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恐怖政治

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第一章

                 恐怖政治
 その国は独裁国家だった、独裁者キムが全ての権限を握っている国家だった。
 言論弾圧も徹底しておりキムに少しでも反抗的だとみなされれば容赦のない拷問を受けて殺されていった。強制収容所もあった。
 国の至る所にキムの肖像画や像がある、個人崇拝も強制していた。
 キム一人の贅沢に国家予算が浪費され民生は破綻していた、国民は餓える餓死者まで出ていた。
 だがキムは贅沢を止めない、しかも。
「軍の予算もだ」
「はい、国家予算の二割ですね」
「常にですね」
「そうだ、例年通りだ」
 そうしろというのだ。
「いいな、そして軍もだ」
「軍もですか」
「軍にも監視をつけよ」
 こう側近達に言うのだ。
「そして少しでも怪しいところがあればだ」
「はい、その者を片っ端からですね」
「捕らえて」
「死刑にしろ」
 即刻だというのだ。
「裁判なぞ不要だ」
「怪しければその場で」
「即座に」
「処刑のやり方は残忍であればある程いい」
 キムはこうも言う、見れば丸々と太り髪の毛は前と旋毛からきている、丸眼鏡が妙に滑稽だ。その彼が豪華な黒い席に座って言うのだ。
「わかったな」
「では将軍もですね」
「怪しい者がいれば」
「そうだ、即座にだ」
 キムはまた言う。
「そうしろ、いいな」
「はい、親愛なる同志」
「そうします」
 側近達は敬礼して応える、だが。
 その彼等にも監視の目がつけられていた、キムの監視の目は国のあらゆるところに行き届き秘密警察はキムの手足だった。
 秘密警察はキム自身が統括していた、それが為に絶対のものがあった。
 国家はまさにキムのものだった、歯向かう素振りを見せただけで徹底的な暴力が待っていた。
 ある子供がキムの肖像画への礼を忘れると。
 そこに秘密警察の者達が殺到してそしてだった。
 両親も呼び家族全員を捕まえて徹底的に殴り蹴りこう言ったのだ。
「御前達は将軍様に礼をしなかった!」
「子供がそうなら親もだ!」
「その罪万死に値する!」
「ここで苦しみ抜いて死ね!」
 軍服の物達が無抵抗の者達を棒で殴り軍靴で蹴り飛ばす、それを公衆の面前で行い。
 一家が血塗れになり痣や傷を作っていき無残に死ぬまで攻撃を続けた、しかもそれで終わりではなかった。
 一家の屍を見据えながら民衆に言った。
「屍はこのままにしておく」
「この者達は将軍様い逆らったからだ」
 キムの尊称である、この将軍様というのが。
「若し弔う者がいれば同罪だ」
「そのことを覚悟しておけ」
 あからさまな恫喝だった、それもしてから。
 彼等は去った、皆その無残な亡骸達を呆然と、痩せこけた顔で見るだけだった。
 恐怖政治は続く、キムの虐政が。
 政府の高官も軍人達も彼の道具に過ぎなかった、キムだけが肥太る状況が続いていたのだ。
 キムは連日連夜国中から集めた美女達を侍らし美酒と美食を楽しんでいた。彼はその中でいつもこう言っていた。 
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