少年は魔人になるようです
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第11話 天界で二人が戦うようです
Side 愁磨
―――シュウン
音と共に、俺とノワールは、そこに降り立った。
そこは氷の世界。
ここは、初めて、俺が本気で何かを為した世界。
見渡す限り、いや。この世界は、雪で埋め尽くされている。
そして俺達の前には、縦に裂け、門の様に開いている十字の棺。
「ああ、懐かしいな。私はここでシュウと出会ったんだな。
もうだいぶ昔の事に思えるけど、ハッキリ思い出せるよ。
フフフ、あの時は驚いたよ。誰かが来たかと思ったら、人間なんだものな。
しかも、ぶつかってドテッと倒れたんだよな。フフ、あれは思い出すと笑えるな。」
「う、うるせえな///あの時は、意識なんて殆ど無かったんだからな。」
ノワールは完璧にあの時に戻っている。
しかし、それは過去。すぐに、今に切り替わる。
「フフフ、なら好都合だわ。あの思い出は、私だけのモノでいいの。
これの共有は、誰にも許さないし、出来ないわ。」
笑いながら彼女は回る。白い世界で、黒が回る。
そのままスキップするように歩くノワールの後を追う。
暫くすると満足したように息を吐き、止まる。
振り向いた顔は、今まで見た中でも二番に入る晴れやかな笑顔だった。
「………さあ、そろそろ行きましょう、シュウ。」
「了解。ま、適当にね。」
――――ただ、復讐の為。
傲慢な神への復讐。
裏切られた魔王の、かつての仲間への復讐。
そしてそいつ等は、この世界の、上に居る。
「うーん、これも一応『神々の黄昏』(ラグナロク)なのか?」
「侵略者の方が圧倒的に少ないけれど、似たようなものじゃないかしら。」
「どっちみち、神は終わるんだから同じか。
さぁて、天使共。rock 'n' roll.」
―――――さぁ、『神』を殺そうか。
Side out
Side クルセウス
ゴッホン!!全く、厄介な事になりおったわ。
まさかあの、元大天使長ルシフェルが地獄から脱獄するとはのう。
お陰で天界は大騒ぎじゃ。
天使と大天使は朝から晩まで異世界異次元を捜索。
『神』の我々でさえ日夜捜索に出ておる始末。
お陰で死んだ人間の選定が追いつかん。
裏切り者が、いらん事をしてくれるわ。
「どうした、クルセウス。随分と難しい顔をしておるな。」
「おお、アリアか。当然じゃ。まさかルシフェルが逃げるなど、
この数千年、誰が想像したじゃろうか。」
「一向に居場所どころか、痕跡すら見つかっていないのだ。
まさか、妾の『次元探知』で見つけられんとは思わなんだよ。」
アリアの『神』としての能力は『次元探知』。文字通り、次元を超えて
対象を発見する能力、なのじゃが・・・・。
「むぅぅ、アリアで見つけられんとは。
儂の『神の雷』は対象が視界内におらんと使えんしなぁ。
どうしたものかのう………。」
と儂が考えていると、下の方に覚えのある力が一つと、
全く知らない力が現れた。
「この力は!?クルセウス、間違いない、奴じゃ!!!」
「現れおったか!!しかし、この位置は……。なぜ、地獄に?」
「そんな事、知った事か!!天使全軍は、1時間で集合!!
完全武装して大聖堂に待機!!急げ!!!」
「「「ハッ!!」」」
ドシュン!とアリアの親衛隊が情報を伝えるために管制室へ向かう。
さてさて、愚かな裏切り者を裁かんといかんのぉ。
――しかし、改変され、無限となった地獄から抜けられるかの?
Side out
Side 愁磨
俺達は今、上を目指すため上昇中だ。
しかし、幾ら上がろうと天井が見えてこない。
既に立っていた場所から場所から、少なくとも5万kmは上に上がって来たはずなんだが。
「ノワール!!この地獄の高さは本当に2万mで合ってるんだよな?!」
「間違いないわ!しかし妙ね。
この距離なら既に大聖堂にすら着いているはずなんだけど。」
「大聖堂?教会みたいなもんか?」
「少し違うわ。
正式名称『大神光城デウスエクスマキナ聖堂』。
天界のもっとも高い位置にある、主神を祀る城。
城と謳ってはいるけれど、
中は全天界人800万人が入れる聖堂になっているわ。」
「まぁ、今はんな事より此処をどうやって出るかなんだが。」
「どうなっているか分かるの?」
「恐らく地獄の何処かに基点があって、それによって空が無限に続いてるんだ。」
「その基点を壊せばいいのね?!」
「言うのは簡単だが、このくっそ広い地獄全部を焦土にする気か?
