魔笛
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第一幕その十一
第一幕その十一
「それなら僕は。しかし」
ここで門が出て来た。そこの左右にある円柱にはこの場所には智恵と労働と芸術があると書いてあった。厳粛な文字によって。
「ここは神々のいる場所なのだろうか」
その門を見たタミーノの言葉だ。少年達は何時の間にか消えている。
煉瓦の門が見える。その奥には峻厳な寺院が見える。城にも見える。
そしてだ。タミーノはそうしたものを見てさらに話すのだった。
「行動が玉座につき怠惰が追い払われる場所では悪徳も容易く権力を握れない」
そうだというのだ。
「勇気を出して門に入ろう。僕の意図は高潔でやましいところのない純潔なものだ」
自信はあったのだ。
「怯えてはいけない、パミーナを救い出すんだ」
「待て」
しかしだった。ここで門から声がしてきた。
「待つのだ」
「待て?」
「そうだ、待て」
「一体誰が待てというんだ?」
「そこの若者よ」
ここで、だった。黒い法衣を着た男が出て来た。かなり背が高い。
「ここで何をするつもりなのだ?」
「愛と特性の所有権を主張したいのです」
「ふむ。それは」
その僧侶はそれを聞いてまずは頷いた。
「立派な志だ」
「有り難うございます」
「しかしその二つをどうして見つけられるのか」
「どうして?」
「そう、どの様にして」
見つけるのかと。彼に問うのだった。
「見つけられるのだ」
「見つけるとは」
「貴殿を導いているのはその二つではないな」
僧侶は彼に言った。
「死と復讐に導かれているのではないのか?」
「悪人に報いるのは復讐あるのみです」
パミーノはこう主張するのだった。
「ですから」
「そうした者はここにはいないが」
「いない?」
「女好きの困った者はいてもだ」
そうした輩はいてもというのだ。
「そこまで荒んだ者はいないのだ」
「ですがここは」
「ここは?」
「ザラストロが治めているのですよね」
このことを問うのだった。
「確か」
「如何にも」
そのことは僧侶も認めた。
「ここはザラストロ様が治めておられる」
「しかしここは」
「叡智の神殿だ」
まさにそうだというのだった。
「この叡智の神殿で治めておられるのだ」
「それでは偽善だ」
タミーノは憤慨して言った。
「ここは」
「何故偽善だと?」
「そうではありませんか?ザラストロがここに住んでいるのですから」
「落ち着くのだ」
しかしここで僧侶は彼に言った。
「もう少し落ち着いて考えるのだ」
「それは何故ですか?」
「貴殿は虚偽の中にある」
「嘘だ、それこそが嘘だ」
タミーノは僧侶のその言葉を真剣な顔で否定した。
「僕はそれは」
「ザラストロ様を憎んでいるのか」
「倒さなくてはいけない相手です」
夜の女王に言われた言葉をそのまま言っていた。
「何があろうとも」
「誰に言われたかはわかる」
僧侶はそれは察していた。そのうえでの言葉だった。
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