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遊戯王GX ~水と氷の交響曲~

作者:久本誠一
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ターン19 副将(?)、戦いの中進化する竜

 
前書き
副将戦だと思ってた人、残念でした!この人だよ!たまにはシリアスっぽいもの書いてみようとしたら驚くほど(キーボードだけど)が進まなかった。前回はけっこうノリノリで書けたのになぁ……。 

 
「よしっ、ようやっとデュエルができる!さあ、僕の相手は?」
『四天王もこれでラスト、か。いいか清明、目標は十代にデュエルさせないことだ!』
「うわなんかそのセリフだけ聞くとすごい悪い人みたい」

 いやまあ、ここで僕が勝てばそこで勝負が決まるのはわかってるんだけどさ。わかってるんだけど、なんかほら、もうちょっと言い方ってもんがないのかな。えーとえーと、例えばほら……。

「………まあそんなことはともかくとして、いったい僕の相手はどんな人さ」
『思いつかなかったか』
「そこ言わないのが優しさってもんでしょー!?」

 あーだこーだ言ってるうちにスッとデュエル場に上がる、一人の少年。高校生で少年ってのも正直ちょっと違和感あるけど、まあとりあえず少年。そしておもむろに口を開き、これまでの3人同様自分の名前を名乗る。

「俺こそがサンダー四天王の千と呼ばれた男にしてノース校のナンバー2、よろ…「ちょっと待ってくれ、鎧田(よろいだ)」……なんですか、サンダー?」

 少年改め鎧田の言葉を遮ったのは、意外なことに総大将の万丈目。だけど皆にとってもっと意外だったのは、その次の言葉だった。

「遊野清明の相手は、俺が出る」
「えっ!?」

 そう言ったのは、十代なのかユーノなのか鎧田なのか、それともほかの誰かか。僕が言ったのかもしれない。

「もとはと言えば俺はあいつに一度負けた。この場を借りて今、お前にもう一度勝負を申し込む!そして俺がお前に勝ったら、その次は遊城十代、まだ勝負がついていないお前の番だ!」
『勝負がついてない……?あーそっか、VWXYZ回に俺らが出たせいで第2話でうやむやになってからやりあってないのか』
「わかりました、サンダー。ご武運を!」
「………すまないな、鎧田。だが、この2人だけは俺の手でカタを付けたいんだ!」
『じゃあなぜ呼んだし』
「おいそこのお前、見ない顔だから黙っていてやったがさっきからなんだその態度は!」

 ビシッと万丈目が指差した先には………ユーノ。どっからどう見てもユーノ。後ろにだれも立ってないから、ユーノでなけりゃ壁でも指差してんだろう。

『じゃあ俺だろうな』
「いやいやいやちょっと待ってよ。そんなこと言ったら万丈目にも精霊が見えるってことになるじゃない」
『馬鹿だねえお前は。ノース校で修行する……ちょっと前に奴に精霊がついたのは常識だぜ?』
「どこの!?てかそれ初耳!え、マジで万丈目!?」
「万丈目サンダー!おいそこのふわふわ浮いてる貴様、どこでそのことを知った!」
『あ、ヤベ。んじゃ、俺は一切ノータッチだから頑張ってくれ~』

 あ、逃げよった。…………えーと、とりあえず全国各地の皆さんも何が何だか分かんないだろうし。

「「デュエル!」」

 同じこと考えてたのね、万丈目。やるじゃないか。

「わざわざリターンマッチ仕掛けてきたとこ悪いけど、遠慮なく返り討ちにさせてもらうよ!ドロー、ドリル・バーニカル召喚!そして水属性のドリル・バーニカルをリリースして、シャークラーケンを特殊召喚!」

 シャークラーケン 攻2400

「これでターンエンド」
「俺のターン、ドロー!俺は、仮面竜を召喚してカードを1枚伏せ、ターンを終了する」

 仮面竜(マスクド・ドラゴン)
効果モンスター
星3/炎属性/ドラゴン族/攻1400/守1100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

