ハイスクールD×D 全てを喰らう者
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前書き
ネタです
朝――それは一日の始まりであり、学生であれば学校に、社会人であれば会社に、主婦であれば食事の準備をしなくてはいけないなど、少し憂鬱な時間だ。
当然、それは八時を過ぎても自室のベッドで爆睡している五十嵐隼人にもいえることだ。隼人は高校二年生の学生だが、今だに爆睡している。要は遅刻が確定である。
それから少し経つと、不意にインターホンがならされた。非常に小さい音だがその音は隼人の自室まで響いた。
「……まったく。来るなと言っているのに、飽きない奴だ」
しかしそんな小さな音でも隼人は目が覚めた。ボサボサになった髪をかき上げ、不機嫌そうにボソリと呟く。
目が覚めてしまったので仕方なく学校に行く準備をする。制服に着替え、顔洗い、髪を整え、十秒チャージャーを口にくわえて玄関を出る。この間僅か二分である。
朝日の眩しさに目を細めつつ、門を出ると案の定毎日隼人を起こしに来るお節介な人物がいた。
「わざわざ遠回りしてまで毎朝起こしに来るとは、あんた実は馬鹿だろ木場」
「隼人君が寝坊しないでくれたら、僕だって毎日起こしに来たりしないさ」
せかっかく起こしに来てくれたというのに、開口一番に毒を吐かれた木場という少年は苦笑しながらそう言った。
金髪碧眼に女性が羨む程の白い肌。そして人形のように整った顔立ち。要はイケメンである。隼人も美形に入るが、この木場とい少年はその上をいく美形だ。
「それじゃあ隼人君。今日も走るよ。このままじゃ間に合わない」
「面倒な」
隼人はダルそうに呟くと、近くのゴミ箱に十秒チャージャーを投げ捨て、先に走っていった木場を追いかけた。
=====
現時刻は八時十五分。朝のホームルームが始まるのは八時三十分であり、二人はわりと余裕で間に合い、自分達のクラスに向かっていた。ただし学園の女子達の黄色い歓声といオプション付きで。
「……鼓膜が破れそうだ。黙らしてきてくれよ木場」
「それは……ちょっと無理かな」
苦笑しながらやんわりと断る木場。ならばと隼人が行こうとすると木場に止められた。結局、この歓声を止めることはできないのだ。
(明日から耳栓を……駄目だ。ただの耳栓じゃこれは防げない)
そんなことを考えできるだけこの頭にガンガン響く歓声から気を逸らす。
何故こんなにも歓声を上げられるかというと、隼人が通っているこの『私立駒王学園』は現在は共学だが、元々は女子校だったせいか男子よりも女子の割合が多いのだ。つまりこの学園は男からしたらまさに天国であり、普通に過ごしていても彼女の一人や二人楽にできてしまうのだ……勿論例外はいるが。
そんな普通に過ごしていても彼女ができてしまう学園に、男性平均よりも遥かに高い美形の二人が行けば、結果は言わなくてもわかるだろう。
「それじゃあ、またあとで」
「あぁ」
木場と別れ、自身のクラスへと入る。扉を開けると、第一声は女子達の馬鹿でかい歓声ではなく、
「おはよう五十嵐君」
「おはよー五十嵐!!」
「おはようございます。五十嵐さん」
という普通な朝の挨拶だった。隼人が微笑みながらおはようと返すと、少々頬を赤くした笑顔が返ってくる。一部の男子が物凄い形相で睨んでくるが。
(やっぱキャーキャー騒がれるよりも、普通に接してくれた方がいいな。それと笑顔GJ)
隼人は改めて自分のクラスが最高であることを認識し、自分の席に座る。因みに、何故隼人のクラスの女子達が騒がないかというと、単純に慣れたからである。まぁそれでも普段やらないようなことをすれば黄色い歓声が飛ぶが。
「本当にお前ら夕麻ちゃんのこと覚えてないのかよ!」
「だからさ、俺らそんな子知らないって。マジで病気とか行ったほうがいいんじゃないか?」
「あぁ、何度も言うが俺達は夕麻ちゃんという女の子を紹介なんてされてない」
隼人が睡眠学習の準備をしていると、そんな会話が耳に飛び込んできた。声がする方を向けば、そこにはこの駒王学園が誇る変態三人衆がいた。その三人衆の一人である兵藤という少年を見た瞬間、隼人の目付きが変わった。
(やっぱりあの変態"悪魔"になったか。主はグレモリーかシトリーか……どちらにせよ、あの様子じゃまだ"はぐれ"同然だな)
先程までの少々不機嫌そうな目付きはにやついたものに変わり、唇が三日月のようにつり上がる。
「面白くなりそうだ」
隼人は小さくそう呟いた。
=====
俺、兵藤一誠は最近何かがおかしい。彼女ができたと思ったらその彼女に殺され、実はそれは俺のただの妄想で、何故か朝は体がダルくなり、夜になると朝の体調が嘘のように体が軽くなる。……もうわけわかんねぇよ。
俺は彼女だった天野夕麻ちゃんの顔を鮮明に覚えているし、腹を刺されたときの痛みも覚えてる。松田と元浜は妄想だろ? というが、あれはあまりにもリアル過ぎる。いくら俺でもそこまでクオリティの高い妄想はできません。
まぁそんなこんなで軽く鬱状態だった俺は、松田の家でエロDVD鑑賞会という息抜きをしていたが、枚数を重ねていくうちに興奮が冷めていき、「何故俺達には彼女がいないのだろうか?」と真剣に思い出し、逆に泣けてきてしまった。
息抜きのつもりがさらに鬱な気分になり、重い足取りで帰り道を歩く俺だが、そんな気分が吹き飛んでしまう程ヤバイ人と遭遇してしまった!!
