ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第11話 隠しイベント発生です
プレイヤー達がこの場に近づいて来そうだった事は、リュウキには判っていた。
そして、リュウキはプレイヤー2人がこの場を離れていくのを確認し、安堵をしていた。
「ふぅ……。危なかった、な。オレがまず初めにあのエリアで狩りをしてて良かった。これでさっきの連中は近づかないだろう。……多分だが」
複数のモンスターに同時に襲われるトラップ・エリア。そして、視界も最悪、立地条も件最悪だ。心配はしていたが、そんなところでレベリングをするプレイヤーはいないだろうとも思えていた。いや、そう思いたかったのだ。
――……一歩ミスを起こせば、死に直結する。
「さてと……。次だな」
リュウキは歩きだした。自身が取得している索敵スキルを駆使しつつ、モンスターの気配、勿論プレイヤー達の気配もそう。そして、システムを視通せる力も併用。
既存のスキルとシステム外スキルの合わせだ。
「……これだったら、爺やにチートだ、って思われるのも無理ないかな」
リュウキは、そう思いながら苦笑いをした。
本来は……本当は、そう言うのは嫌いだ。自分しか使えない裏技みたいなものだから。だからこそ、今までだって、殆どのゲームでは使わなかった。純粋な装備だけでプレイしてきた。システム内スキルのみを考えていた。 それは、βテストの時もそうだ。
これは使わなかった。
使わなかった、と言うよりは使うのを忘れるくらい夢中だった、という方が正しいかもしれない。だが、この世界は訳が違う。……全力でぶつからなければ、殺られる可能性も十分にあるから。それは自分だけじゃない。
「茅場……。どこかで見ているかもしれないな……。あの時、オレがSAOの誘いに付いていったとしたら……どうしていた?」
聞こえているはずは無いだろう茅場晶彦に、リュウキは呟きかけていた。万と言うプレイヤーがこの世界にいるんだ。 如何に茅場晶彦でも、そのプレイヤーの全てを記録して行くなど、容量が巨大すぎて不可能だ。
意図して、そのプレイヤーに目を向けない限りは、だが。
「まぁ……オレは晒したくないって言うのもあったし、マークされて、設定を全般的に unreasonable……理不尽な事、されても厄介だったし。……あの男は鑑賞する事が目的とも言っていた。なら、多分いずれは……」
『茅場晶彦がこの世界に干渉してくるだろう』リュウキはそう思っていた。MMORPGは見て楽しむ様なモノじゃないからだ。それが、いつなのかが検討も付かないが。
リュウキは色々と思いながら更に歩いて言った。この先にある森を目指しながら。
そして、数十分後。
リュウキは、北部エリアに存在する とある森へと脚を踏み入れた。
その森の奥深くに、開けた場所が存在する。大きな樹木が象徴的な場所だ。
「……ここ、か」
リュウキは辺りを見渡した後、手を大樹に宛がった。すると、その次の瞬間、効果音と共に《!》のマークが立ち上がった。クエスト発生フラグが立ったのだ。
「成程……、発生の条件は以前にのβの時のままだったな」
これは、通常のNPCから得られるイベントではなく、ダンジョンに隠されている隠しイベントである。
発生したと同時に大樹がざわめきだした。大樹だけじゃない。まるで森全体がざわめいているかの様に、草木が揺れ動いたのだ。
そして、目の前の大樹が光り輝く。
『ああ……何年ぶりだろうか。この私の存在に気づいた人間の存在は……』
光りを放つと同時に、目の前の大樹が喋りだしたのだ。初見であれば 驚く光景だろう。だが、リュウキは違う。
「……はは。と言ってもちょっと前にも会っていたんだがな」
リュウキは、以前にも会っていたのだ。この太樹、木の精霊とも言えるNPCに。それを思い出し、苦笑いをしていた。木の精霊はリュウキの言葉に応えたかの様に、木ノ葉を揺らした。そして、更に光りが増していく。
『そなたは、私を見破った……。そなたの力量……最早疑うべくもありません。どうか……我が願いを聞き入れていただきたい。かなり危険なことなのですが……』
□ □ □
クエストを受注しますか?
