転生者拾いました。
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濁り銀
鍛銀
ついに白光教会が計画の始動を宣言し、実働部隊たる鏡の騎士が行動を開始する。
最初の目標は東部王国のダンジョン「霧の森」の大海龍を封じる巨石の破壊、および封印の解かれた大海龍の捕獲。
封印の解除には大量の魔力を必要とし高い集中力を要するため、万が一攻撃を受けた際の迎撃用に鏡の騎士が動員される。
大人数での移動になるため森の中を歩くことが難しい。そこで今作戦は転移魔法を使用しての移動だ。
だが、転移魔法自体が膨大な魔力を必要とするため、魔力が多い鏡の騎士が魔法を展開する司教を介して魔力を供給する。
「騎士殿、準備はよろしいですか?」
「問題ない。」
「問題ありません、司教様。アナタはどうですか?」
「はい、私自身なにも問題ありません。魔戦部隊、儀式部隊共状態は最高です。」
「では、始めようか。」
司教がひとこと「はい。」といい、展開された魔法陣の中心に立つ。それをワタシとゴルデお兄様が挟み、魔力を供給する為に両手を彼に向ける。
それを確認するや否や司教は術式を唱え始め、次第に魔法陣が光を放つ。
「皆の者、出陣だ。」
お兄様が魔法陣の外に控えていた教徒に声をかけて魔法陣に入るよう指示する。
「……行きます。」
全員が乗ったのを確認すると司教は転移魔法を発動させた。
次の瞬間目を開けるとあたり一面緑が広がっていた。
見渡す限り木、木、木。教会の石造りの壁ではない。
「無事転移出来たな。調子はどうか?」
「はい、悪くありません。」
ワタシたちが話している間も儀式部隊の面々が巨石を中心に魔法陣を描いていく。
「では、修道兵士たちをお願いします。」
「わかった。」
「それでは私は儀式を始めます。」
魔方陣が描き終ったのを見ると、司教が巨石の前で祈祷を始める。それに合わせて儀式部隊も祈祷を始める。
祈祷が中盤に差し掛かった、突然閃光が走り爆音が聞こえた。
「何事だ?」
「偵察を向かわせましょう。」
「そうだな。コルウスの部隊を行かせよう。コルウス!」
「はい、閣下。」
「聞いての通りだ。すぐにむかえ。」
「はっ!」
コルウスと呼ばれた青年が数人を率いて森に入っていく。そのメンバーの顔はどれも同じでポーカーフェイスを保っていた。なぜなら彼らは猊下の計画実現のために生み出された兄弟。しかも余計な行動を起こさないように指揮官役以外の者は欲求らしい欲求がないし感情もない。
「念のためワタシも付近の哨戒に出ます。」
「わかった。」
懐から手鏡を取り出してそこに手を突っ込む。すると手鏡に水のような波紋が浮かび上がり、手を引き抜くとそこには一振りの長剣が握られていた。その剣を腰に差し、ワタシも森に入る。
森を息を潜めて歩いているとおかしなモノにあった。
それはお互いをロープで繋いだ男女でなにか言い争っている。
あ、もつれ合ってこけた。あれが組んず解れつとか云うものなのか?
「……、他を当たろう。」
最近はあんなバカな男女が冒険者をしているのか?
出来ることならワタシもお兄様たちと遊びたい。でも、お兄様たちはとても忙しいし、他の者は感情がないし、司教も教主様も遊んでくれない。
「──ッ!なにをバカなことを、ワタシは。」
バカなことをする冒険者から視線を外し、周囲に目を配りつつその場を後にする。
その数分後、巨石の方から爆発音が聞こえすぐに戻る。するとさっきの冒険者がゴルデお兄様と斬り結んでいた。お兄様と斬り結べるほどの実力者だとは夢にも見なかった。そういえばあの女は?
急いで援護に入ろうと剣に抜くと、司教が止めに入った。曰わく、「修道兵士では太刀打ちできない。」曰わく、「冒険者の後ろにいる奴も相当な手練れ、儀式部隊に被害が出ない内に離脱する。」と言った。
ワタシは二つ返事で了承し、手早く転移魔法の準備をし、魔法陣に乗った儀式部隊と修道兵士を防御魔法で守護する。
しばらくして司教にとりなされてゴルデお兄様が魔法陣に入り、教会に転移する。
その際、冒険者の顔が見えた。その顔は先程の馬鹿げたことなど忘れさせるほど凛々しく、お兄様たちにはない魅力を感じた。
後書き
果てない知識欲
されど時は無惨に
次回 朱銀
どーも、ジョニー・Kです。
世間では盆休みと云われる今日この頃、私も盆休みに入りたく存じます。
なので、次回の「朱銀」は8月18日に公開します。
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