転生者が歩む新たな人生
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第7話 使い魔を得る
前書き
タイトル通りの内容です
7月15日 修行内容を変更
卒業試験として分身符を提出して3週間。なんとか、10枚用意して修行場に赴くと符術の近坂先生、神鳴流の赤木師匠が待ちかまえていた。
2人と同時に修行することはあまりないので、嫌な予感がして恐る恐る先生に10枚の分身符を渡すと、なんかデッカイガラス玉を持ち出してきて、「今日からお前の修行はここで行う」とかワケのわからないことを言われた。
ガラス玉?
よく見るとガラスの中にここの道場とよく似た建物が入ってる。ガラス瓶の中に船の模型が入っているボトルシップならぬ、ボトルビルディング(びんのなかのどうじょう)だ。
………………。
あれ? 「ネギま!」の中で見かけたような………。
………。
そうだ、なんとか魔法球だ。
内部と外部で時間にズレがあって中で、大幅にレベルアップできるチート級マジックアイテムだ!
興奮しつつ詳しい説明を先生方に聞くと驚いた。
このマジックアイテムは正式名称「ダイオラマ魔法球」と呼ばれる魔法使い製のマジックアイテムで、ある一定のキーワードや魔法陣により中に入れ、魔法球の中と魔法球の外と時間の流れが違うという、原作知識通りのチートマジックアイテムだ。
ただ、このアイテムは短期的な修行には大変有効だが、長期的に見ると短期間に歳を取るため、全盛期の活動時間が早く終わるため、地球世界ではそこそこしか活用されていないらしい。値段も高いし。
実際レアな物になると魔法球の中で1日過ごしても、外では1時間しか経ってない(24倍速)なんてものもあるそうだ。まぁ、天文学的価格らしいけど。
なお、先生が用意した魔法球は5倍速で、魔法球の中で35日過ごしても外では1週間しか経たない物だ。つまり5倍速く歳を取る。一応、熱田神宮の宝物の一つで、潔斎して祭事に臨む際にたまに使われる物らしい。
で、何故今回持ち出されたかというと、分身符では肉体的な成長や変化(四肢の欠損、傷、加齢による変化)は本体には反映されないので、魔法球の中で分身符で作った分身がどれだけ過ごそうとも、本体に先のデメリットが生じない。そういうワケで、分身符の分身を「ダイオラマ魔法球」の道場に入れて修行することが考え出されたのだ。
例えば、剣術の型を分身が1万回繰り返す。その際、型を繰り返すことによって、その型の意味や繰り返す中で自分が気付く最善のフォーム、1万回繰り返したという精神的な強化といった経験が分身を本体に統合した時に蓄積される。それが魔法球の5倍速の早さで蓄積されるのだ。まぁ、本来繰り返すことによって付くはずの筋肉などは付かないわけだが。また、瞑想等による魔力や気の容量の増加なども効果がないと思われる。
ただ、そういった経験を5倍速で蓄積する効果だけでも充分すぎる効果であるというわけで、それらの検証も兼ねて魔法球での修行が始まった。
分身符により分身を4体作り、符術の修行、気功の修行、剣術の修行、検証のための筋力トレーニングや魔力・気の容量増加のトレーニングなどを行う。
先生や師匠もそれぞれ分身を作るので、マンツーマンで修行ができる。
期間的には1週間に1回、魔法球の外で分身を回収して経験を統合し、改めて新しい分身をまた作り、魔法球の中に入り修行。以下エンドレスループ。
まずは、現実時間で11週間=魔法球内で約1年を目途に分身符+魔法球での修行を行った。
ちなみに、検証用の分身は早々に「分身の筋力トレーニングや瞑想の効果は本体に反映されない」という結果が出てお役ご免となったので、魔法球の外で作った符を持ち込み、延々と魔力を込めることにした。
分身符はもちろん結界符、転移符、封印符、遠視符、肉体強化符などなど。
これは、先生方を通じて売却することができたので、かなりの小遣い稼ぎになった。
☆ ★ ☆
魔法球内で修行を始めて現実時間で1年、魔法球内では5年程修行している間に8歳となった。
小学2年生だ。
すずかは予定通り私立聖祥大付属小学校に通い始めた。
魔法球での修行を始めて以来、熱田へと通うのは週1回、分身及び魔力を込めた符の回収、再分身及び魔力を込める予定の符を持って魔法球へ入るだけとなった。
そのかわり、分身では身に付かない体力強化や瞑想などを中心に家で行っている。
無理な筋肉を付けたりしない師匠やノエルさんが作ってくれた食事や睡眠なんかも含まれた総合計画的なトレーニングだ。
もちろん、「念」の修行も引き続き行っている。
人見知りする性格のすずかに友達ができるか心配したが、いつの間にやらアリサ・バニングスちゃんと高町なのはちゃん、その幼なじみの衛宮じろう君と友達になっていた。
なんかビンタから始まる友情物語があったみたい。
とまぁ、それまでに、夜の一族の安次郎のおっちゃんがすずかを誘拐しようとしてそれを阻止したり、関西呪術協会の長老会に抜擢された父親の代わりに忍義姉さんが海鳴市の正式なオーナーになったり、それを不服として分家の氷村遊とかいうあんちゃんが襲撃して来たり、それを助けてもらった恭也さんと忍義姉さんが恋人としてつきあうようになったり、色々あった。
ちなみに後でわかったんだけど恭也さんはなのはちゃんのお兄さんだった。
オレが修行していたおかげでなんとかなった場面もあり、修行してきた甲斐もあったというものだ。
その修行では半年ぐらい前から現場にも出始めた。まぁ、メインではなく補助的ポジションだが。これは4体の分身による5倍速の経験の蓄積の成果が大きい。
☆ ★ ☆
そんなある日、使い魔を得た。
その日の修行も一段落し、敷地内にある森の中で「絶」状態で休憩している時だった。
いきなり、目の前で輝く魔法陣が展開された。
なんだ? といぶかしんでいると魔法陣から1匹の猫が現れる。
「な~ぅ」と弱々しく鳴く猫を恐る恐る近づいて抱き上げる。
ただ、衰弱してるのか今にも消えそうだ。
というか、比喩ではなく、なんか透けてないか、この猫?