YES NO
□ □ □
応えたと同時に、クエスト受注ウインドウが現れた。
そしてリュウキは、迷う事無く、YESを押す。
『もう一度……、確認をしたい。これは生半可なものではないのです……。あなたの実力を……疑っているわけでは有りませんが……。私のせいで、人を死なせたく無い……と思うのも事実なのです。ゆえに……もう一度だけ聞きます。今回の頼み、それは あなたの命の保障はできません。おこがましいのですが……。それでも、私を……助けていただけますか?』
木の精霊は、不安そうな声色で、そう返してきた。その話が終わったと同時に再びウインドウが現れた。
□ □ □
本当によろしいですか?
YES NO
□ □ □
再確認の表示が出たのだ。
一度YESを押しているのにも関わらずに、催促が出た。因みに、これが出ると言う事は、1つの事実を示している。それは、かなりの高難易度だと言う事。
この層のレベルに似合わない難易度のクエストだと言う事だ。
「セリフもβの時と同じだな……。やはり、イベント系は全く変わっていない。難易度くらい……か。今の所は……」
リュウキは、確認をしながら、そして迷うことなくYESを指先でタッチした。それを感知した木の精霊は姿を実体化させた。
『本当に……感謝します。ありがとう。勇敢な人間よ』
光り輝くその存在は傍へとやってきて、リュウキの手を握ったのだ。
「……任せておけ」
リュウキは、答える様に頷いた。相手はイベント専用のNPC。だけど、実際にこの世界で見ると……それも信じられなく思ったりもするのだ。だから、ついつい会話を重ねてしまうのだ。
『私は……この森の精霊ドリアードと申します。自然を愛し守る存在だったのですが……、数年前に、邪悪なる精霊に……森の力の源である《マナ・オーブ》を奪われてしまったのです。……このままでは、緑は失われて……この森は、この自然は全て死滅してしまいます。最悪には、……闇がこの世界の全てを飲み込んでしまう可能性もあるのです。どうか……どうか……取り戻していただけないでしょうか?』
クエストの説明を受ける。
簡単に説明をすると、洞窟のイベントBOSSを倒し、そしてBOSSから得られるアイテムをここに届けると言う物だ。
「問題ない」
リュウキは頷いた。
『……ありがとう。貴方が……帰ってきてくれた時に、十分なお礼はさせていただきます。私も……共に戦いたいのですが…… 森を離れる事ができないので……。申し訳ありません』
「……それも問題ない。十分だ」
そして、会話を終えると、クエスト開始ウインドウが表示された。
□ □ □
【討伐・収集】 精霊の要…… マナを取り戻せ。
西の洞窟には、邪悪な精霊が潜んでいます。彼に……私の源でもあるマナ・オーブを奪われてしまいました……。大変危険なことですが……どうか、よろしくお願いします。
マナ・オーブ 0/1
□ □ □
達成条件を確認しつつ、リュウキはつぶやく。
「ふむ……。一言一句内容も変わっていないな。なら……後はクエストの場所、そして BOSSのステータスだけになりそうだな」
そう呟くと装備を確認し西の洞窟へと向かった。
~第1層 闇の洞窟~
洞窟の様なダンジョン、それは通常のフィールドより遥かに高いPoP率を有している。狩場としては良い条件なのだが、それはその場所の位置も考えなければならない。この洞窟の様に街からも遠ければ、更に危険だろう。無論洞窟内にも、モンスターがPoPしない安全ポイントはあるが、完全に体勢を立て直す為には、街や村が近くにある事が一番だから。
「……まあ、それは初心者……なら、だが」
リュウキは、片手剣を肩に担ぐとゆっくりとした足取りで進んで行った。一歩一歩進む事に、深い闇が場を支配していく。索敵スキルが無ければ、本当に視界が見えないだろう。
そんな場所で、モンスターが突然PoPしたら……、冷静さを欠いてしまう。
この洞窟内でPoPする《Killer Bad》が更に厄介だ。
このモンスターは所謂、蝙蝠であり、暗闇でも目標に性格に攻撃を行ってくるスキルを持っている。超音波だ。故に敵の攻撃のMissは殆ど見込めない。
「…………」
