかわす。

「まさか名前だけの腰抜けギルドとか」
「ふざけるなぁ!」
どうも勘に触ったらしいです。

体勢を立て直した第一の男と、第二の男の横から出てきた第三の男が同時に剣をふりかぶる。

「遅い」

片手剣六連撃”バーチカルタクティカル”
特大の威力と範囲を誇る俺のソードスキルが敏捷値の差で勝った。
六芒星の剣技は、第二の男にクリティカル。その体を消滅させた。第三の男にとっては、当たり所が良かったらしく、奴はまだHPを数ドット残している。

「うおおおお!」
レッドギルドにしてはまともな叫びをあげて、第一の男が突っ込んでくる。

片手剣単発技”レストブレード”
上段から放たれる、片手剣最高レベルの威力を誇るスキルだ。

が。

「当たんなきゃ意味ねえよ。」
軌道はバレバレ出だしも遅い。これで俺が避けられないわけがない。

大技をかわされた第一の男が、スキル後の硬直時間を課せられる。
動けない彼の背中から、しっかりと心臓を狙って放った再びの”ヴォーパルストライク”がHPを全損させる。

硬直がとけた俺は、恐怖からか座り込んだまま動けない第三の男の元へと歩を進める。

彼の首元に剣を押し当てて、聞いてみる。

「なあ、あんた等のギルドについて教えてくれるなら、命だけは助けてやる。」
最後まで言い終わらない内に、首を横に振られた。

試しに剣を更に深く食い込ませてみる。
ヒィ、と、かすれたこえをさせたが、口は開かない。

「じゃあいいや。・・・さようなら」
言って、剣をふりかぶる。それをまさに降り下ろそうとした、瞬間。



「ちょっと!何やってるの!?」



声のした方をふりかえる。

目に入ったのは、蒼。

全身を蒼で統一した少女が、そこにいた。

肩までかかる、これも蒼い髪、目は流石に蒼ではないが、大きく開いている。スッと通った鼻筋に、子供のように線の細い体。

美しいというよりはかわいいと言ったほうが正しいその少女を、俺は新聞で見たことがあった。

「・・・”蒼の妖精”フェイト」



それが、俺と妖精の、最悪といっていい出逢いだった。 
 

 
後書き
作「さて、今回から始まりました、”地獄の(J)底から(S)こんにちは(K)あの頃(A)俺は(O)馬鹿だった(B)”のコーナーです。」
ラーク「長ぇタイトルだな、オイ」
「これは、本編のあまりの暗さに見かねた作者が何とか読者の人気をとろうとムリヤリ作ったおまけコーナーです」
「暗いっつっても書いてんのてめえだろ?」
「でも殺してんのは君だよね。」
「殺してんの描写してんのはお前だな。」
「・・・・・・・・・・ホラ、ラーク!次のセリフ!」
「あいあいさぁー・・・・・えっと、このコーナは、死んで地獄に落ちたこの俺、ラークが、生前の自分をいろいろと・・・・ってオイ!」
「ん?そんなに語るのいや?」
「いや、勝手に人を殺してんじゃねえ!」
「大丈夫大丈夫。本編のラークは死んでないから。」
「・・・・・そういう問題かよ」
「うん、そういう問題。ま、とりあえず安心して地獄で生きなよ」
「地獄で生きるとかすっげえ矛盾。てか地獄行きは確定かよ」
「君、自分が何人殺したか覚えてないようだね」
「・・・・あの頃俺は馬鹿だった!!」

「というわけで」「感想等よろしくです!」 
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