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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-2 第5話

 
前書き
この回には、オリジナルの種族が登場します。 

 
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-2
勇者としての始動
第5話

数日かけ、一旦ラダトームに戻り、ラルス16世に報告。ローラ姫が連れ去られた方向を伝えた。
ラルス16世はそれを受けて、ラダトーム兵とラダトーム戦士団でローラ姫救出隊を結成した。
ただ、人数は4~5人と少ないものだった。とは言うものの、今の実態を知るハルカにとっては、人数を増やすことなど不可能だと分かっていた。
「勇者ハルカよ、そなたもローラ姫探索に協力をしてくれ」
「分かりました」
その後、城下町でイアン一家に宿泊した後、旅の準備を行った。
「そうか、ローラ姫がさらわれたのは、東の方向か」
「はい。僕もそちらに行こうかと」
「気をつけろよ。魔物も強くなってくるかも知れんからな」
イアン一家にも少し情報を伝えた。今回もサユリは保存食を作ってくれた。そして娘のエリカもお菓子を作ってくれた。
「本当はチョコレートのお菓子にしたかったんだけど、暑いから無理だから、ビスケットにしたんです」
「ありがとう」
ハルカはイアン一家に深々と御礼をし、また旅立った。

東の方向へ行く、といってもハルカには気になったことがあった。
昨晩、イアンが“岩山の洞窟”について話してくれたのだ。
「あそこには何もめぼしいものは無いと聞いてはいるが、ただ、何か気になるものはあったと聞いている。鍛えるついでに行ってもいいぜ」
何か気になるもの。それがハルカにとっても気になる言葉となった。
(そう、僕はまだ未熟者。鍛えるついでに行ってくるか)
ハルカはイアンからもらった地図をみて、コンパスを頼りに岩山の洞窟へ向かう。
途中、食事と仮眠を取りながら数日かけて岩山の洞窟へとたどり着く。

そこはロトの洞窟よりも暗闇に覆われているような暗さだった。
とはいっても、噂によると、勇者ロトの時代から存在していたらしい。
ロトの遺品があるかもという冒険者もいたが、生きて帰ったものは数少ないらしい。
ハルカは何も言わずに松明に火をつけ、潜り込んだ。

そこは魔物の住処と化していた。
ハルカはメーダなどの魔物を何度も倒していった。
途中、ガライからの帰り道に閃いた剣術“十文字斬り”を何度も放つ。それは80%の確立で会心の一撃を敵に与えられる技である。会心の一撃でなくとも、十分に強力だった。
「あんた、勇者か」
しゃべることの出来る魔物もいる。魔法使いという灰色のローブに目だけ光らせた魔物がハルカに語りかけた。
「そうだけど?……僕はやめないぜ。僕はあんた達を倒しまくって、やらなきゃならないことがあるんだ」
「……勝手にするが良い。俺はランクの低い魔物だから何も言えねえんだ」
そういってハルカに攻撃を仕掛けてきたが、通常攻撃であっけなく敗れ去った。
「魔物にはランクがあるのか。ローラ姫をさらった奴は高ランクの魔物だろうな」
ハルカは布だけとなった魔物にそう言い残して去っていった。

