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武で語るがよい!

作者:Mr,M
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いざ、高町家へ

高町さんとスクライアを連れて……いや、抱えて? まぁいいや
取り合えず月歩を使って高町家の門の前へ到着した。
それまでの道のりでスクライアから俺に関する質問を色々されたが『高町さんが起きてから話す』と言って渋々納得してもらった。
その際、スクライアから『で、ではせめて名前を教えてくれませんか?』と言われ
お互いの自己紹介をした。
自分が相手の名前を知ってたから忘れてた……すまんな、スクライア

「……むにゃ……もう食べれないの……」

先ほどのまでの事を回想していたら、睡眠状態の高町さんから寝言が聞こえてくる
口元からは白い涎が少し垂れてきているが気にしたら負けだろう……。

「と言うか……こんな寝言言う人ホントに居たんだな」

「あはは……僕も同じ事考えてました」

どうやら文化は違えど認識は一緒のようである

―――ガラガラ……

スクライアと喋っていたら高町家の門が突然開き始めた。
そして、中からメガネを掛けた三つ編みのお姉さんが出てきた。

「あっ! なのは! と…えっと……君だれ?」

そう言って首を傾げだすお姉さん……原作知識から察するにこの人は確か高町家の長女の高町美由希さんだ。まぁそれはさて置き、取り合えずここからが大変だ……
まず高町さんは原作通り、家族に何も告げずにスクライアが居る動物病院に行った可能性が高い。その理由は先ほど、美由希さんが心配そうな顔から驚いた顔に一変した表情の変化、そして何より、高町さんが『この時間に家を出ても良い?』なんて事を家族に言えば、必然的に保護者が着いてくるだろう……というのが理由だ。

つまり高町さんが今日やった行為は……無断外出……(まぁ、俺も同じだが)
高町家は剣術家の家……つまり、門限とか決まり事に非常に厳しいかもしれない。
しかも高町さんは今現在、お姫様抱っこ状態+睡眠状態……マバイな、俺が親なら娘に対してキレるレベルだ。
このまま行けば高町さんに『外出制限』みたいな罰則を言いわたされるかもしれん……
そんな事になってしまったら、”ジュエル・シードを封印して行く”という原作の流れに大きな影響を及ぼす恐れがある。

ならどうする? 答えは簡単だ、相手を納得させれば良い
『この理由じゃあしょうがないか……』と思わせれば良いのである。
そして、それに必要なのは話術と相手の心理を読む事……話術の方はそこまで得意ではないが後者の方は自信がある、何故ならばその力を俺は持っているからだ。

―――”見聞色の覇気”発動

心の中で唱え、発動させる
まさか今日一日で士郎さんに続いて、美由希さんに対しても交渉するとは思わなかったが
まぁ、士郎さんの時と同じようになるようになれだ……

「こんばんは、僕の名前は神田誠って言います
実は今日、僕が電話で『フェレットの事が心配だから様子を見に行くけど来る?』と誘って二人で動物病院まで行ってたんですが……途中で高町さんが疲れて寝てしまったんです
それで僕が家まで運んだんです……」

「え? え、君が神田君? 
私はなのはの姉の美由希っていうの、よろしくね」
《この子がお父さんの言ってた子? 普通の子にしか見えないけど……》

《あの子が神田君……父さんが強いと言っていた少年
いや、今はその事は一先ずおいて置こう……彼はさっき何と言った?
なのはを連れ出した? もしそれが本当なら灸を据える必要があるな……》

…………やべ、ここに居るの美由希さんだけじゃない
恐らくだけど高町家の長男の恭也さんまで居るぞ……どうする?
『高町さんは俺が誘ったので叱らないでください』みたいな流れを創り、そこに+αを加えて高町さんをお咎めなしにしようと考えていた……その際、俺が拳骨の一発位貰う覚悟もしていた。

だが、先ほどの恭也さんの思考……もしかしたら、俺の骨を一本や二本をへし折りに来る気かもしれん……。
まぁ、そんな事になったら鉄塊を使って防御又は紙絵による回避をするが……。
後、どうやら俺の事、士郎さんから聞いてたみたいだな、一体どの様な話をしたかは分からないが……悪い事は言ってないのだろう。
もし俺の事を悪く言ってたら、美由希さんと恭也さんの二人掛かりで俺の腕の中に居る高町さんを強引に奪いに来るはずだ。そう考えながら、ふと高町さんに視線を落とす……未だに涎は健全だった

