ネギまとガンツと俺
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第2話「受容」
〈今週は遅刻者ゼロ週間、始業ベルまで10分を切りました。今週遅刻した人には当委員会よりイエローカードが――〉
朝の放送が声高に流れ、人の群れが駆け足でタケルを追い抜いていく。
「……すご」
そのあまりの人の量につい、呟いてしまう。
タケルは麻帆良学園とやらに着ていた。学校に行くのだから当然制服なわけだが、その下にはガンツスーツが当たり前のように着込まれている。
とりあえず、情報収集も兼ねて生徒手帳に記されている通り、学園の領地に来たのはよかったのだが、一つ困ったことが起きてしまった。
この学園の大きさは半端ではない。どうやらいくつものエリアに分かれており、そこにそれぞれが登校すべき学校が存在してあるらしい。
――広い、広すぎる。
困ったように頭をかくタケルが、周囲を見渡してさらに困惑した表情になる。
まぁ、要するに――
「……迷った」
そう、彼は道に迷ったのだ。
ボソリと漏れ出た声は雑踏に紛れて、その音を失う。本当ならば学校の場所を誰かに聞けば早いのだが、皆が必死な顔で走り去って行くので、それも出来そうにない。
――顔が必死すぎて声をかけるのが恐いんだが……声かけても無視されそうな勢いだな。
というわけで、もはや自力で学校を見つけるしかない、と諦めたようにのんびりと歩くタケルだったが、不意に後ろから人がぶつかってきた衝撃を感じた。
普段ならばこちらも軽く弾かれるのかもしれないが、今はガンツスーツを着込んでいる身。ぶつかってきた相手のほうがむしろ心配だ。
「大丈……?」
慌てて後ろを振り向き、声をかけようとして動きが止まった。
「いたたた」
「いった~」
「いたい……」
3人が尻餅をついているのはいい。別に疑問視することはない。それほどの性能をガンツスーツは秘めているのだから。
だが、問題はその顔ぶれだ。
一人目。
「いたたた」
歳はタケルと大した差はないだろうが、制服の胸ポケットにjunior higi と刺繍されていることから中学生とわかる。
涙目で赤くなった鼻とお尻をさすっている美少女。
ツインテールで赤茶色な髪をたらしている。なかなかに強気そうなキリッとした顔立ちだが、将来は美人さんになるだろう。
別にこの娘に問題があるわけではない。
二人目。
「いった~」
お尻をさすっている、これまた美少女。この娘も制服の胸ポケットにjunior higi と刺繍されていることから中学生とわかる。長い黒髪にどこかほんわかとした目で、この娘も確実に将来美人だろう。
この娘も特に何かあるわけではない。
問題の三人目。
「いたい……」
お尻を押さえ、目に涙を溜めているその少年。まだ10歳ほどだろう。
「……子供?」
その不自然な光景に、タケルはほとんど無意識呟いていた。
――この辺には初等部でもあるのか? いや、確か初等部は隣の駅で降りなければならないはずだ。
だったら……とそこまで考えて手を叩いた。2人の美少女に顔を向けて一切の表情も崩すことなく彼は問いかける。
「誘拐?」
「何でですか!?」
初対面とは思えないほどに気合いの乗った突っ込みが返って来た。
――このツインテールの娘、出来る。
などとどうでもいい考えを頭にめぐらせている間に、少年がキッと立ち上がった。
「僕はガキじゃなくて、ネギ・スプリングフィールドです」
「……」
拳を固め、きっぱりといい放った少年の言葉はとりあえず無視。再び顔を少女に向けて首をかしげる。
「……じゃあ迷子?」
「ええ、多分そうやと思います」
今度は黒髪の少女が答えてくれた。
「って、無視しないで!!」
ネギという名前らしい少年がこれまた10歳とは思えないほどに見事な突っ込みを決めてくれる。
ここは関西圏なのだろうか? と真剣に考えこみそうになるタケルに、今度はツインテールの少女が問いを発した。
「あの、その制服は高等部のですよね。どうしてここに……?」
「……」
少女の問いに暫しの沈黙。
「……」
「…………?」
いきなり黙ってしまった高校生。あまりに長い沈黙に少女がさすがに訝しげな顔をしたとき、彼はなんとも素敵な答えを発した。