「確かに伏せは怪しいし危険だと思うけど……ドロー、グリズリーマザーを召喚してそのまま攻撃!」

 グリズリーマザー 攻1400

 リクルーターは全員攻撃力1400。まあ、たまにもっと低いモンスターもいるが、それでも1400が基準ラインと言えるだろう。そして僕のグリズリーマザーも万丈目の仮面竜もその例に漏れず、その攻撃力は同じ。仮にあの伏せが攻撃反応のカードだとしても、ノーダメージでサーチできるこの攻撃は確実にいけるだろう。その後で連撃をかけるかどうかは、万丈目のモンスターを見てから決めればいいや。

 グリズリーマザー 攻1400(破壊)→仮面竜 攻1400(破壊)

「ここでグリズリーマザーの効果!デッキのハリマンボウを特殊召喚!」
「こちらも仮面竜の効果だ!もう一体の仮面竜を召喚!」

 ハリマンボウ 攻1500
 仮面竜 攻1400

「んー、ここは攻めるべし!シャークラーケンで連撃!」

 この攻撃で様子を見よう。ここで3体目の仮面竜が出てくるならよっぽどデッキから特殊召喚して生き残らせたいモンスターがいるってことだから、攻撃をストップしてやればいい。もし本命のモンスターがここで出てくるならハリマンボウで………まあ、あんまやりたくないけど相打ちにすればいいし。

「トラップ発動、ガード・ブロック!」

 ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 シャークラーケン 攻2400→仮面竜 攻1400(破壊)

「もう一度仮面竜の効果だ!来い、アームド・ドラゴン LV3!」

 次に出てきたのは3体目のリクルーター……ではなく、黄色い体のコミカルなデザインのドラゴン。ついに来たか、本命。

 アームド・ドラゴン LV3 攻1200

「でも、攻撃力1200なら相打ちに持ち込む必要すらないね!ハリマンボウで攻撃!」

 ハリマンボウ 攻1500→アームド・ドラゴン LV3 攻1200(破壊)
 万丈目 LP4000→3700

「やった、倒した!ターンエンド!」
『うんわかった、わかったからちょっと落ち着け。小学生かお前は』
「フン、そこの奴の言うとおりだな」

 清明 LP4000 手札:4 モンスター:シャークラーケン(攻)、ハリマンボウ(攻) 魔法・罠:なし
 万丈目 LP3700 手札:5 モンスター:なし 魔法・罠:なし

「俺のターン、レベル調整を発動!お前にカードをドローさせる代わりに、墓地のアームド・ドラゴン LV3を特殊召喚する!さらに通常魔法、レベルアップ!この効果でLV3を墓地に送り、デッキのLV5を特殊召喚!」

 レベル調整
通常魔法
相手はカードを2枚ドローする。
自分の墓地に存在する「LV」を持つモンスター1体を、
召喚条件を無視して特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃できず
効果を発動及び適用する事もできない。

 レベルアップ!
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つ
モンスター1体を墓地へ送り発動する。
そのカードに記されているモンスターを、
召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。

 黄色のドラゴンが光に包まれ、サイズが倍以上になりカラーリングも黒っぽい灰色と赤に変わってちょびっとだけ厳めしい顔つきになった。

「攻撃力2400は確かにすごいさ。でも、それだってシャークラーケンと互角!それに、モンスターの数だってこっちの方が多いんだよ」
「ああ、確かにそうだな。そこで俺は、こんな手を使う。手札から攻撃力2800のフェルグラントドラゴンを捨てることで、シャークラーケンを破壊!デストロイド・パイル!」
「そんな、破壊効果持ち!?」
「これで貴様の場にはモンスターが1体だな。バトル!アームド・ドラゴンでハリマンボウを攻撃!アームド・バスター!」

 アームド・ドラゴン LV5 攻2400→ハリマンボウ 攻1500(破壊)
 清明 LP4000→3100

「でもこの時、ハリマンボウの特殊効果!アームド・ドラゴンの攻撃力をダウン!」

 アームド・ドラゴン LV5 攻2400→1900

 墓地からいくつものぶっとい針が乱射され、アームド・ドラゴンの体に突き刺さって爆発を起こす。よし、これで戦闘破壊しやすくなった。破壊効果は厄介だからね、早めに退場してもらおう。

『………とかなんとか考えてんだろーなー。ここじゃアームド・ドラゴンなんてトンデモレアカードだから効果知らんだろうし。ま、頑張ってくれや』
「ふ、それで勝ったつもりか?メイン2に強欲なカケラを発動してエンドフェイズ、アームド・ドラゴン第2の効果発動!こいつがバトルでモンスターを破壊したターンのエンドフェイズ、このカードはもう一度進化を遂げる!」