「これは数奇なものだ。こよな都市部でもない地方の市街で貴様のような存在に会うのだものな」
………………?
お前は何を言っているんだ?
いやいや、これマジでヤベェ奴だよ!!
とりあえず俺は瞬時に後ろを振り向き来た道を全速力で戻った。何故かは知らないが夜中の俺は色々とパワーアップしているので足が超速い。
十五分程走ったところで開けた場所に出た。公園だ。
「……あれ? ここって」
知っている。この公園を俺は知っている。そうだ! ここは夢の……夕麻ちゃんとのデートで最後に来た場所だ! でも何でだ? まさか無意識?
「逃がすと思うか? 下級な存在はこれだから困る」
ぞくっ。背筋に冷たいものが走る。ゆっくりと振り返ると、そこには黒い翼を生やしたスーツの男……さっきの変質者がいた。というかコスプレ……なわけないよな。ファンタジーは夢の中だけで十分だってのに。
「ふむ。主の気配も仲間の気配もなし。消える素振りも見せない。魔法陣も展開しない。状況分析からすると……お前は『はぐれ』か。ならば、殺しても問題あるまい」
物騒なことを口走る男は、手をかざしてくる。手を向けている先はどう見ても俺だ! その男の手に光らしきものが集まっていき、槍のような物に形成されていった。 やっぱり槍かよ! 俺、夢でもあの槍に腹を貫かれて大変な目に遭ったんですけど!
――殺される。目を強く閉じ、下を俯く。せめて楽に殺してくれ!! ………………………………? おかしい。全然痛くないぞ?
目をゆっくりと開けると、腹には何も刺さっていなかった。あれ? もしかしていなくなった?
思い切って顔を上げると、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
「お、お前は……五十嵐?」
そこには俺のクラスメートの五十嵐隼人がいた。……しかも右手には本来なら俺に刺さる筈の光の槍が収まっていた。……え? マジでこれどういう状況?
「随分と面白そうなことをしてるじゃねぇか。俺も混ぜろよ」
そう言って五十嵐は光の槍を右手で砕くのだった。
=====
堕天使、ドーナシークは突如として現れた五十嵐という少年を見た瞬間、戦慄が走った。
どれだけ気配を探ろうとこの少年はただの人間であり、神器も宿していない。だというのに、ドーナシークはこの少年に勝てるイメージがまったく湧かなかった。それどころか蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなかった。
(私はこんな話聞いてないぞ!? 何故こんな市街にこれ程の化け物が存在するのだ!?)
少年は一歩、また一歩と少しづつ自分に近づいてくる。にやにやと笑いながらまた一歩自分に近づいてくる。
「安心しろぉ、最大限手は抜いてやる。だからよぉ――」
――――――一秒でも長く俺を楽しませろ
「ぅう、うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
自分がこの少年に勝てないのは本能が理解している。しかし、ここで何もしないわけにはいかない。ここで逃げれば堕天使の名に深い傷が付いてしまう。それだけは避けなくてならない。
ドーナシークはありったけの魔力を込め、強力な光の槍を作りだした。その威力は先程のとは比べものにならない程のものだ。
「くらえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そしてその槍を少年に向けて全力で投げつける。倒せるだなんて思ってはいない。だが、掠り傷くらいはつけられる筈だ。いや、筈だった。
光の槍は、少年の前に現れた十字が描かれた血のように赤い魔法陣の前に粉々に砕け散った。この瞬間、ドーナシークの敗北が確定した。
「蹴り砕く」
一瞬で堕天使の前に現れた隼人は、堕天使の腹部に鋭い蹴りを放つ。その蹴りはいともたやすく堕天使の腹部を貫通した。
「がぁっ!?」
あまりの威力に堕天使の体はくの字に曲がり、そのまま吹き飛ぶ。
「ぐぅ!? う、うぅう……」
噴水に激突することでようやく堕天使は地面には落ちた。腹部からは大量の血が出ており、その顔にも死相が浮かんでいた。
その顔を見た瞬間、隼人のにやにやした笑みは消え、無表情になる。
「なんだ、もう壊れたのかよあんた。つまらねぇな」
隼人はまるでゴミ屑を見るかのような目で堕天使を見下し、深く溜め息を吐いた。
「もうあんたに用はない。そこに隠れている奴。こいつの処理は任せた」
隼人はそう言い捨てると、一瞬でこの場から消えた。
その場に残された兵藤はポツリとこう呟いた。
「あれ? もしかして俺空気?」
後書き
ネタなのです。何故か携帯で見るとルビがががが。
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