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神々の黄昏

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第一幕その三


第一幕その三

「そこでヴォータンはヴァルハラの勇士達に命じ」
「あの英雄達に」
「エインヘリャル達に」
「そしてその世界中の枯れた枝を幹と共に切り砕いてしまった」
 それがあの戦いの後の彼の行動だったのだ。
「かくてトネリコは地に倒れ泉も永遠に枯れてしまった」
「何もかもが」
「それで永遠に」
「それで私は今は糸を」
 彼女の方の糸はである。
「尖った岩に巻き付けています」
「今は」
「あの大樹もなく」
「それではスクルズ」
 今度は彼女が妹に顔を向けた。
「貴女が」
「私が」
「そう、未来の女神の貴女が」
 彼女がだというのだ。
「歌をです」
「そう、私の歌を」
 スクルズは自分のその糸を先にやりながら話していく。
「それからの話を歌に」
「そう、私が歌に」
「そうするのです」
 そうせよというのである。
「未来を司る貴女が」
「わかりました」
 スクルズは姉の言葉に頷く。そうしてだった。
 歌う。彼女の歌をだ。
「巨人達の建てた城は聳え立ち誇らかにそそり立ちその広間に彼等はいる」
「ヴォータン達が」6
「神聖な神々や英雄達が」
 その彼等が集っている場所なのだ。
「そこに砕かれた薪が山の様に積まれている。それこそが世界樹」 
 それが今はそうなっているというのだ。
「やがてこの薪に火が点けられ」
「そしてそれが燃え上がり」
「輝ける宮殿を貪欲に焼き尽くす」
 彼女達の目には見えていた。
「そして永遠の神々の終わりが近付いているのです」
「誤りなく」
「それは」
「姉さん達は」
 スクルズはさらに話す。
「網を。私の歌の続きを」
「夜明けなのでしょうか」
 ウルズが言ってきた。
「それとも夜が光るのか。私の目は曇っていて」
「曇っていて」
「そうして」
「神々の古いことも見極めされない。かつてはローゲの炎が燃え上がっていたのに」
 ローゲの名前がまた出て来た。
「彼は今は」
「ヴォータンが槍の魔力で彼を抑えていました」
 ヴェルザンティが話してきた。
「ローゲは彼に多くの忠告を与えてきました」
「そう、かつては」
「そうしていました」
「何故なら彼は自由の身になろうとして彼の歯は槍の柄の文字をかじり」
 ルーン文字である。
「その知恵を得ていました。しかし」
「そう、しかし」
「そうして」
「ヴォータンはその槍の力でブリュンヒルテの岩の周りに彼を縛り付けていました」
 そうしたというのである。
「しかし何故か彼はそれを喜んで受けていました」
「そうでした」
「その時は」
「しかし」
 ヴェルザンティはさらに話していく。
「その彼はどうなるのか」
「彼は今自由です」
 そうなっているというのだ。
 
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