アームド・ドラゴンが咆哮と共に再び光に包まれ、レベル3や5の時の面影がほぼなくなりギゴバイトからゴギガ・ガガギゴ並みの謎進化を遂げた巨大なドラゴンが万丈目のそばにそびえ立った。

 強欲なカケラ
永続魔法
自分のドローフェイズ時に通常のドローをする度に、
このカードに強欲カウンターを1つ置く。
強欲カウンターが2つ以上乗っているこのカードを墓地へ送る事で、
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 アームド・ドラゴン LV5 
効果モンスター
星5/風属性/ドラゴン族/攻2400/守1700
手札からモンスター1体を墓地へ送る事で、
そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。
また、このカードが戦闘によってモンスターを破壊したターンのエンドフェイズ時、
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送る事で、
手札またはデッキから「アームド・ドラゴン LV7」1体を特殊召喚する。

 アームド・ドラゴン LV7 攻2800

「ハリマンボウの効果が、打ち消された……」
「その通り。俺はこれでターンエンドだ」
「まだまださ!ドローッ!」

 いつぞや会った大山先輩を参考にして、いつも以上に気合を込めてカードを引いてみる。む、残念。ここは、守りを固めるか……。

「僕は、フィッシュボーグ-アーチャー-を守備表示で召喚!そして魚族のアーチャーを召喚したことで、頼むよ戦友!シャーク・サッカー特殊召喚!」

 シャーク・サッカー
効果モンスター
星3/水属性/魚族/攻 200/守1000
自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが召喚・特殊召喚された時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードはシンクロ素材とする事はできない。

 フィッシュボーグ-アーチャー- 守300

「さらにカードをセットして、これでターンエンド。これなら、なんとかこのターンはしのげるはず……」
『わけねえだろ。ったく、まさか万丈目と当たることはないだろーと思ってアームド・ドラゴンの効果を覚えさせとかなかったのが裏目に出たか』

 清明 LP3100 手札:3 モンスター:フィッシュボーグ-アーチャー-(守)、シャーク・サッカー(守) 魔法・罠:1(伏せ)
 万丈目 LP3700 手札:2 モンスター:アームド・ドラゴン LV7(攻) 魔法・罠:強欲なカケラ(0)

「俺のターン、ドロー!強欲カウンターが一つ増えてメイン1、さらに進化したアームド・ドラゴンの力を見せてやる!手札から攻撃力400のミンゲイドラゴンを捨てて、貴様の雑魚モンスターを全部吹き飛ばす!ジェノサイド・カッター!」
「そんな、破壊効果がパワーアップしてるなんて!?」
『知らんカードが出たら素直に効果見せてもらえよ……』

 アームド・ドラゴン LV7
効果モンスター
星7/風属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
手札からモンスター1体を墓地へ送る事で、
そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

「ゆけ、アームド・ドラゴン!アームド・ヴァニッシャー!」
「ぎゃっ!一気に削られた………」

 アームド・ドラゴン LV7 攻2800→清明(直接攻撃)
 清明 LP3100→300

「メイン2に入り、カードを2枚伏せてターンエンドだ」
「万丈目!僕は今の攻撃、あえて直接受けたのさ!こうするためにね、ドロー!メインフェイズに墓地のフィッシュボーグ-アーチャー-の効果発動!手札の氷帝メビウスを捨てて、このカードを特殊召喚!」

 がら空きになった僕のフィールドに、さきほどアームド・ドラゴンの効果を受けて倒れた魚………魚?って、このネタは前もやったか。とりあえず魚が四本足で走ってくる。なんかおかしい気もするけど、多分気のせいだろう。

 フィッシュボーグ-アーチャー-
チューナー(効果モンスター)
星3/水属性/魚族/攻 300/守 300
このカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
手札の水属性モンスター1体を捨てて発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
さらに、この効果で特殊召喚したターンのバトルフェイズ開始時に
水属性以外の自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。
「フィッシュボーグ-アーチャー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

