蒼碧の双銃剣舞~紅姫と幻視の魔王~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
before charge:紅姫と幻視の魔王
前書き
はじめまして!!
猫を愛でて愛でて愛でまくる猫、夜叉猫ともうします!
はぁ、やっぱ猫は良いですなぁ♪
このサイトでは初投稿の作品です♪
サクサクと読んで感想・評価をして頂けたらとても嬉しいです!
これからも頑張るので応援よろしくお願いいたします!
「ちょっとあんたたち!待ちなさい!」
──とある日曜日。
いつものように相棒を連れ、渋谷駅ハチ公前で女子大生やらJKなんかを、片っ端からナンパしていたらとんでもないヤツに目を付けられちまった。
俺様の名前は紫桜 七音(しおう ななと)。
誉れ高き武偵高の強襲科2年に所属するイケイケな野郎さ。
ショート丈七分袖に改造した防弾制服。
インナーのシャツの裾は燕尾、防刃ネクタイは太く短めに結っている。
腰パンはもちろん、刀入れを担ぎ、拳銃をぶら下げ、次いでにネックレスやピアスはじゃらじゃら付けている。
巷で言う、いわゆるチャラ男ってヤツか。
まぁ見ての通り、武偵高じゃあ言わずと知れた変わり者だ。
「ちょ、ちょっと待ってよ七音!急ぎすぎだよ!」
「捕まる前に逃げるんだよバカ!チンタラ走ってられるか!下手すりゃ蜂の巣だぞ!?」
あ~、相棒の紹介が遅れたな。
艶やかな金髪のポニーテールを靡かせながら、俺の隣を息を切らして走る童顔の子。
背が低い上に高い声や女の子らしい仕草、この童顔だけなら女って言ってもバレないだろうが、実は歴とした男だ。
コイツの名前は紅花 一哉(べにばな かずや)。
武偵高の探偵科2年に所属する、ちょっと有名な変わり者だ。
俺たちは1年前から変わり者コンビとして武偵高じゃ話題になっている。
まぁ学校は最近、フケているから別にいいのだが。
──で、先ほど。
すれ違ったピンクブロンドのツインテールにワンピースを着た女の子が、あまりにも可愛かったので相棒を連れてちょっかい出したら……。
別な誰かと勘違いされてしつこく追っ掛けられる羽目になってしまった。
「止まりなさいっていってるでしょ!止まらなきゃ風穴開けるわよ!」
「止まれと言われて素直に止まるバカじゃないんでね!ましてや風穴開けられるなんて死んでもゴメンだな!でもエッチなことをしてくれるなら止まるけど!」
「え~、エッチなことしてくれるなら止まるんだ。七音の変態。スケベ」
「……う。お前に言われると妙に凹むな」
「他人の話を聞きなさい!ただちに止まれ!聞こえないの!止まれ止まれ止まれぇ!」
鼻に掛かる幼い声にビックリしつつ、振り返ってよく見てみたらどっかで見たことがある顔だ。
……気のせいか。
歩道を歩く人込みを掻き分け、掻い潜り、必死に彼女の追跡を回避しようと試みる。
しかし、俺たちを見失うことなく死に物狂いで俺たちに食い付いてくる。
……なんて執着心だ、恐れ入るぜ。
こうなったら捕まるのも時間の問題。
とにかく捕まったらいろいろ面倒だし、どうにかして逃げ切りたいところ。
「ねぇ七音?どうするの?なんかあの子、すっぽん並みにしつこいよ?」
「ちっ、逃げ切れねぇか。なら最後の手段を使うか」
「え?諦めて捕まるの?で、捕まって『あの~すんません、パンツ見せて頂けないでしょうか』って言うの?」
「アホか!?俺はどこぞの骨野郎だよ!最後の手段ってたら“あれ”しかねぇだろ!」
「あぁ、あれね。……あれ?なんだっけか?」
ズルッ。
なんにも無いところで本気でコケそうになる俺。
緊張感ない能天気野郎だな、こんなところでボケるとは。
しかもちゃっかり笑って誤魔化してやがる。
ちくしょう。
その可愛らしい顔が変形するぐらいぶん殴りたい。
何だかんだしてゆっくりと振り返ると、あの子が数メートル後ろまで迫ってきていた。
「待ちなさいってば!」
「げ!?もう目と鼻の先かよ!ヤバいヤバい!全速力だカズ!」
「おー!!」
「ってバカ!!何で歩くんだよ!!」
「僕ちんもう歩けないよぉ」
「それを言うなら走れないだろ!現に歩いてるじゃねぇか!」
なんて突っ込む俺だが、もうそんな余裕もない。
諦めてこのまま捕まるのか?
