ドン=ジョヴァンニ
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第二幕その八
第二幕その八
「一人にしないで。どうか」
「それはそうだけれど」
それを言われると弱るレポレロだった。エルヴィーラはまだ彼をジョヴァンニと思いながら弱い可憐な女の声を出してみせたのであった。
「暗い場所にただ一人でいると胸騒ぎがするの」
「胸騒ぎが」
「ええ。恐ろしさが私の胸を襲ってきて死んでしまいそうよ」
「けれど何か松明が」
見ればさらに近付いてきていた。
「どうしようか、本当に」
彼が困っているその時にオッターヴィオ達はあれこれと話をしていた。レポレロが見て震えている松明の主は彼等だった。見れば二人の周りにはアンナやオッターヴィオの家の者達が集まっていた。彼等も彼等で人を集めてそのうえでジョヴァンニを追っているのだ。
「愛しい人よ」
「はい」
アンナはオッターヴィオの言葉に応えていた。
「涙を拭って下さい」
「わかっています」
今彼女は何とか涙を抑えていた。そのうえでオッターヴィオに応える。
「それは」
「もうすぐですから」
オッターヴィオはこうもアンナに言うのだった。
「御父上の仇を取れるのは」
「そうですね。それでは」
アンナはオッターヴィオのその言葉にこくりと頷いた。
「あと少しだけの我慢ですから」
その間にレポレロは何とか逃げようとしていた。彼も彼なりに必死である。しかしその必死な彼のところにやって来たのはマゼットとツェルリーナであった。村人達も一緒である。
「遂に見つけたぞ悪党」
「ここにいたのね」
「んっ!?マゼット君じゃないか」
「ツェルリーナちゃんもいるわ」
ここで二人は彼等に気付いたのであった。
「もう追い詰めているな」
「それじゃあ私達も」
二人は自分の家の者達を連れて前に出た。そうしてジョヴァンニに化けているレポレロを取り囲んでしまったのだった。
「さて、どうするんだ?」
「悔い改めるのかしら」
マゼットとツェルリーナが彼を問い詰める。
「罪を悔いて修道院に入るのか」
「それともここで成敗されるの?」
「待って下さい」
だがここでエルヴィーラが出て来て彼等とレポレロの間に入るのだった。
「どうかここは」
「えっ、エルヴィーラさん」
「貴女がどうしてここに」
オッターヴィオとアンナは彼女が出て来たのを見て驚きの声をあげた。
「お姿が見えないと思ったら」
「どうしてなのですか?」
彼等はエルヴィーラには驚いた。しかしであった。オッターヴィオはここで厳しい言葉をあえて出すのであった。
「この悪党はやっぱり成敗しなければ」
「そうです。何があっても」
「えっ、成敗!?」
それを言われて蒼ざめた声を出すレポレロだった。
「じゃああたしはここで」
「あたし!?」
皆今の一人称にいぶかしむ顔になった。
「この悪党があたし!?」
「どういうことなの!?」
「殺されるのだけは御免だよ」
今度はこう言うレポレロだった。そして。
羽根帽子とマントを取って姿を見せて。こう彼等に言うのだった。
「お許し下さい皆様」
「レポレロさん!?」
「間違いないわ」
「私はレポレロです」
驚く彼等にまた告げるのだった。
「何とぞ命ばかりは。どうかお助け下さい」
「まさかこれは」
「かつがれたのか?僕達は」
「何とか命だけは持って逃げないと」
レポレロは今は何としても助かろうと必死だった。
「そうしないと本当に殺されてしまう」
「まさかこんなことになるなんて」
「何が何なの?」
皆もこれには面食らっている。しかしその中でツェルリーナはレポレロに対して尋ねた。
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