「……道に迷った」
「「「…………」」」
2人の少女と少年が同時に沈黙し、目の前の男をジッと見つめる。
――ああ、視線が痛い。
「「「「……」」」
タケルにとって地獄とも思える数秒の沈黙の後、
「あ、そういえばウチら用事あったんや」
黒髪の少女が沈黙を破るように手を叩き、ツインテールの少女もそれに「あ」と頷き、
「じゃあ、その……がんばってください。それに君もちゃんと帰りなさいよ!」
「……う、ぐう」
明らかに励ましという名の哀れみで応援され、しかも10歳程度の子供と同じように扱われたことにタケルが苦々しげに頷く。
「さっきはぶつかってしもうて、すいませんでした~」
「あ、ああ」
黒髪の少女の謝罪に、タケルは僅かに答え、それを見届けた少女達が笑顔で走り去ろうとしたとき、突如頭上から彼等に声がかかった。
「いや~、いいんだよアスナ君」
「え?」
彼女たちが足をとめ、声の方向に振り返る。
窓から顔を出し、少々疲れたような、それでいて人の良さそうな笑顔で手をふる男。彼は視線を彼女達から2人の少年に。
「お久しぶりで~す、ネギ君!」
男の顔を認めた2人の少女がそれぞれ対照的な反応を示す。
「おはようございます」
のんびりと答える黒髪の少女。
「た、高畑先生!?」
アスナと呼ばれたツインテールの少女はいきなり顔を赤くさせて口ごもる。
「……わかりやすい反応だな」
タケルが呟く。
最近の中学生はスレているとよく聞いたことがあるのだが、それはごく一部、もしくは嘘の情報だということが、よくわかる。
「え、何がですか?」
誰にも聞こえないように呟いたつもりだったのだが、目の前のネギという少年には聞こえたらしく、無邪気な顔で尋ねてくる。答えるわけにもいかないので「そんなことより、呼ばれてるぞ?」とだけ答えておく。
ネギは「あ」と呟き「久しぶり、タカミチ!」と元気に手を振る。隣でツインテール美少女、つまりはアスナが「げ、知り合い!?」と後ずさっている。
「麻帆良学園にようこそ、いいところでしょう? ネギ先生」
「「……先生?」」
黒髪美少女とタケルが同時に首をかしげ、尋ねる。ちなみに、アスナは未だにタカミチとネギが知り合いだということに驚いているらしく、声一つ発さない。
そんな彼らの様子にネギは気づかず「あ、はい、そうです」と呟き、コホンと咳払いを一つ。少年は改めて頭を下げて「この度、この学校で英語の教師をやることになりました。ネギ・スプリングフィールドです」
「ええ~~~!!」
と驚くアスナ。
「何~~!?」
と驚くタケル。
「わぁ……」
と驚く(?)黒髪美少女。
3者3様の反応を見せる彼等だったが、タカミチはさらに驚きの言葉を言い放った。
「ちなみに、タケル君は彼の副担任で、しかもネギくんには今日から僕の代わりに、明日からはタケル君が副担任でA組の君達を担任することになってるそうだよ」
「「「「何~~~~!!!」」」」
――どうなってんだ? 高一の俺に副担任? え、何コレ? 労働基準法とか大丈夫? っていうか、なんで俺がそんなことに? わけがわからん……しかもいきなりすぎだろ。
頭を抱えたくなってきたタケルの隣では、アスナがネギの首元を掴み、何やら好き放題言っているのだが、今のタケルにそんな言葉を聞く余裕は当然ない。
半ば青ざめた顔でタカミチとやらを見ると、その視線に気付いたタカミチがにっこりと笑った。
「これ……夢か?」
そうだ、きっと夢だ。夢に違いない。
あらゆる意味でガンツ初ミッションの時くらいに、いやそれ以上に意味不明なことばかりが起こっている。
もはや現実逃避でしか自我が保てないくらいに追い込まれたタケルが廃人の如く何かを呟いていると、トントンと肩を叩かれた。
「……え゛゛?」
幽鬼のような様態で振り返ったタケルに、黒髪美少女はぺこりと頭を下げた。
「ウチは近衛 木乃香です。これから宜しくお願いしますー」
「――あ……宜しく」
美少女な彼女の笑みに、タケルが顔を少し赤くさせてしまったのは無理のないことだったのかもしれない。
慌てて顔をそらしたタケルの耳に「はくちん!」とネギのくしゃみが聞こえてきた。ソレと同時に何らかの風が通り過ぎ、ズバと何かが裂ける音。
――なんだ?