が、例えそうであったとしても、リュウキには関係ない。
キラーバッドの姿を視て、完全に目標を補足。暗闇の中を如何に動き回ろうとも、逃さない。全てを視通す。敵の攻撃、回避、全てのパターンを把握。
「……フッ!」
全てを読んだ上で、接敵し、斬りつける。
相手の弱点は翼。その場所に正確に当てると、宙を飛ぶ事が出来なくなる。飛行タイプには割と多い弱点だ。
そして、翼破壊に成功すれば、相手はもうどうすることも出来ない。
トドメの一撃を難なく当て、その身体を砕いた。
「ふむ……。おっ?」
リュウキは、片手剣を収めると同時に《Level up》の表示が現れた。
「それはそうか……、敵の強さがあがっているんだ。それなりに経験値取得量も上がってるから」
レベルが上がるとは思ってなかった為、リュウキは少し驚いていたようだ。そして、指をふり、メインウインドウから、ステータスウインドウを出した。
現在のステータスを確認する為に。
「……敏捷性が、フム。これくらいあったら、十分出来る……な」
数値を見て判断をしていた。幾らシステム外スキルを使えるとは言っても、ステータスも勿論ある程度は必要だ。
リュウキと言うプレイヤー、その最大の特徴は、そのレベルでは、そのステータスでは有り得ない程の力で、敵を倒している所にある。
極端な話になるがLv1のプレイヤーがいきなり、魔王になんか勝てるわけ無いだろう。
普通、抗う事すらできない。そう、普通ならば、だ。言ってしまえば、彼は普通ではないのだ。 だからこそ、βテスト時代にキリトは異常を感じていた。
同じレベルで、なぜこれほどの差を感じるのかと。その最大の理由がそこにあった。
全てを視通す眼は、レベル、ステータスの絶対を覆す事が出来る。……勿論 現段階では、だが。
「……さて、行くか」
リュウキは、ウインドウを消すと、歩を進めていった。何度か、蝙蝠やスライムがPoPしてきたが、問題視しなかった。
~洞窟の最奥~
奥へ奥へと進んでいくにつれ、この洞窟内に変化が現れていた。岩が剥き出しており、ゴツゴツとした印象だった洞窟が、変わった。人工建造物かの様に、大理石がびっしりと敷き詰められている回廊が見えてくる。
ここから先は、先ほどとは違い、分岐点は無い。ただ直線に回廊が続いているだけだ。……目的地へと向かって。
「……この先、だな」
流石にダンジョンの全てを、細部にまで覚えている訳はない。……が、感じる事はある。まるで、空気が重くなっているかの様な雰囲気が漂っている。 なんとも言い難い妖気が湧き上がっている様に感じるのだ。
そして、その直感通りだ。その回廊の先には巨大な扉が待ち構えていた。この先に 目的の相手がいると言う事だ。
リュウキは迷う事無く扉に手を当てた。すると、自分の身体の何倍もある扉が、滑らかに動き出した。一度 プレイヤーが扉を開けた、と認識すれば殆ど自動で扉が開く仕様になっている。
扉が開ききったその時だ、決して明るく無かった扉の奥が更に《暗く》染まった。
それは黒い炎だった。熱いのか、冷たいのか判らない薄気味悪い炎。
通常炎とは明かりを灯すものだ。だが、これは明らかに違った。この炎は光りは生み出さず、逆、闇を生み出す。
その闇の炎は、道を示すように 《闇》を生み出し続け、最後には円状に闇が広がりその中央の闇は更に濃いものだった。
深淵の闇、という言葉が相応しいだろう《暗黒》。
『……何者だ』
そして、その深淵の闇から、声が聞こえていた。低く重い声。たった一言だと言うのにまるで、一瞬で場を支配したかの様な錯覚に見舞われる。
「……久しぶり、と言っても通じないか。話は早めに行こうか。……マナをドリアードに返してやってくれ」
……が、リュウキは動じた様子は無い。そのBOSSは隠しイベントのBOSS。
以前にβテストの時に戦った事があるが、第1層の迷宮区で出てくるモンスターは勿論、この層のBOSSを遥かに凌駕する力を持っていた。
第1層のBOSS《イルファング・ザ・コボルド・ロード》と、この相手と戦った後に戦ったが、それよりも強かった。それも、とりまきがいるわけでもない単独の出現でだ。
(―――……さて、今回はどれ程上方に修正されているのかな?)
