転生者拾いました。
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蒼風の谷
片身
前書き
前回は申し訳ありませんでした。
以後気をつけます。
カズヤが斜面を下っていき、黒い波動(?)を放って敵を薙払ったのを見た。
やっぱり強い。私なんか足元にも及びそうにない。
「すごい……。」
敵をさも簡単そうになぎ倒す様は正に死神。
立ち回り方が私と全然違う。
「セリナさん?」
「ん?ああ、ごめん。なに?」
「なにをぼけっとしているのですか?今は戦闘中ですよ。」
「ああ、そうだったね。」
そうだった。カズヤに援護を頼まれたんだった。
「Donner・Magier!Donner・Pfeil(雷の矢)!」
次弾を撃ち、カズヤに群がろうとする敵を牽制する。しかし牽制でもかなりの威力があるから当たれば暫くは目を覚まさないだろう。
「……!セリナさん、ひだっ!」
「つっ!」
左から強烈な殺気し、とっさに剣を構え受けをとる。飛び込んできたのはミイラのように細い手足の少女だった。
しかし相手の力が強く押し込まれるが、持ち前のチート筋力を持って同等な位置に持ち込む。
「くっ!」
「あなたも我々の邪魔を。」
「そんなことはどうでもいいの!どうしてこっちに来るのよ。」
「如何に後方をたたくかが戦争だと存じますが?」
「戦争?違うわね、これはテロよ。」
「ではテロです。」
「なにが言いたいのよ。」
いまいち要領を得ないがこの敵は相当強い。私が必死になって鍔迫り合いに持ち込んでいるのにこいつは涼しい顔で眉一つ動かさずおしゃべりに来たと言わんばかりに押してくる。
しかもなかなか大きい。私やエリザよりも。カズヤは大きい方が好きなのだろうか。
「ゴルデ様がわたしを捨てた理由はあの男、カズヤ・クロサキ。」
「だれよ、ゴルデ様って。」
「ゴルデ様は今、死神と踊っておられます。」
一瞬目を向けるとカズヤが剣をもって戦っている。あれがゴルデ様とか云うヤツ?
「ゴルデ様をあれ呼ばわりするとは。やはりあなた達は害悪な存在。」
「よっぽどその胸の方が害悪よ!」
「悔しいですけどその通りです!」
想わぬ所で応援が入った。しかし前に彼女のを揉んだときは絶望した。弾力、ハリ、滑らかさが違った。
つまりエリザも敵。
「私よりいいモノつけてよく言うわね!」
「そうなのですか?ますます自信がつきましたわ。」
「コンチクショー!!」
一閃入魂、急に力が湧いてきて一気に剣を押したら相手が吹き飛んでしまった。
「わたしのこと、忘れてませんか?」
「うん、忘れてた。」
「そうですか。では思い出させてあげましょう。
Magicae ex humo(土の魔法)、Impetum muppet(木偶の坊の強襲)。」
相手が聴いたこともない呪文を唱えると地面が液状化したようにグニャグニャになり、そこから人の形をしたモノが生えてきた。
「やりなさい。」
完成したそれは3mあまりの巨人だった。それが4人も。
術者の命で動き出したそれは大木のような腕を気怠げに振り上げ、先ほどの緩慢な動きを感じられないほど勢い良い振り落とした。
私達はとっさに左右に跳び、腕の落着点を見る。
液状化していた地面が元に戻っており、硬い土が地面から剥がれ割れていた。あんなモノを受ければいくら防御が堅かろうと一瞬で粉々にしてしまうだろう。
「ふっ!」
攻撃後の硬直を狙って剣を振るう。が、腕を切り裂くはずだった剣はいい音を立てて弾かれ、その反動で手まで痺れてしまった。
「な、なんて硬さよ……。」
「ナメて貰っては困るわ。潰せ。」
「きゃぁ!?」
しまった、人形がエリザを捕らえた。自分の事で精一杯だった。仕方ないといえばそれまでだが、前衛と後衛に分かれて戦っていたからこそ私が攻撃をいなし、エリザが強力な魔法攻撃をお見舞いするはずだったのに。
これではいけない。けど、あの人形には攻撃が通じない。どうすれば。
「ぐぅ、うぅあぁああぁ!!」
「エリザ!うぐっ!?」
「あなたも潰れなさい。」
私をみる術者の目は多様な負の感情に満ちていた。ここで終わってしまうのか、カズヤに思いを伝えないまま。
人形の指が肉に食い込み骨をきしませる。その気になれば一瞬でつぶせるはずだ。
「絶望の中で死になさい。」
「うぅ、ぐ…。カズ、ヤ……。」
そこに死が駆け寄ってきた。
後書き
突然出てきた敵の使ったのはラテン語です。
人の形をなした人形の動かぬ思い
思いを馳せる騎士は死に向かう
次回 シルバ・ミラー
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