「またその雑魚モンスターか?」
「これだけじゃないよ、というかそもそも雑魚なんかじゃない!トラップ発動して、メタル・リフレクト・スライム召喚!」

 毎度おなじみ銀色の筋肉スライムが、そのぶっとい腕をアームド・ドラゴンに見せつける。そんなことしたってお前、攻撃力0だろうに。

 メタル・リフレクト・スライム
永続罠
このカードは発動後モンスターカード(水族・水・星10・攻0/守3000)となり、
自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。
このカードは攻撃する事ができない。(このカードは罠カードとしても扱う)

「これでモンスターが2体、そして僕には召喚権が残ってる………来い、僕のドラゴン!青氷の白夜龍!」

 これがやりたかったから、さっきはアームド・ドラゴンの攻撃を通したんだよね。なにしろスライムの攻撃力は0、さっき攻撃を防ぐのにお世話になってたらメイン2で一瞬で処理された可能性があった。どうだユーノ、僕だってこれくらいはできるんだぞ!

『あきら は ほめてほしそうな め で こっちをみている!ってか?………まあ悪くはないが、今ので一体なにを褒めろってんだ。ふーん、で終わりだろ』

 青氷の白夜龍(ブルーアイズ・ホワイトナイツ・ドラゴン)
効果モンスター
星8/水属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
このカードを対象にする魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、
自分フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、
このカードに攻撃対象を変更する事ができる。

「これだけじゃ終わらないよ、サルベージを発動。墓地のドリル・バーニカルとシャーク・サッカーを手札に加えて、これで墓地のモンスターはシャークラーケン、グリズリーマザー、ハリマンボウ、氷帝メビウス、フィッシュボーグ-アーチャー-の5体!そしてこの条件が整った時、氷霊神ムーラングレイスは特殊召喚できる!」

 サルベージ
通常魔法
自分の墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を選択して手札に加える。

 氷霊神ムーラングレイス
効果モンスター
星8/水属性/海竜族/攻2800/守2200
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の水属性モンスターが5体の場合のみ特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚に成功した時、
相手の手札をランダムに2枚選んで捨てる。
「氷霊神ムーラングレイス」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードがフィールド上から離れた場合、
次の自分のターンのバトルフェイズをスキップする。

「ムーラングレイスの効果………は使えないけど、バトル!ブルーアイズでアームド・ドラゴンを打ち抜け!孤高の冬色氷輪弾(ウィンターストリーム)!!」

 青氷の白夜龍 攻3000→アームド・ドラゴン LV7 攻2800(破壊)
 万丈目 LP3700→3500

「ムーラングレイスも攻撃!」

 氷霊神ムーラングレイス 攻2800→万丈目(直接攻撃)
 万丈目 LP3500→700

「僕はこれで、ターンエンドだよ」

 清明 LP300 手札:2 モンスター:青氷の白夜龍(攻)、氷霊神ムーラングレイス(攻) 魔法・罠:なし
 万丈目 LP700 手札:0 モンスター:なし 魔法・罠:強欲なカケラ(1)、2(伏せ)

 アームド・ドラゴンの破壊効果は確かに面倒だったけど、効果の発動にはモンスターを手札から捨てる必要がある。今の万丈目の手札は0、次のドローだけでなにかしらのカードを引くなんてことはまさかないだろう。…………いや、万丈目の目は本気だ。なんだろう、嫌な予感がする。

「俺は………俺は、もう負けるわけにはいかんのだ!」
「ま、万丈目?」
「いいか遊野清明、それに遊城十代!俺はお前らのように、ただ毎日ヘラヘラ笑って楽しんでデュエルしていればいいのではない!俺のこの肩には、万丈目グループとしての誇りと期待がかかっているんだ!だから俺は、とにかく勝たなくてはいけないんだ!今日も明日も明後日も、その次の日もまた次の日も!だから頼む、俺のデッキ!俺を勝たせてくれ!」

 正直なところ、何も言うことができなかった。出てく前とあんま変わってなかったからあんま心配してなかったけど、まさかここまで万丈目が思い詰めてたなんてねえ。

「………ドロー!そして、強欲カウンターが2つになったカケラを墓地に送ってさらに2枚ドロー!2枚目のレベル調整を発動、相手のドローと引き換えに俺が召喚するのは、アームド・ドラゴン LV7!そして俺の場のLV7をリリースすることで、アームド・ドラゴンは究極の進化を遂げる!出て来い最後のアームド・ドラゴン、アームド・ドラゴン LV10!」