リュウキは、深淵の闇を見定めながら、口元を緩ませた。その表情には絶対の自信が備わっていた。
『くくくく……。人間が我にその様な口を聞くとはな…。面白い……。』
深淵の闇から、姿を現したのは悪魔。翼を持った悪魔だった。体型自体は自身のアバターの体型よりも2倍程大きいだろうか? 威圧感も相応のモノだ。
『貴様もここまで来たのだから、それなりの強さは持っておろう……。欲しいと言うのなら、力で奪ってみよ!』
怒号が響くと同時に、翼を持つ悪魔の頭上にBOSSネームである定冠詞と5つあるHPゲージが現れた。
その名は《Darkness・Shadow》。
「………なるほど、Lv:23 HP:51500と言ったところか」
数値的に考えたら、第1層の安全マージンの2倍以上のステータスを持つモンスター。ゲーム上のシステムデータ表示は《unknown》であり、識別出来ないが 眼で視通した。そこから導き出した数値だ。 そして自分のレベルよりも倍以上ある。普通は危機的状況だろう。……普通は、だが。
『ゆくぞ……!』
闇より暗黒の剣を取り出し、構えた。
「ふむ……。レベルも違うが、使用武器形状も違うな。あの時は……そうだ、曲刀だった筈だ」
『カァッ!!!』
素早い動きで、リュウキの首を刈る様に剣を走らせた。正確に軌跡を残しながらスライドされる剣閃はリュウキの首を取ろうとするが。
「………フッ!」
それを、リュウキは余裕をもって回避した。
『カァッ!!!』
今度は、接近し剣を振り下ろした。一撃一撃が場を震わせる。まるで地震が起きているかの様に、震えだした。 だが、リュウキはそれをも最小限の動きで回避した。
当たらなかったが、まだまだ連撃は続く。縦横無尽に剣を振っていくが、リュウキはそれも全て回避した。
時間にして、数秒間だが その間でいったい何合打ち合っただろうか? リュウキは基本防御に徹し、全ての攻撃を回避、或いは受け流していた。
「《ファラント・フルムーン》。……スキルの強さも増してるな。BOSS仕様だから……か?」
リュウキが、防御に徹していたのには、勿論理由があった。それは相手の攻撃パターンを《視る》為だった。BOSSモンスターの傾向を視る事で、他のBOSS達への定規にする為に、測り続けていたのだ。
そして、その結果知り得た情報があった。
「最悪だな。理不尽仕様もいい所だ。……通常Mobとは比べ物にならない程、上がっている」
難易度の上昇具合に思わずそう呟いていた。相手が隠しBOSSだからこそかもしれないが、安易にはそうは思えない。
「それに……ダンジョンも大幅に変更されているな……。そこまで出来るとは思っていなかった。大型アップデートをしていた。と言う事か」
ここまでくるのにゆうに10〜12時間は掛かっている。以前は、探索時間を含めた上でも3~5時間程度だった筈だ。単純に考えてBOSSのステータスの様に倍以上に上がっている。
元々βテスト1000人仕様から、初回10000人仕様にする為、最初からアップデートをしていたのだろう。それ以外に考えにくい。仕事量からしても。
「このゲーム関係の仕事には携わってなかったから……、細かな事は判らないけど」
正確には、どれだけの人数をかけていて作業を行っているのか? 茅場以上の者はいないだろうけれど、正直わからない事が多すぎる、とリュウキは苦笑いをしていた。
リュウキは笑える程、まだまだ余裕はある様だ。
最悪だ、と言ってもそれは経験をしていない他のプレイヤーであればの話だから。
いったいどれくらい経っただろうか? 何度も何度もリュウキの剣が相手の身体を捉え、そして相手の暗黒剣は、リュウキの身体には届かない。
例え一撃で致命傷、一撃で即死であったとしても、どんな力でも当たらなければ意味はないし死なない。例え、どれだけ与えるダメージが少なくとも、相手のHPが常時回復でもしない限り、いつかは倒れる。倒せる。
