利口な女狐の話
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第一幕その二
第一幕その二
それを受けた管理人は。
「な、何だ!?」
「おい、おじさんが目を覚ましたよ」
「全く、碌なことにならないな」
蝶やトンボ達が原因を作ったビストロウシカに抗議する。しかし彼女は平気なものである。
「それで?」
「やれやれ、こんな態度だよ」
「ふてぶてしいものだよ」
「些細なことじゃない。こんなこと」
こう言う彼女だった。その間に蛙は管理人の鼻から逃げ出して管理人はビストロウシカが目の前にいるのに気付いたのだった。
「おや、狐かい」
「その狐だけれど」
「ふむ、これは」
彼女をまじまじと見だしたのだった。見てみるとだった。
「中々可愛いな。これはいい」
「いいって?」
狐は管理人の言葉がわかるが管理人は狐の言葉がわからない。人間と動物の違いが出てしまっていた。だがお互いそのことに何とも思っていない。
「私が美人なのは言うまでもないわよね」
「こんなのだからね」
「全く」
「本当だよ」
蝶やトンボだけでなく蛙まで言うのだった。
「けれどさ、そんなに自惚れてると」
「そのうち痛い目に逢うよ」
「そうなっても知らないから」
「そんなことならないわよ」
彼女だけがそう思っていた。しかしであった。
「小僧のお土産に丁度いい」
「えっ!?」
ビストロウシカの襟首を後ろからぐい、と掴んで持ち上げたのだった。それで捕まってしまったのだった。
「どういうこと、これって」
「子供達が喜ぶわい」
「あ〜あ、言わんこっちゃない」
「全く」
「そうなると思ったよ」
捕まってしまったビストロウシカを見ながら言う彼等だった。しかし全く同情してはいない。
「まあ捕まっても生きてるからね」
「また会いに行くから」
「またね」
「またねじゃないわよ。何で私がこんな目に遭わないといけないのよ」
捕まってもビストロウシカはビストロウシカだった。彼女はそのまま管理人の家に連れて行かれる。彼女にとっては全く以って納得のいかない話だった。
そのまま彼女は管理人の家に連れて行かれて家の片隅にある小屋に置かれた。縄でつながれいつも憮然とした顔をしていた。
「全く。御飯は安心して食べられるけれど」
それだけがよかった。
「他は何なのよ。退屈だし自由はないし」
「まあそう言うなって」
ここで犬が来た。大きなシェパードだった。
「御飯がいつも食べられるのはいいことじゃないか」
「あんたはそう思うのね」
「そうさ、思うよ」
その通りだというのだった。
「他に何が問題なんだよ」
「全く犬っていうのはね」
その彼を一瞥してからふう、と溜息をついてみせて言うビストロウシカだった。小屋の前に座ってそのうえで彼と話をしている。
「何で人間に逆らわないのかしら」
「それがわし等犬なんだがね」
彼の返答は何を言っているのだといったものだった。彼等は家の隅のその二つ置かれた小屋のところで話を続けるのであった。
「そんなことを言われてもな」
「そんなのだから人間に舐められるんじゃないの?」
「いや、舐められてはいないぞ」
犬はそれは否定した。
「このラパークにしてもだ」
「あんたラパークって名前だったの」
「そうだ。それがわしの名前だ」
まさにそうだと名乗る彼だった。
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