岩山の洞窟は少しばかり複雑だった。ハルカも少し迷った。
(早くリレミトという呪文を取得したい)
苦笑しながらハルカは歩き回る。
途中で水場があった。飲めるかどうか思案していたが、
「それは飲めるよ」
と、小さい体の妖精(何匹か住んでいる。魔物とは一切かかわっていないらしい)に教わった為、少し飲んだ。
味は雑味が無くおいしい。
「昔は人間がここによって水汲んでいたんだけどね、この様だよ」
妖精は寂しそうにこういった。
「ありがとう。君はエルフ?」
「違うよ。豆人と言われる妖精さ。君に見えるということは、君は何か特別な人間なんだね」
「まあね。まあ、何が特別かよく分からないのだけど。僕は勇者ロトの子孫と呼ばれてるけど、君は信じる?」
豆人は首を縦に振った。
「確かに君は勇者っぽい」
「あはは、そうか。でもまだ駆け出しなんだよね」
「そりゃ、勇者だって最初から強いって事はないさ。勇者も努力して強くなったんだ」
豆人は高い声で楽しそうにハルカに語りかける。ハルカも、そんな彼に水と同じ潤いを感じていた。
少しの間、ハルカは豆人と談笑した。
「さて、僕はもう行くよ」
「ああ、そうだね、ご武運を」
ハルカは豆人に挨拶を交わしてこの場を去った。
「……竜王を倒してくれるかな」
豆人がボソリと呟く声がハルカには聞こえていた。
「大丈夫、僕が」
「うん、ぼくは信じる」
ハルカは豆人の声に1人微笑みながら、歩き出した。

何時間か経った時、ハルカは宝箱から鉄の盾を入手した。
買おうかと迷って買わなかったので、これは得したと思った。
そして、“死の首飾り”を入手した。
(これは呪いのアイテム、か。ロト様が般若の面を手に入れていたっけ。ラダトーム城の地下室に安置されていたっけ。触るなって大きく赤い染料で書かれていたな)
呪いのアイテムは武具屋か道具屋に売却すればよいと書物に書かれていた。武具屋は道具屋は呪いのアイテムに関しての取り扱い免許も必要なのだ。呪いの魔術が使えるものを除く。
もちろん、ハルカは売るつもりである。
そしてさらに奥へ進むと、気になるものを見つけた。
それは「戦士の指輪」と言われるものだった。
指輪の入っていた箱に一枚の紙切れがあり、「戦士の指輪。」と書かれていた。紙切れは時代的には100年以上前のものだろう。
ためしにハルカははめてみる。ぴったりはまる。しかし、何も起こらないし、何も感じない。
(ただの指輪?でも、何であんなに特別扱いされているだろう。気になるな)
何の効果も無い指輪だが、何か訳でもあるのだろう。
(養母さんが残してくれた本に書かれていないかな)
今は暗い洞窟。ラダトームに戻ったら調べてみよう、という考えである。
「さて、ここにはもう用は無いよね。戻ろう」
「そうはさせん」

「!?」
ハルカは声のする方向へ振り向く。そこには赤いローブの姿をした魔物がいた。
「俺は竜王軍幹部だ」
「なっ。僕を殺す気か」
表情は分からない。ただし、目は怪しく光っている。真っ赤に。
「当たり前だろう?お前は憎きロトの血を引く勇者だからな」
「竜王軍はロトを憎んでいるのか」
「というより忌み嫌っている。目障りな存在だとな。…ギラ!」
火の玉はハルカめがけ飛んでくる。ハルカは鉄の盾で防ぐことが出来た。
「不意打ちか!」ハルカは叫ぶ。しかし怒りは込められていない。ダメージはほとんどなかったからだ。
「ふん。お前を殺す為ならどんな手でも使う。今度はより強化されたギラだ……」
赤いローブの魔物は詠唱を始めた。高度な魔法を扱うときは詠唱が必要なのだ。利用する時が来た、ハルカは動き出す。
「なら僕もやらせてもらう。……“三重十文字斬り”!!」
ハルカの銅の剣は美しく三回、十の字を描き、赤いローブの魔物を切り裂く。
「なっ」
「お前は幹部といっても下のランクだろう?最初のギラは弱かったぜ。僕を苦しめるほどの敵じゃないな」
赤いローブの魔物は言葉を話せる能力を失い、奇妙な断末魔と共に消え去った。
「名前も名乗れないような魔物だし、な」
今度こそ用はない。ハルカはまた、来た道を引き返す。