暴れる力も尽きているのか、抱き上げられるまま身動きもしない。
「フェイト………、プレシア………………」
なんか、喋るよ! この猫!!
いや、これは耳に聞こえたんじゃなく、頭に響いたのか?
魔法陣から出て来るような猫なんで、喋るのはおかしくないんだろうが、透けてるのはまずいんじゃないか?
とりあえず、なんとかしたいとは思うけど、どうすりゃいいんだ?
あーでもない、こーでもないと迷ったあげく、なにかの足しになればと少しずつ猫に「魔力」を分け与える。
魔法陣から出て来たので魔法関係なんじゃないかと考え「魔力」を分け与えたわけだ。
しばらく続けると透けていた部分も減っていき、明らかに存在感も増した気がする。
一度だけ、目を開けた猫が抱えていた指をなめたが、すぐに眠ってしまった。
………まだ暖かいから死んでないよね?
とにかく猫を抱えて急いで家に帰った。
「フェイト」「プレシア」なんて念話で言う猫って、「リニス」だよね………、と思いつつ。
幸い猫屋敷で猫になれているファリンさんによる判断では、衰弱しているだけみたいなので猫用に消化しやすい物を用意してもらい、部屋に連れて行く。
土鍋を1つ借り、タオルを敷き詰め、寝ている猫をそっと置き、猫鍋を作る。
前世でニ○ニ○動画を見て、ニヨニヨしてたのを思い出す。
かわいいなぁと思いつつ、にやにやと見つめてしまった。
夕食時に衰弱した猫を拾ったことを忍義姉さんとすずかに話しておく。
一目見ようと部屋に来るけど、猫は土鍋でお休み中だ。
気がついたら明日にも教えると約束して今日のところは離れてもらう。
「きっとだよ」
とすずかと約束して、後ろ髪を引かれる様子ですずかは部屋に帰る。
夜中、ベッドで寝ていると、「う…。ぅう……。 ここは………?」と声がする。
頭の中に猫の声がイキナリ響くのは、言っては何だがなかなかシュールな体験だ。
「気づいた? 喋れるくらいにはなったみたいだけど、体は大丈夫?」
声をかけながら、土鍋の中でタオルにくるまれた猫を覗く。
猫のつぶらな瞳が俺を見つめて来るが、瞬間、目を鋭くして「だ、誰です! そしてここはどこです? 私はプレシアとの契約を済ませて消えたはずです!」とすごい剣幕だ。
「えぇと、落ち着いて。オレは遠坂暁。ここはオレの家。最後の質問はわからない。目の前に現れたにゃんこが消えそうだったので、とりあえず魔力を与えて連れてきた。」
「ぇ!? 無人世界に転移したはずなのに………。すみません、取り乱しました。助けていただいたとには感謝します」
タオルにくるまれた猫がお辞儀するなんて、なんとも言えないかわいい光景だ。
「それで、消えそうだったのはなんでなの? 力になれるなら力になるよ」
原作通りならリニスは無印の原作開始前に死んだはずなんだが。
まぁ、そもそも海鳴市と麻帆良市が同じ日本にあるような世界なんだから、何が起こっても不思議はないが。
「そ、それは………。私はもう契約を済ませて消える身なんです………」
その口調からして、きっと沈痛な表情なんだろうけど、さすがにオレには猫の表情は読めなかった。
「ごめん、契約言われてもわからないや。そこから説明して」
「そうですか。実は………」
ということで、詳しいことを猫、否、名前は「リニス」と紹介されたので、リニスから聞いた。
この世界は1つではなく、次元を隔ててたくさんの世界があること。
魔法がある世界から来たこと。
魔導師と使い魔契約した使い魔であること。
魔法はリンカーコアがないと使えないこと。
デバイスという魔導師が使う魔法を補助するモノがあること。
元々はミッドチルダという世界で、大魔導師プレシア・テスタロッサとその娘アリシア・テスタロッサに飼われていた猫だったこと。
20数年前、魔道炉ヒュードラ暴走事故によって、アリシアとともに一度死んだこと。
3年ほど前にプレシアの使い魔として契約し、プレシアの娘フェイトに魔法と一般常識を教えたこと。
フェイトが魔導師として一人前となったので、プレシアの負担を減らすため、あえて再契約をしなかったこと。
エトセトラエトセトラ。
年数までは覚えてないが、大体オレの原作知識と同じと考えて良いのかな。さすがに転生してから8年もすると原作知識も曖昧だ。
フェイト関係については、初対面で話せることでもないし。