 万丈目の本気に、そのデッキは答えたらしい。アームド・ドラゴンの全身が全体的に黒っぽい色になり、体も一回り大きくなる。だが何よりも大きな変化は、その巨体が放つ圧倒的な威圧感だろうか。

 アームド・ドラゴン LV10
効果モンスター
星10/風属性/ドラゴン族/攻3000/守2000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に存在する「アームド・ドラゴン LV7」1体を
リリースした場合のみ特殊召喚する事ができる。
手札を1枚墓地へ送る事で、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

『なんだこの万丈目。すげー漫画版っぽいんですが』
「アームド・ドラゴンでムーラングレイスに攻撃、アームド・ビッグ・パニッシャー!!」

 アームド・ドラゴン LV10 攻3000→氷霊神ムーラングレイス 攻2800(破壊)
 清明 LP300→100

「くっ………!」
「俺はこれで、ターンを終了する。そうだ遊野清明、いつまでもこのぬるい環境でばかり戦ってきたお前が、一度地獄を見てきたこの俺に勝てるものか!」
『ん、LV10の効果を使わない?確実な勝ちのチャンスを捨ててまで手札に残しておきたいほどのカード………まさかアレか?』

 清明 LP100 手札:4 モンスター:青氷の白夜龍(攻) 魔法・罠:なし
 万丈目 LP700 手札:1 モンスター:アームド・ドラゴン LV10(攻) 魔法・罠:2(伏せ)

「なんの、まだまだ……!ドロー!ねえ万丈目、一つ聞いてもいい?」
「万丈目サンダー!まあいい、なんだ」
「万丈目はさ、デュエルしてて楽しい?」

 僕がそう聞くと、万丈目はまずきょとんとした顔をした。そして一瞬だけ後ろめたそうな顔になったけど、すぐに表情を取り繕う。わっかりやすいやつ。人のことは言えないかもしれないけど。

「俺の話を聞いていたのか?俺には万丈目グループとしての責任がある、楽しんでデュエルをする暇などない!」
「ありがと、今の顔でだいたいわかったよ。………ちょっと荒療治だけど万丈目、ここで全力でぶっ飛ばすよ!この全国放送でもう一回僕が勝って、少しでもその肩の荷を降ろしてやる!デュエルはやっぱり、皆で楽しくやるものだよ!フィールド魔法、ウォーターワールドを発動してブリザード・ファルコンを守備表示で召喚!」

 ウォーターワールド
フィールド魔法
フィールド上に表側表示で存在する水属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、
守備力は400ポイントダウンする。

 ブリザード・ファルコン
効果モンスター
星4/水属性/鳥獣族/攻1500/守1500
このカードの攻撃力が元々の攻撃力よりも高い場合に発動できる。
相手ライフに1500ポイントダメージを与える。
この効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できず、
「ブリザード・ファルコン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 青氷の白夜龍 攻3000→3500 守2500→2100
 ブリザード・ファルコン 守1500→1100 攻1500→2000

「ブリザード・ファルコンの効果発動!これで終わりにするよ、1500ポイントダメージ!」
「まだだ!リバース発動、黒板消しの罠!そのダメージは受け付けん!」

 黒板消しの罠
カウンター罠
ダメージを与える効果が発動した時に発動する事ができる。
自分が受けるその効果ダメージを無効にし、相手は手札を1枚選択して捨てる。

「僕の手札を1枚………ドリル・バーニカルを捨てるよ」
『これで攻撃ができれば勝ちだったんだがな。たられば論とはいえ、さっきのタイミングでムーラングレイス出さない方がよかったかもしれんな』
「ムーラングレイスのデメリット効果でこのターン僕はバトルができないから、貪欲な壺を発動。ムーラングレイス召喚の時に見せたモンスターをデッキに戻してドロー、カードを2枚伏せてターンエンド」

 僕が今伏せたカードはそれぞれ、リビングデッドの呼び声とポセイドン・ウェーブ。万丈目のアームド・ドラゴンの効果はどれほどレベルアップしても、当たり前ながらバトルフェイズに発動することはできない。つまり、攻撃に合わせてリビングデッドを発動してドリル・バーニカルを蘇生させる。そのまま攻撃宣言をし直すならポセイドン・ウェーブで返り討ちにすればいいし、攻撃をやめるなら返しの僕のターンで攻撃力800に上がってるバーニカルで直接攻撃を決めてやればいい。唯一気になるのが万丈目のさっき使わなかった手札だけど、あそこまで追い詰めた状況でも捨てないようなカードなら多分メイン2で使ったりはしないだろう。よし、完璧。

