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魔笛

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第一幕その二


第一幕その二

 彼の周りには鳥が舞っている。その鳥達を見ながら言うのだった。
「あれっ、ここは何処なんだ?」
 周囲を見回しながらの言葉だった。
「森から出てみたら。それにこいつが死んでいる」
 大蛇を見ての言葉だ。
「この化け物が何で死んだんだ?」
「あれ?」
 そしてであった。ここでタミーノも意識を取り戻した。そこで男が言っていた。
「おいらは鳥刺し家業。いつも朗らかエッサッサ!」
 こう明るく言っていた。
「老いも若きも国中で知らぬ者なく鳥刺し屋。罠のことなら任せておくれ笛の吹きよりも生かす腕!」
「何か変わった男だな」
 タミーノも彼を見て呟く。
「誰なんだろうか」
「鳥は全部おいらの獲物。捕まえて朗らかよい機嫌」
 さらに言ってであった。
「娘絡める鳥網欲しければ一ダースすつごっそりと絡め取って傍に置きたければ籠の中」
 こんなことを言うのだ。
「そして砂糖の山ととっかえて。一番好きな娘に砂糖を全部やろう」
 朗らかな言葉がさらに続く。
「そして優しく口をつけ合って女房亭主のひとつがい。おいらの傍でおねんねすれば赤子の様に揺すってやろう」
「ねえ君」
 タミーノはその彼に問うた。
「少しいいかな」
「おや、何だい?」
「君は誰なんだい?」
 立ち上がりながら彼に問うのだった。
「はじめて見るけれど」
「おいらが誰かか」
「うん、誰なんだい?」
 その名前等を問い続ける。
「それで」
「またそれは馬鹿な質問だね」
「馬鹿なだって?」
「そうだよ。見ればわかるじゃないか」
 笑ってこうタミーノに言うのである。
「見ればね。それでね」
「わかるっていうのかい?」
「人間だよ」
 そしてこう言うのだった。
「見ればわかるじゃないか」
「人間なのか」
「じゃあ他に何だっていうんだよ」
 また笑っての言葉だった。
「人間だよ。あんたと同じね」
「また変わった服だな」
「いや、あんたもかなりね」
 それはお互い様だというのだ。それを言うのであった。
「変わってると思うがね」
「そうかな。変わってるかな」
「そうじゃないか。変わってるよ」
 彼はタミーノに笑いながら話し続ける。
「随分とね」
「僕の国じゃこれが普通の服なんだけれどな」
「そうそう、おいらも聞きたいよ」
 今度は彼からの言葉であった。
「あんたは一体何者なんだい?」
「僕かい」
「そうさ。あんたは一体何者なんだい、それで」
「僕はその国の王子なんだ」
「王子?」
「そう、東の彼方の国の」
 そこから来たというのである。
「父は広い領土と多くの人民を治める国の主なんだよ」
「だから王子様なのかい」
「うん、東の方のね」
「東というと」
 彼はタミーノのその言葉を聞いてそのうえで言うのであった。
「あれかい。あの山の向こうにも国があって人間があるのか」
「僕の方から見てもそうだったんだよ」
 お互いに東の彼方に連なって見えるその山々を指差しながら話す。
「あの山の向こうに本当に人がいるのかをね」
「わからなかったのかい」
「その通りさ」
「そうか、それならだ」
 彼はタミーノのこの話を聞いてあらためて述べた。
 
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