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戦国異伝

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第百三十話 南蛮具足その二

「竹千代は律儀じゃ、出すと言えば絶対に出してくれる」
「徳川殿程の律儀な方はそうはおられぬかと」
「戦国の世、裏切りが常じゃ」
 それこそ親子兄弟で争い続けている、そんな中で約束なぞ塵芥の様なものだ。
 しかし家康はその中でもなのだ。
「あ奴は絶対に裏切らぬ」
「そして約束もですな」
「絶対に守る、そういう奴じゃ」
「今では天下一の律儀殿と呼ばれていますな」
「まさにな。ではな」
「はい、徳川殿につきましても」
 文を送る、そうなった。
 そうした話をしてそのうえでだった。 
 信長はその南蛮の具足と陣羽織で颯爽と出陣した、その時見送りの帰蝶に対して馬上から笑顔でこう告げた。
「では行って来るぞ」
「ご武運を」
「うむ、必ず生きて帰る」
 こう帰蝶に告げる。
「勝ってな」
「暫く織田家の周りでは大きな戦はありませんでしたが」
 四国の大半を手に入れてから数年の間はそうだった、その間織田家は政に専念でき家中も穏やかであった。
 それで帰蝶もこう言ったのである。
「しかしそれもですね」
「まだ戦国の世じゃ。戦をせねばならぬ時もある」
「そういうことですね」
「少なくとも朝倉家、越前での戦はこれで終わらせる」
 戦争をするからには一度でだというのだ。
「だからじゃ」
「今からですね」
「行って参る」
「留守はお任せを。それにしても」
 帰蝶は今度は信長自身を見た、その具足と陣羽織をだ。
 そのうえで微笑みこう言ったのである。
「この度はまたお見事ですね」
「よいと思うか」
「殿によく似合っています」
 これが帰蝶の見立てだ。よいというのだ。
「何時になくよいかと」
「ではこれからもこの格好でいくぞ」
「そうされるとよいかと」
「本朝の具足もよいが南蛮の具足もよい」
 無論陣羽織もだ。
「わしとしてもよいと思ったからこそ着けておるのじゃ」
「そういうことですね」
「ではまずは都に上洛する」
 そうしてからだった、十万の兵を集め。
「岐阜に帰れば茶を頼む」
「用意しておきます」
「やはり帰った時の茶が一番美味いからのう」
 その茶の話もしてそのうえでだった。
 信長は東海の軍勢を率いて上洛した、既に近畿やその周りの織田家の領地の国々、そして四国から兵が集められた。彼等は都に集まっていた。
 信長が主な家臣達、東海の軍勢と共に都に着いた時には既に彼等も来ていた、元親が信長の前に来て一礼しれから言って来た。
「殿、それがしもまた」
「うむ、来てくれたな」
「越前の者達に土佐者の戦を見せてやります」
「頼むぞ、御主達にも頑張ってもらう」
「さすれば」
 元親の他にも長宗我部家の家臣達が揃っていた、その彼等も信長に頭を下げる。
 信長は彼等も入れた織田家の主な家臣達全てを連れて御所に来た、その彼等を見てだった。
 義昭は仰天した、そのうえで幕臣達に問うた。 
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