「あ、なのは重いでしょ? こっちに渡して頂戴」
《あちゃ~、なのはったら涎たらしちゃって……こんなんじゃあ、先が思いやられるよ》

? 一体なんの先が思いやられるのかは分からないが、高町さんを美由希さんに手渡す
どうやら、俺が高町さんへと視線を落とした事によって、俺への負担を心配したようだ

さて、俺の人生最大の黒歴史になるかもしれんが……やるか…

「あの! 高町さんを叱らないでやってくれませんか?
高町さんはこのフェレットの事が心配になって家を出て行ったんです!
それに……さっき言ったように、僕が……僕が誘ったのが原因なんです
だから、高町さんを許してあげてください! お願いします!」

「きゅ、きゅう~!」

そう言いながら俺は腰を90度に折り、スクライアが乗った両手を前に出して悲願する
目には涙を溜め、声には切実さを乗せる……そして、スクライアも美由希さんへ訴えるように鳴いている。
そう、俺の取った行動は”泣き落とし”……『子供の涙は女の涙にも匹敵する』
俺が転生前に学校の保健教員から聞いた言葉だ。その言葉を思い出したので今回使わせてもらった。

《え? えっと、こんな時どうしたら良いの!?
なんかこの子、なのはとお父さんから聞いてた印象と違うんだけど!?》

美由希さんから戸惑いの心の声が聞こえてくる、そして、それに比例するかのように顔も戸惑いに変る。バニングスさんの時もそうだが、こういう所は最低だよな、俺……

「あ、えっと、大丈夫だから、ね?
神田君もなのはもこのフェレットの事が心配だったんでしょ?
だったら怒らないから、ね? だから泣かないの、男の子でしょ?」
《え、えっと……取り合えず、これで合ってるのかな?》

「……グス、は、はい」

俺は嘘で汚れた涙を流し、姿勢を戻した状態で美由希さんの言葉に頷く
そして、差し出した両手を自分の顔に近づけ、スクライアが乗っていない右手でゴシゴシと目を拭く、この際俺はスクライアに一言、言葉を掛ける。

「(高町さんが起きたら、裏合わせるように言っとけ)」

「きゅ!? (は、はい、分かりました)」

スクライアは突然の事に反応できず、思わずフェレット語を話したが直に小声で承諾した。これで高町さんの意見と俺が今日言った嘘が一致する、まさに嘘で塗り固めた嘘である

「お、泣き止んだか、偉いぞ~! さっすが男の子」
《私に弟が出来たらこんな感じなのかな?……ちょっと良いかも》

そう言って美由希さんは高町さんを抱っこしてる両手の内、右手を俺の頭の上に乗せ、わしゃわしゃと撫でる。そんな彼女の行為と思考に俺の胸がチクチクと痛み出す……美由希さん、騙してごめんなさい。

「それじゃあ、私は一旦なのはを部屋に運んでくるから待っててね? それと……
そのフェレットがなのはが預かる事になっている子でしょ? その子も運んでおくね」
《取り合えず、お父さんとお母さんに事情を説明して……それから神田君を家まで送って行こっと》

「……あ、はい」

あぁ、俺はなんて事をしてしまったのだろう……
こんなにも心がピュアな人を騙してしまった……もう神様に出会うことは出来ないかもしれんな…。そんな事を考えながら家の中まで去っていく美由希さんの背中を俺はずっと見ていた。

そして、美由希さんが家の中に消えていった刹那、背後から気配を感じると共に一本の小太刀が俺の右首に突きつけられる……まぁ、話をし易くする為に背後を取らせのだが。

「怪我をしたくなければ動かないでくれ……君に質問がある。出来る限り正直に答えてくれ」
《なのはと同い年の少年にこんな手は使いたくはないのが……》

「あーはい、どうぞ?」

今俺の背後に立っているのいるのは恭也さんだ
どうやら美由希さんが家に入って行くの見計らって来たようだ。

「……君となのはが今まで何をしていたのか話してくれ……嘘、偽りなくだ」
《さっきの美由希との会話はどうにも不自然だ……最初は『この子が悪いのか』と
思ってしまっていたが、彼の話し方と態度を見ている内にそは疑問に変った。
確かにこの子からは反省や必死さが伝わってきた……まるで普通の子供の様に…
俺は父さんからこの子の事を多少なりとも聞いている、その情報と彼の言動と行動は
そぐわない。そして、そもそもなのははこの子の事があまり好きじゃないと言っていた
そんな子の誘いをフェレットの安否が心配だからといって承諾するか? 答えは否だ
これらの事を考えるとどうしても『彼は何か隠している』と思わざるを得ない》