いやいや、なんとしてでも逃げ切ってやる!
そして理想のかわいこちゃんに出逢うべくナンパを続けるんじゃい。
こうなったら一か八か、だ。
俺様の“禁じ手”を使わせてもらうぜ!
覚悟を決めて立ち止まろうと、ふと振り返ると彼女の手にはギラリと輝く銀色のオートマチック拳銃が。
あの重厚感から察するに、あれは偽物(エアガン)なんかじゃない。
……マジすか。
「どぉりぁああああ!!三十六計、逃げるにナントカ!!」
ヘロヘロになっている一哉の手を引き、引きずりながら全速力ダッシュ。
ヤバいヤバいヤバい!
止まったらマジで風穴開けられる!
いや、止まらなくても風穴開けられる!
……どのみち生き残る選択肢ねぇじゃん。
いやはや、そんな物騒なもんどこに隠してた?
つーか、俺様なんか悪いことした?
……痴漢?セクハラ?
そりゃ言われもなく常習犯だが、あの子には指一本触れてないぞ?
まぁ、中学生には興味ないが。
「痛い痛い痛い!七音さぁん、僕引きずってます!痛いよー!」
「知るか!引きずられるのが嫌なら道路にでも投げ捨ててやろうか?」
「いやぁ、それは勘弁してほしいっす」
「だったら自分で走れアホ!撃ち殺されたいのか!」
「それはマジで勘弁じゃ。僕ちん走りまーす!」
撃ち殺されると聞いて勢いよく加速する一哉。
それに必死に着いていく俺。
まぁ、結果オーライかな。
──バァンっ、バキュウンッ!
そんな俺様の足元を、すさまじい速度で飛来した鉛が地面を穿った。
さすがの俺もジャンプしてそれを回避する。
武偵とはいえ、今のは冷や汗を掻いたな。
「七音!大丈夫?あのお嬢ちゃん、マジで撃ってきたね」
「あぁ。アブねぇアブねぇ。つーか何者なんだテメェは!?」
「そう言うあんたたちも何者なのよ!ちょっと話を聞くだけだから、撃たれたくなきゃ止まりなさいっていってるでしょ!」
「やなこった!お前を信用できん!」
「良いから止まりなさい!止まれ止まれ止まれぇ!」
──バスバスバスっ!
