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メフィストーフェレ

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第三幕その三


第三幕その三

「大海原の向こうの潤いを含んだ海の香気の中に」
「海草と花と空の間に」
「人知れぬ安らぎの港が見えるね」
「はい」
 ファウストは誘っているだけだがマルゲリータは実際に見ていた。
「見えます。青い小鳥達も」
「それは晴れた空の向こうで虹に囲まれて太陽の笑みを映している」
 こうマルゲリータに話す。
「そこでわたし達は希望に満ち新たな場所を求めかが椰子く」
「その島に向かうのですね」
「そうだ、遠くに」
「博士」
 ここでまたメフィストが出て来た。そうして自分に顔を向けてきたファウストに対して静かに告げるのだった。
「もう夜明けです」
「悪魔・・・・・・」
 マルゲリータは彼の姿を見て顔を青くさせた。
「どうしてここに」
「早く」
 ファウストはまたマルゲリータを急かす。
「急ごう、すぐに」
「私を見捨てないで下さい」
「だから早く」
「これはもう駄目だ」
 メフィストは最早錯乱し何もかもができなくなっているマルゲリータを見てすぐに見切った。そうしてファウストに対して言うのであった。
「ほら、もうラッパの音が」
「ではすぐに」
「はい、すぐに」
 確かにラッパの音が聞こえてきた。一刻の猶予もなかった。
「行きましょう」
「マルゲリータは」
「悪魔、来ないで」
 メフィストを見て怯えるばかりであった。
「私のところから。どうか去って」
「太陽が姿を出します」
 また言うメフィストだった。
「ですから早く」
「落ち着くんだ」
 ファウストは何としてもマルゲリータを救おうと声をかける。
「どうか。本当に」
「神よ、お救い下さい」
 マルゲリータは今度は祈りはじめた。
「どうかこの私を」
「祈るよりも早く」
 また急かすファウストだった。
 
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