……これは一体どこからツッコンでいいんだ?
恭也さんが俺の三文芝居を見切った事に関しては『やっぱりか……』というのが本音だ
士郎さんから俺の事聞いていたのならこれ位の事は想像できた……。
まぁ、それはさて置き……高町さんって俺の事嫌いなの?
確かに普段あんまり会話とかしないけどさ……まさか嫌われているとは思わなかった
嫌われてる理由としては……友達であるバニングスさんに今日、紙ボールをぶつけたのが
原因だろうか?それとも、もっと直接的な何かだろうか? ……分からない
取り合えずこの件に関しては保留にしておき、高町さんと話す機会が在るとき解決すれば
いいだろう……それよりも先に背後に立っている恭也さんをどうにかするのが先決だ。

「嘘、偽り?」

「あぁ、君の発言はどうにも信憑性が欠けている、本当の何かを君は隠しているんじゃないか?」
《さぁ、どうする? もしまだ真実を隠すようなら……》

そう言って恭也さんは小太刀を握る手に力を込める
ギュ、という効果音が俺と恭也さんしか居ないこの空間に響き渡る。
まぁ、ここで嘘を言っても信じてもらえないので多少は本当の事を織り交ぜるか…。

「んーそうですね、確かに貴方の言うとおり、僕は一部を伏せて美由希さんに話しましたね」

「! やはりそうか……ならその伏せていた事を話してもらおう」
《一体何を伏せていると言うのだ?……もしもなのはに対して不埒な事をした、などだったら灸を据える程度では済まさんぞ……》

不埒って……小学3年生に何言ってんだ? ……あ、間違えた
小学3年生に対して何考えてるんだこの人……。

「えぇ、僕から話すのは一向に構わないのですが……でも、これから話す事は秘密にしてもらえませんか? 今から話す事は高町さんが秘密にしたいって思っている事なので……」

「……分かった、内容にも寄るが取り合えず話してくれ」
《なのはが秘密にしたい事? 何だそれは?》

ここで俺がミスをすれば、本当の事実である思念体や魔法の事を話さなくては成らなくなる。
原作で高町さんが家族と友達に魔法の事を話たのは闇の書事件の後だったはずだ
なので、ここで俺が魔法の事をベラベラと喋るはけにはいかないと思う……
だからこそ考える、恭也さんが納得するような嘘を……。

「はい…先ほど美由希さんに話したようにフェレットの事が心配で僕達は見に行きました
でも、そのフェレットはどういう訳か動物病院ではなく道端に居たんです……。
恐らく病院から逃げ出したのだろうと思った僕はそのフェレットを捕えて、高町さんに
手渡しました。その後は高町さんの家まで僕が送り届けようとしたんです、当然ですよね?
僕から誘った事ですし……ここまで大丈夫ですか?」

「いや、ちょっと待ってくれ……そもそもどうして君はなのはを誘ったんだ?
俺はなのはから君の事を聞いた事は無い、友達のアリサちゃんやすずかちゃんの事は
毎晩のように聞くのにだ。
だから、こういう言い方で申し訳ないが……君となのはは友達では無いのではないか?
さらに言えば友達でもない子の誘いをこんな時間になのはが受けるとは思えないのだが?」
《なのはから彼の事を聞いていないというのは嘘だ……と言っても今日始めてなのはと
父さんから聞いたのだから一緒の様なものだが……。
そして、俺の質問に彼はどう答える? この辺りが俺的に一番怪しいのだが……》

やはりそこを付いてくるか……
確かに俺と高町さんは友達ではない、むしろ俺は高町さんに嫌われているらしいので
ひょっとしたら高町さんから見た俺はクラスメート以下の存在なのかもしれない。だが、
今だけは友達という立ち居地を主張しなければならない、そうしないと話がややこしくなる。

「僕と高町さんはですよ? だからこそ、誘えたんですよ?
でも……僕の事家族に言ってなかったんですか……んー何ででしょうね?」

「あ! もしかしたら恥かしかったんじゃないですか?
ほら、あの年頃の女の子ってそういうのに敏感じゃないですか、もし家族に男友達の事を話したら『家族にからかわれるかもしれない』と考えて話さなかったんじゃないですか?」

言っててあれだが……イタイな
中々にイタイ発言をしているな…俺……。
一応スクライアに高町さんへ『話の裏を合わせとけ』と伝言するようには伝えているが
もし、今の俺の発言を恭也さんが高町さんに『神田君がこの様に言ってたのだが?』と質問を投げかけたら、高町さんの元々低かった俺への株が大暴落するのは免れないだろうなぁ……。

