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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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十話


黄巾党が襲っている街があるとの報を受けた。その報を聞き華琳は一計を案じ、まず、秋蘭と季衣に軽兵を率い都市の支援に向かわせた。更に春蘭には後続の主力軍を整えさせ敵の背後に回り込む様に命じ二方面からの攻撃で殲滅させる方針を決めた。
その方針で軍議が決まった所にこのあたりの黄巾党の本拠地を見つけたとの斥候からの報を受けた。
如水はその報を聞き、華琳に頼み予備兵を集め自分に向かわせて貰うように頼んだ。
「何を考え付いたの?」
「いまなら連中の虚を突いて、このあたりから黄巾党の勢力を無くす事が出来るかもしれない」
「そう…許すわ。やって見なさい」
「了解した、期待を損なわないようにしよう」

如水は八百人余りを連れ黄巾党の拠点に向かった。
報告ではすでに廃棄された古城を拠点としているとの事で、規模としては中程度の砦以上の防御機能は有るとの事だった。
如水は街道から外れ拠点近くの森に隠れて城が視界に入る位置に陣取った。そこから更に情報を集め、城の内情を調べさせた。
「如水殿、城の中には百人程しかおらず皆出払っている様です」
「そうか、予想どうりだが、少しばかり多い気がするな。何かあるのかもしれんな」
報告を聞き一つ疑問を持った如水だが次の報告で納得した
「報告、城内には大量の食糧と金品が有りそれを守っている様です」
その報を聞き納得した如水だったが。それを奪い取る算段を思いついた
「百人程を私に付いてきてくれ、連中を騙して食糧と金品を奪い取る、残りは私達が城を去った後に城を取り壊してくれ」
それぞれに作戦を伝えた後、如水は衣装を改め、更に連れて行く百人に黄巾を頭に付けさせ黄巾党に扮した。

城門にて
「張角様よりの報せである。中の同志達心して聞け」
如水は声の大きい者を指名し口上を述べさせた。
「先ほど街を制圧したとの報を受けた、そしてその場所は交通の便が良くなく連絡が取り難い、今後はその街を新しい拠点となる皆速やかに移る用意をせよ。更にそちらに逆賊が向かっている天意が下った。急ぎその場を離れよとの命だ、何か異論はあるか」
「食糧等はどうしたらいい?」
「それは無論運び出して欲しい。街では逆賊らによって餓えた同志が多く居る張角様の御慈悲によって彼らを救えとの命だ」
その言葉を聞き、城内の者達は先を争って荷馬や荷車に積み込み物資を運び出した。
城内より物資が全て出たのを確認した如水は街に向かう号令をかけさせた
「同志達を救え、皆参ろう」
そう言って城の中から一人残らず黄巾党が去って行った後。森に伏していた残りの七百人が指示どうりに城の中に入り込んだ。
如水が指示したように彼らは中の施設を解体し、その上で如水の用意した油を掛けて火を放った。
後方より燃えている城を見た黄巾党の者は驚いたが。如水が言わせた一言で落ち着いた。
「逆徒らが火を掛けたのだろう、張角様の天意の通りだ」
その一言でかえって勇気づけた

そして戦場後に来た彼らは曹操の軍が街に居る事に驚いた。
「おい、どういう事だよ街は同志達が占拠しているはずだろ」
対して如水に付いてきた百人は落ち着いていた
「言葉通りだ我らの仲間が街に居ると」
物資を持ってきた者達が揉めていると夏候惇と夏候淵の二人が兵を連れて包囲して来た。
「貴様ら黄巾の一味だな、のこのこと出て来るとは間抜けな奴らだ」
そこに如水の連れていた残りの七百人が帰ってきて報告を述べた
「報告、黄巾の拠点の取り壊しに成功」
その報を聞き如水は作戦の成功した事を確信した。だが黄巾の面々は恐慌状態になった
「おい、どういう事だよお前ら、張角様の天意はどうなったんだ」
「おれら、張角様の命でここに来たって言うのに何でこんな事になっているんだ」
「ふん、ここに至って仲間割れか。所詮は賊に過ぎんな」
夏候惇の冷笑に対して黄巾の者は歯向かおうとしたが数で劣り包囲されてはどうしようもなかった
その騒ぎの中、如水は百人の兵を指揮し物資の点検を行い。更に、後続が持ってきたいつもの桔梗色の小袖といった装束に着替え終えてた。
「春蘭、秋蘭、この連中は私が連れてきたとりあえず縛り上げるだけで今は押さえてくれ」
その声を聞き、春蘭ら二人はこの中に如水が居る事に驚いた。
「如水、なぜこの様な所に居る、一体どういうつもりだ」
「姉者の言う通りだ、返答しだいではお前でも許さんぞ」
二人の殺気に周りの兵は怯えたが如水は若干呆れて答えた
「私の単独行動は華琳の許可を取っている、その事は秋蘭はともかく春蘭は聞いていたはずだが」
「何、いつそんな事を」
「春蘭、貴方また軍議を理解していなかったのね」
騒ぎを知った華琳は如水のした事を察したが、春蘭が軍議を聞いていなかった事に気づき呆れた
「華琳様、如水は一体何をしていたので」
秋蘭はこのままでは収拾がつかないと思い華琳に事態を聞いた
「如水は黄巾党がこちらに気を取られている内に本拠地を落としてきたのよ、その荷物はそこから奪った物ね」
華琳の説明に秋蘭は納得し春蘭を抑えた
「姉者、どうやら如水に一番の手柄を獲られた様だ」
「なに、どういう事だ」
「今はそれだけ理解していろ、そしてこれに懲りたら軍議をしっかり聞くことだ」
その言葉で渋々納得した春蘭だった
更に華琳は如水の連れて来た黄巾の連中を拘束する様に命じ、荷物について聞いた。
「これらは黄巾の奴らが奪い取った物ね、如何しましょう」
華琳の思案に如水は解決案を出した
「これは君が所有しても問題ないだろう、しっかりと工作している」
「どういう言う事?」
「城に火を掛けた後、この事はここの反対側にいた討伐軍がやった様にして来た。報せによると黄巾の側もあの場所はあの討伐軍がしたと思い込んでいる。君の物にしても苦情の出ようが無い」
「あいかわらず抜かりないわね、その討伐軍とやらはどんな旗だったの?」
「確か…袁と書いてある旗らしい」
「袁ね、このあたりなら袁紹ね。まあ、あいつなら問題無いでしょう」
「そんなに優れている者なのか、袁紹とやらは」
如水の問いに笑って答えた
「細かい事を気にしないの、覚えが無くてもあいつは自分の手柄
だと思い込むでしょう」
「そうか、それを聞いてなおさら安心できた。こちらに類は及びそうに無いな」
「貴方もいやな性格ね」
華琳の軽い皮肉に如水は何気なく答えた
「どうだろうか、見知らぬ他人の不運にそこまで案じる気がしないだけだ。それに知りもしない人間より、身近な人間の方が大事なだけだ」

それもそうかと、華琳は如水の考えに納得した。
 
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