「俺のターン。………このデュエル、俺の勝ちだ」
「好きなだけ言ってなよ。僕が何にも考えずにターンを渡すわけないでしょ?」
「どんな小細工を仕掛けたのかは知らんが、それでも、だ。まず、リビングデッドの呼び声を発動。墓地のミンゲイドラゴンを特殊召喚する」

 ミンゲイドラゴン
効果モンスター
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

「そして今ドローしたカード、おジャマ・イエローを捨ててアームド・ドラゴン LV10の効果を発動。お前の場のモンスターを破壊する」
「ごめんブルーアイズ、それにファルコン………でも、僕は負けるつもりはないよ!」
「言っただろう、どんな小細工も通用しないと!ミンゲイドラゴンをリリースし、俺はこのモンスターをアドバンス召喚する!」
『万丈目の最上級ドラゴンで、手札に置いておきたいカードときたら、やっぱアレ(・・)しかないよなぁ』
「来い、光と闇の竜!」

 万丈目の場に、2体の最上級ドラゴンがそろう。体の半分が白、もう半分が黒。きれいにカラーリングが分けられた白黒の龍が、アームド・ドラゴンと共に雄たけびを上げた。

 光と闇の竜 攻2800

「光と闇の竜でダイレクトアタック、シャイニングブレス!」
「トラップ発動、リビングデッドの……」

 でも、カード名を最後まで宣言することはできなかった。発動したはずのリビングデッドが、僕のモンスターを呼び寄せる前に粉々に砕け散ったからだ。

「なっ、僕のカードが?」
「これこそが俺の、光と闇の竜の効果だ!自らの攻守を犠牲に、いかなるカードの効果も無効にする!」

 光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻2800/守2400
このカードは特殊召喚できない。
このカードの属性は「闇」としても扱う。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にする。
この効果でカードの発動を無効にする度に、
このカードの攻撃力と守備力は500ポイントダウンする。
このカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。
自分フィールド上のカードを全て破壊する。
選択したモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 光と闇の竜 攻2800→2300 守2400→1900

「改めて攻撃だ、光と闇の竜!ダークパプティズム!」
「ポ、ポセイドン・ウェーブを………!」

 もちろんわかってる。通るわけがない。でも、なにかせずにはいられなかったんだと思う。無理なのは百も承知だけど、それでも半ば無意識に発動していた。

 光と闇の竜 攻2300→1800→清明(直接攻撃)
 清明 LP100→0





 僕のライフが0になったことでデュエルが終わり、ゆっくりとソリットビジョンのドラゴンたちが消えていく。完全に姿が見えなくなる寸前にチラッと見えた2体の表情がなんとなく悲しそうに見えたのは、本当に僕の気のせいなんだろうか。ごめん、なんとかしようと思ったけど、僕じゃ万丈目は止められなかったよ。

「ねえ、ユーノ」
『んー?』
「僕、今はまだ弱いけど、もっと強くなるよ。もっと強くなって、もうこんなやってらんない気持ちを味わうことがないようにするんだ」

 正直、自分でもいいかげんな宣言だと思う。小学生が作文に書く未来の夢じゃあるまいしね。きっと笑われるかと思ったけど、意外にもユーノは真面目な顔で、黙ったまま最後まで聞いてくれた。

『そっか、頑張れよ。俺も応援ぐらいは片手間にしといちゃるからな。でもま、今はとりあえず顔上げとけ。まだ十代が残ってんだろうが』
「うん、そうだね……」

 僕に気を使ってくれてるんだろうか。まだ5分経たないと始まんないのに。まったく、肝心なところで抜けてるんだから。でも、『強くなる』って言ったそばからいつまでも落ち込んでちゃいけないよね。後は任せたよ、十代。 
 

 
後書き
副将、鎧田……ではなく大将万丈目。みんな大好きアームド・ドラゴンに、光と闇の竜とかの漫画版万丈目デッキのカードも詰め込んでみた【アームド・ドラゴン】。ごくごく普通のビートダウンだけど、単純なだけに強い。はず。 
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