「……確かに……そうなると、なのはが考えていたのなら辻褄が合うが…」
《確かに彼の言うとおりだ……もし、なのはの口から『男友達が居ます』なんて発言を聞けば、家族全員がなのはに色々と質問責めするだろうな……特に母さんと美由希辺りが…
じゃあ今日の食事での、なのはの発言は照れ隠しという事か?……有りえなくも無いが…
彼がなのはと友達なのかを信じるには後もう一つ位明確な何かが欲しいところだ……》

お! 何だかよく分からんが恭也さんにとって今の発言は有効だったらしい

「なら、呼び出した時に使ったなのはの携帯番号を言ってみてくれ
もし、君がなのはの携帯番号を答えることができたら友達という事を認めよう」
《なのはは自分の携帯番号を友達以外の子にホイホイと教えるような子ではない
本当になのはを呼び出したと言うのならば、なのはの携帯番号を知っているはずだ》

……知らねーよ!
高町さんを呼びだしたなんて嘘だし、それに交友関係がマイナスの位置にある俺が携帯番号なって知ってる訳も無い。
はぁ~、恭也さんの思考を読み取って高町さんの携帯番号を盗み聞くしかないか、
こういった個人情報の盗み聞きは気が進まないのだが……。

「……その質問に答える前に確認したいんですけど、貴方は高町さんの携帯番号を知ってるんですか?
僕が正しい番号を言えたとしても正解不正解が分からなければ意味が無いですし……
それに、携帯番号は個人情報なので、見ず知らずの人に教えるのは高町さんに悪いので
念の為に聞いておきますけど……貴方は本当に高町さんの家族の方なんですか?」

「……高町恭也、なのはの兄だ。
今はこの様な自己紹介で申し訳ないとは思うが許してくれ、これも家族の……なのはの為にやってるんだ。後、なのはの携帯番号は家族なのだから当然知っている」
《神田君には悪い事をしているという自覚は有る……だがこれもなのはの安全のためなんだ、本当にすまない……それとなのは携帯番号か…最近こちらから電話を掛けた事が無かったが…なのはの携帯番号は確か……080-××××-○○○○だったな》

恭也さん……良い人ですね、こんな嘘を吐いている様な人間をそこまで心配するとは……
そして、そんな人から妹の携帯番号を盗み聞くって……はぁ~、今日人を騙すの何回目だよ…。まるでシロップ村に居た頃のウソップ並みに人を騙してるよな…俺……

「高町さんの携帯番号は080-××××-○○○○ですね。
それと、後ろを向いたまま自己紹介ってのもあれですけど、僕の名前は神田誠って言います」

一応俺も名乗っておく、先ほど美由希さんとの会話を聞いていた恭也さんは既に俺の名前を知っているはずだが、まぁ、これも礼儀ってやつだ……いまさら俺が礼儀うんぬん言ってもあれだが……。

「……その番号で合ってる
君は本当になのはの友達の様だが……まだこの状態を続けさせてくれ
本当にすまない……話が終った後でなら幾らでも非難しても、軽蔑してくれても構わない」
《一先ずなのはとこの子が友達だったという点は認めておく……しかし、それでも俺はこの神田君に小太刀を突きつけるのをやめない。
それは俺自が身未だに神田誠という人物がどのような人柄なのかが分からないからだ。
信じるに値する人物なのかを父さんの意見ではなく、俺の目で確かめる
だから、この子には……神田君には悪いがこのままの状態で話をさせてもらう
話が終った後でなら幾らでも非難されても、軽蔑されても構わないそれでなのはの安全が買えるのなら安いものだ……》

恭也さんの考えは、自分がどう思われようと家族を守るっていう考えなんだろう……
世間的に見ればそれはいわゆる自己犠牲というヤツだ。
まぁ、俺個人的にもその考えには共感が持てる……何かを守って、それで何かを失うのであれば俺なら自分の何かを無くす方を選ぶだろう。身近な例で言えば高町さんを庇った俺の行為も一種の自己犠牲だ。

なので、同じ価値観の恭也さんの考えは自分で何となくだが理解できる
この知識に関してはうる覚えなのだが……恐らく恭也さんがここまで家族に執着するのは、士郎さんが爆発テロに巻き込まれて長期の入院をしていたのが原因ではないか? と俺は思ってる。
そして、その際に店の経営で家庭が大変な事になってしまい、『家族は父さんの代わりに俺が守る!』みたいな思考が強く根付いてしまったのが、今回の過剰な追及に繋がっていると俺は思ってる。