首をめぐらせ、視線がアスナに辿り着いたとき、今度こそタケルは顔を真っ赤にさせた。
なぜか服が破れ、ほとんど下着姿のアスナがそこにいたからだ。
そして響く、アスナの悲鳴。
「キャーッ、何よコレーッ」
ぺたりと座り込んだアスナの悲鳴が既に人気のない通学路に響いた。
タケルは学園長室に連れて来られていた。先程まではネギにアスナに木乃香もいたのだが、彼等は授業だとかで話が終わって早々、先に部屋を出て行った。
そして、今は学園長とタカミチ、それにタケルの三人しかいない。
「……説明していただけますか?」
端的に。
何を、とは尋ねない。そんなことはわかっているだろうし、わざわざ聞く手間すら今は惜しい。タケルの余裕のない表情に、学園長は「ふむ」と立派に蓄えられたあごひげを弄り、口を開いた。
「その前に……君はこの世界の住人ではないな?」
――この世界の住人ではない?
何をばかな、と言おうとして口が止まった。
――突如ここに現れた。見覚えも聞き覚えもない。ここがどの辺かさえわからない。
なるほど、今まで思いつかなかったが、答えの可能性としてはありうる。
ガンツのような存在もあるのだ、ここが異世界といわれても今更信じられないことなどない。いや、むしろ考えれば考えるほどにそんな気がしてきた。
「……もしかしたら」
タケルが恐る恐るといった様子で頷くと、学園長は笑い、言葉を続ける。
「君はこれを知っとるかね?」
そう言って学園長は手の平サイズの黒い球を机の上に置いた。
さっきの質問は? とか考えながらもその黒い玉に目を凝らす。
――ビー玉……? いや、鉄の……違うな。
タケルがそこまで考えて、フとある存在に思い当たった。彼の中で黒い球で思い当たるものといえば一つしかない。
慌てて黒い玉を手に取り、表面を確認する。予想通りというか当然というか、そこには文字が浮かび上がっている。
【やまとたける を かうなら ねぎ の ふくたんにん に してください】
「……は?」
黒球が意味不明なことはいつも通りだ、だからそれはいい。だが、問題はこの2人、学園長とタカミチだ。今、この場にいるのは彼らだけということはこのガンツの存在を知っているのもこの二人だけなのだろう。
タケルは戸惑いながらも二人の顔を交互に見つめなおす。
――俺をかう? 意味があるのか? いや、そもそもなぜ2人はガンツの言うことを聞く? ……頭に爆弾でも埋め込まれたのか?