しかも、基点が結界内にあるとは限らない。」
「え?ど、どう言う事?」
「地獄の外を囲んで、その中から上がって来る時のみ、
上に存在する全ての物を貫通し、周りを空に見せる結界。って言うのかな。」
「つまり、とっくに地獄を抜けているのに、居るのは地獄に思わせる訳ね。」
「そうそう、そんな感じ。
つまり、外の基点を潰せばいいんだけど………。
問題が一つ。地獄の直径=天界の直径だろ?」
「?ええ、そうだけど。それがどうした……あ、そっか……。」
そう。俺達は地獄(天界)のどの部分に居るか分からない。
そして、天界の外なんて、どうなっているか全く分からない。
「俺らが基点壊そうっても、端が分からない。
かと言って適当に端目指しても、突き抜けるのがオチ。
その先がもし『座』とかだとしたら………。」
「う~ん、『座』に入ったらどうなるのかしら……?」
「とにかく、不確定な事は出来ない。」
「……ねぇ、『創造』でなにか創れないの?」
「試したよ。けど、『創造』を使う事すら出来なかった。
地獄なんてモノを弄ったせいで、位相とかが変になってるんだろう。」
「じゃあ、『闇』の中のアイテムに何か無いの?」
「『闇』に入れているのは確かに便利系だけど、
空間破壊とかが出来るのは入って無いんだよ。」
「……今、役立たず?」
「い、いや、『王の財宝』使えるから、武装はたんまりあるんだが……。」
「それなら、あのメシアの剣で空間切っちゃえばいいじゃない。」
確かに『アトロポスの剣』は森羅万象の因果を切れる、モノなんだが・・・・
「危険なんだよなぁ……
位相がずれてるから、地獄の因果を一緒に切っちゃう可能性が……。」
「私も転移出来ないから、元の世界にも行けない……。
どーやったらこの空間から出られるのよ?!」
「いや、俺に聞かれてもな。この空間からどうやって……空間…!
……ああ、そうか、そうだった。すっかり忘れてたよ。」
「何か方法があるのか?!」
「ああ、あるよ。いや、自分で創って無いから忘れてた。
いやいや、まさかこれの存在を忘れるとはな。」
そう。俺が思い出したのは、慢しゲフンゲフン、英雄王の剣。
「ノワール、離れてろ。『王の財宝』!!
創ってはいないが、これの中に入ってるはずだ!っていうか入ってろ!!
……いた!―――出番だ。起きろ、『エア』」
俺は『王の財宝』から、刀身が黒い三連の円筒の形をした、黄金の剣を出す。
「ああ、そう言えばそんなモノあったわね。」
そう。Fate武器を全く使っていなかったので忘れていたが―――
この剣は、空間を切り裂く!!先に誰か居ても怨むなよ!!
「『天地乖離す』―――――――――」
ヒュゴォォォォォォォォォォォ!!という音と共に
刀身が回り、赤い風を纏い出し―――――
「『開闢の星』!!!!」
横薙ぎの赤い台風が放たれ、空間を削り取って行く。が―――、
「まさか、『エア』で足りないだと?!
ならば!!出でよ、
――『魔王の砲撃放つ機械杖』!!」
そして、この組み合わせにより放たれる攻撃は!!
「W・Dとギルの、特殊魔法爆殺攻撃!!!
