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ドン=ジョヴァンニ

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第一幕その十八


第一幕その十八

「皆はね。それでいいね」
「ああ、いいよ」
「わかったよ」
 村人達はマゼットのその言葉に頷くのだった。
「そういうことでね」
「じゃあ今から」
「よし、これでいい」
 マゼットは皆が隠れるのを見て満足した顔で頷く。
「それで君はね」
「私は?言葉なんて無意味なものよ」
「いや、無意味じゃないよ」
 マゼットは今のツェルリーナの言葉は否定した。
「絶対にね。無意味じゃないよ」
「無意味じゃないの」
「そうさ。だからなんだ」
 だからとまで言う。
「ここにいて。いいね」
「そこまで言うのならわかったわ」
 ツェルリーナも遂に納得するのだった。
「それじゃあ・・・・・・あっ」
 ところがであった。ツェルリーナはここでつまづいてしまってそれで物陰の中に入ってしまった。マゼットもそれには驚いてしまったがもう遅かった。ジョヴァンニが来たので彼も慌ててツェルリーナの横に隠れた。ジョヴァンニは家の召使達を連れてやって来たのだった。
「さあ皆様方」
 ジョヴァンニはここでも前のことを完全に忘れて陽気に告げてきていた。
「まだ寝る時間ではありません。目を覚ましましょう」
「目を覚ましましょう」
 召使達も言う。
「元気を出して容器に過ごしましょう。笑いましょう、善良な人々よ」
「善良な人々よ」
「さて」
 ジョヴァンニはここで後ろにいる召使達に対して告げるのだった。
「皆さんを踊りの部屋に案内して食べきれないだけの御馳走をお出しするのだ」
「わかっております」
「ですから皆さん」
「あの」
 ここで何とか物陰からそっと出るツェルリーナだった。
「何か?」
「おお、ツェルリーナ」
 ジョヴァンニは彼女の姿を見つけて楽しげな声をあげた。
「見つけた。もう逃がさないぞ」
「あっ、駄目です」
 手を掴まれてもそれを拒もうとする。
「駄目です。それは」
「いや、ここにいてくれ」
 しかしジョヴァンニも引かない。
「私はそなたにここにいて欲しいんだよ」
「お許し下さい」
 ツェルリーナは演技をする。
「御願いですから」
「許してあげるよ」
 ジョヴァンニは一応こう言いはする。
「幸せにしてあげるのだから」
「さて、どうなるかしら」
 ツェルリーナはこの中でこっそりと呟いた。
「これから」
「あの」
 今度出て来たのはマゼットだった。よそよそしさを装っている。
「旦那様」
「おお、マゼット君か」
 ジョヴァンニはそっとツェルリーナから手を放して彼に対した・
「君を探していた」
「僕をですか」
「そうだ。このセニョリータは」
 言うまでもなくツェルリーナのことである。
「君なしではもう生きていられないとのことだ」
「勿論ですよ」
 マゼットは言葉に皮肉を込めて返した。
「僕達はもう夫婦なんですから」
「その君達を祝わせてもらおう」
 ここでジョヴァンニの後ろから音楽が聴こえてきた。オーケストラの演奏であった。
 
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