鋼殻のレギオス IFの物語
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第零章
一話
前書き
設定上、原作と少し違うところがあります。
余りに逸脱いていた場合などは指摘していただけると助かります
※にじファンから移転しました。
見渡す限り荒野の中を走る
「レストレーション」
呟いた言葉によって、手の中にある黒鋼錬金鋼が刀へと変形する
活剄によって強化した体に力を入れ、前方に見える汚染獣に接近すると同時に刀に剄を込め、振り抜いた
───外力系衝剄変化 ・剛剣
剄によって生み出された刃によって一刀の下に両断された汚染獣が体液を撒き散らし、生き絶える
周囲では幾人もの武芸者が同様に、或は徒党を組み幼性体や雄性体に立ち向かっている姿が見える
雄性体を断ち切り、死んだのを確認するとまだ残る汚染獣の中に飛び込んで行った
汚染物質によって大地は汚染され、汚染獣がその大地の覇者と成った世界
人々は自律移動型都市《レギオス》の中でのみ暮らし、日々汚染獣の脅威と戦い続けている
ここはレギオスの中の一つ、名を『槍殻都市グレンダン』と言う
「レイフォン、今度の大会に出てみないか?」
何時ものように汚染獣との戦いを終えて家に戻り、幼なじみであり家族でも有るリーリンが食事を作っている間、体を休めていたレイフォンは養父であるデルクから声を掛けられた
「今度のって?」
「ああ、未だ知らなかったか?天剣授受者決定戦のことだ」
そういいながら手渡された紙を見る
少し先に天剣授受者を決めるための大会が有り、一定以上の戦果を上げている者の所に配られるらしいそういえば来てたなと思う。武芸が盛んなここではこの手の大会が良く開かれ、ここ最近の大会では軒並み優勝を続けているレイフォンに誘いがきたらしい
下まで読み進めて行くと、優勝者には賞金が出ることや詳しい日程などが書いてある
「うん、出てみるよ」
「そうか。お前には才能が有るからな、もしかしたら天剣に成れるかもしれんぞ」
そういう養父の姿を見ながら、困った様にレイフォンは苦笑した
天剣授受者とは武芸が盛んなグレンダンの中でも選ばれた十二人に与えられる最強の称号である
彼等は一般の武芸者を超越した力を持ち、天剣と呼ばれる特殊な錬金鋼を使う
その力は汚染獣の中でも最強の個体である老成体相手に単身で立ち向かい、殲滅するほどである
最低条件として、通常の錬金鋼では扱いきれないほどの剄量を持つとされており、その称号はグレンダンに住む者の憧れである。
しかし
(成りたく、無いなぁ)
自身が習っているサイハーデンの道場で、そう呟いた
レイフォンは天剣に成りたくなど無かった
レイフォンが戦う理由は孤児達のためである
自分には親がおらず、デルクが経営する孤児院で、同じ様に親がいない子供達と一緒に住んでいる
武芸気質なデルクは経営があまり得意ではないため、孤児院は裕福とは言えず、レイフォンは自身の武芸の才を活かして金を稼いでいる
かつてあった食糧危機、共に過ごしていた兄弟達がお腹を空かしているのを見ているしか出来なかった
今では危機は乗り越えたが、二度とそんなことが無いようにレイフォンは戦っている
一時期調べてみた結果、天剣授受者ともなればある程度金は貰えるが、それでは足りないだろうということが分かった
もし選ばれれば、普段の戦闘には出ることを許されず、たまにしかこない老性体とぐらいしか戦わない
それも、何人もいる中から一人なのだ。収入を得る機会は格段に減るだろうし、出稼ぎなどで他の都市に出ることもままならないだろうと言うことを知った
それゆえレイフォンは天剣授受者にはなりたくないのだ
手に持つ復元した錬金鋼に眼を移し、剄を込めていく
なんの変哲もない錬金鋼が、込められる剄量の許容量を超え、赤く成ってきたのを確認して戻す
(もしも選ばれたらどうしよう?)
こんなことを考えるなど、傲慢とも思えるがレイフォンは最低条件を満たしているのだ
これがそこまで珍しくないなら未だしも、レイフォンは他人の錬金鋼が限界を迎えるところなど一人も見たことがない
自分と同じ様に知られないようにしているなら別だが、他の人からすれば天剣に選ばれることは名誉である以上、実際にいないのだろう
そのことが選ばれる可能性が高いかもしれないことをレイフォンに思わせる
しかし、賞金が有る以上なんてかして手に入れたい
方法が無い訳ではないが、それは周りにばれないように剄量を押さえて戦うことだ
錬金鋼が限界を迎えない量に押さえ、観客を騙し抜かなければならない
「なんとかなる、かな」
時間はおおよそ二週間。レイフォンは、見に来るだろう天剣をも騙すために頑張ろうと決めた
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