『デストロイ・ギガレイズ』!!」
すると、SLBとエヌマ・エリシュを受けた空間に罅が入る。
「す、すごい…!これなら行けるわ!!」
「まだだ!まだ、これからだ!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
(ppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp)!!!!」
俺が魔力を込めると、大きくビシィ!と音が鳴る。
「此処だ!――『ブレイク!!』・『エンドォ!!』」
そして遂に、空間が破壊され、俺達は降り立った。
そこは、まさに教会だった。が、規模が桁違いだ。
普通の教会の大きさが一戸建てだとしたら、
此処の広さはディズニーランド。それ位大きい。
そして、俺の前に居る、あの、忘れられない顔に向かって、言ってやる。
「アハハハハハハ!!いい顔になったね!!!」
俺を蔑んだ、あの幼女とジジイの驚いた顔は、まさに格別だった。
「き、貴様、一体何者じゃ?!『無限地獄』から抜ける方法など無いはずじゃ!!」
「ハッ、俺の事なんて覚えてないってか!?そりゃそうだよな!!
なんせ『神様』だもんなぁ!!?俺如き一人の人間の事なんざ―――」
「いや、シュウ?貴方、あの時と姿変わっているのだから……。」
と、俺の後ろからノワールが出て来てツッコミ入れてくださった。
「おお!そういやそうだったな。この姿でいる方が長いから忘れてたぜ。」
既に死んでから400年は経ってるから、死んだ時の歳の約24倍か・・・。
こいつ等の顔覚えてるのにビックリだよ。
・・・自分じゃ分からんが、相当怨んでるんだな。
まぁ、此処で終わるからもう関係ない。
「これで分かるか、爺。幼女を助けて、地獄に落とされた人間だよ。」
俺は、顔だけをかつての姿に戻す。
「お、お主は!!どうして此処に居る?!なぜ地獄で死んでいない!!?
しかも、なぜルシフェルと一緒に居るのだ?!
お前の様な、無力な人間が!!!」
「そうだな。確かにこの時は俺はなんの力も無くて、
お前なんかに手も足も出なかった。
だけど、今は違う!!この俺は、もう無力じゃない!!!」
そして顔を『今』に戻し、告げる。
「さぁ天使共!!小便はすませたか?!神様にお祈りは?!
部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はいいか!?
――さぁ始めよう!俺は堰を切る。 戦争の濁流の堰を切る!! 」
「貴様、正気か?!天界と、一人と裏切り者が戦争するじゃと?!
ルシフェル!!貴方はどうなのだ?!
同胞に刃を向けると言うのか!!?」
「あ、いや、私は……、私、は…………。」
クルセウスの言葉に、ノワールは下を向く。
―――まだか?『また』なのか?もう此処まで来たからには待てない。
自分の身を守るくらいの覚悟はして貰わないと、邪魔なだけだ。
「ノワール!!お前はルシフェルじゃぁない!ノワールだ!!!
いつまでも辛そうな顔してんじゃねえ!
いい加減覚悟を決めろ!!
覚悟の無い奴が此処に居るな!もう此処まで来たんだ!!
お前は一度選んだんだ!それが土壇場で揺らいでんじゃねえ!!
その程度の覚悟で此処まで来たのか?!ノワール!!」
これで揺らいでいる様なら、『闇』に無理矢理放り込む。
さぁ、どうする、ノワール。俺の信頼を裏切らないでくれよ?
「…………ありがとう、シュウ。もう、覚悟したわ。」
そう言うと、ノワールに力強い魔力が纏う。・・・・よし。
「目標は天界全域!!
さあ、乾杯をしよう。宴は遂に今宵、此の時より開かれたのだ!!」
「くっ?!全軍!!裏切り者と愚か者を血祭りに上げるのじゃ!!!
かかれぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!!!!」
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」
「『形態変化:モード≪救世主≫』 形態付加:≪死天使≫≪Alucard≫』」
赤い『メシアの鎧』が現れ、手に『アトロポスの剣』と『ジャッカル』が握られる。
そして後ろに、手枷と首輪が鎖で繋がり、血の涙を流す黒翼の天使が現れる。
「さぁ、行くぜ!!!―――――まぁ、本気でなァ!!!!!」
―――終末の火蓋が、切って落とされた。
Side out
後書き
ルビの振り方読んでふと嫌な予感。
一般表示なるものがあったので見てみたら勝手に行ってましたね、ええ。
一応変更・修正。
行の真ん中に揃えられたら9話の詠唱とかいいんですけどね・・・
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