彼女は叫ぶと同時に真上に発砲した。
さすがに人込みの中じゃ俺たちを撃つことは出来ない。
しかし、周りの視線がものすごく痛い。
すさまじい銃声が鳴り響く中、徒競走のスタートの合図のように、それを皮切りに猛スピードで駆け出す俺たち。
「カズ!2手に別れるぞ!30分後に駐車場に停めてある俺の車の前で合流だ」
「了解!では御武運を祈ります七音!」
「任せとけ。ゼッテーまいてやる」
「くすっ。可愛いからってくれぐれも襲わないようにね!」
「おう。ってバカ野郎、今は立場が逆だろ!」
そう言うと俺たちは2手に別れて、あの子の目を欺く。
案の定、あの子は一哉ではなく俺の後を追ってきた。
やはり俺を狙ってたか。
はぁ……嫌な予感がするぜ。
人気のない所に誘って、話を聞いてみるか。
場合によっちゃ、俺も銃と刀(コイツら)を抜かなきゃいけなくなる。
そんなときに周りに人がいると、振り回せなくなるからな。
俺は人込みの多い大通りを避け、細い路地に誘い込む。
しばらく道なりに進むと、そこは袋小路。
振り返るとあの子が、出口を塞いで仁王立ちしていた。
「あたしから逃げられると思ったわけ?悪いけどあたしは狙った獲物は逃がしたことないの。だから大人しく観念しなさい!」
「はいはい。中学生には興味ないが、そこまでしつこく付きまとわれちゃこっちも敵わないんでね。ここいらで終わりにしようと思ったわけ」
「……ち、中学生!?」
「え?違うのか?ごめんごめん。んじゃ小学生か」
「……………」
思いきり地雷を踏んづけた模様。
大爆発まであと数秒。
しかし、起爆スイッチを踏んづけた当の本人はその事をまったく知らない。
どす黒いオーラを漂わせ、顔を真っ赤にして俺を睨み付ける彼女。
「だ、誰が小学生よ!!あ、あたしは16才!!武偵高の2年生なんだからっ!!」
「はぁ!?デタラメ言うな!武偵高の2年生なら俺と同い年だぞ!?つーかお前、武偵だったのか!?」
「そうよ!!」
「あり得ないだろ!!」
「あり得るの!!」
な、なんか痴話喧嘩みたいになっちまったな。
早く済ませて帰りたいぜ。
「とにかくそれは置いといて、俺に何の用だ?用がないならさっさと帰してくれ」
「そ、そうね。えっと、その格好ってあんたも武偵高の生徒よね?」
「それを聞くなら他の野郎でも良いだろ?」
「う、うるさい!本題はここからなの!よく聞きなさい!3年前に起きた事件で活躍した2人組、確か1人は『紅姫(ルージュ・プランセス)』って言ったかしら?そしてもう1人が……」
「……『幻視の魔王(イリュジオン・サタン)』か。まさかお前、3年前に起きたとされる魔女の反乱(レヴェリヨン・ドゥ・ソルシエール)について調べてるのか?だったらやめときな。なんせ逸話だし、そんな人物なんて存在しないから」
それを聞いて顔を強張らせる彼女。
──魔女の反乱(レヴェリヨン・ドゥ・ソルシエール)。
紅姫(ルージュ・プランセス)。
そして、幻視の魔王(イリュジオン・サタン)。
いずれも今ではもはや迷信だが、名前が上がった2人の人物は、3年前に起きた国家機密規模の大事件を終結させた当事者だ。
恐らくこの事件を知っている人物はもう誰もいないだろうし、この空前の大惨事は歴史から跡形もなく抹消された。
事件の後、当事者である2人は消息不明になったとされ、そのまま逸話だけが残ったとさ。
「紅姫と幻視の魔王は……いる!! 絶対に生きているの!!」
「何でそう思う?証拠がないじゃないか」
「証拠ならあるわ。武偵高で変な2人組がいるって話を聞いたの。学校にもろくに来ない不良だって。でもその2人組は尋常じゃないぐらい強いって聞いた。だから……」
「なるほど。で、変人2人組の俺たちに目星を付けたと?バカバカしい。話に付き合ってられん。もう帰らせてもらう」
「行かせないわ。あたしには時間がないの!!」
ワンピースのスカートの下から、もう一挺の拳銃を取り出して構える彼女。
たったそれだけで俺たち襲われそうになっていたわけ?
ちょっと呆気に取られて泣けてくる。
ん?二挺流……?
そうか、やっとこ思い出したぜ。
確かイギリスから武偵高へ転校してきたって言う超エリート美少女。
犯罪検挙率100%とか言う怪物娘で、14才の時にすでに『双剣双銃のアリア』って2つ名を持っているSランク武偵。
──名前は神崎・H・アリア。
これは噂どおりの怪物娘、だな。
やれやれ、格下相手に本気モードかよ。
相対する俺は2つ名もなければ、遥か雲の下のDランクだぜ?