「あーいえいえ、気にしないでください、大事な妹さんの為にやってるのでしょ?
だったらドーンッと胸張ってなきゃダメですよ、だからそんな申し訳ないって声で喋らないでください。守ってもらってる高町さんがその声を聞いたら泣いちゃいますよ?」

俺は少しテンションを上げて恭也さんに語りかける
というのも恭也さんの口調が暗くなった印象を受けたからだ

「……君は……何故…」
《なぜだ……妹の為とはいえ背後に刃物を突きつけている人間に対してその様な考え方ができる!》

「『どうしてそんな事が言えるのか?』……ですか?」

「ッ!」
《どうしてこちらの考が分かる!》

「それはですね……貴方の本質は僕と同じだと感じたからですよ……恭也さん
恭也さんは何かを守る際に自己犠牲をするタイプだと、僕はさっきまでの会話と行動でそう感じました。
『話が終った後でなら幾らでも非難しても、軽蔑してくれても構わない』なんて言ってるのが自己犠牲タイプの何よりの証拠です」

「…………」
《俺は確かにこの子の言うとおり自己犠牲ををするタイプだ……。
父さんがテロで倒れた時から今の今まで、この生き方をして後悔をしたことはない
なぜならば自己犠牲は何かを守る時に必然的に必要になるものだからだ。
なら、この子の言った……俺と本質が同じとは……この子にも何か守るものが有るというのか?》

「僕も自己犠牲をするタイプです。一緒なんですよ、恭也さん
だからこそ分かる……恭也さんは『家族を守りたい』という信念を元に今この様な行動をしてるんでしょ? 僕にも有るんですよ守りたい人達ってのがね」

俺は色々と嘘を吐いたりする事が多いが、恭也さんとの一連の会話での自己犠牲という考えに偽りはない。親、友達、クラスのやつら……今では守りたいって思う人は沢山居る

「……ならその守りたい人物の中に…妹は……なのはは入ってるのか?」
《こんな少年がここまでの考えを持っているとはな……》

「勿論ですよ……友達ですしね」

嫌われているとはいえ、高町さんがこんな俺の助けを求めるのならば俺は救うだろう
それは主人公だからとか、そういうのではない一人の女の子として救うのだ。

後、俺が言葉を発して3秒位経ったあたりだろうか? 後ろからカチャリという刀を鞘に納める音が聞こえてくる……。

「……そうか…なぜ父さんが君の事を認めたのか分かったような気がするよ」
《不思議な子だ……父さんから色々と話は聞いていたが、それでも実際に声を聞きそれを実感する」

何時までも相手に尻を向けるのは失礼だと思い、後ろへ振り向く
そこにはスッキリとした様な顔をする恭也さんの顔があった。

「君を疑ってすまなかった! そして、よろしく頼むよ……
俺と同じ考えを持ってる子がなのはの近くに居るというだけで安心できる」
《今晩の事はきっと何か言えない事情が有るのだろうが……先ほどまでの会話を聞く限り
俺はこの子がなのはに危害を加えるとは思えない》

「いいんですか? まだ事の真相も話していないのに……」

「いや、いいんだ……君の事が何となくだけど分かった
俺は君がなのはに悪い事をするとは思えない、だから君を信じる事にした」
《事の真相とやらが気にならない訳ではないが……いずれは話してくれる…そんな気がする》

どうやら先ほどまでの会話で俺の事を認めたようである。
内心『良かった~』と安息のため息が出てくるのを感じる……というのもこのまま行けば俺が高町さんの有る事、無い事を言って行く破目になっていたからだ。

「分かりました……ありがとうございます。
それと……もうそろそろ家に帰らないとマズイので僕はもう帰りますね
だから美由希さんに伝言お願いします、『ごめんなさい』と…」

「分かった、美由希にそう伝えておくよ。
それと、一人で家まで帰れるか? なんだったら家まで送るが……」
《父さんから神田君の実力は聞いてはいるが……まだ見た目は子供だ、少し心配になる》

「大丈夫ですよ、足には自信あるんで……それじゃあ、さようなら」

そう言って俺は走りだす、その際恭也さんから『あ、おい』との声が聞こえるが気にしない。
そして、恭也さんが目視できない曲がり角に差し掛かった辺りで剃を使い自宅を目指す。

「今日はなんかもう疲れた……」

帰ったらすぐさま寝ようと心に決め、俺は真夜中の海鳴市を駆けるのだった……



 

 
後書き
今回、更新が遅れてしまって申し訳ない
最近は就活と検定の勉強が忙しくなってしまたのが、今回の遅れてしまった理由です
まだ検定とかが終ってないのでまた更新が遅れると思いますがよろしくお願いします。
 
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