100年後の管理局
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十七話 あがき、敗北
前書き
………五月は非常に忙しかったのです。
勉強が忙しくてこちらに手が回らず遅くなった次第です。
というわけで続きになります。
チャージに費やすことのできた時間は約12秒。
それだけの時間があれば、誠也は最大威力のディバインバスターを放つことができた。
その威力は恐らく全盛期の高町なのはのスターライトブレイカーにも匹敵するだろう。
それだけの威力ならば、機械王の理不尽とも言える防御を貫ける。
事実、砲撃の止んだ後の機械王の姿はボロボロであった。
全身の装甲の一部がはがれおち、ひどいところでは内部の機械が見えてしまっている部分もあるくらいだ。
最もひどい部位は左腕で、肘から先にあたる部分が完全に消失していた。
人で言えば満身創痍。それほどまでにボロボロの状態だった。
『……ヤルデハナイカ。タカマチセイヤ。』
唯一ほとんど無事な右腕を下ろす。
下ろしたことで見えるようになった紅い宝玉は先ほどまでのぎらついた輝きを失い、鈍く点滅している。
『単身、我ヲココマデ追イ詰メル者ガイルトハナ。初メテダ。』
機械王は誠也をそう称賛する。
しかし、誠也はそれを素直に受け取れない。
内実を考えて見れば、どう考えても誠也の方がボロボロだからだ。
表だった外傷という点では明らかに機械王の方が重症に見える。
ただ、機械王は機械部品を使った再生と言う手段を持っているため、肉体の損傷は一時的な戦力減少にはつながっても、大局的に見れば大差ないのだ。
一方の誠也は、残り少ない魔力の大部分をディバインバスターにつぎ込んだせいで、ほとんど魔力が残っていない上に、先ほどからずっと続く紙一重の攻防のせいで心身共に疲労が蓄積している。
目立った外傷こそ何一つないとはいえ、明らかに誠也の方が不利だった。
「よく…言う……。お前の方が……まだ…余裕があるだろうが………!」
出てくる言葉も尽きかけた体力のせいで途切れ途切れながらも誠也は反論する。
『確カニソノ通リダ。ダガ、問題ハソコデハナイ。カツテ、幾多ノ王タチト闘ッタ時デスラ、我ヲ単身ココマデ追イ詰メル者ナド皆無デアッタ。シカシ、貴様ハドウダ。我トタダ一人デ戦イ、我ヲココマデ追イ詰メテイルノダ。誇ルガイイ。』
その声は機械ゆえに無機質でありながらも、聞くもの全てが称賛を感じ取ることができる声だった。
機械王は本当に心の底から誠也の事を称賛しているのだ。
しかし、だからこそ最後まで全力を尽くし、狩り獲る。
『ダカラコソ、ココデオ別レダ。死ヌガヨイ。』
機械王は右腕を前に突き出して構える。
「まだ……、分からない……。最後まであきらめない……!」
震える足で誠也はもう一度立ち上がり、戦う構えを見せる。
だが、心のどこかで思っていた。
もう一度はじめから戦えたなら分からないが、今のまま戦っても決して勝つことはできないと。
でもそれでも、死ねない。
その思いだけで誠也は立ち上がり、戦っている。
そして、それを見て最後の攻撃を繰り出す機械王。
『サラバダ。勇者ヨ。』
その言葉と同時に、右腕が突如として発射される。
いわゆるロケットパンチである。
完全に予想の外であった攻撃に誠也は一瞬反応が遅れるが、すぐさまセイクリッドディフェンダーを発動させる。
ガキィン!!
誠也は発射された右腕を防御することに成功するが、この攻撃は今までの攻撃とは異なり、防御して終わりではなかった。
「ぐっ……!!!」
飛ばされた右腕はスラスターを吹かして、徐々に防御を貫こうとしてくる。
しかし、誠也がそれを素直に受け入れるはずはない。
バリアに魔力をさらに集中させる。
「バリア……バーストッ……!!」
セイクリッドディフェンダーで集めた魔力を爆発させ、右腕を上に弾き飛ばす。
上に弾かれた右腕はそのまま誠也の後方へと飛んでいく。
すると、バリアバーストによる爆煙から機械王が飛び出してくる。
『ハアッ!!』
右足によって誠也は思い切り蹴り飛ばされる。
しかし、先ほどまでの経験故か、セイクリッドディフェンダーで蹴りを防ぎきる。
腕をクロスさせた先、吹き飛ばされながら遠くなる機械王を見ると、その瞳が赤く鋭く光る。
「がはっ!!」
すると、突然後ろから凄まじい衝撃が誠也を襲う。
誠也が吹き飛ばされながらそれを確認すると、そこにあったのは機械王の右腕だった。
吹き飛ばされた後、そのまま戻ってきたようだ。
「くっ……!」
誠也は何とか着地をするため体勢を整えようとするが、体が動かない。
どうやらダメージを負い過ぎて体が動かなくなったらしい。
唯一動く目で、己の前方を確認すると、そこに居たのは機械王だった。
しかし、それも当然のこと。
蹴り飛ばされて、吹っ飛んでいたところを逆側からの衝撃でまた吹き飛ばされたのだから、必然元の位置に戻ってくる。
そして、目線の先、機械王がその右足をあげていた。
「くそっ……!!」
最後のあがきとばかりに、体を動かそうとするが、動かない。
『コレデ終ワリダ。』
振り下ろされた右足によって踏み抜かれる。
恐らく数秒から十数秒ほどの時間が経っただろう。
勇者と称すべき男から自らの足をどける。
『死ンダカ……?』
勇者は目の前で倒れ伏し、ピクリとも動きを見せない。
人によっては死んだと思うだろう。
しかし、体からは本当に微弱な魔力が漏れていて、誠也が生きていることを告げていた。
『生キテイルノカ………!』
その事実に驚きを隠せない。
機械王の総重量はどんなに少なく見積もっても十トンは軽く超える。
もしかしたら三十トンや四十トンにも及ぶかもしれない。
その正確な重量は機械王自身も把握しきれていないが、そのうちの半分以上の重さの乗った踏みつぶしを受けたのだ。どうやっても人間に耐えられる重量ではない。
しかし、目の前の男は耐えていた。
人に耐えられるはずもないような重量を、魔力を使い果たし気絶しているとは言え、五体満足で特に体の内外に大きなダメージを受けることなく耐えきったのだ。
『……素晴ラシイ。』
かつて生きた戦乱の世にすらいなかった豪傑。そう言っていいだろう。
もしも敵でなければその生存を喜び、自分の陣営へと招き入れただろう。
しかし、今回はそうはいかない。
『実ニ惜シイガ……。』
そう呟くと、機械王の体がまたぼんやりと光り始め、森から出てきた機械部品によって誠也から受けたダメージが回復していく。
先ほど飛ばした右腕も戻ってきていて、光が止むとそこには完全に元の姿に戻った機械王がいた。
『死ンデモラウ……!』
きつく握りしめた拳を構える。
かつての戦いを彷彿とさせる戦い。
命を真正面から正々堂々と削りあうぎりぎりの緊張感。
そんな戦いを共に演じた相手を殺さなければならない。
名残惜しさを強くその身に抱き、その紅い宝玉はまたギラリと輝く。
『サラバダ!!!』
拳が誠也に向かって繰り出される。
後書き
少し短めになってしまったようです。
次回を早く投稿できるかどうかは分かりません。
次回更新の日は未定となっております。
そんな私ですが読み続けていただければ幸いです。
ページ上へ戻る