「ええっと、とにかくリニスさん。貴女はこれからどうしたい?」
「私は………。 私にはまだやり残したことがあります。できることならそれを成し遂げたい」
真剣な表情? でリニスがそう答えてくる。
そりゃそうだ。無印の原作どおりなら、プレシアや、フェイト、アルフに未練ありまくりだ。
まあ、オレとしてもせっかく救った命だ。できる限りの手助けはしてやりたい。
そうすると、一番良いのは………。
「ええっと、つかぬことをお聞きしますが、リニスさん………」
「はい?」
小首をかしげる仕草もかわいいなぁ、もう。
「オレと使い魔契約ってできるのかな?」
「え、え??」
「まぁ、オレにリンカーコアがないとどうにもならんけど」
「なんで、私と契約を………。貴方とは赤の他人なのに………」
「なんでと言われてもなぁ。一度助けた身としては、今更消えられても後味が悪いしねぇ。あぁ、それと魔法に興味があるっちゃぁ、あるし。」
とりあえず、転生して原作知識があるなんてことは言えないので、当たり障りの無いことに本音を交えて答えておく。
「で、契約のほうはどうよ?」
「………………、わかりました。少し待ってください。リンカーコアの有無を調べますので」
まぁ、見ず知らずの人間に対する警戒と未練を晴らせる好機への期待と半々ぐらいかな。
少し葛藤した上で、リニスがごにょごにょと呪文を唱えるとオレを中心に円形の中に正方形が回転する魔法陣が浮かび上がる。
最悪、魔力のパスを繋げて魔力の供給をするだけなら『仮契約』でもいいのかな、と考える。
「大丈夫です。Aランクのリンカーコアがあります。ただ………」
「ただ?」
「私を創ったプレシアはオーバーSランクの大魔導師です。Aランクの魔導師の魔力で私を維持しようとすると一個下がってBランクになってしまいます」
申し訳なさそうにリニスが言う。
うーん。あれだ。使い魔すら維持するのに困る程度しかない魔力か………。
並みの魔術師よりは魔力は多いつもりだったんだが。
さすがは大魔導師というところか。
ネギ兄さんなら………、と思わないでもない。
否。それはいい。ここは、リンカーコアがあることに感謝するべきだ。リニスに学べば、ミッド式の魔法が使えるようになるんだし。
幸い、オレはまだ小学2年生、きっと魔力は伸びるはず………。
「わかった。それでいいから、契約をしよう」
リニスはまだためらいがあるようだが、そこは押し切った。
契約するためだろう、机の上に置かれた土鍋から跳び出し、床に綺麗に着地したリニスは、オレを真っ直ぐに見上げて最後に問いかける。
「本当にいいんですね」
オレは頬を掻いて、しゃがんでリニスと視線を合わせる。
「いいよ」
あっさり言いきったオレに半ばあきれたようだが、リニスがごにょごにょと呪文を唱えると、オレとリニスを中心に2つの魔法陣が浮かび上がる。
契約内容は「オレと共にあり、思いを果たす」とした。
しばらくすると魔法陣が消え、オレの体内に何か今までになかったものを感じ、そこから何かが抜けていく感じがする。
これがリンカーコアであり、魔導師が扱う魔力のようだ。正常にリニスとの間に魔力のパスが繋がったみたいだ。同時に、自分じゃない誰かと何かが繋がっている感覚がわき起こる。
「うーん。なんか変な感じだ。この繋がっている感覚。まぁ、その内慣れるか」
ホント不思議な感覚だ。まぁ、そのうち慣れる、きっと。
「んじゃ、これからよろしく、リニス。とりあえず、もう遅いから詳しいことは明日、いやもう今日か、起きてからでいいかな?」
もう0時を余裕でまわっているので、眠くてしょうがない。なんと言っても、まだ小学2年生だしね!
「わかりました、暁」
「寝床はそこで大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「そっか。じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい、暁」
この日、優秀な使い魔を得るとともに未知なる魔法の扉も開いたのだった。
後書き
主人公の使い魔候補はリニスと久遠でしたが、こうなりました。
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