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この世を最も笑わせるもの

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第二章

 フィンランドの政治家が真似られている、そっくりでしかもコミカルだ。
 これも面白い、だがそれでもサルヤネンは言うのだ。
「凄いお笑いかな」
「それはどういったものですか?」
「こういうのじゃないんですか?」
「違うのかな」
 サルヤネンは他の採点者達の問いに返した。
「どうもね」
「ううん、何が違うのかもおわかりになられてないみたいですが」
「そうなのですか?」
「そうだね、私もね」
 こう返すのだった、わかっていないと。
「今世相が暗いじゃない」
「EUも滅茶苦茶ですしね」
「テロのこともありますし」
「景気も悪ければ失業率も高い」
 まさに暗い話のオンパレードだ。
「自殺者も多いね」
「増加の一途ですね」
「出生率も伸びませんし」
「しかも世界jのあちこちで資源問題や紛争があって」
 こうした話もあった。
「飢餓に貧富の差にね」
「欧州も他人事じゃないですからね」
「こっちも色々ありますから」
「もう今世界的に暗いじゃないか」 
 サルヤネンはぼやく顔で言った。
「だから私は皆が笑えたらって思ってね」
「この大会を開かれたんですね」
「それで」
「辛い時こそ笑いだよ」 
 この考えからのことだった。
「そう思って主催したけれどね」
「それでも何か、ですか」
「違うんですね」
「もっと。皆が心から笑える」
 サルヤネンは言う。
「そういうのないかな」
「若しそれが出れば優勝ですね」
「その芸を出した人が」
「文句なしだよ」
 若しそういう人間が出ればだというのだ。
「そうなればね。けれど」
「まだ、ですね」
「まだそういう人は出ないですね」
「定番のエストニアからゲスト優勝の動きもないですし」
「これは」
「このままだとね」
 サルヤネンは浮かない顔で言った。
「優勝者なしかもね」
「最も笑わせてくれる人がいないから」
「出ていないからですね」
「皆面白いけれど」
 これは確かだ、日本から来ている芸人達も。
 しかしそれでもだというのだ、彼が求めている笑いは。
「何かが違うんだよ」
「それが何かもですか」
「わからないですか」
「この世界を最も笑顔にさせてくれるもの」
 イメージを語った。
「それなんだけれどね」
「ううん、難しいですね」
「どうにも」
「本当にね」
 サルヤネンはぼやきも入れた、とにかくだった。
 彼は大会が進む中でぼやいていた、彼が求めるお笑いは何かと。
 その中でこの大会の出場者にしては風変わりな者が出て来た、その者はというと。 
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