岩山の洞窟を出た後、ハルカはキメラの翼でラダトームへ帰還した。そして、イアン一家の営む食堂で食事を取り(あいにくこの日は来客で家へは泊まれなかった)、宿屋に泊まることにした。
部屋でハルカは“戦士の指輪”を取り出す。ほとんど錆び付いてはいた。机には持ち歩いている本。何か分かることは無いかと、指輪をはめつつ、調べていた。
すると、あることが判った。
それは勇者ロトの仲間の男賢者がはめていた、不思議な指輪だったらしい。能力は不明だが、その指輪は男賢者の力を高め、勇者ロトの手助けに役立てていたという。
挿絵にあったその指輪は美しい銀色をしていた。ハルカの持っている“戦士の指輪”は真っ黒に錆び付いてはいたが、形は少しだけ似ていた。
(と、なるとこれは元々は賢者の指輪って事か。……しかし、何故“戦士の指輪”になったのか?……分からずに名付けたのか?)
ごうごうと動く扇風機に当たりながら、ハルカはもう少し本を読むことにした。
(……ああ、もう、蒸し暑い。鎧脱いだのに)
ハルカは半そでのシャツとズボン、戦士団のリングと、白いグローブ、ブーツの姿だった。何故か、脱いだのは兜と鎧だけ。最も、それには意味は無いが。
(…………まあ、これが元々はロト様の仲間のものだったって事が判っただけでもよしとするか……もはやこの指輪は抜け殻みたいなものだし)
ハルカは指輪を外し、魔法の道具袋の中に入れた。
(今夜も暑いな、いや、今夜は特に暑い。シャワーでも浴びてこようか)
(結局、細かいところまでは判らず終いってことか)

翌朝のラダトーム城の図書室で、ハルカはイアンに指輪のことを話した。
「そうか、やはり、勇者ロトには妻になるだろう女僧侶以外の仲間の1人は男賢者って事か」
「ええ。でも何で“戦士の指輪”なのかは判らなくて」
「そうだな。ま、“戦士”といっても、俺やお前みたいに鎧兜を身に付けて、力で戦う職業以外の意味も込められているだろうからな」
「僕はホイミとギラは使えますよ。後、もうすぐラリホーを覚えられそうです。眠気を誘うことには成功しましたので」
ちなみにハルカは岩山の洞窟でラリホーを試していた。
「あ、そう…」イアンはがっかりした様子で、そして苦笑いを浮かべた。
イアンは呪文は全く使えない戦士だったのである。もちろん、若い頃から。
「お前は魔力持ってたんだな…」
「あ、イアンさん、凹んでます?」
「ああ、ちょっとな……俺も魔法使いたかったからさ……」
イアンの表情があまりに哀愁漂っていたので、ハルカは思わず吹き出しそうになった……。

*おまけ
この回に出てきた妖精・豆人について
体が小さい。体調は10~20cmぐらい。
ハルカがエルフと間違えたことから、エルフにそっくりである。
(ここで言うエルフは、人のような姿に尖がった耳が特徴のあれ。イメージとしてはDQ5に出てきたベラなどのような姿。ただし、この話に出てきたのは男の子である)
特別な人にしか見えない。ハルカには見えた(勇者ロトの血を引く者だからか)。
実は精霊ルビスが作り出した存在の一つ。
勇者ロト(レイル)がエルフの人間嫌いを激しく非難したのを見たことがきっかけ。勇者ロト(レイル)は基本、穏やかな性格で、悪人・悪者以外は非難することはなかった。
しかし、悪人・悪者でもないエルフに激しく非難していたのがルビスやエルフたちは衝撃を覚えたと言う(勇者ロト(レイル)にはかなり珍しい“嫌悪感”をエルフに抱いていたという。原因はおそらくノアニールの一件)。
なお、特別な人間にしか見えないのは、もともとのエルフ(妖精)が人間から離れて生活していることから、安易には人間には触れさせないようにするためである。 
 

 
後書き
オリキャラどころかオリジナルの種族(?)まで登場してしまいました。
 
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