ま、2人になれば呼称がつくぐらいだが。
仕方ねぇ、大怪我を覚悟して相手をしてやるか。
背中に背負う刀入れから丁寧に中身を取り出し、出てきた漆塗りの鞘を腰に差し、ショルダーホルスターから愛銃のベレッタM8000シルバースライドモデルを取り出してアリアの前に佇む俺。
そしてアリアの赤紫色の瞳を真っ直ぐに見詰める。
「なるほど。噂どおりの一剣一銃ね」
「武偵なら誰でも使えるだろ?誰が使って悪いっていった?」
「それもそうね。良いわ。じゃあハンデをあげる。掛かってらっしゃい」
「おいおい。俺をバカにしてるだろ?甘く見てると痛い目みるぜ?」
「さぁ?ぐだぐだ言ってないで掛かってらっしゃい」
やる気満々、だな。
なんか頭に来る。
そう思いながらゆっくりと刀を鞘から抜き放ち、間髪入れずに間合いを詰めるため雷鳴の如く走り出す。
アリアは見切ったように、2つの銃口をこちらに向け、弾丸の嵐を巻き起こす。
──バリバリバリバリバリバリっ!!
すさまじい銃声を響かせ、放たれた無数の弾丸の雨。
恐れることなく、止まることなくその凶悪な雨へ突っ込んで行く俺。
その瞬間の出来事だった。
「ぐはぁっ!!」
──それは、いとも簡単に俺の皮膚を突き破り、内臓を貫いて空に鮮血の大輪を咲かせた。
苦渋の呻き声だけが、そこに響き渡る。
「嘘!?防弾制服じゃなかったの!!」
弾丸が貫通した力で大きく仰け反り、ゆっくりと後ろへ倒れていく俺。
自分がしたことが信じられず、思わず拳銃を投げ捨て駆け出して倒れる俺へ近づくアリア。
そんな、防弾制服を着てなかったなんて。
ピクリとも動かない俺をゆっくりと抱え上げようとした時。
背後からパチン、と指の鳴らす音が聞こえて我に返ると、そこには袋小路の壁だけがあった。
「何かが必ずしも目の前で起こるとは限らない。それが嘘か真か、誰も知る術はない。一度見たら最後、古より伝う幻の虜になる。さて、一度限りの夢幻(ゆめ)はお気に召しましたか?」
風に奏でるように囁く、低く妖艶な甘い声。
慌てて振り返るアリアは目を疑った。
背後に佇むのは、先ほど彼女に撃ち殺されたはずの七音本人だった。
何が起きたか分からず、呆気に取られて茫然とする彼女。
それを見て嘲笑うかのように笑む俺。
投げ捨てた二挺の拳銃を拾い、アリアの前に優しく放る。
「ほれ、落とし物だ。ちゃんとしまっとけよ?」
「……あ、うん。ありがとう」
「んじゃな。戦意喪失の相手を襲うほど俺は悪いやつじゃないんでね」
「……ちょっと待って。せめて名前だけ教えてよ」
「名前だけ?……仕方ねぇな。俺は紫桜 七音。んじゃまたどこかで逢おう」
踵を返して袋小路から去る俺。
出口辺りで一哉が壁に寄りかかって俺の帰りを待っていた。
「よう。待たせたなカズ」
「待ってたってほどじゃないよ七音。あれ、使っちゃったんだ?」
「まあな。逃げるためには仕方ねぇだろ」
「傀儡眼(かいらいがん)……だっけ?本当に便利だよね?さすがは幻……」
「バカヤロ。それ以上は喋るな。思い出したくもねぇ」
思いきり一哉の顔を叩きながら言う俺。
痛そうに顔を擦る一哉を尻目に、俺は駐車場に止めてある車に向かう。
これが俺たち『蒼碧の双銃剣舞』と、後に鬼武偵として世界に名を轟かせる神崎・H・アリアとの、ちょっと変わった刺激的な出会いであり──。
最悪な日々の訪れを告げる前兆だったとは、俺たちは知るよしもなかった。
……To be continued!!
後書き
いかがですか?
初投稿なので感想がスゴい気になります(; ̄ー ̄A
この2人組の今後の展開、楽しみにしていてください!
では、また会いましょう!
猫に引っ掻かれまくる猫、夜叉猫より
ページ上へ戻る