「なぜ、この玉のいうとおりに従った?って顔だね、タケル君?」
まるでタケルの思考を読んだかのように的確な問いがタカミチから発せられた。
ずばり言い当てられたタケルは気まずい顔を見せるが、反抗しても仕方がないと判断したのか、素直に頷く。
「……ええ」
「全てを答えるには話が長くなるが……ええかの?」
「……お願いします」
というわけで話を聞いたのは良かったのだが、本当に長い話だった。途中、不要な雑談も交えられたせいで余計に長く感じられてしまった。
世界の歴史からこの世界のあり方。さらにはその予言の全容。
「―――というわけじゃ」
「……なるほど」
とかいいつつも全く分かりませんでした。
――ごめんなさい。
要するに、これらのことは想定されていたことだから、そのとおりに動いても問題はないらしい、ということはわかった。
それとどうやらここは魔法と気の世界らしく、魔法使いが実在することも判明した。信じていなかったが、目の前で実演されてしまっては信じるしかないだろう。
本当は魔法の存在は秘密らしいので口止めされた。「なぜ、教えてくれる?」と尋ねると、学園長は「すぐにわかる」とだけ笑っていた。
――気にはなったが、すぐにわかるのなら問題はないだろう。
とまぁ、大事なことといえばコレくらいだろうか。
彼等が何を考えているのかはわからないし、自分に何を求めているのかも分からない。ただ、ここが異世界だとして、自分の居場所はどこにもないことだけは確実にいえる。
だから、彼等に従おう。ここでの住む所も、仕事も、給料もくれるというのだから文句はない。
「……少し、楽しそうだな」
誰にでも言うでもなく呟く。
陽も暮れかけて、いつの間にか下校生徒がほとんどいなくなった帰り道を歩く。無表情に、だがどこか優しい目で空を見上げるタケル。
と、一人の少女がタケルの目に入った。目元まで隠れる前髪のせいで正確な顔は分からないが、それでもタケルには見覚えがあった。
――あれはさっき学園長にもらった生徒名簿に載っていた……誰だっけ?
「……危ないな」
少女は本をめいいっぱいに抱え、前が見えずに階段を下りていた。フラフラとバランスをとりながらも一歩ずつ階段を降りる姿はどこか懸命で男なら目尻をさげてしまうだろうが、そのせいで余計に目についてしまう。
「……あ」
予想通りというか、当たり前というか。
とにかく彼女はバランスを崩した。階段の端を降りていたせいもあって完全に空中へと投げ出されてしまったのだ。
異様に高い階段で、その高さは約5Mだろうか。背中から落ちようとしていてそのまま落下すれば結構な重体になるかもしれない。
「……!」
反射的に荷物を捨てていた。距離は20M、ガンツスーツなら一秒もかからない。一歩目から全力で踏み出し、初速からトップスピードに乗る。余りにも力がこもっていたため、地面が砕けたがそんなことを気にしている場合ではない。
「きゃあああああ」
悲鳴を上げながら落下する彼女。
――間に合った!
「あ」
どこかで聞き覚えのある声が聞こえた気がしたが、今は構っていられない。落下点に辿り着いたタケルがその娘をキャッチしようと手を伸ばそうとしたとき、それは起こった。
「……え?」
フワリと彼女の姿が浮き上がり一瞬その場で停止した。再度ゆっくりと落下し始めるその女の子を丁寧に抱え、無事を確認してからその場に下ろす。
「今の……」
――魔法か? 一体誰がこんな目立つ場所で?
魔法は秘密厳守と聞かされていたタケルにとってそれは興味をそそられること。こんなところで魔法を使うのはここがどれほど目立つ場所であるかもわからないほどの単なる馬鹿か、はたまたわかっていて彼女の命を救うために反射的に魔法を使った熱血な馬鹿か。
「「あ」」
――ええ、見事にばっちりと目があいました。ええ、それはもう見事に。
杖を構えてこちらに走り出そうと身構え、さらには明らかに魔法を使ったといわんばかりの姿で、10歳の子供、ネギが突っ立ていた。
――どうりでさっき聞こえた「あ」という音に聞き覚えがあったはずだ。
「「……」」
お互いに固まって数秒、ネギがやっと何かを話そうと口を開いたところでどこからやってきたのか、これまた朝に出会ったツインテール美少女のアスナがネギとその杖を上手いこと捕まえてそのまま走り去っていった。
その中学生離れした運動に「お見事」などとどうでもいい感想を呟いたタケルだったが、すぐにため息をつく。
学園長が魔法を教えてくれたのはネギが魔法使いだったからだろう。子供のネギは無用心なので、出来るだけばれないようにフォローしろ……ってところか?
