悪の騎士
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第二章
「あの、何かお考えがある様ですが」
「それは一体」
「その時に言う」
刺客を捕まえたその時にだというのだ。
「わかったな、その時だ」
「ですか、それでは」
「刺客は捕まえます」
「出来る限り殺さずにだ」
どうしてもという場合がある、命のやり取りなら。
しかしそれでもどうしようもない場合はというのだ。
そして実際に刺客が来た、それもである。
毒見役が怪訝な顔でだ、ハイネルに自分の指輪を見せてきたのだ。この指輪も彼が毒見役に渡したものである。
見れば銀色の指輪が曇っている、それを見てハイネルはすぐに察した。
「毒か」
「はい、先程姫様に茶を入れようとしたのですが」
そこでだというのだ。
「こうなりました」
「そうか、茶か」
「茶の葉にでしょうか」
毒見役は怪訝な顔でハイネルに問うた。
「だからでしょうか」
「いや、よく調べよう」
断定は避けた、まずは調べるというのだ。
「水も何もかもな」
「調べますか」
「厨房全体を調べる」
茶を淹れたそこからだというのだ。
「シェフ達もだ、わかったな」
「わかりました」
こぷして毒見役の指輪から徹底的に調べられた、とりあえずシェフ達も徹底的に吟味されたが彼等は無実だった、元々忠誠心に篤い誠実な者達だったが結果はそうだった。
そして厨房の食器や茶の葉、井戸の水も調べられた。その結果だった。
「カップにか」
「はい、陶器にです」
そこにだったのだ。
「毒が塗られていました」
「しかも姫が口をつけられる場所にだけか」
「これでは私が試しに飲んでもです」
それでもだった、茶全体に毒がないから。
「わかりにくかったです」
「そうだったな、危うかった」
「ここまで企んでいるのはやはり」
「魔族だな」
彼等ならではというのだ。
「それも北のな」
「謀略に長けたですね」
「あそこまで謀略に長けているのは他には西方のセグリアだけだ」
彼等のいる帝国と対立している国だ、帝国の皇室とセグリア王家は代々宿敵の関係にあるのだ。
「あの家だけだな」
「しかし今はセグリアの可能性は」
「ないな、近年は共にアドルフォンと戦っているからな」
北の魔族と組み勢力を伸張させている国だ、帝国とセグリアの共通の敵となっているのだ。
共通の敵の前には長年の宿敵関係も休戦となる、それでだった。
「彼等ではないからな」
「ではやはりですね」
「魔族だ」
北の彼等以外考えられないというのだ。
「到底な」
「ではここは」
「さらに調べるぞ」
こう言うのだった。
「姫の茶飲みに近づける者を手当たり次第に調べる」
「わかりました」
「必要とあらばだ」
その灰色の目が光った、そしてこう言った。
「拷問もする」
「それもですか」
「そうだ、これまでは尋問だけだったがだ」
かなり厳しかったがそれはしなかったのだ、今までは。
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