……そして、漸くその時は来た。
「流石にHPが多いから あっという間に、とはいかなかったな……。時間何時だろう?」
リュウキは、視界の端に表示されている時刻を確認した。
現時刻PM18:56。
そして宿を出たのがAM3;00前後だ、勿論昨日の日付だったが。
「BOSS戦だけでかなり時間が掛かってしまったな。まぁ、これもソロプレイの醍醐味か」
そう呟くとその後、少し遅れて、リュウキが放った斬撃を受けた《Darkness・Shadow》は、まるで機械の様に、場に ぎぎ……っと金属音を響かせると。
『ぐああああっ!!!』
叫びと共に、その暗黒の身体は砕け散っていった。
そして、その場に残されたのは暖かな光。闇の中に煌く光、《マナ・オーブ》だけが残されていた。そのオーブは、自動的にリュウキの手元に吸い込まれる様に入ってくる。
それと同時に、闇は完全に払われたと同時に、リュウキは 貴重品 マナ・オーブを入手する事が出来た。
「よし。一応ひと区切り、だな。………あ」
リュウキは、ストレージにアイテムを収納し、ほっとしていた時だ。
……ちょっとした事を思い出したのは。
「しまった……。転移結晶……買ってない……」
そう、ダンジョンには必須だと言える転移アイテムを持ってきていないのだ。だから必然的に、徒歩でご帰宅となる。
「はぁ……まぁ仕方ないか。経験値もコルも増えるし」
同じ道をまた戻るのは、少し面倒だったが、仕方が無いと、頭をかきつつ リュウキは洞窟の外へと向かって歩き出した。
~木の精霊・ドリアード~
『そなたには……感謝してもしたりない……。人の身でありながら、我が願いをかなえてくれるとは……』
「いや、問題ない。……思ったより時間は掛かったがな」
それは最終イベント。指定されたアイテムを届ける事で発生するモノだ。
『感謝する……強き人よ。……そして、受け取ってくれ。我が力を……』
精霊ドリアードの手に緑色の光が凝縮して行く。そして、握られた手をゆっくり開くと……指輪が現れた。
『これは、森の守り《エメラルド・リング》……そなたの旅に、森の加護がありますように……』
「ああ。ありがとう」
そして、リュウキは装飾装備品である《エメラルド・リング》を入手した。
「それにしても、本当に序盤とは思えない程の性能を持ったアイテム、だな。まぁ、BOSSの強さを考えたら当然だとも思うけど」
元々様々なオンラインゲームでは、ソロ中心だ。今回ほどソロで本気でよかったと感じた事は無い。1人だからこそ、捌ききれた所もあるから。
「幸先よし。……この感じで1層のBOSSのパターンを視れたら良いんだがな。……簡単にはいかないと思うが」
リュウキは そう言いつつ、村へと戻っていった。
~そして一ヵ月後~
その後。リュウキは主に攻略より、層の環境・データを徹底的に視て回った。迷宮層の攻略よりも重要なことだと感じたからだ。1層から2層……3層と続けていく事で、傾向も読みやすくなるだろう。
そして、何よりアルゴの言葉ではないが、情報は命だ。
少しでも、誰かに死なないでもらいたいからだ。例え、名も知らない者だったとしても、誰かが、死ぬのを見るのは、知るのは嫌だった。
嫌じゃない人などいないと思うが、必要以上にそう思う。こんな事態になったとしても、例えこの世界が《デスゲーム》となってしまったとしても、ここの世界は 自分の世界。
そんな大好きな世界で誰かが死ぬなんて……考えたくない。
リュウキは、命を尊く想っているから。……受け継いでいるから。
そして、一ヶ月がたつ。そんなリュウキの想いも空しく……。
≪1000人もの人が死んだ。≫
………そして、いまだ第1層はクリアをされていない。
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