――いや、それにしても俺にフォローさせる意味がない気が……。
もっと別の魔法をしっている教師に頼めばよかったのではないだろうか、と考えてしまう。
「いや」
一度軽く首を振る。
どうせ考えてもわからないことだ。気にするだけ無駄というもの。それに彼等が何を考えていてもとりあえず今は従うと決めたのだ。
――あまり深く考えても仕方がない、か。
自分に結論づけたタケルがその場を離れようと一歩踏み出したとき、「ん」と声が聞こえた。
――そういえば。
彼女の存在を忘れていた。タケルは少し申し訳なさを感じながらも「大丈夫か?」と声をかける。
「え、あ、はいーー」
妙に間延びした声で答えた彼女は、髪に隠れた目をパチパチさせている。状況が理解できないのだろう、ゆっくりと立ち上がった。
「あの……助けてくれたんですかーー?」
おずおずと声をかけられたタケルはほんの少し考える素振りを見せて首を横に振った。
「いや、ネギがキミを助けた。後であいつに礼を言ったらいい」
「え、ネギ先生が?」
なぜか顔を赤くさせている少女には気にせず、背を向けて歩き出す。本を拾ったほうがいいだろうか、とも考えたが、ネギの仕業だろう、本がほとんど積みあがっていて実際に拾う必要があるのは1,2冊しかなかった。
そこまで紳士を気取る必要もないだろうと割り切って歩を進めることにする。先程捨ててしまった荷物を拾い、再び帰路につく。
「ふぅ」
自然とこぼれる吐息に、なぜかおかしくなって笑みが浮かぶ。空を見上げるとまだ赤く、太陽がその姿を残していた。
「見ましたか?」
タケルのいなくなった学園長室で、タカミチが学園長に呟く。
「……ふむ」
これまた学園長も頷く。
彼等は見ていた。タケルが爆発的な加速を得て少女を助けるところを。
「私には魔法も、気の動きも感じられませんでした」
「わしにも、じゃ」
「となると――」
信じられない、とても言いたげな顔で呟いたタカミチに、学園長がその先を答えた。
「わし等にすら感じられないほどの一瞬で魔法の虚空瞬動、もしくは気でいう瞬動術を発動したということじゃの……」
「ええ」
「君にも感じられなかったということは、彼は余程の達人じゃの」
タカミチは頷くことによってその答えを返し、何かを思いだのか、口を開いた。
「だとすると、さっきの魔法や気を知らないといった言動も……」
「うむ、ブラフじゃの」
「ハハ、これは一本とられましたね」
苦笑いを浮かべるタカミチだったが、学園長は首をふり、「いや」
「あれが嘘だとはわかっとったよ」
「え?」
思わず聞き返したタカミチに、学園長は虚空を見つめたまま、身を振るわせた。
「長く生きれば生きるほど、目でわかる」
「……?」
「彼は今まで、そうじゃな多分……竜宮寺の娘と同等か、いや恐らくはそれ以上に死に触れてきておるよ」
学園長の言葉に、タカミチは考えるような素振りをみせて頷く。
「……たしかに彼からはいくつもの殺しをやってきた人間にのみに漂う風格を感じましたね」
信用できるかどうかはまた別の話として。
黒球の言うとおりに敵に回さなくて良かった、と頷きあっていた二人がいたことを、タケルは当然しらない。
そう、タケルは知らない。
この世界にはいないはずのバケモノが現れていることを。
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